イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

クロムクロ:第25話『鬼の見た夢』感想

クソ異星人との最終決戦も終わって全てが平和になったんだー!! とは行かない、クロムクロラスト一個前。
このまま大団円では話数余るなぁと正直思っていたが、宇宙大決戦は起きてるは最後の敵は人間だわで、一気に転がりすぎだろ正直!!
富山の土着性と結びつきつつ描かれた、『異人』が受け入れられる世界の優しさが好きだっただけに正直衝撃を受けていますが、まぁいつものごとく、書きながらまとめていこう。
まぁ誰が『鬼』で誰が『人間』か、この話で一気に曖昧になったな……。

というわけで、敵の本丸をぶっ潰し当面の敵がいなくなった地球。
これまでの暖かな空気が全て嘘だったかのように、人類は超技術を求めて策謀を深め、『戦場』で絆を深めたはずの『異人』たちは実験動物扱いされる。
これまであまり描かれていなかった部分だけに衝撃でしたが、エフィドルグの技術を考えると納得できる部分もあり、それにしたってヒデーよマジと思う部分もあり、複雑な感じだ。
『戦場』が開放された象徴としてレンブラント光が差し込むところから始まって、富山の外から『平和な現代』の悪意が滑り込んでくる展開と考えると、なかなか性格が悪い。

勝利したからこそ迫ってきた暗い雰囲気を反映して、洗脳された人には治療法はないし、奴隷労働させられた人も結構死んでいるという、シビアな現実が突きつけられました。
ベスを助けるために洗脳されちゃったリタも実質廃人かと思うと、勝って喜んでばかりもいられないし、そういう世界が待っているなら『鬼』たちへの扱いも少しは納得……いかない。
ホワホワしているようで結構シビアに人死ぬ話ではあるので、今まで考えなくても良かった部分が表に出てきた、という表現が一番正しいのかなぁ。
『人間』であるために『鬼』になったボーデンさんに、おそらく米軍からクソみたいな指令が届く所、それを燃やす炎でたばこを『口に入れようとして出来ない』演出が入るのが、ひどく苦いね。

ここら辺の変化を見せるために、ハウゼン医師とスカリーもどきがうまく使われていました。
ハウゼン医師は元々マッドな人で、エフィドルグと総力戦やってたときはそれも魅力だったんだけど、人間同士で内ゲバやる余裕が出てきた今、それは恐ろしい暴威に変わる。
でもそれもハウゼン医師の一側面だし、野戦病院で人の命を救った彼の行いが、今のマッド・サイエンティストっぷりで消えるわけでもない。
苦くて複雑な味がようよう出てきていて、面白い使い方をされているなと思いました。

国連のインスペクターは途中完全に存在が消えていて、正直『ん? 読み違えたかな?』と思ってもいましたが、剣之介をあくまで『異物』として疑い排除する象徴として、お話に戻ってきました。
ムエッタの説得に耳を貸さないヨルバと合わせて、そうそう簡単には『異人』に居場所を与えてくれない世界のドライさを、巧く象徴していると思います。
由希奈がムエッタに送ったケーキ(『口に入れるもの』)が無残に踏みつけにされるように、みんながみんな、カレーとオムライス食って仲良くってわけにも、行かないもんな……行ってほしかったけどねマジ。


戦争が終わってグッと様相を変えてきたのは、学校の面々も同じで。
美夏の『現実と向き合わなきゃねー』という、ひどくありふれた言葉が、ただの学生連中と『異人≒鬼』とで全く意味合いが変わってくるのは、凄く残酷で残念だ。
進路を考える余裕がある学生の『日常』に、剣之介は接近しつつ同化する権利を与えられなかった、ってことだもんなぁ……。

サムライとして生きて戦い、勝って生き延びてしまった剣之介は、様々な因縁を背負って『学生』ではなく『武辺』としての生き方を選び、ゼルとムエッタを故郷に送り届ける狂気の賭けに出ようとしています。
最後の最後まで自分の望みではなく、他人からの恩義のために『戦場』に飛び込んでいく姿は彼らしいのだけども、あまりにも寂しい。
ただ一人カルロスの『今』を肯定し、『お前の映画は面白いと思った!』と大声で叫んでくれる男が、あまりにも危険な存在呼ばわりされて、死ぬか実験動物扱いされるかしかない『平和な現代』。
そこから彼を遠ざけ、人間として遇する余裕がエフィドルグとの『戦場』を必要としていたのは、なんとも皮肉だ。

そんな彼に寄り添い、運命をともにすることが気づけば当然になっていた由希奈は、愛ゆえの遠ざけられ、ひとときの別れを迎える。
まー『戦場』に鍛えられて、自分のやりたいことをはっきり見据えるようになった以上、剣之介の『分の悪い賭け』に協力しないわけがないけどさ……凄まじい速度で家族と別れる決意固めてるもんな……お嫁さんだからしょうがないか。
これまでじっくりと繋がってきた『武辺』と『普通の高校生』との絆が、一気に断ち切られる展開になってしまったけども、今はそれが無駄なものではなかったと思えるような収め方をして欲しい
と強く願います。
剣之介と別れるにしても、共に進んでいくにしても、嘘のない運びにしてほしいもんだ。

残り二話で一気に話の舵を切り替えてきたので、どう収めるかは非常に気になるところです。
剣之介の『分の悪い賭け』が成功して、エフィドルグ由来の技術を本船ごと宇宙にかっ飛ばしてエンドってのが、ひとつの終わり方かなぁ……『異人』が結局受け入れられない終わりなのは残念だが。
対決するべき相手が決戦に勝てば終わるエフィドルグではなく、人間の複雑なカルマそのものなので、完全なハッピーエンドたぁ行かないだろうしな。
今回意味深にカメラに映らなかった、ソフィ&茂住がどう動くか気になるところだなぁ……。


そーんなわけで、『狡兎死して走狗烹らる』を地で行く、世知辛い展開でした。
そういうシビアさは、例えば逃げ出した由希奈への対応とか、徐々に受け入れられていく剣之介とかで距離をおいていく話かと思っていたんだが、最後の最後で牙を向いてきたねぇ。
しかし無視したり切り捨てたりした部分ではなく、情で包み込んで遠ざけてきた部分ではあるので、ある程度納得は行く。

問題は、残り一話でこの方向転換をどう収めるのか、ってことなんですが……どうなるだろうか。
24分あればなんでも出来る気もするし、これまで真っ正面からは扱っていなかった題材すぎて、調理が難しい気もする。
どちらにしても、一気に油断のならない最終話となった次回。
これまでの物語をしっかりとまとめ上げ、愛すべき武辺者と普通の高校生の行く末を、しっかり描ききって欲しいと思います。