イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイカツスターズ!:第23話『ツンドラの歌姫、降臨!』感想

ハッピーとスマイルは無敵の証、青春ど真ん中アイドル成り上がりガールズストーリー、今週は新キャラ投下回。
一年四人組(あこ除く)が七不思議探しにキャイキャイ騒がしい中、ゆず先輩マンマーク体制で投入された銀髪ポエムアイドル、白銀リリィのステージデビューもこなす回でした。
他愛のない七不思議に夢中になる一年生の無邪気さも可愛かったし、リリィの不思議で魅力的なキャラを追いかけることで、ポエム語通訳であるゆずの魅力も見えてくる見せ方も面白かった。
何より"Dreaming bird"の説得力が凄くて、白銀リリィ、なかなか面白いデビューになったと思います。

今週のお話はかなり特殊な構造で、一年組のお話とゆずリリのお話が並列して進行しつつ、一切接点を持たないまま走りきってしまうという、パラレルな作りになっていました。
7つ目の不思議でリリィへの導線は引きつつ、物理的に距離を開けることで主役がリリィと直接話すシーンを作らないのは、かなりひねった構造でした。
2つの話が並走する作りが独特の疾走感を生んでいたし、リリィと対話するのがゆずに限定されるので、二人の関係性とリリィのキャラは濃い目に見ることが出来ましたね。

こういう作りにしたのは、今回が初お目見えになるリリィがどういう女の子なのか、ゆずとの『幼なじみで最大の理解者』という完成された関係に乗っけて、混線少なく見せたかったからかなぁ、と思いました。
面識のないゆめ達とリリィが出会うと、挨拶して自己紹介してイベントが起きて何らかの印象を受けてそれが行動に影響を及ぼして……と、積み上げていくものが多い。
そこに時間を取るのは別のエピソードに担当してもらって、今回はとにかくリリィ単体のキャラ、そしてゆずとどういう化学反応をするのかをシンプルに見せたかったのかなぁ、と。
しかしそれだけでは主役が出張るタイミングがないので、不思議探しを賑やかに並走させつつ、次回以降合流する導線は引いておくという、なかなか抜目のない構成でした。


ゆずと二人きりの広い舞台を用意されたおかげか、リリィちゃんのキャラはかなり素直に頭に入ってきました。
体の弱い実力者で、独特の雰囲気と存在感、何よりも個性があり、ポエム語喋って赤毛のアンが好きで案外負けず嫌いで頑張り屋さん。
ゆずを通訳につけて真意を喋らせることで、わかりにくい言葉遣い(これは個性でありキャラなので崩せない)の奥に隠されたアイカツへの情熱がしっかり見えて、好感度高い出だしとなりました。
やっぱアイカツに本気な所が見えないと、どんだけフックの強いキャラしてても好きにはなれないからね。

つーかリリィ、パッと見の外見の時点で『強い』よ……緑基調の衣装に、銀髪巻き髪で文学少女だもん、勝てる初期兵装すぎるだろ……。
そのくせ芯が強くて、何かとモグモグ食べてるタフな側面もあって、非常にいい意味で『印象と違う』キャラになってますよね……『思ってたんとは違うけど、違ってる君も素敵』というか。
リリィのキャラが立つことで、今回果たされなかった主役との接触でどういう掛け合いが生まれ、どういう成長を見せるのかも楽しみになってきて、効果的な『焦らし』にもなってしまうあたりが、とにかく『強い』なと思いました。

『物理的に寒気を感じる』のはアイカツらしいやり過ぎネタだとしても、リリィには濃厚な個性とそれをステージで伝える表現力があります。
並走する不思議探しの背景にあるのが『個性探し』であり、ゆめ達のクエストの答えが実はリリィパートで解答されているお話なのですね。
ゆずが『名言きたゾ!』と愛をこめて茶化している言葉も、『歌がない限り人は愛を知りえないのです』とか『やる気をすっかりなくさない限り失敗はあり得ない』とか、ステージの本質をついた『解答』であり、『途中参加の強キャラで先輩』という難しい立ち位置にしっかり答える、良いアンサーの見せ方だったと思います。
パラレルに走る2つのお話を、ゆりちゃん先輩とライブラリ映像を巧く使ってブリッジをかけているのも、なかなか巧い。
あと俺"赤毛のアン"好きだから、キャラの根本にアンからの引用があるのが嬉しい。(超個人的理由)


リリィのキャラが猛烈に立ったので、壁役をやったゆず先輩も引っ張られる形で魅力を強めていたのは、非常に良いシナジーだと思いました。
一見ミステリアスなんだけど結構乱暴とか、幼女時代からの気安い付き合いとか、リリィの天才性をゆずが巧く翻訳する持ちつ持たれつの関係とか、お互いがお互いを支え引き立てるいいコンビでした。
普段は奔放なゆず先輩が、わざわざ見舞いに行ってチケット渡して復帰戦をお膳立てするほど惚れ込んでいるリリィ相手には調整役に回るところとか、新しい『らしさ』を感じられてすごい好き。
そしてミステリアスな印象のリリィが、長い付き合いのゆず先輩と絡むことでタフな地金が見えてくるのも、最高にグッド。
劇組幹部連があれだけ献身的に愛を注いでいるのに、自分は歌組幹部に夢中な無自覚プレイガールっぷりも妄想できて、ゆず先輩のキャラは人との関わりの中で立っている感じがあります。

バックステージでの描写も的確でしたが、今回はとにかくステージが良くて。
変拍子と転調を多用しつつまとまっている"Dreaming bird"には、”永遠の灯火”にも似た『攻めるアイカツ楽曲』の系譜を強く感じました……さすが作曲・南田健吾。
緑を基調としたオリジナリティのある衣装デザイン、曲の高速変化とシンクロしたスピーディなカメラワーク、畳み掛けるような歌詞のラッシュに込められた決意のメッセージ性。
ステージを構成する要素全てにパワフルな説得力があって、白銀リリィを猛烈に印象づける良いステージだと思いました。

今回は晴れ舞台に入る前と後で見せた、観客のレスポンスも非常に的確でした。
『ブランクを経ての復帰戦』でも、固定ファンからの声援がつくことで、リリィの濃厚な個性がアイドルとしてどう強みになっているのか、さり気なく見せる。
『ゆずという主役を見に来ている客相手の、サプライズライブ』でも、客を引かせるのではなく黙らせ、一瞬の静寂の後に湧き上がる特別なリアクション。
若干アウェー気味な状況を乗りこなさせることで、アイドルとしての白銀リリィの『強さ』をしっかり表現できていたのは、非常に良かったと思います。
ここで猛烈に『強さ』を見せることで、今後ゆめ達がリリィを追いかけるモチベーションにも、説得力が出るしね。


新キャラが己を猛烈にアピールする中、一年生組は平和な学園生活を謳歌していた。
『七不思議探し』という学園らしいイベントに一年生を巻き込んで、普段あんまりかけない『ただの学生』としての彼女たちの魅力を見せる展開は、賑やかでキュートでハッピーで、凄く良かったです。
"なんてことない毎日が かけがえないの"とは古人の言葉ですが、すっげーバカで下らない青春イベントを共有して、楽しそうに笑い合う彼女たちを見ていると、オッサンもなんかこー、じわっとありがたい気持ちになる。
ゆめのフワッとした会話を極力正面から捕まえて具体的な行動につなげようとするローラとか、硬軟取り混ぜた対応で場を和やかにしてくれる小春ちゃん人間力とか、ホント彼女らの掛け合いは見てて楽しいし、毎回拝むくらいありがたい。

ゆめロラ小春が仲良しトライアングルなのはいつもの事でありいつものように最高だとして、今回は真昼ちゃんを加えた四角形になっていました。
お姉ちゃんへのコンプレックスを良い形で昇華し終えた気楽さか、トゲトゲしてた時代からは想像もつかないバカ中学1年生女子っぷりをフルで発揮していて、控えめに言って最高でした。
相変わらず、真昼ちゃんはお姉ちゃん好きすぎて頭おかしいなぁ……誰かが好きすぎて頭おかしいキャラ、やっぱ素晴らしい。
自分の物語を終えて鎧を脱いだキャラクターが、柔らかな自分を晒しながら幸せをみんなと分かち合う姿を見るのは、やっぱ良いなぁ……。

小学七年生らしいアホさを存分に発揮しつつ、ゆめ達が走り回る背景にはちゃんとアイカツがあります。
例えどんだけバカでも、ゆめがアイドルとしての武器、人間としての個性を探す気持ちは真剣なものだし、だからこそ幹部連中もリリィの情報を教え、新しい目標をライブラリで見つける結末にも繋がるのでしょう。
スターズにおいて『気楽な学生』であることと『真剣なアイドル』であることは相反ではなく、楽しい日常がアイドルとしての輝きを育み、アイカツに真剣だからこそ学友とのせめぎ合いも楽しめるという、相補的関係にあるわけですね。
……ゆりちゃんもミキちゃんも根本的にニンが良いので、ただの馬鹿にも手を差し伸べてくれた気はするが、まぁ努力が助力を引き寄せたとここは思おう。


そんなわけで、遠い場所でアイドルとして、少女としての魅力を炸裂させるリリエンヌの物語と、学園で個性探しに勤しむゆめ達の気楽な日常が、パラレルで展開するエピソードでした。
リリィ周辺を、キャラの人数的にも物理的距離としても隔離し、ゆずとのシンプルでディープな掛け合いメインで進めたのは、彼女を深く理解できる良い見せ方でした。
その物語と主役のお話を並列して展開させつつ、最後の最後で『アイカツへの情熱』という一番根本的な部分で接点を作り、次回につなげる作りが素晴らしい。

ステージ表現、観客への影響力、アイドルとしての心構えと個性、最高のパッと見。
一話でぐいっと視聴者(ていうか俺)の心をつかんだリリィが、未だ未熟な主役たちと出会った時どういう爆発を誘導するのか。
キャラの魅力を最大限伝えたことで、未来のエピソードへの期待も膨らむという。理想的なキャラ登場回だったと思います。