イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない:第26話『ジャンケン小僧がやって来る!』感想

ここ一ヶ月くらい血まみれ腐れ連続殺人鬼の話ばーっかりやってたアニメ、今週は漫画史上最も『圧』のあるジャンケン。
息子のケアを欠かさない二次元親父の導きで力を手に入れた少年が、死ぬほど大人気ない大人と本気のバトルを繰り広げるエピソードでした。
ぶっちゃけ作画はところどころ面白くなってたし、演出もどっかヌケてる感じがしたたけども、どんどん意味の分かんない勢いを加速させていくジャンケンバトルは期待していた圧力がちゃんとありました。
『ボーイⅡマン』の名前通り、悪の誘惑に晒されつつ勝負の果に魂の輝きを手に入れ、『再起可能』で終わる少年の成長劇としても好きだなぁ。
血腥い展開が続き四部中盤、一服の清涼剤のようなお話でした。

今回はほぼ坂本千夏VS櫻井孝宏の『凄み』劇場でして、どんどん大げさになっていくジャンケンバトルを快演とともに楽しませてくれました。
たかだかジャンケン五本勝負なのに『フォーム』とか『悪運のグー』とか『下り坂』とか、なんか圧力のある単語がどんどん出てくるし、何故か凄い高さにジャンプするし、『よく分からんが、なんか凄いのは判る』というトンチキ加減が最高でしたね。
ここ最近手だけ切り取って死体を証拠隠滅したり、血まみれの連続殺人鬼が逃亡を図ったり、どす黒い話ばっかり続いていたので、ジャンケンでここまで本気になれるバカバカしさが、むしろ嬉しかったりもする。
こういう形で『日常』と『非日常』が交錯するのも、杜王町の魅力だと思うわけです。

しかし追い詰められたジャンケン小僧が静を人質に取ったことからも判るように、いかにトンチキバトルでも人倫を踏み外し、『悪』に落ちていく可能性はスタンドが絡めば必ずある。
今回のバトルは実は第3話で億泰が戦ったような、もしくは第19話でしげちー達が踏み込みかけた、スタンドという『非日常』の力をどう制御し、どう使いこなすかの分水嶺でもあったわけです。
露伴ちゃんが善人だからジャンケン小僧が道を間違えなかったわけではないでしょうが、思わず金色のオーラが出るくらいの『凄み』で迫り、小僧に芽生えた『負けたくないッ!』という気持ちを正面から受け止めてやったからこそ、彼は静を地面において『ジャンケン』をすることが出来た。
敗北した後魂の自由を求めて死を臨んだ『凄み』もそうなんですが、ただの笑えるエピソードの中にキラッと魂の輝きを入れ込んで、『弱い』人間がどうすれば『強く』なれるのか、きっちり描いているのがジョジョの凄さだと思います。


僕は原作からしてこの話が好きなんですが、それは小僧のスタンド『ボーイⅡマン』の名前のとおり、『少年が少し大人になる』成長のドラマが、このトンチキじゃんけん劇場にあるからです。
小僧は露伴ちゃんのことを憎く思っていたり、侮っていたりはせず、むしろ尊敬できる強い存在だからこそ打ち勝ち、己を証明したいと願っている。
たとえそれがジャンケンでも、『強い』存在にぶち当たって己の『弱さ』を乗り越え、自己の証明を刻みつけたいという熱い思いは、青年だからこそ抱ける純粋な思いです。

実際小僧は露伴ちゃんとの限界ギリギリバトル(ジャンケン)を通じ、急速に『凄み』を身に着け知恵を付け、『子供から大人へ(Boy to Man)』成長していく。
ここら辺の変化を、坂本さんが見事に演じてくれたのが素晴らしかったです。
それは小僧の魂が黄金であることを示すと同時に、試金石として立ちふさがり、憧れと戦意を受け止めはねのけた露伴ちゃんの魅力にも繋がるわけで、お互いの魅力を引き出す良いマッチアップでした。
ジャンケンなら血とか死人とか、あんまでねぇしな……硝子の破片で手を切ったし、ともすれば小僧か静が死んでいたけど。

小僧の純粋なアドゥレサンスを時に斜めに、時に正面から受け止めることで、露伴ちゃんも魅力を増していたと思います。
ガキに勝って大笑いするわグーで殴るわ、相変わらず性格最悪ですが、『子供から大人へ』脱皮した魂の価値を認め、勝負を支配していた『運』で華麗にダメ押しの一発を入れてくるラストが、凄く爽やかで良かったです。
まぁそこに至るまでに腐れインチキぶちかましてはいるが、最初にブラフ使ってきたの小僧だしな……そこまでひっくるめてのジャンケン勝負ッッッ!! ということなのだろう。

静を地面において卑劣な方法に背を向け、『男と男』の勝負に挑んだ段階で、小僧の未来は開けているわけで、そこで露伴ちゃんが『再起不能』にしてしまってはどうにも収まりが悪い。
ジョジョでは定番だった『再起不能』をちょっと崩して、『子供から大人へ』への可能性に満ちた『再起可能』で〆る今回の終わり方も、このエピソードが好きな理由です。
吉良が顔を見せて以来血腥い展開が続いたからこそ、バカでお間抜けで意味分かんなくて、でも『人間なかなか捨てたもんじゃねぇな』と思える話が、少年の可能性を信じる終わり方で〆られてるのは凄く胸に来るんですよね……作画ヘロヘロのバカエピソードだけどさ。
吉良のどす黒い殺意と笑いだけではなく、今回のようなアホな『凄み』と可能性も内包しているからこそ、四部はいろいろあって面白いと思えるんだなぁと、再確認できました。


そんなわけで、トンチキボーイが『男と男』の勝負を経て、成長の階段を一歩登るお話でした。
アニメになって見るとマジで空飛ぶ意味とか脈絡とか一切なくて、この唐突さで視聴者を飲み込んでしまうパワーこそ、やはりジョジョの強さだなと思い知らされる。
最初いやいや付き合ってた露伴ちゃんが、ドンドンスタンドバトルの文脈でジャンケンを捉え始めて、単語の選び方に『凄み』が混ざってくる流れがマジ面白いですな。

ほいでもって来週も、殺すの殺さないのからちょっと離れたエピソード。
俺ァ四部の日常コメディな部分が特に好きなんで、こういう話は大歓迎ですな。
原作の持ってるストレンジなテイストをどれだけアニメに落とし込んでくれるのか、今から楽しみです。