イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プリパラ:第115話『ひびけ! 神アイドルグランプリ!』感想

勝者の花道は敗者の歯ぎしりで舗装されているアイドル勝負道、今週は第三回神アイドルグランプリ決着。
まぁ言うても、先週の名の流れでトリコロールが負けるのはまずありえないわけで、約束された勝ちに説得力をどう積んでいくか、というエピソードになりました。
”Mon chouchou”の圧倒的パフォーマンスを際立たせるだけではなく、それが周囲に与える影響、メイングループ以外のやる気などもしっかりまとめ上げ、第4回というピークに話を繋いでいく周到さがナイス。
ノンシュガー結成への布石も丁寧に配置して、プリパラのこれまでとこれからを見据えたエピソードとなりました。

今回もトリコロールメインの話ではあるんですが、因縁や感情が前回綺麗に収まった分、トリコロール内部ではなく彼らがプリパラにどういう波紋を投げかけるかという、外部のリアクションが重点されていました。
二回のライブとそのリアクションを事前に描いておくことで、どれだけトリコロールが圧倒的な存在感を持っているか説得的に描いたり、そのアクティングを見た各グループがどれだけ刺激を受けているか描写したり。
プリパラがトンチキやりつつ、少女たちが青春をかけるに値する瑞々しさを失っていないのは、こういうリアクションを描く巧さにあると思います。
しっかしライブが連続したせいか、いつにも増してガヤが汚かったな……。

リアクション誘導の巧さは作中のキャラクターだけではなく、作品外の視聴者にも巧みに投げかけられていて、次のイベントである第四回神GPへの期待感をらぁらがしっかり言葉にする所とか、巧いなぁと思いました。
主人公が明確にスムーズに、次に用意されている物語的ピークの高さを言語化することで、それを視聴者が共有することが用意になるわけです。
こういうストレートでスマートな気持ちの作り方は、あんま目立たないけどプリパラを楽しく見続けられる重要なテクニックだと思います。


焦らしと盛り上げが巧いといえば、ゲートまでの道をじっくり歩くまほちゃんを合間に挟んで、約束された勝利への期待を積んでいくのも面白かった。
ぶっちゃけ今回、物語的にやること凄く少ないわけで、穴埋めといえば穴埋めなんだけども、あそこで焦らして焦らして期待感を盛り上げ、ケレンの効いた登場でそれに答えるひびきの華、ステージアクターとしての才覚を表現する形になってるのは、凄く良い。
不遜を許されるだけの天才が確かに彼女にはあって、それを計算ではなく(それこそナチュラルに)やれているからこそ、新たなる強敵としてのトリコロールの存在感も出てくる。

”Mon chouchou”自体が持っている別格のパフォーマンスも凄いんですが、そこに至るまでの道のりをしっかり舗装することで、トリコロールが持つ個性とカリスマを視聴者が共有できるのが凄い。
ステージアクトにおける個性や凄み、身体性ってアニメだとなかなか出しにくい要素だと思いますが、チーム結成に至るまでのドラマも含めて、トリコロールは非常に丁寧かつテーマのある演出を積み上げることで、ただキャラクターが『凄い、凄い』と囃し立てるだけではなく、視聴者がグッと引きずり込まれ自発的に『凄い』と思える存在になっていると思います。

そこに成功することで、そのトリコロールを誰がどう超えていくのかという勝負論にも熱が入ってくるし、プリパラという場所そのものの実在感も身近に感じられるようになる。
トリコロール結成を丁寧に、的確にやったことは、三人の女の子の青春物語として、語りきれなかった二期の再話として良かっただけではなく、プリパラというアニメ全体にとって非常に良いことなんだなと、今回思いました。
キャラクターとキャラクター、キャラクターと作品、作品と視聴者の間でしっかりコール&レスポンスが成立しているのは、何とも言えない充実感と幸福感です。


トリコロールを鏡にして、色んなキャラの表情が見えたのも今回良かったです。
特に次代を担うのんちりは、同じものを見て瞳を輝かせたり、似た者同士であることを認められなくて反発したり、抜け目なくチーム結成への布石を打たれていました。
のんちゃんがトライアングルの独善から、ちりちゃんとの反目を経てノンシュガーに融和していく流れは、確実に三年目の軸の一つだから、丁寧にやってくれるのは非常に嬉しい。
やっぱなー……のんちりの『気に食わないアイツ、大っ嫌い……でも……』という描き方、プリパラではなかなか無かったから新鮮だし最高だな。

登場話では高飛車な部分が目立ってたセレブちりちゃんですが、今回ひびきに引き寄せられる素直な姿を見せたことで、ちょっと視聴者側によってきてくれた印象があります。
自分を強く持つだけではなく、他人に魅せられ受け入れる余裕があると分かってくると、やっぱキャラの印象は大きく変わるね。
のんちゃんがファルル、ちりちゃんがひびきにお熱ってことは、ペッパーちゃんはふわりと仲良くなるんかね……野生児同士の共感か……。

ここでも相互的なコール&レスポンスは機能していて、ちりちゃんのラブ・コールを優しく受け流すひびきを描くことで、彼女がトラウマと付き合う方法を学んで成し遂げた変化が、自然と演出されていました。
語尾に対する対応にしても、あじみの狂気的愛情の交わし方にしても、まほちゃんは全体的に強く、柔らかくなったなぁ。
こういう描写が許されるのも、お話全体を牽引するラスボスではなく、一少女であり実力者であるひびき個人を描ける三期の立場が大きいのでしょう。

あと本筋には全く関係ないが、性役割を取っ払った夫婦関係を積極的に造りたいと願う雨宮は偉い。
偉いが、自分の妄想を脳内で事実化してその続きをエアでやりに行くのは、過去最高にキモかった。
妄想娘の妄想弟て……君ィ……。
『暴走初恋キャラ』という記号を空転させまくった結果、空前絶後のキモさまで突き抜けつつあるのは、さすがプリパラとしか言いようがないな。


というわけで、結成なったトリコロールがプリパラにどう受け入れられるのか、そしてトリコロールがプリパラをどう受け入れるかを、ゆったりと余裕を持って描く回でした。
世界と余裕を持って対応できること、それはつまり成長ということであって、トリコロールの勝利という約束された筋書きを自然に受け入れるために、良い足場となってくれました。
ゆるーっとやれる話では、そういう話なりの構成をしっかり作って、これまでのお話をまとめ上げこれからのお話の滑走路を作れる。
プリパラらしい見切りの巧さが冴え渡った、良い第三回神GPでした。

トリコロールの物語がかなり良い形で収まって、物語の軸足はついに新世代に。
まずは3人目の登場ってことで、サパンナからかなりギリギリな差別表現を背負ってペッパーちゃんがやってきます。
ぶっちゃけ今ん所見えている要素は『土人』でしかないですが、それ一本で押し切るほど今のプリパラ甘くないと思うので、さてどう来るか。
初の個別回となる来週、非常に楽しみです。