イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

B-PROJECT 鼓動*アンビシャス:第10話『BIRTHDAY』感想

可愛い顔したボーイズたちが時にはもろ肌晒して野望の階段を登っていくアニメ、今週は見えた頂きと隠された足元。
お仕事アニメらしくこれまでの努力が実を結んだ様子をおさらいして始まり、ドームライブというピークを明確に示し、これまで掘り下げなかった夜叉丸先輩に踏み込む……と思わせておいて、事前準備とアクシデント対応でBプロのライブ適性を見せ、夜叉丸ミステリーは次回に持ち越し。
結構いろんな事をやりつつも、Bプロメンバーの明るく楽しい姿、シリアスで真剣な仕事の顔両方を見せる、欲張りな回でした。

アバンでつばさちゃんのオフを追いかけつつ、これまでの仕事の成果をガッツリ確かめるシーンが入るのは、基本ながらも手応えのある描写。
やっぱお仕事モノでもあるんだから、これまでのエピソードでの苦労が報われ、『世界がBプロに染まる』くらい認められるシーンが必要だし、視聴者としても欲しいものよね。
アバンでBプロの現状をしっかり見せたおかげで、『ドームLIVE』っていう最終到達点に挑む資格にも納得できるし、ついでにあんま描写できなかった仕事外のつばさちゃんも描写できて、コンパクトで手際の良い描写でした。

その後は夜叉丸先輩の周辺をなぞりつつ、パーティーに向けてふわふわ楽しく準備を積み重ねるターン。
Bプロの乙女チックな空気は僕結構好きで、一般的に『女の仕事』とされる裁縫・料理・飾り付けあたりを積極的にぶっこんで、汗臭くないパーティー準備を積み重ねるのは、なかなか独特だと思います。
『女』の記号を積極的に背負うことで、メイン消費者層の心にすっと忍び込み共感を盗んでくる狡猾なキャラメイクが見え隠れしますが、とにかくふわふわキャイキャイじゃれあう姿は、見てて単純に楽しくもあった。
今回見せたような、クリームみたいに甘くて滑らかで、舌触りの良いコミュニケーションってのは、Bプロアニメの土台となる楽しさな気もするね……その合間合間に、結構な闇を仕込んでくるんだけどね。

サプライズパーティーの性質上、主役のはずの夜叉丸先輩は辺境に追いやられ、メンバーによる述懐を元にした輪郭だけが、つばさちゃんの周りに積み上がっていきます。
『アイドルじゃねーんだし、こうやって外堀から埋めていく描写もありかな』と思っていたんですが、話全体を通してみると夜叉丸の内面に切り込んでいくのは次回以降にサスペンドされているため、むしろ真ん中に据えないことそれ自体が狙いだったんだな。
『不在によって存在を描く』というのは結構テクニカルな話の作り方で、それが裏方である夜叉丸のキャラクター性にも合っていて、なかなかおもしろい書き方だったと思います。
あくまで間接的にしか間合いを詰められないもどかしさを描くことで、つばさと夜叉丸(ひいては彼が世話してきた過去のBプロ)との距離も強調されて、ふわっとした温かい準備描写が巧く締まったんじゃなかろうか。


そんな不穏な描写を背負って、空を飛んで全てを台無しにする王茶利。
『飛wwwwwびwwwwすwwwwwぎwwwww』とか『まーた王茶利がウッカリで全部ぶち壊しにして、話が転がるスペース作る役か。天然森久保声は、いつも展開のワリ食わされて大変だな』とか、色々思うところのある場面転換でした。
半端にふっ飛ばしても王茶利の失敗が生々しくなるだけでリカバリー効かないので、もうネタとしか思えないふっ飛ばし方して笑いでショックをごまかしたのは、賢いチョイスだと思った。

王茶利一人を悪者にしないためにも、巧く『災い転じて福となす』描写を作らなきゃいけない所なんですが、パーティーの準備がライブの予行演習になっている作りは非常に上手かったです。
『ドームLIVE』という大きな山場が明確化されているので、アクシデントと時間制限が満載で、歌や踊り、衣装作成やタイムコントロールといった、ライブに必要な能力を確認でする見せ場にすり替えたのは、とても良かったです。
ここで能力や精神性を確認しておくことで、本番で成功した時もストンと納得できるだろうしね。

つばさちゃんの音楽Pとしての資質も超久々に描写されて、LIVEで活躍する伏線も張れたしね……ここで軽く目立たせておかないと、メンバー同士がキャイキャイするのを遠くで見守るだけの、乙女が見たい映像を切り取るただのカメラになりかねんからな。
それはそれで、主人公の仕事ではあるんだろうけども、やっぱある程度以上の能力と当事者性を持って、メンバーと一緒に困難を乗り越えていったほうが、やっぱ楽しいと思うし。
目立たないこと含めて必要な感情を視聴者に惹起しつつ、様々な欲望をいろんな形で叶えなきゃいけないんだから、乙女ジャンルにかぎらず主人公というのは大変だ。
アイドルを殺さない程度に身を縮めつつ、自分の領域で手応えを積み重ねてるつばさちゃんは、相当に良い主人公だと思います。

そいで、『でもまぁ、ここで実質的にリハできておいてよかったよ、いい経験だった』と言える落とし方しておかないと、王茶利が窓から捨てられる流れにしかならねぇからな……そういう意味では、メンバーと視聴者を代表して『ふざけんなよテメー』と言ってくれた金城さんも、いい仕事した。
Bプロアニメは金城さんは文句言う役、阿修くんは調整役、王茶利は調子乗ってミスする役、北門さんはリーダーで牽引車……みたいな初期の印象が、あんまり変わらないまま進みます。
それは各キャラの物語的な仕事がはっきりしていて、かつビジュアルと立ち位置で視聴者に伝えられているということなので、トンチキぶっ込みつつ安定感があるのは、ここらへんがミソなのかなと思ったり。
同時にひねった使い方も所々でしていて、釈村くんとか野目くんとかは外見のイメージと内面がぜんぜん違うキャラだったし、阿修くんとかは時々潤滑油の仕事からはみ出して怒ったりもする。
この『意外なヤツの意外な側面』というのは、しっかりテンプレートを組み上げてそれが機能する楽しさと同じくらい大きな、物語の根本的な面白さだと思います。
ドームLIVEに向けて進んでいく終盤戦の中で、そういう意外性が前面に出てくると、より楽しいだろうなぁと期待してます。


そんなわけで、夜叉丸誕生記念パーティーの準備をしつつ、気付けば夜叉丸不在のままBプロの結束と現在を確かめるという、なかなか複雑な構成のエピソードでした……"ゴドーを待ちながら"みたいだな。
前半のふわっとした準備の楽しさでメンバーの明るい心根を、後半のリカバリーでプロとしての資質をそれぞれ確認して、Bプロの原点がどこにあり、今どのくらいの力を持っているか描写する作りは、『ドームLIVE』という終着点が明確になった回として、必要かつ有効な手筋でした。
そして本当の夜叉丸朔太郎がどんな人物であり、なぜ今回表舞台に立たなかったのかという謎は、回をまたいで今後を引っ張る、良いミステリになりました。

残り話数も少なくなってきましたが、しっかり盛り上がりの土台を作り、話を牽引する強烈なヒキも埋め込んで、最後まで走り切る準備はOK。
派手でトンチキなネタの力と、結構王道的で堅牢な構成が同居するこのアニメが、最後のホームストレートをどう疾走するのか。
Bプロアニメ終盤戦、まさに盛り上がってきましたよ。