イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ブレイブウィッチーズ:第1話『佐世保の魔法少女?』感想

肌色いっぱい夢いっぱい! 疑似二次大戦魔法少女空戦絵巻の最新作がついにスタート!!
ってな感じで、ブレイブウィッチーズ第一話は主人公・雁淵ひかりをど真ん中に据えたお話でした。
成績優秀なエリートとは行かないが、根性とスタミナと姉へのあこがれはたっぷり詰まった主人公の生き様を真っ直ぐ描いており、安定感がありました。
トンチキな空中股間描写とかありつつも、やっぱネウロイ戦役はど真ん中のスポ根力が魅力だなぁと思わされる、骨太な第一話でした。

つーわけで、502のお話が始動する前に、まず物語の中心となる主人公を掘り下げていく出だしとなりました。
ひかりは非常にオーソドックスなスポ根主人公でして、才能には恵まれないものの根性とスタミナには光るものがあり、地道な努力も忘れないガッツ満点な女の子。
この設定からは低いところから泥臭く這い上がっていくガッツストーリーが想起でき、実際今回の話しも非常に丁寧に要点を追いながら進んでいってくれて、話しを牽引するエンジンとして非常に良い性能をしていると思います。
やっぱ『出来ないやつ』が一歩ずつ『出来るようになって』いく話は、歯ごたえがあって良い。

この泥臭い成長を印象づけるべく、今回は水上でのホップ・ステップ・ジャンプを効果的に使っていました。
『水の上を跳ねる』ことで魔女の異能が一発で判るし、ひかりがどれだけ『出来ないやつ』であり、しかし『出来るようになる』ために頑張っている姿を照らす装置として、シンプルかつ機能的だった。
三回目の挑戦でようやく成功するのだけれども、それがただの空疎なトロフィーではなく、人命救助という英雄的結果に繋がっているところも、成長の実感があって良かったです。

ひかりの努力の源泉、憧れの対象として姉の背中を置いたのも、非常にわかりやすい構図でグッド。
対象を持たない熱い思いも好きだけども、孝美という具体的な目標が近くにあることで、ひかりがなぜ走るのかが伝わりやすかったです。
お姉ちゃんが憧れに値する存在だと見せるべく、登場と同時にひかりをレスキューしていた所とかも、ヒーロー物語の勘所をしっかり押さえていたと思います。
姉妹揃って命を助ける仕事を、第1話でしっかりやりきってんだな。


オーソドックスで堅牢なスポ根の土台に、独特のテイストを加えているのが美術で。
お姉ちゃんたちの乳尻太ももも良かったですが、個人的には佐世保の美しい風景が穏やかに流れていくのが、凄く気持ちよかったです。
まさに風光明媚な景色を魔女たちが飛んで行くシーンが、なかなか言葉にしにくい快楽に満ちていて、作品世界の風を強く感じることが出来ました。
『下着姿のお姉ちゃんが空を飛ぶ』という絵自体が『強い』ので、背景がそれに押し負けない魅力をちゃんと備えているのは、胃もたれしなくてありがたい。

家族や学友といったひかりの周囲の世界も手抜かりなく描かれ、特に朴訥な父との静かなやり取りに時間を使ってくれたのは、なかなか良かった。
ああいう奇妙な、しかし確かに大切な家族の時間を守るために、ひかりはこれから地獄のヨーロッパ戦線に身を投じるわけで、一話まるまる一人に使えるタイミングでやるべき描写を、しっかりやってくれました。
902編に入っちゃうとその外側をじっくり描くのは、メインキャラクターの人数的に厳しいでしょうしね。

人間サイズの飛行機が激しい鍔迫りを見せる空戦シーンは、いい具合に風と爽快感、ヒヤッとする危機感に溢れた、良い描写でした。
肌色描写も魅力的だけど、やっぱ『戦闘機のスピードで女の子が飛ぶ』という動きの快楽がこのアニメの根本的なパワーだと思うので、試験シーンの飛行描写は真に迫った臨場感に満ちていて、とても良かったです。
単独飛行、訓練飛行、ドッグファイト、荒天飛行と、違うシチュエーションで何度も飛ばして『風の気持ちよさ』を視聴者にも感じてもらおうと畳み掛けてくるのは、手抜かりがなくて非常にグッド。
前半で泥臭く地面に近い描写をタメたのが、実地試験でグンと解放される作りになってるの、ほんと手堅いよなぁ。
今回は入隊以前の話なので、ネウロイとの命がけのドンパチは来週以降ですが、この調子なら相当面白いものを見せてくれそうで、期待が高まります。

そういう湿度低めの快楽を大事にしつつ、女体描写は油っぽく濃口にたっぷりやってくる所が、ストライクウィッチーズの系譜だなぁとも思う。
このシリーズって『女の子を描きたい』『空戦を描きたい』『魔女が存在する偽史を掘り下げまくりたい』という各々の欲望が、あんま混じり合わずゴロッとお出しされる所が独特のテイストになっていると思います。
軍隊スポ根モノとしての描写、エブリデイ・マジックとしての描写の隙間を狙い、『ねじ込む』という表現がふさわしいあざとさでぶっ込まれる肌色には、楽しいもの全部盛りしたいというスタッフの欲望とサービス精神を感じ取ることが出来て、非常に良かったです。
……もっさんがスク水軍服で「はっはっは」とか言ってたときの違和感、気づけばすっかり薄れているなぁ……八年という時間は、かのように世界を書き換えていくのだ。


というわけで、どっしりと鈍亀主人公の『今』に切り込む、非常に堅牢に滑り出した第一話となりました。
姉への憧れという方向づけもあるし、『スタミナと根性』という長所も分かりやすいし、ひかりがお話をどう引っ張っていくか、鮮明に思い描ける出だしでした。
クセの強い部分は他のメンバーが担当するだろうから、主人公が真っ直ぐ素直で元気な正統派なのは非常に良いと思います。
彼女たちが飛ぶ風の匂い、飛翔の快楽も良いアクションとともにしっかり感じられ、『このアニメは何をしたいのか』がグッと迫ってくる第一話でした……女体とかね。

お話しの土台をしっかり積み上げて、さぁ第二話ってところですが、チームに合流する前に一悶着ありそうな感じ。
一気に902十人と合流させるのではなく、段階的にキャラを見せていくって感じなのかなぁ。
ひかりのガッツストーリーであると同時に、クセの強いエースの群像劇という側面もあるこのアニメの手綱を、どう引っ張るのか。
そこら辺の捌き方も見て取れる二話になりそうで、非常に楽しみです。