イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない:第27話『ぼくは宇宙人』感想

生と死、日常と殺戮が同居するヤヌスの辻のアーバン・サスペンス、今週はイレギュラー・ケイス。
殺人鬼と街の守護騎士、敵と味方がそれぞれ新しい『日常』に対応していく話でした。
どっちもオフビートで奇妙な笑いを孕みつつ、どこかに油断できない味わいも残していて、四部らしいテイストを堪能できるお話でしたね。

まず始まったのは川尻浩作こと吉良吉影の新しい日常でして、急にワイルドになった夫にドギマギ発情しまくるしのぶさんの姿が、四部アニメらしい可愛さで描かれていました。
しのぶさんは元々恋をし生を謳歌したい人だったわけで、別人のような危険な魅力を発揮しだした夫にアピールしまくるのは、アニメでまとめて見直すと結構しっくり来る動き。
しかし彼女に第二の春が訪れたのは、他ならぬ夫が隠蔽工作のためにぶっ殺されて入れ替わった結果であり、夫の真実を知れば即座に爆殺される運命がすぐ隣りにあります。
そういう危うさを一切知らないまま、吉良を『生≒性』の方向に引っ張ろうと危険な誘惑を繰り返すしのぶさんが、エロいやらヤバいやら面白かったです。
こういうネタを楽しむ上で、四部の女の子の描き方が可愛いのは強みだね。

吉良も人間の領分を超えて一気に伸びる『爪』で己の怪物性を表現しつつも、『川尻しのぶの夫』であり続けるためには、殺人衝動を押し殺し『日常』を演じなければいけない。
気ままな独り身の立場で思う存分『死』を貪ってきた立場から、しのぶが押し付けてくる『性≒生』との折り合いをつけなければいけない立場に追い込まれてしまっているわけです。
漢字ドリルのように筆跡を練習したり、セクシーなすれ違いを繰り返す姿は滑稽味にあふれているわけですが、それは同時に少し間違えば無残な犠牲者を生む、野獣のサーカスのような笑いなわけです。

夫婦はお互いの真実を告げられないまま、各々が背負う『性≒生と死』の間で奇妙なダンスを続け、それが交わらないことでギリギリ奇妙で滑稽な夫婦生活が維持されていく。
というか、より隠喩的な意味での『夫婦生活』は、しのぶさんがどんだけ誘っても成り立ってねぇんじゃないかなとも思う。
吉良が殺人でしか性欲満たせない業の持ち主だってのは、少年誌の限界を超えてビンビン感じられるし、それを満たすときはしのぶさんを食い殺すときなわけだ。
眼の前にいるセクシーな男が実は怪物で、己の挑発が成功したときは死ぬ時であるという、あまりに『非日常的』な心理を知らないからこそ、しのぶさんの挑発は危険なギャグであるし、それを突きつければいろんなものが破綻してしまうからこそ、吉良の我慢は笑える。
二人が危うい『日常』の上に乗っかって、結構いい具合に『夫婦』している現状を楽しめる描写でした。


んで後半は、自称宇宙人・支倉未起隆くんと仗助のお話。
ミキタカはスタンドという作品おルールから外れた描写があって、ワイルドカードとして重要なキャラ……に見えて、その実あんま拾われない難しいキャラだと思います。
その事がミキタカと仗助の出会いの意味を『読む』ことも難しくしているわけですが、単純にちょっと不思議なテイストのお話を書きたかったのかなぁ。
そういう意味では、真ん中あたりの作画がヘロヘロでも、ラストの濃い驚き顔をしっかり仕上げたカロリーの使い方は狙い通り機能しているといえる。
あの顔、とにかく面白かったもんな。

億泰や康一くんといるときはスーパークールな頼れるタフガイ、承太郎といるときは未熟さを表に出して子供として振る舞っている仗助ですが、ミキタカ相手には等身大の高校生というか、結構ゲスな部分もナイーブな部分も見て取れました。
ここら辺の掘り下げはミキタカが『死』から遠い、いかにも杜王町スタンド使いらしい『日常』の気配をまとったキャラだからこそ可能なわけで、血と暴力の気配が何かと漂う仗助の、そういう一面を引き出すキャラだといえます。
重ちーが生きてりゃ、億泰も込みでバカやれたんだろうけどな……。(しんみり)

弱っているミキタカを見捨てられない人情も、彼を利用して露伴ちゃんからかっぱごうという俗っ気も、仗助という人間の多面性です。
宿敵である吉良が『生と死』の間で奇妙なダンスを踊っているように、仗助も等身大の高校生、当たり前の人間として時に高貴に、時に愚かしく振る舞う。
ミキタカが人間の常識を知らない『宇宙人』だからこそ、仗助の人間味はグッと引き出されるし、そのすれ違いが面白くもある。
そう考えると、今回はすれ違いが生み出す笑いのエピソードを、敵味方両方から照射する話なんでしょうね。

前半では億泰、後半では露伴ちゃんと、レギュラーメンバーの濃いめの描写が入るのも嬉しいところです。
億泰と仗助はすっかりマブでして、表情も変えずアイコンタクトもせずに意思疎通が可能になっている仲良しっぷりは、やっぱ見ててホッコリする。
露伴ちゃんは相変わらず年下のガキを勝負事で任すのが大好き過ぎるクズ人間っぷりで、いかさま賭博の相手としてはベストチョイスですね、やっぱ。
他のメンバーだと心傷んだり騙せなかったりしそうだけど、適当に隙があって適当に強キャラでもある露伴ちゃんなら、良いリアクションしてくれるもんなぁ……櫻井さんの怪訝な演技が面白すぎた。

こっからイカサマ勝負はもっと奇妙で、もっとドタバタした方向に進んでいくわけですが、それは来週のお楽しみ。
物事が望みどおりに転がらず、どんどんズレていく楽しさをアニメとしてどう表現してくれるのか、結構楽しみです。
四部はペーソスの作り方が非常に好みだし、これまでのアニメでもいい具合に料理してくれているからね。
漫画とアニメ、2つのメディアで何度もテイストを楽しめるのは、贅沢なことだなぁと思います。