イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない:第25話『アトム・ハート・ファーザー』感想

輝く愛のダイヤモンドはどす黒い血で飾られているアニメ、今週は吉良吉影の奇妙な愛情。
死んだ後も悪霊となって息子を守る吉良パパとJホラー大決戦して、川尻浩作となった吉良が新しい家庭でまた目立つお話でした。
他人を食い殺して恥じないサイコキラーとしての顔、それでも『家族』を手に入れ愛されてしまう人間としての顔。
アニメになって各話ごとの演出が冴えているおかげで、吉良の複雑な表情(それはつまり、四部の差狗賓的カラーそのものでもある)を再実感出来るのは、本当に面白いなぁ。

つーわけで、今週は元吉良・現川尻本人ではなく周囲の人を描くことで、彼の複雑な人となりを描いていくエピソードとなりました。
吉良の本性を知ってなお、肉体が滅んでなお息子を愛し守り続ける吉廣の狂った愛情が、冴え渡るホラー感と噛み合って非常にグッド。
四部は『恐怖』の様々な描き方を非常に丁寧にやってくれていて、毎回新鮮な気持ちで楽しめるのありがたいよなぁ。

今回も『誰も居ないはずの家』『写真の中の殺人者』という道具立てを最大限利用し、仗助達『正義』の側からみた『怪物』としての吉廣が、鮮烈に描かれていました。
二次元人であり死人でもある吉廣は、『生者』の領域を守ろうとする仗助たちとは文字通り次元が違う存在であり、それが現実を侵食し抵抗困難な殺意を向けてくる恐怖が、良いショックを込めて展開していた。
いかにも何かが潜んでいそうな『影』を強調しながら描き、最高のタイミングで『怪物』が出て来る間合いとタイミングの巧さは、雰囲気の出し方含めて最高にJホラーしてた。
ジョジョはもともと色々な要素を含んでいるけども、キャラクターと場面に応じてジャンルを変え、適切に『恐怖』を強調してくれる四部アニメは親切なアニメだ。

吉廣の『襲い掛かってくる恐怖』だけではなく、今回の話しが探索である以上『出会ってしまう恐怖』も見事に演出されていました。
『切り落とされた爪』という、ひどく個人的で他人には不衛生なアイテムを上手く使って、吉良を直接登場させることなくそのおぞましさをしっかり伝える演出は、やっぱり鋭い。
『殺しの体調』という言葉一つで、吉良がどれだけ日常生活と相容れることのない、異常な殺人者であるかよーく判るもんな。
こういう補強をしっかりやることで、『こいつをぶっ倒せば話は終わるし、終わらせなきゃいけない』と思えるラスボスが生まれるんだから、インパクトの有るイベントをしっかり繋げていくのは大事だ。

インパクトと言えば、二次元人間VSスタンド使いも知略とインチキ攻撃が相俟ったナイスな戦いで、手に汗握らされました。
顔面寸断寸前なのに冷静にヒール指示を出したり、『写真』という異質な能力の弱点を即座に見切り、必要な対応を最速でぶっ込む承太郎のクールさが、異質な能力者相手に際立ってました。
"アトム・ハート・ファーザー"は『包丁を持ち、こちらを睨みながら体育座りしている老人』っていうヴィジュアルがとにかく強い。
その上で、『写真』という自分の土俵を最大限活かし、小狡い知略を使ってしぶとく生き延びるタフさもあって、良い悪役だなと再確認しました。
あと仗助くんはあれだな、甥っ子と一緒にいると精神年齢が下がるな……可愛いから良いけど。


仗助たちから見た吉良の『異常さ』と同時に、吉良親子が暮らす『日常』の姿も今回は描かれていて、その対比がなかなか面白かったです。
仗助にとっては殺人鬼の手がかりを探す『探索場所』でしかない吉良家は、親子にとっては(狂っているとは言え)『日常』生活の場所であり、それなりに温かい思い出もあったりする。
吉廣が襲撃をかけてくるのも、親としての情愛ゆえのものであり、そこには人間味のない『怪物』ではなく、むしろあまりに人間的なカルマが渦を巻いているわけです。

しかし吉良がやっていることは無差別殺人だし、親父もその幇助に駆けずり回っているゴミなのは間違いがなくて、千葉繁がエモく涙を絞り出した後、地面には鳥のクソが撒き散らされる。
吉良が作り出す無残な死体と、それが"キラークイーン"で証拠隠滅されてしまった後の虚無というのは、そこに人間的な感情があろうとなかろうと許されるものではないという、冷静で倫理的な視線がそこにはあります。
しかし同時に、弱さや狂気や殺意もまた一種の人間味(ヒューマニティ)であることからこのお話は逃げないし、『怪物』と割り切って拒絶することの出来ない、親もいれば妻もいる殺人者の不愉快な体温を、しっかり描いてきます。

この複雑な多面性が吉良吉影の魅力であり、第四部の魅力でもある気がする。
もともとジョジョは『悪役』に人間的な表情をよく付ける作品だけど、『日常』を舞台にしているせいか、第4部は特にそこら辺の陰影が濃いなぁと、亜に目を見ながらよく感じます。
それは作品のエッセンスを製作者がクリアに理解し、どのようにアニメーションを組み立てればそれが視聴者に伝わるか、よく考えてしっかり実現しているからでしょう。
原作の魅力を引き出すというのは、一つのカットもなく映像を組み立てることでも、インパクトのある名言だけを目立たせることでもないのだなぁと、四部アニメ見てるとつくづく思う。


Bパートの川尻家の日常も、『怪物』の人間的側面を強調するエピソードであり、同時にその異常性も自動的に切り取られてました。
『静かに暮らしたい』と口にはしていても、誰かに巻けたり侮られたりするのが大嫌いな吉良は、『川尻浩作』がけしてやらない美味しい料理をしのぶさんに食べさせ、『生まれ変わった、新しいい男』として妻を惚れさせてしまう。
隠遁生活しているはずなのに、オスとしての引力でも負けたくない吉良の性根がよく出ていて、面白いやらおぞましいやら、複雑な楽しさでした。

四部アニメは女の子がかわいくて、しのぶさんも最高のチョロ蔵ヒロインとしていい仕上がりになってましたが、よく考えると『恋愛がしたかった』とは最初から言ってるんだよね。
どうにかして『川尻浩作』を愛したいと願っていたしのぶさんにとって、性的魅力含めて能力が高い吉良は『愛すことが出来る』存在であり、水を欲しがっていた花に吉良が潤いを与えた状況というか。
しかしそれも"キラークイーン"による殺人、"シンデレラ"による入れ替わりの強制という、邪悪な『非日常』があって初めて生まれるロマンスなわけで、両手を上げておめでとうとは、とても言えない。
こういうところでも吉良の人間味というのは複雑な色合いを持っていて、それは街の影に隠れてスタンド殺人を繰り返す行為の闇を、けして忘れないために大事なことなんでしょう。


吉廣という『過去』と、川尻浩作として手に入れた新しい『現在』。
何の感情もなく人を狩る『怪物』としての表情と、父に、妻に愛される『人間』としての体温。
吉良吉影を照らす様々な光源が複雑に交差し、恐るべきラスボスと作品全体の陰影を、くっきり見せてくれるエピソードでした。

こういう複雑な描き方をすると、『んで結局、コイツはどういうやつなの? 好けばいいの、嫌えばいいの?』と迷ってしまうことがあるんだけど、第4部は『人間爆弾にしてぶっ殺すことが、良いことなわきゃねぇだろ』という芯の強い答えをブラさないので、最終的な評価が安定するのがありがたいね。
その上で、『しかしクソサイコの殺人鬼でも人間なのであって、色々ある。むしろ人間だからこそ、その殺人はおぞましい』と掘り進めていく深みを、今回はよく感じられました。
吉良の人間的(そして非人間的)面白さが四部全体を牽引してるのは、確実にあるよなぁ……アニメはその複雑な表情しっかり切り取っていて、やっぱ最高です。

んで来週は、僕も君も大好き!! 露伴ちゃん VS ジャンケン小僧!!
『よくよく考えると意味が分からんが、その『覚悟』と『凄み』で異常な没入感を生み出すセリフ』というジョジョの魅力が、最大級に高まっているエピソードだと思います。
既に露伴にドンピシャな演技を多数見せている櫻井さんと、まだ見ぬジャンケン小僧CVとの競演がどうなるかもむっちゃ楽しみで、待ちきれねぇぜ来週……!
やっぱジョジョアニメ、おもしれぇなあマジよー。