イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

美男高校地球防衛部LOVE! LOVE!:第10話『愛と喝采の日々』感想

失われゆくイノセンスと永遠のヒロイズムを巡る断章、今週はクライマックス突入!……ってことはなくて、メタネタと別離と。
本性を表しても相変わらず四ツ相撲を組んでくれない防衛部相手に、別府兄弟とお話の都合がすごい勢いで空回りし、怪人は『無駄尺』呼ばわりとともにあっという間に浄化され、別府兄弟の過去は不思議パワーで一気に共有される。
あまりにもザックリと展開するメインストーリーに防衛部らしさを感じつつ、有基と別府兄弟という二組の『子供』を対比させることで、彼らが置かれた環境の違いが見えてくるお話でした。

と言うわけで、残り話数も少ないため、メタネタ・ぶっちゃけ・記憶共有、使える手段は全部使って強引に進める回でした。
しかし『別府兄弟と有基の間にある、共通点と差異点』と言う軸はしっかりしていて、というかその軸を描くために様々な搦手を使って話を進めた感じもあります。
ココら辺の緩いようでいて妙にしっかりした、そしてあえてお話の都合にキャラを合わせない展開は、非常に防衛部らしいなぁと思ったり。

これまでも描かれたように、遊園地の廃園に心を痛め、強羅あんちゃんへの思いを強く持つ有基と別府兄弟は、似通った『子供』として描かれています。
同じように眉難ランドという『ガキっぽい場所』に過剰な思い入れを持つ彼らは、シニカルで大人っぽい周囲の人々からは浮いてしまって孤立する。
しかし有基を取り囲む防衛部は、いつものように『ついて行けねぇなぁ』という冷めた態度を示しつつも、有基が心から悲しんでいる事実にはちゃんと気づいて、自分たちから歩み寄る。
ボッコボコに下げられたまま理解もされず、自分から取り巻きを怪人に変えてしまう別府兄弟とは、周囲の理解度と歩み寄りが根本的に異なるわけですね。

別府兄弟が強羅あんちゃん(もしくはマキシマムゴウラー)に拘る理由も、孤独に二人でTVを見るしかない状況で、真っ直ぐ自分に向かい合い、頭をなで、手作りのおにぎりを出してくれたのが、あんちゃんだけだったからです。
アンドロメダ人とのハーフとして孤独な幼少期を送り、ヒーローショーを見ても『中に人入ってるんでしょ?』と覚めた答えを返してしまう『悪い子供』だった別府兄弟にとって、強羅あんちゃんは初めて出会った『真正面から自分に向かい合ってくれる大人』であり、『本物のヒーロー』だった。
そこら辺がどう捻れて極まった同担拒否勢になっちゃったかは分かりませんが、根本的に彼らは寂しい子供で、必要なのは暖かさと素直さ(つまり『お互い素裸になって、一緒に風呂に入ること』)なのでしょう。


しかし今回防衛部は、別府兄弟の寂しさを自分のモノとしては受け止めず、メタな発言と大人の態度で拒絶をします。
敵幹部の宣戦布告を司法の介入チラつかせて拒否するヒーローモノは初めて見ましたが、これまで描かれたように防衛部は根本的にシニカルな『大人』であり、大真面目に子供の夢を守ったり、人間の暖かさを伝えたりという『ヒーロー』にあまりモチベーションがありません。
露骨に捻じくれまくった寂しい子供が目の前にいても、自分の世界を崩さずにクールに対応するのは、これまでの描写をあまりはみ出さない、防衛部らしい仕草だといえます。
ここでいい意味での『大人』になって、『別府兄弟にも事情がありそうだから、こっちから歩み寄るか』ってなっても問題はないけれども、防衛部の連中はそこまで成熟していないと判断して、一旦蹴る方向に進んだのかね。

有基は『ヒーロー』を真正面から信じる純朴な少年であり、彼の真っ直ぐさがお話を引っ張っても来たわけですが、これも別府兄弟を救い上げるには至らない。
別府兄弟は『強羅あんちゃんがいなかった有基』であり、一種の自衛反応として孤独と悪意を強めていった結果、有基が無邪気に差し出してくる善意の理論を、素直には受け入れられないからです。
スレちまった『大人』(のなりかけ)だけではなく、無垢な『子供』だからこそ、別府兄弟の『ひねくれた子供』の部分と衝突するという運び方は、なかなか面白いですね。

有基はあんちゃんのたくましい腕で守られたから、そのイノセンスを汚すことなく、『みんな仲良く、憎い相手を排除しなくても生きていける世界』を信じ続けています。
しかしそれは、『幼いままでいいんだ』『俺が守ってやる』と常に言い続け、実際に守ってもらえる『恵まれた子供』にだけ許された楽園であって、そこからはじき出されあんちゃんのいない世界で生き残らなければならなかった別府兄弟には、到底信じ得ない理想です。
有基を排除し、防衛部と敵対さえすれば、強羅あんちゃんの弟になれる。
強羅兄弟はそう信じることでしか、自分たちを守れなかったと言えるし、そういう立場からすれば確かに、有基の無邪気な歩み寄りは挑発以外の何物でもないでしょう。

ココら辺の結構めんどくさい心のアレコレを、メタネタ交えつつ全部セリフで説明しちゃう所がマジすげぇッて感じですが、まぁこれが防衛部ってことでしょうか。
しかしココら辺の対比や、どうすればこれが解決するのかという見取り図はエピソードゲストを巧く使って暗示してきた部分でもあるので、あんまりダイナシな感じは受けず、むしろ『らしい』ネタとして自分は楽しめました。
俯瞰したネタをやりつつ物語への没入感を殺し過ぎないためには、色々考えて構成しなきゃいけないんだろうなぁ。


有基の過剰な幼さも、防衛部のシニカルな態度も別府兄弟を拾い得ない以上、彼らの精神的暴走を受け止めてあげられるのは、強羅あんちゃんの『大人で子供』な態度になります。
あんちゃんは子供の夢を守る『ヒーロー』として、幼くて拙い世界観を頭ごなしに否定したり、痛みを感じている子供に冷たく距離をとったりは、けしてしません。
たった一人の兄弟である有基は当然として、見知らぬガキにも本気で向かい合い、傷を受けても真正面から守り、受け止める。
自分が持っていない『子供』の幼さを尊重し、分からないなりに歩み寄る(もしくは自分の中の『子供』を大事に守って、架け橋として使いこなす)『大人』の態度があればこそ、あんちゃんは一度別府兄弟を救い得たわけです。

しかしそのあんちゃんは薪を額に受けて昏倒し、なんかヤンデレなオーラがムンムン漂う硝子の棺で眠る姫君役を頑張っています。
つまり別府兄弟の問題を解決するためにはあんちゃんには頼れず、いまいち『子供』すぎる有基と悪い意味でも『大人』な残りの部員が、少し成長して頑張るしかないわけです。
あんちゃんの人間力で別府兄弟を抱きしめ、『寂しかったな……辛かったな……これからは俺が、お前らを受け止めてやるからな!!』ってやればあのチョロ蔵ども一発解決しそうですし、ここであんちゃん退場させるのは大事よな。

有基がただ自分の世界に浸りきった『子供』ではなく、周囲とのギャップを巧く埋めながら行動できる人間だってことも、シニカルな高校生たちが結構『子供』な部分があって、身内と認めたら他人にだって歩み寄れる優しさを持っているとはこれまでも描写されてきたので、そういう強さを別府兄弟にも向けて欲しいもんですね。
兄弟に冷たい……というか、正面から向かい合う熱がこもらない態度をとっているのも、防衛部の面々が兄弟を他人と感じているからだろうしなぁ……まぁこれまでの展開を考えると、身内に引き入れていく足場は一切ないから、当然ちゃあ当然だけどな。
逆に言うと、これからの話数で防衛部の面々が普段の自分たちを崩して、ちょっと無理して別府兄弟のことを受け入れてあげる足場をどう作るかが、お話がしっかり収まるためには必要な気がします。

ゆるーっとだらーっと、キャラのシニカルな部分を重視して話数を使いつつお話を収めるために、別府兄弟は比較的シンプルな問題設定にしてるんでしょうしね。
いやアイツらマジ、ただの拗ねてる子供だから……溢れんばかりの愛を叩きつけてガッツリ抱きしめれば一発で本心見せてくれるから多分……ゼノグラシアにおける菊地真みたいなもんだから……(分かりにくい上に、受け止め方大間違えして大惨事だった例え)。
今回一度離れていった心がどう寄り添い、どう孤独な霊を救う『ヒーロー』になりえるのか。
まぁ教科書通りやらなくてもいいし、『頼むからやってよ!』って言った所でやりゃしないんだから、これまでどおり破天荒でゆるゆるで、しかし底には真摯さのある見せ方で展開してくれると良いなと思います。
さーて終盤戦、どう取り回してくるかね。