イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない:第29話『ハイウェイ・スター その2』感想

危険な街を走り抜けるBAD BOYSの冒険譚、今週は命がけのチェイス後編。
スーパー露伴ちゃん祭りだった前回に負けちゃらんねぇと、久々に不良少年っぽいこと全開で"ハイウェイ・スター"トの知恵比べに主人公が奔走するお話でした。
無免許ノーヘル運転に携帯電話の窃盗、ガソリン泥棒、病院にバイクで突っ込むわ暴行ぶっ込むわ、ルール無用の大暴れが痛快な話でしたね。
しかしそんな暴挙も露伴ちゃんの命を守るためであり、重傷の噴上裕也をわざわざ『治し』てから殴り倒して、自分なりの『スジ』はキッチリ通す。
スーパークールな杜王町の守護騎士が、どういうルールで『日常』を守っているかが、よく見えるお話となりました。

ここ最近色んなキャラが己の物語を展開していたおかげで、いまいち見せ場のなかった我らが仗助くん。
今回はバイチェイスに頭脳戦、度胸勝負に友情タッグマッチと、いろんな見せ場がラッシュをかけてくる展開になりました。
仗助主役のエピソードらしく、バイクを『治し』て赤ん坊を透過したり、壁を『治し』て相手を足止めしたり、車を『治し』てガソリンを補給したり、敵を『治し』て倫理的ジレンマを回避したり、"クレイジーダイヤモンド"大活躍な今回。
そのインチキ性能が明るみに出ると同時に、安易に自分の傷を治すことだけは出来ない制約もちゃんと機能していて、最後の最後でモノを言うのは知略と腕力だったりします。
噴上の傷を癒やすはずの点滴を横取りして、最後の一発をぶち込むためのエネルギーを充填するところとかは、いかにもジョセフの孫って感じですね。

何しろ露伴ちゃんの命がかかった緊急事態なので、今回の仗助は『問題ない』で済まないワルをドンドン積み重ねていきます。
しかしそれは露伴ちゃんや赤ん坊の『命』を守るための戦いであり、ブチのめすはずの敵・噴上裕也ですら『命』を治してから殴り飛ばすという、譲れないルールを守って行動している。
どんなに破天荒なバッドガイに見えても、東方仗助は『命』を守るために戦っているのであり、それは常に『他人の命』であるというのは、"クレイジー・ダイヤモンド"の能力にも反映されているところです。
ココらへん、"ハイウェイ・スター"が『自分の命』を癒やすために『他人の命』を吸い上げるのとは、面白い対比ですね。

ワルっぷりを加速させていく仗助と同じように、康一くんも看護婦相手に『悪いヤツ』の顔を見せ、"エコーズACT3"で足止めをかけスタンド使いの居場所を探る『頼れる戦士』の表情を見せ、最後は犬の散歩という『日常』に帰還していく。
露伴ちゃんとのツンデレ仲直りが挟み込まれていることからも、やっぱ四部は『非日常』に脱線しつつ『日常』に帰還する運動が、作品の大きな軸なんだなぁと感じます。
ACT3はそうっとう汚いスラング使うんですが、『スタンドは精神的属性の反映』ってルールを鑑みるに、やっぱ根っこにワルが住んでるよね、康一くん……そういうところも好き……(唐突な由花子憑依)


億泰や露伴ちゃんやジャンケン小僧なんかを見ていると、『善と悪の綱引き』というのも、第四部……というかジョジョ全体の大きなテーマなのかなと思うところです。
スタンド使いが命のやり取りをし、お互いの魂をぶつけ合うことで、『悪』の危うい坂道を転がりかけた存在がギリギリ復帰するというモチーフは、何度も繰り返されるところです。
噴上もあのまま露伴ちゃんを憑き殺していたら、吉良の親父がハイテンションに狂う『悪』に引き寄せられ、戻れない道に突き進んでいたと思うわけですが、仗助は『命』を救うと同時に噴上の『善』も救っているわけです……多分。

スタンドという『非日常の力』が『悪』を引き寄せる引力はあまりに大きいので、それを『治す』ためには暴力の衝突が必要になる。
しかし主人公・仗助の『世界で一番優しい能力』は常に倫理的で、暴力を行使し実力によって『悪』を止めつつ、その付随的被害を最小限に抑える特性を持っています。
殴りつつ癒やす"クレイジー・ダイヤモンド"の力は、身体面だけではなく倫理や精神においても、『治す』ことに特化している、っつーことでしょう。
その上で『自分の傷は気にしない。『非日常』のパワーで治すことも出来ない』という縛りが、仗助の覚悟と高潔さを強調していて、良いヒーロー像だなぁと再び感心したり。

仗助の『治す』力が噴上に何を残したのかってのは、この先を見てみないとわからんわけですが、少なくとも今回の大立ち回りがなければ、康一くんは犬の散歩に戻ることもできなかったし、露伴ちゃんとも仲良く喧嘩できなかった。
仗助の戦いは常に『治す』戦いであり、『守る』戦いであり、戦士にして癒し手でもある仗助の物語がただの荒くれ物語にならない理由を、今回のエピソードはよく教えてくれたと思います。
まぁどーにもなんねぇド屑は、岩と一体化させたりライフル弾で撃ち抜いたりすんだけどさ……必ずしも『悪』の淵から引き上げられるってわけじゃないのが、『善と悪の綱引き』のシビアさを担保してていい部分なんじゃないかなと、僕は思いますが。


というわけで、見返してみると"ターミネーター2"のオマージュシーン凄いあるなぁってエピソードでした。
ここんところ露伴ちゃんと吉良メインの話が多かったので、仗助くんが思う存分大立ち回りするお話が見れて、彼のファンとしては嬉しかった。
もともと群像劇的側面が強い四部だけれども、やっぱ主人公がクールで強く優しい、良いキャラしてるからこそ、横幅広いお話が展開できるわけだからね。

そして次回はカメラを『敵』側に移し、吉良吉影の奇妙な『日常』を描く回です。
アニメになってしのぶさんがセクシーで可愛く演出されているので、こっちサイドの話も艶があって面白いんだよなぁ……。
殺人鬼と主婦の奇妙な愛とすれ違いが堪能できそうで、来週も楽しみですね。