イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

12歳。 セカンドシーズン:第13話『スキ・キス・キス!?』感想

ハイティーン女子のリアル・バイブルが三ヶ月ぶりにカンバック!! つーわけで、12歳。の第13話です。
とは言うものの特に大きな変化があるわけではなく、結衣ちゃん&桧山の胸キュンすれ違いラブが穏やかに展開され、額に『当て馬』と描いた新キャラがチャラ男の衣装でやってくる話でした。
稲葉くんは印象よりジェントルな少年だったが、そろそろ高尾譲りのスーパー系12歳男子力を高めてきた桧山の前では、『まぁ負けるね……』と思うしかねぇ。
『謎のポワポワ』『いつものムーディなBGM』『迷いのないスローモーション』という12歳。演出三種の神器もフル稼働であり、つうかいつもより多かった気すらします。
色んな意味でいつもの12歳。であり、安心と満足のあるセカンドシーズン開幕となりました。

つーわけで今回は、『初恋モンスター』でもやってた男と女の性意識発達のすれ違いのお話。
どっちもガッツいてくるのが女側ってのがちと興味深いが、胸が膨らみニキビが出来る二次性徴期、性欲が増進してくるのは自然の成り行きであり悪でも善でもない。
問題があるとすれば気持ちがすれ違うことなんだけれども、桧山はストイックながら恋人を真実気付かえる誠実ボーイなので、クリティカルなところはしっかり押さえて立ち回るし、結衣ちゃんもそれを見逃したりはしない。
見ている側をハラハラさせつつも、キャラが持っている徳の高さを壊すことなく収める所に収める運び方は、円熟と言ってもいいだろう。

今回のお話はアドバイザーであるまりんちゃんの耳年増知識、つまりは外部の『情報』に踊らされ軽い衝突が起きた後、恋人同士が二人だけで向かい合い、個人的『実感』が伴う二人だけの真実に辿り着くという、凄くオーソドックスな人間関係構築のストーリーを踏んでいます。
まりんちゃんが悪いわけじゃないんだが、彼女の見解はあくまで一般論というか、背伸びしたがりガールが無責任に消費できる『情報』であり、そういうものでは人間二人が向かい合う個人的な問題は解決できないとするのは、青春を扱う上で大切なことだと思う。
この時浮かれて情報に躍らされるのは大事で、一回きっちり迷わなければ、それを抜けて手に入れた答えの真実味というのも薄れてしまう。
色々めんどくさい思春期のアレコレだの、自意識のアレソレだのをくぐり抜けることで、『情報』ではなく『実感』に基いて自分だけの答えを見つけ成長していく歩みに、説得力が出てくるわけだ。

ここら辺の心の揺れを表すべく、謎のフワフワは画面に舞い散り、女の子は彼氏にトゥンク……しまくり、BGMは(例のBGM)にチェンジし、感情を載せてスローモーションが発生する。
こう書くと揶揄しているように見えるかもしれないけども、僕はこのアニメの古臭くて真っ直ぐな演出はネタとして面白い以上に、お話のムードを素直に伝える仕事をしっかりしていると思う。
その古臭さを笑いに変えて視聴者をフックするのも引っくるめて、作風を使いこなしているなぁと感じるセカンドシーズン第一話でしたね。

ずーっとグダグダ迷っているのも見ててウザいわけで、桧山も結衣ちゃんもちょっとした欠点は持ちつつ基本的に人間力が高く、成熟した人格しているのはありがたい。
12歳の少年らしいプライドの高さと気恥ずかしさを持ちつつも、それで自分を偽り彼女という特別な存在を傷つけることはしないのが、桧山を信頼できる足場なのだ。
結衣ちゃんも悲劇のヒロインっ面で自意識に軽く溺れたりするものの、桧山が一体何を大事にしているかは見誤らないし、二人はお互いの気持を最終的には伝え合う。
ここら辺の失敗と成功のバランスが、最終的にはいい所に落ち着くという信頼感を産んでいて、途中のハラハラも楽しく見れるというわけだ。


んで、そういうハラハラを作るためには負け役・敵役が必要になるわけで、実直な桧山とは正反対な稲葉くんが担ぎ出されてくる。
花日と高尾の恋路において皇帝がスパイスになってくれたように、シリーズを続けていくためには事件と起伏が必要であり、ちょっと危険な魅力を放つセクシーな少年の登場は大事な一手だ。
結衣ちゃんにシンクロする視聴者としては、ナイスなボーイたちが結衣ちゃんを取り合うことで、『取り合うほど価値のあるトロフィー』として扱われる快楽を疑似体験も出来るしね。

稲葉くんはいかにもなドンファンに見えるけども、実は結衣ちゃんが傷つくことを第一に考えている真摯な男の子で、結構好感度稼いでくる子だった。
ライバルの値段も上げて、恋の鞘当てをあんまドロッとしたものに描かないのは、皇帝のときもそうだったなぁ……12歳。の特徴なのかもしれん。
まぁ人格ゴミクズなのはここあちゃんとモブ男子だけで十分なので、ライバルとして画面に映る時間が長い稲葉くんが良い子なのは、ありがたいことである。

桧山が硬派で実直なのは良いことなのだが、身体的成長が男子より早い結衣ちゃんとの間には今回のようなすれ違うも生まれるし、キス(とその延長線上にあるセックス)は生物として人間として相当に大事なことで、恥ずかしく目を背けていると大変なことにもなる。
少女の身体と精神が変容していく様子を結構丁寧に描いているこのお話がより面白く感じられるためには、桧山少年が『彼氏と彼女』のセックスとどう向かい合うのかも、それなりに腰を入れて描いて欲しい気持ちがある。
それを掘り下げるための鏡として、衒いもなく女性に優しく出来る稲葉くんをライバルに配置するこの展開は、結構面白い気がする。
高尾先生は完成されすぎてて、こういう変化=成長の話担当するには向いていないからな……。

まぁ表面的にはすれ違っているように見えても、結衣ちゃんも桧山も人間のいちばん大事な部分で判り合っているので、稲葉くんの心配は的はずれだし彼の勝ちもないのだが……。
時々ヒヤリとはさせられても、このお話の『カップル2つ』という基本構造は非常に堅牢であり、全てがズタズタに破壊されはしないという予感を衝突が始まる前からしっかり与えてくるのは、堅牢ともいえるし展開が固いともいえるだろう。
勝ちがない以上、桧山と稲葉くんが、そして結衣ちゃんと稲葉くんがどうぶつかり合い、そこから学んでいくかが大事になるんだけども……それは来週以降の物語になりますね。


というわけで、発育する身体と変化する精神、それが他者との間に生む軋轢と融和を穏やかに描く、12歳らしいお話でした。
あんま興味本位でドギツくやり過ぎるでもなく、かと言って説教臭くてキャラの体温がしない話になるでもなしという、このアニメらしいバランスの良さを感じましたね。
セカンドシーズンも、12歳。は強いなぁ。

収まる所に収まった二人ですが、それに納得していない一途なプレイボーイも今回お目見えしました。
負けると分かって戦いに挑む稲葉くんが、どれだけ人間の輝きを見せてくれるのか。
皇帝の負け戦っぷりが結構好きだった僕としては、来週に期待大であります。