イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイカツスターズ!:第24話『笑顔はなないろ☆』感想

アイドルの一番星は乙女の夢を吸って輝く妖星、笑顔の奥に残忍が宿るスターズ第24話。
お話しの表面だけなぞると次期S4の距離を詰めて、仲良し四人組の楽しい日常をスイーツと一緒に描きつつ、ちょっとした悩み事をみんなでクリアー!! っていうポジティブな展開。
なんだけども、どうにも額面通りに受け取れないぎこちなさが随所にあって、なかなか難しいお話と感じました。

今回感じるぎこちなさの最大のものは、やはり小春ちゃんの扱いでしょう。
ゆめ・ローラ・あこ・真昼の『仲良し四人組』を全面に押し出すあまり、逆にそこに小春がいない不自然さが際立ってしまっているのは、小春がどれだけ四人の間を繋いできたのかの証明でもあります。
組が同じなゆめとローラは様々な試練を共有する度絆が深まってきましたが、個性の強いあこと真昼はまだ時間の共有が薄く、そこまで馴染んでいない印象を受けていました。
そこを巧く埋め、人間関係の接着剤になってくれていたのが、自分を主張することが少なく、相手を受け入れつなぐキャラクターをした小春でした。

主役達が輝くのも、控えめな小春が必要なセリフを投げかけ、抱えている問題や気持ちを引き出してきたからこそ。
特にあこはそれほど大きなドラマをまだ達成していないのもあって、他三人に比べると真ん中で映ることに違和感があるというか、キャラを上手く掘りきれていない印象があります。
そんなあこがお話しの軸に絡む上で、どれだけ小春に頼っていたのかというのは、劇場版を見ればすぐさま判ることです。
小春が物語の中でしてくれたことに僕はありがたさを感じているし、控えめながら芯のある性格を好ましいと感じています。
ゆめを始めとしたキャラクターにも、お話を管理管轄する製作者にも、その献身に報いて欲しいと、常に思っています。


そんな小春は今回、不在にしがちな父親にくっつく形でゆめの家から離れ、話の中心から離れ、『未来のS4』を暗示するS4ごっこから離れていきます。
あのシーンは将来、あの四人がS4としてアイドルの一番星を掴む暗示ではあるんでしょうが、その予感に感動を覚えるより先に、そこに小春がいないことに違和感を感じてしまいました。
彼女もまた『S4になりたい』という夢は語っているだろうに、そこに想像力を伸ばす余地は一切なしか、と。
製作者サイドが受け取って欲しいシーン(エピソード)のイメージとしては、『無邪気で幼い夢が、何気ない日常を共有することで現実に近づいていく』と言うものなんだろうけども、不自然に小春に言及がないことで逆に、キャラが薄情に見えてしまったのは残念でした。

逆に言うと、小春という潤滑剤を抜いても『仲良し四人組』が円満に掛け合いできている様子を映像にして、小春の仕事を減らしていくってことなんでしょうけども……。
人数が多い割にスターズの捌き方はそこまで巧くないので、尖らず他人を受け入れて自然に回せる小春の仕事が、これまで多すぎたのかもしれません。
ぶっちゃけ主役ではない彼女に、主役級の物語的役割が与えられてきた不具合を是正し、本来の『仲良し四人組』を前面に押し出すことは、今のスターズにとって必要な訂正なのでしょう。

小春が人と人を繋ぐ『便利なキャラクター』として使われてきたのも、このタイミングで露骨に舞台から下げられようとしているのも、製作者の都合といえば都合です。
しかしそういう思惑や事情とは関係ない所で、描かれた物語は像を作って、視聴者は必ず何かを感じる。
献身的に友を支え友情を繋ぎ、アイドルという夢に一生懸命だった小春に感じる印象は、基本的にポジティブで前向きなものであり、製作者側の都合は横において、彼女は『報いて欲しい』と思えるキャラクターになってしまっていると、僕は思います。
そして今回の小春の使い方は、なまじっか『彼女がここにいないこと』『彼女がここからいなくなること』への言及を含んでいる分、これまでの献身に報いるものではないと、僕には感じられた。

この先スターズの物語がどう転がり、小春がどういう立場に置かれるにせよ、この違和感を抱え込んだまま『仲良し四人組』が手を取ってアイドル一番星まで登っていく話を、あんまり素直に見られはしないと思います。
退場させるならさせるで、都合に巻き込むなら巻き込むで、創作のキャラクターが与えてくれた感情にふさわしく報い、相応しい物語をちゃんと与えてあげて欲しい。
今回のお話を見て感じたのは、みんな仲良しでよかったねという平和な感情よりも、そういう薄曇り、ハッキリしないモヤモヤでした。
今後のエピソードが明瞭な話運びとテーマ性を持ってキャラを活かし、このもやもやをぶっ飛ばして小春に報いてくれることを、強く願っています。

(あんま無印と比べても意味ないんですが、しおんにしてもユウちゃんにしても、残忍な都合をキャラに押し付けつつ、無印はその身勝手さにとても自覚的で、遅れはしてもキャラクターたちに報いるエピソードを多数用意してくれました。
僕が好きになった女の子たちの善なる気持ちと行動が、けして無にはならずいつか報いてくれる物語だという信頼感が、アイカツが好きになる大きな足場だったのは、過去の自分を省みて間違いないと思います。
小春をどう扱っていくかは、この信頼感を作れるか、はたまた作品の足場を思いっきり切り崩すかの大事なポイントになると思うので、可能であれば誠実にやって欲しいところです。
この気持ちはキャラに誠実に報いてほしいって気持ちであると同時に、そこに愛着を感じた俺に誠実にやって欲しいってエゴイズムでもあるんだけども、ある程度以上そういうエゴに答えてもらえることこそが創作を好きになる土台ではあると思うんで、あえて押し出したい)


とまぁ一番気になった所を長々描きましたが、『未来のS4』初集合としては、結構良いエピソードだった気がします。
特にお姉ちゃんクエストを攻略してキャラに空白があった真昼は、思う存分抑えていたポンコツ力を発揮し、強く自分を主張していました。
いきなり瓦割ったり、スイーツの話になると早口になったり、残念な部分が多いほど、自分を抑圧しなくて良くなったんだなぁと微笑ましい気持ちになる。

あこもツンデレ不器用高飛車キャラを推してますが、真昼が夜空関係でキャラの地金を見せられたのに対し、いまいち彫り込みが足りない印象のままだなぁ。
ここら辺はスターズのキャラの多さと捌きのマズさが、正面からおッ被さっているところだと思う。
賑やかで可愛いのも良いんだけど、アイドルに対して絶対に譲れない何か、アイドルをテーマにした作品で絶対に必要な核を、まだあこには感じられないんだよな……。
それが見えてくるのは今回のようなオフ・エピソードではなく、アイドルとしてバチバチ鎬を削るキャラエピソードだと思うので、どっしりしたのがもう一つ欲しいね。

『笑顔を作る』という共通点でスイーツとアイドルを繋げて、ちょっとした学びを生む展開はまぁまぁ良かったんですが、ここも少々ぎこちなかった気がします。
依頼に来る子供の登場が急で、ダンドリ感が隠せなかったというか、もうちっと四人組と重ね合わせられる要素を持たせても良かったんじゃなかろうか。
まぁ特に障害もなくダラーっと過ごしても、エピソードの取れ高減るだけなんで難しいとは思うけども。


そんなわけで、『仲良し四人組』は仲良くなりつつ、そこから弾き出されるものの描き方に、モヤッとしたものが生まれるエピソードでした。
『仲良し四人組』の輝く未来を素直に受け取るためにも、小春に報いてやって欲しいと、彼女が好きな視聴者としては思います。
生まれつつある『見せたいもの』と『見えるもの』のギャップを埋められるかどうかは、実際に描かれる物語だけが証明してくれると思います。
来週以降もアイカツスターズ、楽しみです。