イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

美男高校地球防衛部LOVE! LOVE!:第11話『愛すればこそ』感想

愛を真っ直ぐ受け止められないお年頃ボーイズによるシニカルポップな英雄譚、最終局面なラスト一個前です。
もの言わぬ強羅あんちゃんを拉致監禁して宇宙に飛び立とうとした別府兄弟ですが、防衛部の面々が止めにかかります。
普段は斜に構えてても、人名がかかると流石に本気にはなるものの、高松監督得意の上部構造ネタが全開になり、マキシマム・ゴウラー争奪戦は宇宙TVの見世物に。
アイドルとして鍛えたアピール能力を暴力に変え、別府兄弟を前に防衛部膝を屈する……と思った瞬間、高いギャラで帰還した金銀パール三人組がついに降臨。
スンゴイ勢いでヒーローフィクションの定番シチュが整っていく、パワー押しの最終決戦でした。

今回の決戦、形の上では別府兄弟VS防衛部でしたけども、これを成り立たせているのは大人の欲望ってのが、ちょっと面白かったですね。
コンプレックス拗らせて昏倒拉致監禁まで突っ走った別府兄弟としては、このまま反応のない強羅あんちゃんを前に延々妄想だけをたくましくして、病んだ日々を送り続ければ幸せ。
身内の意識と身柄を奪われた有基としては、激情のままに別府兄弟をボッコボコにしてあんちゃん取り戻して帰りたい。
ダンドリ整えて対決という形にしなくても、ナマのままの暴力を思い切り叩きつけて終わりになった可能性は、結構高かったと思います。

しかし防衛部は暴走した有基を止めるし、一発逆転を狙うズンダーはTVショウの形で暴力をルール化する。
もともと『ヒーローVS敵幹部』が横並びのヨーイドンで戦うヒーローモノのお約束に、相当シニカルな態度を取ってたアニメなんですが、事ここに及んでも色々手順を踏まないと戦えない展開は、いい具合に斜めだったなぁ。
まぁあそこで有基が別府兄弟ボッコにしてあんちゃん取り戻しても、有基の美質である純粋な心は傷んでいただろうから、防衛部が止めるのは正しいんだけどね。
これまでさんざん戦いの構造をひっくり返してきた有基が、自分から頭を下げて『戦ってください』とたのみこむ構図は、逆転の楽しさありなんとも言えないやるせなさありで、複雑なシーンだったな。

しかし相手の用意した土俵に乗っかって戦うということは、戦いのルールを相手のいいように決められてしまうということであり、マスへの訴求力をそのまま暴力に変える戦場にて、ただの高坊である防衛部は大苦戦。
ここも『俺ら別にアイドルじゃねーし』という過去の言動が、逆に刃になって自分たちに迫るシーンで、このアニメらしい皮肉が効いていた。
とりあえずハードな傷をつけることと、それっぽい『受け』の絵を作ることで『なんだか知らないが、最終盤に相応しいシリアスな戦い』のムードがどんどん高まるのは、定形の持っている力を思い知らされて興味深い。
ズンダーからすれば権力を取り戻すための汚い茶番なんだけど、防衛部と別府兄弟にとっては強羅あんちゃんがかかった真剣勝負なので、シリアス味を強くするのは大事だ。
愛情一切無しでポチポチ押される『イイね!』の暴力は、非常に屈折した形で主人公たちが示さなければならない『愛』を浮かび上がらせていて、これもいい皮肉だったと思う。


別府兄弟は意識のないあんちゃんを一生弄ぶという目標は達成しているわけで、ダダチャがわざわざ宣戦布告に行ってとっ捕まり、換金場所まで防衛部を引き入れるのは余計ごとだなぁなどと思っていたわけですが、ズンダーが出てきていろいろ納得がいった。
ダダチャとしては兄貴が出世コースに戻るための起爆剤として別府兄弟と防衛部を使いたくて、そのためにはあんちゃんをかけた茶番バトルをやってくれなければ困るので、意識して情報漏えいと行動誘導しに行ったのだな。
今回のサブタイトルは『愛ゆえに』だけども、ダダチャも(無邪気に歪んでいるとはいえ)兄貴を立てたい兄弟愛で動いている愛の人だったと分かったのは、なかなか面白かった。
まぁだからと言って、愛情不足こじらせたクソガキに暴力与えて、学生怪人にしたり他人の身内昏倒拉致監禁させたりとかが、許されるわけでもねぇがな。

別府兄弟も『愛ゆえに』いろいろ拗らせて、クソホモ妄想全開で強羅あんちゃんを拉致ってきちゃったわけだが、想定してたのより歪んでたな……もうちょっと殴らないと、これまっすぐにならないわ。
転勤とイジメに振り回されてた別府兄弟にとっては、『愛』を感じられたのが通りすがりのスーパーヒーローに抱きしめられた一瞬だけだったというのは、あまりに寂しい展開ではある。
ダダチャが良いように兄弟を操縦できたのも、心の隙間に巧く滑りこんだからだろうしね……話がこう展開してみると、コミカルな擬似オカンっぷりが邪悪に見えてくるな。

別府兄弟は一見『愛ゆえに』歪んでいるように見えて、あんちゃんの意志を確認せず、もの言わぬ人形に自分の欲望を反射させているだけの『自己愛』の人なので、地球が滅ぼうと身内が文句つけてこようと、エゴの外側にいる存在はマジどうでもいいのだな。
こんだけ歪んじゃった子供は、まさにヒーローが救わなければいけない存在に他ならないわけで、防衛部が大人の用意した茶番をぶっ壊し、魂を『愛』で救う展開を来週は期待したい。
どんだけシニカルに構えていても防衛部は『ヒーロー』なのであり、バッチリキメて大団円ってのを、やっぱり僕は見たいのだ。

バッチリキメると言う意味では、『かつてのライバルがピンチに駆けつけ、自分を操っていた悪しき存在と対峙する』という王道展開は、非常に気持が良かった。
錦ちゃんが悩みに悩んで送信した恋文が池ポチャした時はどうなるかと思ったが、そういう所で肩透かしはしないのが、このアニメの良い所だ。
カエルラ・アダマスがわざわざ留学先から駆けつけたのも『愛ゆえに』であり、今週は色んな連中の愛の実相が見れる回だなぁ……ラス前に相応しい集大成感があるね。


そんなわけで、お互いの愛の形(もしくは愛の無さ)を確認しつつ、強羅あんちゃんを賭けた最終決戦開始なお話でした。
現状ズンダーの汚い野望に全員が乗っけられている形なので、まずこのステージをひっくり返して欲しいところ。
そのための活力は、乙女力全開で彼ピッピのピンチに駆けつけた錦ちゃんから、どっさり受け取ったでしょう。

『大ピンチからの大逆転』もヒーローモノの様式美ですが、その先には別府兄弟の歪んだ幼さをどう受け止め、『ヒーロー』としてどういう姿を示せるのかが問われます。
時に斜めに、時にまっすぐヒーローをパロディしてきたこの話が、最後の正念場でどういう答えを出すのか。
決戦の次回が、どうにも楽しみになってきましたね。