イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ドリフェス!!!!!:第2話『及川慎はスゴいヤツ!』感想

向かう先もわからないまま走り出した夢のストーリー、二話目は及川慎編前編。
事務所や他のメンバーと親しくなりつつ、スーパークールな青担当・及川くんの表の顔をなぞるお話でした。
前回すっ飛ばしたドリフェス世界のチュートリアルをAパートで補いつつ、及川慎への興味と疑問をBパートで高め、スキャンダラスなヒキで次回に繋ぐ。
しっかりした作りの中に軽妙な笑いとしっかり立てたキャラ描写が織り込まれていて、巧くて楽しいエピソードとなりました。

第一話は主人公・天宮奏の戸惑いと興奮に視聴者をシンクロさせ、説明よりもドラマを、足を止めることよりも走り抜けることを重視したエピソードでした。
主人公の物語の『速度』を追体験させた結果、作品世界に視聴者を引き込むことには見事に成功しましたが、現在お枯れている状況やお話に絡まなかったキャラクターを説明するタイミングはスキップする結果に。
今回のAパートは、そこら辺を補う内容でした。

キャラとしては紫の千弦と緑のいつきがクローズアップされていました。
千弦はエキセントリックでいつきは穏やかな包容力担当ってのは判ったんですが、パッと見のキャラ以上の部分はステージを一緒にやったのに踏み込まなかった印象を受けました。
しかしこのアニメはゲームで活躍する『Dear Dream』が結成される以前の物語、いわば『ドリフェスZERO』であり、キャラクターが秘めている真意に近づき、隔意を埋めていくことこそがドラマの源泉になる。
なので、個別エピソードが回ってきていない現状では、『なんとなくいい奴ら』という空気にとどめておくのはむしろ正解かな、と思いました。
純哉くんは第1話であまりにも上手い活躍しまくったので、今回尺を割り振らなくても存在感あるしね……。

『真実に近づく』『隔意を埋めていく』というドラマ・エンジンに火が入ったのはむしろBパートで、慎くんが持つアイドルとしての実力と私生活の冷淡さのギャップに、奏が食いつく展開でした。
アイドル初心者であり、アイドルらしいことが何にもできない奏にとって、望まれるアイドル像を完璧に演じきる慎は憧れと興味の対象です。
しかし同時に、熱意と誠実さを行動理念とする奏にとって、一切の感情を込めずに結果を出す慎の振る舞いは、どうにも理解できない謎でもある。
この矛盾を解決しようともがいて上手く行かないのがBパートの展開ですが、ここでタメることで次回あるだろう解決がグッと胸に迫るはずなので、奏のガムシャラ主義が空転するのは良いことだと思います。
憂いを秘めたスーパークールガイなんて、熱血火の玉ボーイで氷を溶かされるために存在してんだから、今週すれ違ったのは来週の和解と理解を美味しく味わうためのスパイス以外の何物でもねぇな!


慎が奏を引きつけるもう一つの要因として、謎めいた曲『20:32』があります。
奏はこの曲を『失恋の歌』と誤読し、これを追いかけるように慎の『恋愛スキャンダル』が発覚する流れは、非常によく出来ているなぁと思いました。
アイドルはスポ根特訓したり、ファンにキャーワー言われて可愛がられると同時に、歌舞音曲を通じて世界を理解し、己を表現するアーティストでもあります。
アーティスト初心者でもある奏は『20:32』を『恋の歌』と誤読したわけですが、その目線はあらぬ噂をかき立て、慎に迷惑をかける世間の視線と一部カブる部分がある。
仲間を傷つけるつもりはないのに、心無い連中と似たようなスタンスを取ってしまった奏は、次回『20:32』という曲に秘められた思いと向かい合い、真実に辿り着く必要性があるわけです。

慎もまたアーティストとして、何らかの想いを込めて『20:32』を作り上げたわけですから、奏が『20:32』に向かい合う足取りはそのまま、クールボーイ及川慎の真実に迫る歩みでもある。
奏と慎がすれ違い、向かい合い、判り合うだろう道のりの真ん中に、『20:32』という曲を置くことで、キャラクターが『表現』に向かい合う存在であり、このアニメが『歌』を巡るアニメでもあると見せることが出来るわけです。
キャッチーでライトな印象を大事にしつつ、楽しいだけではなくテーマに真剣に向かい合う姿勢を話全体の構成で感じさせてくれるのは、やっぱ良いなと思います。

まぁ今回はあくまで出題編であり、答えが出るのは次回です。
が、出題段階で非常に鋭いヴィジョンを感じさせる話運びになっているので、ここら辺の期待感は裏切られないんじゃないかと思っています。
今回は奏のアプローチを慎くんが片っ端からスカす展開で、いい具合にフラストレーションたまっているので、最高に熱く真っ直ぐに晴らしてほしいもんです。


あとは事務所のシステムとか、社長のキャラとか、ドリフェス式アイドルスポ根特訓の内実とか、色々見せてくれました。
社長を代理人として、『ドリフェスという高いピークが、物語的クライマックスに控えている』『ドリフェスを成功させるためには、頼れる仲間と絆を高めなければいけない』という物語のルールを手際よく説明していたのは、見取り図が判りやすくなって良かったです。
社長と三神さんのお菓子漫才は、加藤脚本らしい上品なクスグリで大好きなので、今後もちまちま混ぜて欲しいところです。

特訓に関してもアイカツの血を引き継いで、思わず突っ込んでしまうような大時代なもの……が、更に過激化していました。
おそらく金属製のカードが150キロ以上で突っ込んでくるのは、防具つけてても死ぬときは死ぬと思いますが、まぁ男子が相手だからね、この位ヤんないとね。
こういう部分でスケールのデカいホラを吹き、派手にボケて見せることで視聴者のツッコミと笑いを惹きつけ、作品にフックする手管は、さじ加減を間違えると作品世界自体を壊してしまう難しい手法だと思います。
ドリフェスは大げさなネタを楽しく笑い飛ばしつつ、そこに込められたスポ根イズム含めて違和感なく飲み込める塩梅に調整されていて、凄く良いですね。


というわけで、タイトル通りの『スゴいヤツ!』加減を見せつつ、踏み込みきれない部分をあえて残す前編でした。
作中の情報提供が巧いので、奏が感じている疑問や不満がそのまま視聴者にシンクロして、凄く先が見たくなる作りなのが良かった。
『恋愛』というタブーに真っ正面から踏み込むヒキもスキャンダラスで、対象年齢を上げた利点を最大限に使いこなしていると感じました。

火の玉ボーイ奏の情熱は、氷の皇子慎の心に踏み込み、『20:32』に秘められた暗号を解くことが出来るのか。
いい具合にスカしてくれた分、来週来るだろう怒涛の展開に期待がメリメリ高まります。
ドリフェスの個別エピソード捌きが、どの程度なのかを見るテストケースでもあるので、色々楽しみですね。