イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイカツスターズ!:第21話『勝ちたいキモチ』感想

ゆめロラ(劇場版)が終わるとゆめロラ(放送版)が流れてくるアニメ、今週は仲間だって時にはライバルなお話。
CDデビューを目指してのトンチキ特訓、芸能界の薄暗い事情、ローラへのライバル意識と『あの力』。
色んなテーマを扱いつつも、ひめ先輩&ゆりちゃん先輩&小春のメンター三人衆に出番を作ったり、いまいちパッとしないアンナ先生が目立ってたり、横幅も広いお話でした。

時間軸的にも『あの』劇場版に追いついたからか、今回のゆめとローラの関係性は濃厚でした。
スターズは『ローラ>ゆめ』という描写は徹底していて、点数による上下が付く場合どんなジャンルであろうとゆめが負け続けてきました。
この才能の差を巧く描写してきたからこそ、その背中が見えてきたゆめの焦りも、どうにかして親友に並び立ちたいという強い気持ちも、説得力が出るわけです。

そこら辺のアツい衝動をトンチキなトレーニングで表すのは、まぁアイカツの続編なので致し方無いというか、なんというか。
フィクションの中で芸事の実力差を見せるのって結構難しくて、背負ったドラマの重さとか、良くわかんないパワーとか、ステージの外側にある要素を持ち込んで差をつけるしかない部bンがどうしても出てくるんですよね。
アイカツの場合はぶっ飛んだスポ根テイストで体をイジメ抜いて、『こんだけ汗を流したんだから、困難を乗り越えても別にいいだろう!』というロジックを笑いにくるんで飲み込ませる感じかな。

前半に歌組全員参加の特訓シーンを入れることで、モブの出番が多かったのも今回の特徴。
お話の焦点はあくまでゆめとローラにあるので、『モブがどんどん脱落する過酷な訓練を、ゆめロラは乗り越えた(だから、ラストの一騎打ちに残る)』という使われ方ではあったけど、せっかく個性豊かなキャラが居るわけで、カメラを向けてくれるのは嬉しい。
やっぱ組制度はスターズ独特の魅力になっているので、組独特の生活描写をもっと盛り込んでくれると、俺が嬉しいかなぁ。


アンナ先生もいい具合に目立ってはいたけども、精神的助言はあんまり与えず、体を鍛えるカリキュラムを仕上げる方向の活躍でした。
メンター役が多すぎて、一番大事な『心』にトスを上げる仕事が教師に回ってこないのは、スターズの悲劇だなぁ。
その分生徒が的確にトスを上げて点数稼いではいるんだけどね……わりかし大人が無能だったり悪者だったりするのは、スターズの色だなやっぱ。
そういう意味では、露骨に嫌なやつっぽかったレコード会社の人が実は目利きで、既定路線を外してまで才能を発掘しに行ったのは、面白い裏切りでした。

今回はオーディションの要点をゆりちゃん先輩から、『あの力』への警告をひめ先輩から、『あの力』への後押しを小春から、それぞれ貰っていました。
各々要所を抑えた良いアドバイスで、コンパクトに株価を上げていたと思いますが、特に『実力ではローラが上』と、包み隠さず言ってしまえる、小春の率直な誠実さは良かった。
事情を知っているひめ先輩と、無垢で素直な小春、両方ゆめを思ってアドバイスしているんだけど、その内容は全く逆ってのも面白かったな。

そんなひめ先輩に『いいか、絶対に『あの力』は使うなよ、良いな絶対だぞ!!』と釘を差されていたのに、虹色オーラを発生させてしまうゆめちゃん。
ローラに対するライバル意識と焦燥感が丁寧に描かれていただけに、露骨にやばいパワーに手を染めてしまう動きにも納得は行くわけですが……後が怖いよね。
ひめ先輩の過去やら諸星学園長の思わせぶりな言動なんかで、『あの力』のヤバさは巧く目立たせられていると思うので、次回その反動が表に出て来んのかなぁ。
『凡人主人公がトップと闘うために、反動のある力でなんとか食らいつく』ッていう構図自体は、完全に"僕のヒーローアカデミア"とか"ベルセルク"とかの文法よな……ここ周辺だけ完全にバトル漫画。

後出しチートでライバルに上を行かれたローラですが、才能の塊のはずなのに『持ってない』描写が多いですね。
主人公を話しの真ん中に置く関係上、どうしてもライバルとして黒星がかさむ立場だと思うわけですが、同時に彼女はゆめの親友として恥ずかしくない人格者でもあって。
勝ち負け関係ない所でニンの良さを見せるだけではなく、ハッキリとした白星で報いる展開があっても良いかなぁと、第16話以降ずっと思っています。
勝ち負けの明暗がくっきりしている事自体は、芸事の厳しさを演出する上で凄く良いとは思うけども……ここら辺は歌組の中で競う事が多いポジションについてしまった、一種の宿命とも言えるかなぁ。

ゆめのライバル心を際立たせたように、親友が勝っても素直には喜べないローラの陰から逃げなかったのは、とても良かったと思います。
勝負事で決まる優劣の中にそういう苦味があるのは、非常にいい意味で『普通』だし、これが描けるのはスターズの強みだと思う。
願わくばその『普通さ』の先にあるものを描く意味でも、ローラが『勝つ』話がそろそろ欲しいところなのです。
とは言うけど、『勝ち』を拾うための代償は来週しっかり描きそうだしねぇ……ロラゆめ周りは独自性と魅力を込めて、面白く取り回せていると思う。


そんな感じで、好きだからこそ負けたくない、乙女のプライドにまつわるお話でした。
島ではぶつかり合って確かめ合って、『最強のふたり』になれた"Popcorn Dreaming"が、今回はお互いの優劣を決める闘いの場になるっていう使い方も、パンチが効いてて良かったです。
現実の苦味や陰りを積極的に取り込んでいるからこそ、スターズのライバル関係は陰影が濃いというか、よりシビアーでリアルな描写として輝いてる気がするね。

悪魔と契約した力でCDデビューをもぎ取ったゆめですが、その代償は色んな人が指摘する所。
背伸びして手に入れたアドバンテージが一体どんな困難を持ってきて、ゆめはどう立ち向かうのか。
『あの力』周りの設定が公開されないまどろっこしさも先に進むかもと期待すれば、来週が待ち遠しくなりますね。
いや実際、諸星学園長意味深な行動多すぎだから……確かに気にはなるけど、引っ張り過ぎだからマジ……。