イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ブブキ・ブランキ 星の巨人:第15話『右手の傷』感想

親子で受け継ぐ力と呪い、血縁重視の異能ロボットファンタジー、今回は的場井周作因業始末。
前回のヒキだったブブキ戦は結構あっさり終えて、黄金ちゃんと的場位おじさんとの曲がりくねった因縁を思う存分暴れ回させる、キャラクター掘り下げ回となりました。
一期からじっくりやった分、"人中の獅子王""おじさん見たら殺戮者"こと黄金ちゃんの凶暴さを思いっきり跳ね回らせ、どうにも決着の付かない復讐の意思と向かい合った展開は、なかなか食いごたえがありましたね。
他にもギーと薫子の関係がむっちゃ危うかったり、どう考えても絶美がギーの側近として潜入してたり、今後の展開への伏線も充分。
過去を拾い上げ、未来につながるエピソードでした。

というわけで、一期から露骨に隠してきた朝吹父殺人事件の真実が、白日の下に晒されるお話でした。
『的場井おじさんマトモだから、ぜってぇ殺してないんだろうな』とは思っていたんですが、監督責任果たしきれなくて部下が殺しちゃったんだから、自分が言っているように責任の一端はあるわけで。
しかしああもあっさり死んでしまうと、一足先にオヤジで大人になってしまった玄馬と戯れていたかった気持ちの行き場がなさすぎて、拗れるのもしょうがねぇなと思います。
かつては『卑怯者』と罵った身勝手な大人に、今や自分もなってしまった今、ぶっ殺した親友の娘に『卑怯者』と呼ばれるおじさんの気持ちやいかに。

そんなおじさんの告解を受け、黄金ちゃんは猛獣めいた暴力性を久々に剥き出しにして、ヒロインがしちゃいけない顔、取っちゃいけない行動取りまくりでした。
このエッジの効いたキャラ付けが黄金ちゃんの好きなところなんですが、『的場井殺す!』だけで自我を繕ってきた黄金ちゃんが、真実を知って己の暴力性を持て余す様子をじっくり描いてくれたのは、人間のカルマをみっしりと感じられて、大変良かった。
殺したくてしょうがないが、殺してもどうしようもない。
血まみれの現実に向かって、少女はどういう態度を取れば良いのか、お仕着せの答えではなくブブキ独特の掘り下げを見せてくれたのは非常に良かったですね。
そのためにはじっくりと悩み、土砂降りの雨のような感情を全身で浴びる時間が必要なので、主役の東と当事者の黄金ちゃん以外をさっくりと切り離し、余計な混ざり方をしないよう進めたのは、なかなかに巧妙でした。

ブブキ戦では過去の蓄積を反映し、最強のコンビとしていい戦いを見せていた右手ちゃんが、的場井との戦いの中では爪をむき出しにし、首をへし折るべく凶暴に吠える。
黄金ちゃんの変貌とブブキの形質変化がシンクロして、ただ可愛いだけではない異形の威圧感を生み出していたのも、お話をピリッと引き締めるいいネタでした。
的場井が言っていたように、ブブキの力は呪いのようなものであり、右手ちゃんから突き出した鋭い爪も、可愛い右手ちゃんの姿も、同じ魂の一側面なわけです。
それを『呪い』と決めつけ、黄金ちゃんには背負えぬ重荷だと決めつけてしまうのも、おじさんのエゴであり優しさでもあり……黄金ちゃんと的場井の因縁は、じっくり時間を使ってどうにも割り切れない複雑な味を抽出した、面白いエピソードに仕上がってきた印象ですね。

そしてあんだけ感情が激発しているのに、ただ優しく自主性を重んじて見守り、そっと隣り合ってあげるだけの東の立ち回りは、いつもながらガッカリであります。
他人が熱量を放出しているときは、その輻射熱を受けて己も温度を上げるチャンスなのに、余裕を維持して感情を激発させることもなく、『良い子』として最善手を打ち続ける主人公の、頼れるんだか頼れないんだかな煮えきらなさは、やっぱりもったいない気がする。
ちょろっとでも良いので、あまりにも濃厚な朝吹と的場位の因縁をどう受け止めるのか、東自身の感情が見れる場面が欲しかった……何冷静に情報聞き出しとんねんキミは。
まぁ東が物語の進行役として優秀なのは間違いないし、それに助けられてこの話も進んでいるわけですが、主役がやる仕事じゃないよ、ヤッパ。


アジアチームと一通りの決着がついて、お話のエンジンが一時的にストップする今回。
おじさんが謝罪と一緒に『礼央子を助ける』というクエストを持ってきてくれたお陰で、東とお話全体に進むべき方向が示されたのは、結構大事だと思います。
『優しい』東くんは『かわいそうな』礼央子を助けに来てくれるんでしょうが、そういう上から目線は一期最終回で礼央子に拒否されたアプローチなわけで、東が別の方法論を探してくれるかもなぁという期待があります。
まぁなーんもかわらず、ただただ正しい選択肢を淡々と打つのかもしれんけども、チャンスはチャンスなので、的場井おじさんは良いトス上げした、うん。

話運びが上手かったという意味では、アジアチームとのブブキ戦を圧勝気味に終わらせたのも非常に良かったです。
精神状態が安定していて、ブブキとの関係も良好、戦闘経験値もたっぷり積んでいるとなれば、日本チームは確実にアジアチームより『格上』なのであり、迷えるアジアチームが自分の物語を成功させられるよう、アドバイスを送る側に当然なる。
物語の蓄積として予期できる結果にさらっと辿り着きつつ、的確なアドバイスを対手に贈る少年たちには、ちょっとした頼もしさを感じてしまいました。
アレだけ色々あったイワトオシを『気に入っているッ!』と柊が断言した瞬間、オジサンちょっと感動しちゃったよ……みんな変わったねぇ。

こっちでも東は身内に明瞭な助言を贈ることが出来ていなくて、形だけでも上に立とうとする桜子からの反発に一手差し返すでもなく、悪い大人の代表格であるギーに良いように利用させてしまっています。
礼央子が悪役として機能しなくなった以上、薫子との確執とそれを利用せんと企むギーの陰謀は、今後お話を引っ張る大事なラインだってのはよく分かるんですが、自分の領域から踏み出さない結果クソ親父に妹も礼央子も良いようにされている状況は、ちと失点が過ぎる。
薫子の虚栄は東と明の真意が伝わらない(方法でしか、東がコミュニケーションの手を伸ばさない)ことが主因だと思うわけで、これを乗り越えてちったぁ真正な付き合いに踏み込むって成長を、東にさせるつもりがあるのか、ないのか……普通に考えれば直すところなんだけども、東のロボめいた『良い子』っぷりは製作者にとっても美点と受け取られている感じあるからなぁ……。

エピゾをリーダーとする米国チームも大活躍が描写されたり、薫子が炎帝の心臓を担当することでアジアチームが元の位置に戻ったり、各国チームのポジションも結構動きました。
相変わらずのバカっぷり&仲良しっぷりだったアメリカチームだけど、パワー任せの真っ向勝負と思わせておいて『技』を使ってくるのは、なかなかに強キャラオーラが出てて良い。
ギーが着々と野望を進める中で、バラバラになった礼央子チームが起爆剤として機能しそうな感じですが、新走と石蕗先生がまだ顔見せてねぇので、どう転がっていくか分かんねぇなぁ。
彼らは出てくるだけで話が面白く回るという信頼感があるキャラなんで、じっくりと再登場を待ちたいと思います。


というわけで、少女が苦い復讐心を涙と一緒に飲み込み、少し大人になる話でした。
父親になり大人になったはずの的場井が、『礼央子を助けてくれ」『過去を受け止めてくれ』という、身勝手な子供のような願いを叩きつけてくる展開とか、心地よい物語的捻れがそこかしろこにあって、非常に良かった。
ただの萌えキャラではない、金毛の猛獣めいた黄金ちゃんの業も堪能できたし……ガチで殺意剥き出しにしてくる黄金ちゃん、やっぱ最高に魅力的。

台湾編が一旦落ち着き、的場井オジサンが持ち込んできた『礼央子の救出』というクエストをどう扱うかが、今後の軸になってくると思います。
ギーが礼央子を抑えている以上、その奪還はギーの影響下にあるブランキチームとの対決を意味するわけですが、どういうふうに状況を回していくのか。
やっぱブブキ、二期になってから話が立ち止まらず、むっちゃおもしれぇな。