イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

美男高校地球防衛部LOVE! LOVE!:第9話『愛の化学物質』

ついに敵幹部が正体を表し、緊迫のクライマックスが近づくヒーロパロディ、今週は箱根有基のヰタ・セクスアリス
まさかの一ヶ月半スルーでバレンタインがやってきて、効用よく解ってないまま別府兄弟がぶん投げた媚薬に有基があたって、性欲の発露方法がわからないままムラムラモフモフする話でした。
お話自体はビックリするほどなんにも起きてないけど、ボーイズの可愛い赤面いっぱい見れたから良いや……って感じかな。
なおチョコレートと唐辛子の組み合わせは、ヨーロッパ渡来以前のアステカではオーソドックスな使われ方で、実際滋養強壮と回春効果があります……こういう所をきっちり調べて拾ってくる姿勢、俺好きよ。

いろいろクッションかかっていますが、今回のお話が性欲にまつわるお話なのは間違いがなく。
お互い固定されたパートナーがいる煙ちゃんと熱史先輩、鳴子くんと蔵王くんが有基の欲望を受け止めきれないのは、致し方無いかなという気がします。
というか、ゆるーい高校生は何事も斜に受け流して生きているわけで、それは有基の発情も別府兄弟の悪意もおんなじ。
真正面から受け止めなければ問題は深刻化せず、掴みどころのない展開はひたすらゆるゆると流れていく形になります。
それはそれで作品のテイストだし、今回はポップで楽しく、ちょっとエロティックなムードが巧く出せていたと思う。

1+2+2という残酷な分割の結果どうやっても一人余る有基を、素裸で受け止めてくれるのは、やっぱり強羅あんちゃんでした。
他の連中が服を着たままモフモフされる中、あんちゃんだけがノータイムで全裸になったのは、メタファーとしてもあんちゃんのキャラ表現としても非常に分かりやすい。
精神的発育段階が小学生と高校生で分かれているので、有基と残りの防衛部ってなかなか交わらないんだよね……意識してそういう『ズレ』を作ってネタとして活用している部分もあるけど。
そういう意味では、自分たちがしでかしたことの意味をさっぱり分かっていない別府兄弟とは、幼さで響き合える気もする……両方強羅キチだし。
別府兄弟との間に開いている距離を、有基だけが縮めて抱きしめるっていう構図は、わかりやすくこのお話を圧縮していたと思います。


今回の話しがエロティックな空気をまといつつ爽やかなのは、性欲が持つギトっとした味わいを有基の幼さが巧く中和して、そこにある『愛』だけが純粋に抽出されていたからだと思います。
有基はずーっと自分の中の『好き』を歪めず隠さず恥ずかしがらず、真っ直ぐに伝えてきたわけで、カカオの媚薬で性が目覚めた今回も、その美質は失われない。
結果、『都合のいい媚薬で性欲が暴走する』という同人誌みたいなネタを扱いつつ、展開には適切にクッションがかかって、健全に笑える範疇に収まっていました。
やろうと思えばもっとドギツく具体的に展開できる話なんだけど、あくまでコメディの枠をはみ出さず、ファンタジーを交えつつ柔らかに表現したのは、僕は上品で好きです。

なんでこのタイミングで有基の性欲を描いたのかなぁと少し考えたのですが、もちろんサービス満載の絵面をドカドカ投入できるのが一つ。
もう一つは、防衛部らしい世界を維持したまま、発育の必然的な段階を有基に経験させたかったのかな、という部分です。
小学生が成長し思春期に入れば、性欲ってもんがニョッキリ顔を出して女の子なり男の子なりそれ以外なり、自分の性傾向に従った半身を求めるようになります。
例えば少ハリ第22話のように真正面から『少年の恋の目覚め』を描いても良いんだけど、防衛部はそういうアプローチは取らず、敵幹部の本気すら一ヶ月半スルーできるゆるさを選んでいる。
その上で、『有基もずっと永遠の無垢ってわけじゃなくて、一応性欲あるからね。天使じゃなくて人間だからね』というメッセジーを出すべく、今回みたいな話になったんかなぁという気がした。


と言うわけで、結構深刻な状況が近づいているのにゆるふわに進む、防衛部らしいお話でした。
アニメのパッケージとしてみると、バンクを多用してキャラの表情にカロリーを注いだ作りで、ベテラン高松監督のリソース捌きが冴えてたな。
コストを抑えつつ、メイン視聴者層が絶対喜ぶ美味しいネタをガッツリ仕込む割り切りは、俺結構好き。

ラスト三十秒で防衛部が別府兄弟と向かい合う気にようやくなってくれたので、お話も急展開しそうです。
まぁあの兄弟どう考えてもチョロいからな……真正面から向かい合って寂しさを埋めてやれば、対立構造は一発で瓦解するでしょ多分。
逆に言えば触れなば落ちん果実を長持ちさせるために、別府兄弟との接触はコントロールされてきたってことなのだな。
兄弟が克服すべき問題点もわかりやすく描写されてきたと思うので、防衛部がそこに手を届かせることが出来るか、今後を見守りたいところですね。