イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ALL OUT!!:第1話『今年の1年はウケるな』感想

10月アニメ戦線に着弾した、超弩級ラグビー肉爆弾(ビーフケーキ)!!
衒いなく青春スポ根のど真ん中を攻めてくる展開、何か特別なことが始まりそうなフレッシュな出会い、みっしりと分厚い男たちの肉。
適度にケレンの効いたラグビー表現とあいまって、非常にストレートに高速に青春の門を叩いてくる、良い第一話でした。

お話の方は非常に素直な作りでして、高校入学という出会いの節目に、少年がラグビーに出会い、運命の戦友に出会い、自分を導いてくれる先輩に出会うという、スポ根ジャンルの王道たる『出会いの第一話』といった塩梅。
主人公たる祇園くんの感情表現が全体的に素直で、彼がいろんなことに驚いてくれるおかげで、『これから特別なことが起こるんだ!』という作品への期待感がモリモリ高まるのが、非常に良かったです。
やっぱわざわざ何かを選び取って作品の真ん中に据える以上、主人公が『それって凄いことなんだ! 楽しいものなんだ!!』と真っ直ぐ称揚してくれるのは、見ている側としても素直に気持ち良くなれて、ありがたいですね。
驚くのに相応しいケレンがキャラの肉体やラグビー競技の表現にしっかり効いていて、素直に飲み込めるのもグッド。

色々大げさな表現も多いんですが、祇園くんの身長コンプレックスや石清水くんのトラウマ、心の弱さなど、人間的でナイーブな部分もしっとり表現してくれるので、派手さが上滑りせず視聴者をがっちりフックしてくれています。
アップテンポにドタバタ青春する部分と、しっとりと心が触れ合う部分の緩急がいい具合についていて、バランス良く楽しめました。
わりと地道かつ真っ当に『ラグビーにかけた青春』のお話をやるっぽいので、地味な部分がかっちりやれているのは良いなと感じます。

スポーツを題材にする以上、青春が乗っかるのはあくまで競技の描写であり、ここがお座なりだと話は腰砕けになってしまうわけですが……練習段階ながら、タフでラフな力強さが伝わってくる見せ方で、すっごく興奮しました。
肉と肉とがぶつかり合い、真っ正面から一つのボールを取り合う野蛮さと、ポジションごとに異なる職能を組み合わせ、ゲームとチームを組み立てていく優しさを感じることが出来ました。
少年たちの肉体が遠慮なく分厚く描かれるおかげで、迫力と説得力がしっかりあるのが良いよね。
皆さんとんでもないお肉なのに、タレ目・まつげ長めで関節は内向きに入ってるのが基本っつーキャラデザインはなかなかセクシーで、無骨な話運びにいい具合に艶を乗っけてくれてると思います。
こんだけ『男』全開の肉弾頭なのに、キャラデザの要になる部分は『女』の要素でまとめてるの、面白いよなぁ……。

ラグビーと出会うことで、鬱屈してきた少年が自分の力の発揮場所を見つけ、夢中になっていく。
今回の第1話は非常にシンプルで、素直で、真っ直ぐで力強い自己実現の話になっていたのが、なかなかに強かったと思います。
ここら辺は祇園くんの素直さが主題と良い噛み合い方をしていて、コンプレックスをどう扱って良いのかわからなかった彼が、『どんな人間だって主役になれる』『ボールを持ってる奴が主役』という魔法の言葉に出会って、己を表現する手段に出会う喜びが、強く感じ取れました。
凄くキラキラした目で練習を見つめ、日が沈むまで練習に見入ってしまう祇園くんの幼さは、ガキっぽいバカさというよりも眩しい純粋さが全面に出ていて、可愛らしいし応援したい気持ちにされた。
やっぱピュアでキュートなど真ん中ボーイはイイなぁ……そういうボーイが最高の表現手段と出会い、それを支えてくれる友人や先輩とも出会いと、作品世界の優しさと間違いなさを感じられる展開だったのが、何より良い。


ど真っ直ぐなお話を背負うキャラクターたちも非常にいい仕上がりで、まず主人公・祇園くんが良い。
ともすれば暴力的なほどに感情を素直に出す男なんだけども、ハードコンタクトなラグビーという競技でそれは才能であり、将来的な活躍を予感させる良い足場になってる。
元気な暴れん坊なんだけども、他人を害する方向には行かず、感じ取った胸の高鳴りを他の人に分け与えるムードメイカー的な部分が強いのも、『何だこのクソガキ?』という印象にならず、いい感じでした。
メンターになるだろう赤山くんが静かな迫力のある良い細谷さんで、道をはみ出したらきっちり指導してくれるオーラが出ているのも、信頼感あったな。

そんな祇園くんと良い対比になっているのが、恵まれた体格と小型犬のような気弱さを併せ持つ石清水くん。
メンタル強いけどフィジカルに恵まれていない祇園くんの相棒として、凄くいいキャラしてると思いました。
祇園くんがド素人として、ラグビーの魅力を視聴者に伝える驚き役を担当するのに対し、岩清水くんは経験者として色々解説したり、ラグビーの醍醐味を言葉にする仕事をするんだろうなぁ……良い役割分担だ。
御幸くんは近いウチ出てきて、心の傷をえぐるんだろうか……どう料理しても美味しい食材なので、登場が楽しみ。

石清水くんがただ気弱なわけではなく、内にはラグビーへの強い愛情と過去への後悔を秘めていて、それを祇園くんが引き出し受け止めてくれる関係性の描写含めて、いいコンビだと思いました。
やっぱ道に迷っているキャラクターの真実をちゃんと見据えて、体を張って受け止めてやる信頼をしっかり尺使って作り上げてくれるのは、お話とキャラを好きになる上で凄く大事だと思いました。
祇園くんが『口が悪い』というマイナスポイントを煽りに使って、引っ込んでいた石清水くんの本質を引っ張り出す武器に使っている所とか、凄くスマートな描写だった。
『短所は長所』にどう説得力を込めるかは、祇園くんの低身長をプレイでどう見せるかという部分にも繋がるので、ここで料理の腕前を見れたのは非常に良かったな。

ポジションごとに求められる資質が違っていて、『一人はみんなのために、みんなは一人のために』ゲームを組み立てていくラグビーの特性を、W主人公がいい具合に分け合えそうなのも、期待が高まるポイント。
ラグビーするために生まれてきたようなボディの岩清水くんは素直にロックとかやるんだろうけど、低身長な祇園くんは走るポジションとかやるんだろうか。
しかしタックルに魅力を感じているようだから、フランカーあたりでも良い気がする……主役が下がった位置にいるとどうしてもコンタクトが減って、どうにも地味になるしな。
ここら辺は試合が始まってからのお楽しみだと思うので、楽しみに待ちたいと思います。


そんなわけで、男が男と出会い、ラグビーと出会い、運命と出会う、物語の出だしに相応しいまっすぐなお話でした。
出会いの衝撃を印象的に描くだけではなく、そこから何がどう変化し、世界がより輝いていくのかという予感が、色々広がる見せ方だったのが凄く良かったですね。
主人公として作品を背負う祇園くんは元気で可愛いし、相方たる岩清水くんは可愛い顔の奥に獣を秘めているし、キャラも好きになれる奴らだったなぁ……いい感じだ。

かくして少年は運命と出会ったわけですが、そこからお話がどう転がるのか。
山があるのか谷があるのか、練習をするのか試合があるのか人間関係がややこしくなるのか。
まだまだ先が見えない、だからこそ胸が躍る、そんなお話だと感じます。
神奈川高校ラグビー部の青春の今後を非常に楽しみに、まずは来週を待ちたいと思います。