イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ラブライブ! サンシャイン!!:第9話『未熟DREAMER』感想

夢の翼は未来へのパスポート!
青春まっしぐらアイドルアニメ、ついにAqours完全体結成となった第9話です。

TOKYO前後編で現状を認識し、もう一度立ち上がる決意を固めた少女探偵団が、これまでヒントだけ出ていた三年生の過去に思いっきり踏み込み、全てを開放する回となりました。
三年生(特に果南)の出番を絞りに絞り、飢餓感を極限まで煽った上で一気に解決するカタルシス。
視聴者が気になっていたこと、形にして欲しかった疑問、見たかったシーンを全て拾い上げる冷静な観察眼。
鞠莉の涙が天を濡らしてからライブが終わるまでの、圧倒的なエモーションの熱量。
この話数だけではなく、シリーズ全体の構成を味方につけた見事な最終回で、本当に素晴らしかったと思います。

Aqoursの物語の合間に、三年生の物語をスケッチする』というこれまでの方式をひっくり返し、今回は『三年生の物語に、Aqoursが介入していく』という形をとっています。
これまでは断片的な情報を組み合わせ、そこに一体何があるのかという疑問だけが膨らんできた三年の過去に一気に踏み入り、真実をえぐりだして捻れた感情を元に戻す。
ある種の感情的外科手術であり、千歌たちを探偵役にしたミステリとも言える構造が、今回の話しには埋め込まれています。

ここまでAqoursは『仲間を集め(第1~2話、第4話、第5話)、内浦内部で認められ(第3話、第6話)、その成功を受けて東京に挑み敗北し(第6話、第7話前半)そこから立ち上がる(第7話後半)』という、起伏のある物語を歩んできました。
それは結構時間とパワーのいる物語で、三年生の物語はあくまで添え物というか、Aqoursの物語の合間合間に挟まるサブプロットとして扱われてきました。
しかし同時に、短い出番ながら(ゆえに?)印象的なシーンが多く、『いつか解決されるだろう』という興味を引きつけ、『いつか解決して欲しい。三年メインの話が見たい』という期待を煽る仕事も、しっかりしてきた。
『投票ゼロ』というAqoursの現状を確認し、『完敗からのスタート』に全員で取り組むと決めたことで、Aqoursの物語的足場は一応の安定を見ました。
自分たちの物語を一旦止めて、視聴者たち(っていうか俺)が先が見たくてウズウズしている三年生に切り込んでいくには、非常に良いタイミングだと言えます。

断片的な見せ方をされてきた謎に切り込んでいくのに、千歌たちは小さな接点を巧く拾い上げ、点を線に、線を立体に拡大していきます。
千歌と果南の間にある『幼なじみ』という接点、ルビィとダイヤの間にある『姉妹』という共通点、現Aqoursと旧Aqoursの間にある『スクールアイドル』という近接点。
天を丁寧に繋げて物語のラインを伸ばし、事実を確認しながら三年生の事情に切り込んでいく姿は、非常にロジカルかつコミカルで、スムーズな話運びでした。

三年生が自力ではこじれた状況を解消しえず、一生お互い譲らない押し合いへし合いを続けるということは、例えば前回の桟橋でのすれ違いでも見えるし、今回も教室で取っ組み合いになっていました。
点を結んで線を作った後、過去を共有しなかった千歌は『関係ない』と拒絶する果南の壁を乗り越え、物語の当事者になって関係者の気持ちをまとめ上げ、真実をえぐりだしていきます。
当事者はあくまでくっそ面倒くさい金髪と黒髪なので、彼女ら二人が肉体と精神を接触させることでしか最終的な解決は起きないわけですが、しかし状況が動き出すのは千歌が『いい加減にしろ!』と獅子吼したからです。
ここら辺の展開は物語の当事者性と、主人公の存在意義を上手くバランスを取った展開で、キャラクターの心情もあるべき物語の展開も阻害しない、上手い運び方だったと思います。


千歌の探偵行の渦中で事実を掘り下げながら、視聴者の疑問や不信を徹底的に拾い上げていたのは、凄く良かったと思います。
これまでの情報だと『果南ちゃんはスラダンの三井並の根性なしじゃないか』『鞠莉は千歌たちを利用して果南を取り戻したいだけか』『ダイヤは何を考えているのだ』とか、キャラを素直に好きになれないわだかまりがいろいろ生まれるんですが、今回千歌の探偵業務に付き合っていくうちに、これらの感情は氷解していく。
果南は歌えなかったのではなく鞠莉の為を思って歌わなかったのだし、鞠莉は果南を第一に考えつつもスクールアイドルへの敬意は持っているし、ダイヤ姉さんは全てをコントロールして解決に導いた立役者だったと、見ているうちに判るようお話が組み上げられています。

特に『いつまでもグダグダと痴話喧嘩を……どうでもいいからホントの事言え!』という千歌のツッコミは、さんざん焦らされた視聴者のまさに言って欲しかったセリフであり、来るべきものがつい来たという気持ちよさがあった。
主人公に一番言って欲しい行動を、一番欲しいタイミングでしっかりぶち込むことで、『このお話は俺の気持ちと同じ動きをする、俺の話だ』という共感が強くなる。
ここら辺は第4話で花丸が自分の物語を諦めかけた時に、花丸が一気に踏み込んだ瞬間と似た感じがありますね。

視聴者の反応を推測し、そこに重ね合わせるようにキャラクターを動かすためには、冷静な分析力が必要になります
果南の出番が絞られていたのと同様、意図的に視聴者の感想をミスリードする構成が作り上げられ、その解決編として今回が置かれているのは、サンシャインがかなり巧妙にシリーズを汲み上げている証明だと思います。
一か八かの大勝負だった無印に比べ、既にある程度以上コンテンツとしての見通しが立っているからか、サンシャインは非常にタクティカルな構成をシリーズ通してやっているなぁと、常々感じますね。
というか、戦略的に物語の構成を考えないと、μ'sの物語をなぞりつつAqoursの独自性を徐々に出していくという高難度の仕上げ方なんて、成立するはずもないか。

コントロールの巧さという意味では、今回は『暴力』という要素がサンシャインでは初めて顔を出します。
『感情が高まりすぎての親友へのビンタ』という意味では、無印第12話の海未ちゃんと同じなのですが、おもいっきり下げて引いた無印とは異なり、今回は前向きに話が収まるための暴力です。
こらえてにこらえ、タメにタメた感情の激発が果南に刺さった結果、鞠莉はずーっと願っていた『ハグ』を取り戻し、前回涙とともに切望した『あの頃』をより良い形で取り戻せた。
ビンタの影響が話数をまたがない構成、コメディめいた流れでよしこツイストを繰り返し『暴力』へのハードルを下げる巧みさと合わせて、毒のある素材を見事に使いきった印象を受けました。

というか、清涼剤としての一年組の使い方が巧すぎる可愛すぎる。
主役として話を引っ張る千歌と、彼女を支える二年が時々シリアスをやんなきゃいけないのに対し、気楽な立場で仲良く楽しくバカをやれる一年生は、沈んでいた空気をうまくコントロール出来る優秀なスパイスです。
何かと堕天語録をパナすヨハネ、思いの外図太いところが出てきたルビィちゃん、食ってばっかりなずら丸と、それぞれテイストの違うキャラを活かし、シーンの空気をうまく抜いてくれています。
ヨハネ語録が走り過ぎてシリアスが壊れそうになったら、花丸が上から抑えこみにかかるからな……コントロールは完璧だ。


そういう巧さだけではなく、お話を爆発的に加速させるために必要な勘定の温度も、今回は激アツでした。(まぁテクニックってのは情熱を的確に伝えるためにあって、情熱はテクニック以外では表現できないわけだけど)
抑えこんだタガが千歌の介入(とダイヤの誘導)ではじけ飛んだ結果、重たすぎる女の情念が雨を呼び、ビンタと涙となって唸り、時間が巻き戻る奇跡が起きて、全ての人が幸せになる。
鞠莉が雨の中を疾走するシーンを筆頭に、感情を載せる作画力、演出力も冴え渡っており、ほとばしる情熱に心地良く押し流される回でした。

鞠莉が真実を告げられ、涙の代わりに雨が降り出し、一切の配慮と演技を投げ捨てて疾走し、果南に思いを込めた一撃を入れて和解するまでは、特に熱量のある勝負のシーンでした。
このシーンを感情だけで走り切るために、テクニカルな構成や演出を巧みに組み合わせ、見せたいシーンを見せたい意味合いで見せれるように、しっかり仕上げているのがとにかく凄い。
前のめりにこのアニメを見ていれば絶対に刺さる『思い出のハグ』シーンを巧みに使い、果南と鞠莉が何を取り戻し、ここからどこに行くのかを見せるところなんて、控えめに言って最高でしたね。
あれで果南が素直になったというだけではなくて、過去に囚われすぎていた鞠莉がより良い形で過去を受け止め、未来に繋がる取り戻し方をしたってのが、凄く良いの。

Aqoursの物語の外側で展開される三年の物語は、全体的にシリアスで重たく、介入を寄せ付けない頑なさがありました。
しかし千歌が感情を爆発させ、上級生に不躾ともとれる態度(穂乃果が「上級生だよ」とたしなめる側だったのとは、面白い対比だ)で踏み込んだ後は、三人ともちょっとコミカルで人間味のある表情を見せるようになる。
Aqours部室という『身内の領域』で展開されるのは、これまでの暗くて湿ったやり取りとは違った、赤面したり、下級生を盾に使ったり、都合よく目をそらしたりといった、肩の力の抜けたやり取りでした。

事前に社前での重ッたいやり取りを見せておいたのもあって、部室での抜いたやり取りはただ気楽で楽しいだけではなく、エピソード内部での緩急をうまく作っていたと思います。
鞠莉が「ほんっとこいつムカつくよね!」と飾らない言葉を言った瞬間、『あ、なんか大丈夫だ』っていう気分になるのは、来るべき決着を予感させる演出で凄く良かったし、上手かったです。
ヨハネストレッチで「ピギャァ!」て吠えるダイヤさんもそうなんだけど、『こいつら気取った重力源ってだけじゃなくて、結構気のいい仲間になれる奴らだから。安心していいから』ってサインを出すの、上手いしありがたかったですね。

思い返すとダイヤさんは登場時から、無印の希に似た『お話がスムースに流れるための調整役』をやってくれていました。
スクールアイドルをやるために必要な覚悟を問い、道に迷った時はそれとなく導き、後輩の可能性を信じて未来を託す。
果南の理解者という立場が今回見えたことで、過去ダイヤさんがやってくれた面倒見の善さにもしっかり説明がつき、スムーズに合流(というか『合流しなきゃ嘘だろ!』と視聴者に思わ)させていたのは、凄まじくスマートなキャラの使い方だと思います。

ダイヤさんがお人好しで賢い人だってのはだいたい3話位で分かってくるわけですが、ただ他人のためではなく、自分の大事な人達のために、自分自身のためにAqoursを利用しているという、エゴイスティックな側面もそこにはあった。
真実が明らかになることで判明するこの事実は、ダイヤさんの評価を下げるわけではなく、むしろこれまでの行動に私欲の色がつくことでより納得がいく、見事な収め方だったと思います。
私欲が一切ない天使より、全てが丸く収まるよう祈りを込めて操作してた策士のほうが、人間の匂いがして好きになれるもんな。

ダイヤさんの行動は自分のためであり、親友のためであり、後輩のためでもある凄く複雑な、人間的な行動であり、恩を受けた後輩たちはこれに報いなければ嘘になる。
そこを千歌がきっちり拾って、スピードワゴンばりにクールに去ろうとしたダイヤを引き止め、Aqoursに引き入れる流れはほんとうに素晴らしかったですね。
ここでも『主人公が、やって欲しいことをちゃんとやる』という強さが発揮されていて、サンシャインマジつえーなってなるね。


そして全ての集大成として描かれる"未熟DREAMER"の完成度。
単純にステージとしてみても、プロジェクション・マッピングと花火を効かせ、九人体制ゆえの贅沢なフォーメーションチェンジが堪能できる魅力的な仕上がりでした。
夏祭りであれだけの予算降りるとは、沼津の自治体は金持っとんのー……。

それはさておき、それまでの20分で積み重ねられてきた『三年生のドラマ』をステージ内部にも取り込み、『己を表現し、観客を引き付けるステージアクター』としての魅力を高めていたのも凄く良かったです。
すれ違いと誤解を繰り返し、今正に未来に一歩を踏み出す三年生の物語が歌詞で、カメラワークで、ステップ含めた踊りで見事に表現されて、単純な歌舞音曲以上のドラマを生んでいました。
歩きだせなかった、ともすれば捨て去られさえした『三年前のステージ衣装』を着込んだところから始まり、九人のAqoursとしての衣装に着替えてサビに入っていく演出とかもうね、マジね、マジ。(語彙力低下の傾向)

加えて言うと、三年の物語のクライマックスとしてだけではなく、TOKYO編で『完敗からのスタート』を切った新生Aqoursがどういう一手を繰り出すか、その説得力に満ちていたのも良かったです。
あまりに三年の愛憎のドラマがハードコアすぎて忘れてしまいがちですが、二年一年の六人だってTOKYOでこてんぱんにノサれ、リーダーとしての風格を手に入れ始めた千歌を盛り立て、支えあい、同じ方向に歩き出そうと決めたわけです。
いわば一度死んで蘇ったあとの奇跡としてどういう手を打ってくるかは、これから来るであろうAqoursの反撃に説得力を与える上でも、非常に重要。

そこで『過去から未来へと、勇気を持って踏み出す』この曲が来て、九人でしか出来ないステージが原液で叩きつけられて、"夢で夜空を照らしたい"の素朴さから華と情報量を増した新衣装が舞い踊る"未熟DREAMER"が来る。
ここに至るまでの三年生と二年生と一年生のドラマ、ステージ単品での圧倒的なゴージャスさ、両方が見事に入り混じって、Aqoursの新たな一歩を的確に表現していました。
過去をまとめ上げ、現在のAqoursを表現し、未来への希望をかき立てる、正に渾身のステージだったと思います。


そんなわけで、ようやくAqoursも九人や! な回でした。
巧妙な構成、綿密に考えられた演出、焼き付くようなキャラクターの感情、渦を巻いて引き込まれるパワフルなドラマ。
すべての要素がお互いを盛り立て、圧倒的なクライマックス・ステージに繋げる、素晴らしいエピソードだったと思います。

愛ゆえにすれ違い、激情故に憎んだくっそ重たい金髪と黒髪と黒髪のお話も、これで一応のピークを迎えました。
来週は"ワンダーゾーン"や"先輩禁止!"とも重なる、気の抜けたバカ話のようですが、どうせサンシャインのことなので今後のハードコアな展開に向け、地雷を埋め込んでくると思います。
そういう部分を楽しみにしつつも、重荷を下ろして自由になった三年生が、どれだけアホで可愛い姿を見せてくれるかも、むっちゃ期待パンパンな感じだ。
これだけの感情の高まりを描いてなお、話数的には余裕があるサンシャイン一期。(って言っていいだろ。高まった期待に完全に答えて、μ'sから受け継いだ熱を殺さずAqoursだけの魅力を描いて、現象としてのラブライブを維持しておいて『二期がない』はまずない)
ここからどういうひねり方をして高く高く飛び立ち、そして着地するのかも含めて、マジ胸高まってるから俺、マジ。