イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイカツスターズ!:第27話『小さなドレスの物語』感想

いつか見た星の輝きを追い続ける夢色チェイサー物語、今週はブランドと夢のカタチ。
スターズではあんまフューチャーされなかった衣装ブランドに切り込みつつ、ゆめがひめの後追いを止めて白紙の未来を手に入れるまでのお話でした。
既に確固たるイメージを持っているリリィ先輩を、大目標であるひめとの中間地点に置くことで夢との距離を測量していく展開は、三者三様の個性がクッキリ見えて非常にグッド。
他のキャラクターの夢を簡勁に描写したり、『あの力』の探偵役であるすばるの話を進めたり、手際の良い話でもありました。

ゆめちゃんが夢見がちで軽薄で空疎なのは、物語からずっと強調されてきた彼女の個性。
わりかし低いところからじっくり上げていくスターズの空気感では、とにかく『S4になる!』という夢の形だけを追いかけ、その内実をあえて掘り下げない方向で進んできました。
しかし2クールを行き過ぎ、空っぽだったゆめのアイドル活動にも実績と成長が積み重なってきた今、『果たして、白鳥ひめの後追いをしているだけで良いのか』という疑問を掘り下げるタイミングが来たわけですね。

ミーハーな憧れから始まったゆめのアイドル活動ですが、それはひめとは全く異なるゆめの個性や実力を反映して、既に独特の色を持っています。
ひめ先輩は結構プレーンなキャラクターですが、S4で唯一ブランド経営の仕事もしていたり、凡庸でも無個性でもない独特のテイストを持っている。
『白鳥ひめ』という形式を真似することはこの色合を真似することであり、ひめが苦労して手に入れた自分らしさを塗りつぶす行為でもあります。

なので、ひめの後追いは基本的に否定されるべき行為なのですが、同時に具体的な夢をどうやっても思い描けないのも、ゆめちゃんの個性(弱点?)です。
先輩であるリリィは別格としても、肩を並べる同級生たちも、同じように憧れから始まったはずの小春ですら、自分らしさを探し求め、その先にあるS4の座を強く求めている。
そんな姿に焦れば焦るほど答えは出てこないけれども、『自分らしさ』は強迫観念的に求めれば求めるほど逃げていく、厄介な幻影でもあります。
ここら辺の危うさを指摘するのがローラなのは、相変わらずの賢さと適切さだし、ゆめちゃんのこと一番解ってるポジションは譲る気ねぇなこのアマって思った。

結局ゆめは、今回『自分らしいS4』という答えにはたどり着けません。
迷いを抱えたまま、白紙の『自分らしさ』をゆっくり埋めるためのスタートラインに着くところで物語が幕を閉じるのは、第10話におけるゆめ、第17話におけるあこにも通じる、スターズらしい物語のペースです。
圧倒的に正しい答えとは距離をおいて、地道に一歩ずつ、凡人らしい歩みで真実に辿り着くことで、掘り下げ見えてくるものも沢山あると思います。
答えがまだ見つからないことを完全には否定せず、疑問を見つけたところで一旦お話を終わりにするスターズらしさが、全面に出たエピソードだったといえます。


『自分らしさ』に迷うゆめに対し、リリィは明確な目標を持って歩く姿を見せ、一つのロール・モデルを担当していました。
前回アイドルとして頼れるところを見せたので、今回は先輩として頼れる部分を発揮して、自分なりの道を自分なりに示す活躍を見せる。
リリィのキャラクター捌きは、エピソードごとの狙いがかなり明瞭で、見ていて迷うことがあまりないですね。

『S4になって何をするか』という今回のテーマは、アイドルとしての個性やキャラクターにも通じる部分であり、スターズではあまり掘り下げていなかった『デザイナー』『ブランド』『ファッション』と絡めて描写したのは、なかなかいい目のつけどころだと思います。
モデルからの切込みは夜空が結構しっかりやってくれてるんだけども、服飾からの掘り下げは流石にキャラ数オーバーフロウするからか、バッサリ切ってたからね。
ただ漠然と夢を抱くのではなく、運命的な出会いを明確な目標意識につなげている当たり、ゆめの憧れであり続けるためにある程度距離を作らないといけないひめの不自由さを巧く補っていて、ゆめが未来を思い描く良い指針になっていました。
しかし『運命』まで持ち出してくるとは、リリエンヌも相当にゆず好きすぎだな……素晴らしい。

リリエンヌだけではなく、『S4になって何をするか』という骨太な問いを投げかけることで、様々なキャラの地金が見えたのも、今回良かったです。
既存のアイドル概念を飛び越えたいローラ、姉に並んで追い越したい真昼、アクトレス一直線なあこ、憧れから半歩踏み出した小春。
一年生それぞれの個性が、『S4になって何をするか』という問いかけによって綺麗に照射されていて、アイドルをテーマにするお話で一番大事場夢が非常にクリアに見えてくる、いいシーンでした。
特にあこ周りの描写が良くて、なんか急に仲良くなった感じもあった彼女がゆめと気の置けない付き合いであることが分かったり、キッチリ芯のある部分が見えたり、足りないところを補う見せ場だったな。


このようにゆめの夢を掘り下げつつ、色々目配せの聞いたキャラ捌きを見せている今回ですが、すばるの物語もぐいっと先に進んでいました。
ゆめちゃんが『あの力』に疑問を抱くと話の進みが遅くなるので、すばるがゆめちゃんに興味を持つ足場として使いつつ、謎を解明していく探偵役を背負わせるのは、なかなか上手いと思います。
最初はフレンドリーだったのに、『あの力』に話が飛び火した瞬間ロボットみたいな対応になるひめが、軽くホラーだったね。

すばるが『あの力』に興味をもつことで、こっち方面の重要キャラである学園長の出番も増えて、ただのイジワルや無茶振り、私欲でゆめちゃんに圧力をかけている『イヤな大人』ではないっぽいと分かってきました。
前半は謎を引っ張り舞台を整えるために、あんまひとの良い部分を出せなかった学園長ですが、『あの力』絡みのストーリーが進展してきた今、謎めいた物語推進装置から脱却できるチャンスが巡ってきた、という感じですね。
今後『あの力』の真実が(すばる経由で)ゆめちゃんに届く展開もあると思いますが、『何故隠していたのか』という疑問にある程度納得がいく答えが欲しくはあります。
ここら辺の整理は、わざわざ探偵役に指定したすばるの頑張りにかかってくると思うので、人数捌くのも大変だと思うけども巧くやってほしいところです。

他にも、最近いまいち存在感が消えかけていた教師陣の過去が分かったり、S4とブランド周りの設定が分かったり、細かい部分を整理するお話でした。
無論、こういう枝葉の部分をしっかり処理するためには、メインストーリーが堅牢で歯ごたえがあることが前提なわけで、ゆめの『自分探し』のスタートとしてしっかり作った今回だからこそ触れる部分かなとも思います。
こういうコンパクトな設定開示やキャラ付けがあると、キャラクターの立ち方がグッと変わるからね……先生たちも学生時代は、今のゆめ達のようにアツくキてる学生ライフ送ってたんだろうか……。


というわけで、後半戦開始にふさわしく、ゆめの夢が白紙であることに気づき、スタートラインを引き直すお話となりました。
ゆめが持っているものがが危うい憧れでしかないというのは、これまでも幾度か示唆されてきたテーマだったので、今回グッと深く掘り下げていったのは、来るべきものが来た感じがして非常に良かったです。
確固たる夢を既に持ち、そのために歩く背中を見せるリリィも非常に頼もしく、エキセントリックなアイドルとしてだけではなく、支え導く先輩としての信頼感も併せ持つ、良いキャラに育ってきた感じがあります。
ここから凡人・虹野ゆめがどういう道を辿って『白紙』の夢に己を書き留めていくのか、非常に気になるところです。

カッチリとテーマ性の強いお話を終えての来週は、なんか頭の弱い季節ネタっぽいムード。
それはそれで楽しいものですが、別にお硬いテーマではなくていいので、何か一つ話の芯があってほしいなと思います。
カッチリとした軸があったほうがキャラの個性を描け、大人数を手際よく捌くのが楽に、魅力的になるってのは、今回見えたので。
まぁ極限的に頭弱い方向で突っ走ってくれるのも、楽しくていいとは思うけどね……来週、どうなるんでしょうね。