イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プリパラ:第117話『女神、アイドル始めちゃいました』感想

転がる石に苔むさず、常に新しい波を探し続ける探求の女児アニメ、今週は押し寄せる可能性。
のんちゃんとちりちゃんの複雑な関係、野生児ペッパーちゃんと学校生活、神アイドルとプリパラ文化史、女神アイドル・ジュリーの初ステージと、非常にてんこ盛りな回でした。
バラエティ豊かなだけではなく、各要素が連動している上に今後の展開にダイレクトに繋がる回なので、そらーシリーズ構成手ずから脚本担当するよなという感じ。
たっぷり盛っているのに食い足り感じがしない、掘り下げの効いたお話だったと思います。

トリコロールも神コーデ争奪戦もジュルルの成長も一段落した今、話の中心はノンシュガー結成が背負いつつあります。
今回やったお話は将来のメンバー候補とのんちゃんの関係を描きつつ、新しい中心になり得る女神アイドルの参戦をぶっ込むという、プリパラの中軸にまつわる物語です。
この2つの軸が『ジュリィ-らぁら-のん』と『黒い女神-ちり』という関係を通じて、きっちり接点を持っているのは安定感が強まるところです。

とは言うものの、セレブちりちゃんとのんちゃんの問題は今回解決せず、相変わらずのんちりは高飛車ツンデレお互い背中向け合いの距離感であり、プリパラ内外のちりちゃんは対立したままでした。
このギャップは今後埋めて、『みんなトモダチ』というテーゼを別の形で証明する物語の舞台になるんでしょうが、ウサチャの言葉を思い出してのんちゃんからの歩み寄りが見れたのは、将来に希望をつなぐ良い描写でした。

今回の描写を見るだに、セレブちりとのんちゃんの関係を改善するより、セレブちりとラブリーちりの内面的対立を解決するほうが、重要度が高い感じもしますね。
プリパラ外のちりのんの関係性って、ちりちゃんが兎にも角にも平謝りしかしない現状だと一方通行にしかならなくて、あの自罰的に見えて閉鎖的な態度というのは、『もう一人の自分』を肯定も制御もできないことが大きな原因。
プリパラという『場』に更に大きな価値を付ける意味でも、一少女の自己実現の物語としても、どっかで超高飛車キャラの鼻っ柱を折って、まともに向かい合える状況を今後作るのかなぁなどと想像してしまいます。
セレブでもキュートでも、とにかく話が途切れちゃうのが停滞の原因だよな、ちりちゃん。


一方、もう一人の約束された勝利のメンバー、"人中の獅子"太陽ペッパーちゃんもたっぷり描写されていました。
大神田グローリア校長と協力し、『強いやつは偉いやつ』というペッパー理論を逆手に取って『ののん>ペッパー』という力関係を構築したのは、話を進める上で非常に大事です。
歩み寄りが功を奏さない『ちり>のん』、サパンナの掟に飲み込まれた『ペッパー>ちり』、猛獣使いな『のん>ペッパー』と、綺麗に三すくみになってんだな……三人の関係を『ジャンケン』として見取ったウサチャは、かなり優秀なマネージャーなんだと思います。

あと、なんだかんだ校長の遺髪(偽)を見てショックを受け、のんちゃんの調教を受け入れるぺっぱーちゃんは都会の母として校長を慕っている空気がムンムン出てきて、校長ファンの俺としてはありがたい限り。
あの人教育者としても、血縁関係の外側から子供を育てる存在としても、優秀かつ高徳過ぎるんで、ちゃんと慕われていると『おお……義人が報われた』って気持ちになれる。
リナちゃん、ふわりに続いて3人目だもんな……そう考えると、ふわり&ペッパーって校長を継母に抱く姉妹になるのな。
ナチュラルな暴力性を持つふわりを『あいつまじつえー』と評しているのは、笑いどころでもあり、文明化された知恵からは遠くても本質を見抜くペッパーちゃんの眼力表現でもあり、でしたね。

学校でのペッパーちゃんは学級崩壊因子といいますか、あまりにナチュラル過ぎて枠に収まらない人間サイズのライオンですが、ここでのんちゃんが首根っこを掴み、その自由さに制限を加えることで社会と順応する方向付けを担当するのは、ノンシュガー内部での力関係以外にも、なかなか面白いところです。
『現実で約1.5倍くらいある身長差、萌えッ!!』という話だけではなく、アイドルに興味がなく人間社会の規範から逸脱したペッパーちゃんが、らぁらやのんちゃんの価値観に接近してきて、個性を適切に活かすための足場づくりが、着実に進んでいる感じがします。
その社会的適切さはさておき、歌や踊りで人を引きつける能力を持ってたり、ワイルドな衣装ブランドに胸を高鳴らせたり、ペッパーちゃんが『アイドルをやらねければならない理由』が今回は結構見えて、今後につながる描写だなぁと思いました。
それはさておき、身長差萌えるけどね……ペッパーちゃんの素足がすらっと長いのが、よりのんペッパーの差異を強調してきて、コンビネーションの美味しさを見せつけてくれるわけよ。


そしてついに明かされるプリパラ文化史。
『人類誕生から、プリパラはあった』という壮大な設定が大公開され、一応二年ちょっとこのアニメ見てきた身としてはすっげーびっくりしましたが、まぁプリパラだしこんくらいはフカすよなとも思った。
今後ジュリィと黒い女神が話の軸になるに当たり、設定を公開・整理して『プリパラの女神』がどんな存在なのかちゃんと見せるのは、結構大事ですしね。
神アイドルに瞳キラキラさせてたらぁらを見ると、やっぱ彼女は特権的にイノセントな存在なんだなぁと再確認もしました。

文化史から直結する形で女神アイドルが降臨していましたが、ファルルやひびき(もっと言えばRLのジュネ様)のような圧倒的ハイパフォーマンスで制圧する感じではなく、非常にフレンドリーで魅力的な新アイドルとして描かれていました。
『ステージ大好き! アイドル大好き! ファンのみんなも大大好き!!』と言わんばかりの、感情表現の素直な王道アイドルでして、女神の看板以外にもファンが付くのは納得いきます。
曲調・歌詞・振り付けともに、オールドスクールスタイルを徹底した"Girl's Fantasy"もなかなか面白い仕上がりで、独特の魅力をしっかりアピールできていたと思います。
思い返してみると、プリパラに『80'sリバイバル』っていう個性はいなかったな、そう言えば。

文字通りの『独り立ち』を果たして姿かたちまで大人になってしまったジュルルですが、らぁらのことは相変わらず『ママ』として認識しています。
姉妹揃って身長差で俺を殺しに来ているワルイコちゃん達ですが、これまで受けた恩義と愛情を忘れたわけではないのは、とりあえず一安心。
ジュルルの発育は『食事が取れるようになる』『他者を許容できるようになる』『歩行がしっかりしてくる』と、色々段階を追って丁寧に描写されていたので、ジュリー降臨の前フリとして『二本足で立つ』赤ん坊としての描写が入るのは、細かくてよかったですね。
今後、ジュルルとして他人に迷惑をかけ、そのことで他人の成長(もしくは未熟)が見えてくるシーンはあるのかなあ……お話の軸として便利かつ強靭だったので、ジュリーとして動き出してももう少し欲しい気持ちですね。

今回ジュリーはとにかく『アイドル』としての価値観や魅力を描写することを第一に動いていて、設定や背景を説明するシーンはありませんでした。
起こっていることのデカさと唐突さからすると、次回予告のらぁらちゃんのように問い詰めたくもなりますが、まずはジュルルという『アイドル』を視聴者に体験させ、キャラクターを心のなかに住まわせることを優先する作り方は、これまでも活力ある描写を最重要視してきたプリパラらしさだといえます。
まぁジュリーの背景まで今回やってたら、こんなにたくさんの要素は扱えないし、プリパラ文化史に続いて解説だけでエピソードが埋まっちゃうからね……それより話を回し、ステージデビューで感情を掻き回す方向を選んだのは、強いし正しいと思います。

謎を深め脅威を強める強烈なヒキとして機能した『黒い女神』の乱入ですが、ジュルル周りの謎としてだけではなく、ジュルルのエピソードとノンシュガーの間をつなぐ媒介としても仕事しそうなのは、凄く良いです。
彼女がちりのパクトから指示を出していた存在だとすると、ちりちゃんの立場が『個性的な乱入者』から『らぁらと同じ、女神の身内』まで一気に近づいてくるんだよね。
これは女神アイドルの物語の関係者としてちりちゃんが巻き込まれる理由にもなるし、同じく関係者であるのんちゃんと向かい合う足場にもなるしで、良い所に設定のパイプを繋いだなぁと思います。


というわけで、多様な題材を大量に盛り込みつつ、それぞれを有機的に連携させ今後の展開を予感させる、見事なエピソードでした。
これだけいろんなことが起きても『ノンシュガー』と『女神アイドル』の二軸に収束する所、その二軸が『黒い女神』の存在によって一気に接近してきた所。
ネタの火力でパワー勝負してくるように見えて、非常に繊細かつ緻密な構成力も持ち合わせているプリパラの魅力が、最大限に出たお話だと思います。

ただ巧いだけではなく、今回提示された物語の種はどれも、お話が先に進んでどんな花を咲かせ、実をつけるのか楽しみになる、引き込まれるフックです。
とりあえずあえて一切説明無しで突っ走った『女神アイドル』の裏側を、来週色々教えてくれるようですが……正直非常に気になります。
それで終わらせずに、『ノンシュガー』軸のお話を先に進める食事会まであるようで、三期のプリパラがどれだけ楽しいことに貪欲なのか、よく分かる会になりそうです。
いやー、ホント最近のプリパラ、面白いし仕上がってんな。