イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プリパラ:第120話『甘くはいかないノンシュガー』感想

奇人も変人もみんな生きてる笑ってる、多様性花開く現在のおとぎ話、今週はついに結成ノンシュガー。
第113話から結構丁寧に話を積み上げてきたノンシュガー、ようやく結成……なんですが、曲にもあるように『甘くなるのはこれから』な、問題全部が解決するわけではない終わり方でした。
お互いの受け入れがたい部分や譲れないこだわりを残したまま、それでも一歩ずつ歩み寄っていくトンチキな姿が非常にプリパラらしかったです。
乗り越えるべき課題が残っているということは、これからもまだまだノンシュガーの活躍や変化が見られるということでもあり、一つの記念碑としても、三人のスタートラインとしてもまとまった、良いエピソードでした。

というわけで、ジャニスがメタな言い回ししていたように時間がない中、のんちゃん主導でノンシュガーが歩み寄っていくお話でした。
プリパラは元々各キャラのエゴが強い物語で、それが大きな魅力なんですが、制御しきれずにお話が大暴走したり、本来あるべき筋に戻らなかったりすることも多々あります。
ノンシュガーはちりの高飛車キャラやぺっぱーの野生児っぷりを適度に暴れさせ、キャラ『らしさ』を強調させつつどっかで折衝して、なんとか脱線しないよう取り回している印象を受けます。
今回もペッパーの『ウサチャ食べたい』ネタをニンニクで抑えたり、セレブちりと現実世界の約束の乖離をジャニスの規律大好きキャラで押さえ込んだり、色んな場所にブリッジかけてなんとかまとめていた印象。

一期からサブとしてキャラ描写があったのんちゃんは、小悪魔でおしゃまなキャラを少し抑えて、三人をつなぐ奮闘ぶりでした。
新キャラは濃い目のエゴイズムで暴走して、プリパラ世界で埋もれないキャラを見せないと行けないから、ある程度自分の話が終わってるのんちゃんがまとめ役になるしかねぇよな……。
ペッパーの獣性を制御したり、リアルちりの抑圧に向かい合ったり、セレブちりの高飛車に文句を言ったり、舵取り役として色々頑張っていました。
メチャクチャな仲間たちに振り回されつつも、姉とは違ったタフさで状況を引っ張る頼もしさは、さすが主役の家系という感じだった。

凸凹した三人がどうにか共通点を見つけられるよう、ちりの『華道』という要素を巧く拾っていく話にふさわしく、のんとペッパーが『温室』で仲良くやってるところから話が始まるのは、よく計算されていたと思います。
のんペッパーにはそこまで問題がないんだけども、ちりとペッパーの間に高い壁がそそり立っていることが、ノンシュガー結成最大の障害だからね。
これに加えて、抑圧されたプリパラ外のちりと、過剰に開放されたプリパラ内部のちりの和解ってネタも、同時に前進させるのが今回のミッション。
プリパラは人格が漂白された『良い子』だけを認めているわけではないので、『悪い子』という個性を残したまま『ノンシュガー結成』という形式(であると同時に、今後変化を生み出す内実にもなるもの)を拾い上げる落とし所は、いいバランスでした。
ノンシュガーが手に入れたものと、彼女たちを見守る存在たちを一つのフレームに入れて描くユニット結成の儀式も、恒例の儀式とはいえ色褪せない神聖さがちゃんとあって、縁側で見守るマスコットたちにもなんかほっこりして、良い絵だった。

散々野生児ネタで暴食の限りを尽くしておいて、イイハナシできそうなタイミングでは迷わずエモいエピソードを公開し、シナリオミッションを達成する足場を作るペッパーは、場をよく見ているキャラだと思う。
事前にちりパパのニンニクネタをふることで、『んで、ウサチゃは食うの? 食人なの?』という根本問題を先送りする伏線を用意しておくところとか、強かな計算を感じます。
今回はちり軸の話だったんであくまでサブプロットに留まりましたが、今後ペッパー軸のエモい話をしっかりやれば、三期終了時にサパンナに帰るとき「ウサチャを食べるんでしょ!」「もう……食ったさ……腹ァいっぱいだ……」と綺麗に収めて号泣できると思います。(流れ出すLUNK HEAD"決戦前夜")
サパンナ復活エピは『花』というキーワードでちりとの接点を作るだけではなく、『雨乞い踊り』という歌舞音曲にアクセスすることで、今後のアイドル活動への道も引いている所が良いね。


今週は『良い子』であろうとしすぎて自分を抑圧しているちりが、友の力を借りて祖母と向かい合い、抑圧を少し緩めるまでの話としても読めます。
いかにもクソババアなオーラを出しつつも、ちりの成長を望んでいた祖母の描き方はなんともプリパラ的で、巧く視聴者の印象を操ったなという感想。
『家族間の強要・抑圧』というシリアスな話を、冷凍ビームやロリババア変身など、ネタ要素濃いめにして世界観から浮かないように滑らせていくのも、プリパラの特色であり強さかなと思います。

現実世界で祖母と和解し、キングプロテア(花言葉は『王者の風格』、プロテアだと『自由自在』『豊かな心』)にノンシュガー全員の個性を託して活かしきったちりは、今後プリパラで抑圧を開放する必要性が減っていくと思います。
セレブちりは相変わらず他人と馴れ合わない、孤独で孤高の存在であり続けているわけですが、そえはこれまで祖母から受け取った『華道家元として、顔色をうかがって達成しなければいけないセルフ・イメージ』の反映です。
現実世界で抑圧が弱まり、プリパラ世界で身勝手さを抑圧するノンシュガーに取り込まれたちりは、分裂し暴走した『現実の私』と『理想の私』を、少しずつ和解させていくんでしょうね。

まぁ今回は『時間がない』ので、ジャニスが秩序属性を全力で振り回し、とりあえず話をまとめてたけどね。
ペッパーに対するのんちゃん(と、その後ろ盾になってる大神田校長)と同じで、猛烈な個性が暴走するのを抑えるべく、身近に監督役を配置するのがノンシュガーの描き方なんだろうな。
ジャニスも頭の固い委員長キャラを維持したまま、話の大筋が巧く収まるよう色々立ち回ってくれていて、頼りになる赤ん坊だと思います。


まだまだ尖りすぎた個性がお互いをこすり、不協和音もたくさん起きるけども、ノンシュガーという『形』が生まれることで、個性どうしの、そして個性と自我との距離感がより適切になっていく。
今回ユニット結成という結果にたどり着いた彼女たちの『今』を、可愛さ全開の"シュガーレス×フレンド"はよく表現していたと思います。
トリコロールの"Mon chouchou"の圧倒的カリスマとはまた違う、期待のアイドルに相応しいフレッシュな曲調とダンス、ちょっとデコボコしたパフォーマンスは、挑戦者としてらぁら達を追いかける立場にエールを送る、良いステージでした。
ドラマを積み上げた結果初ステージに立って、そこがまたドラマを簡勁にまとめ上げる象徴にもなっているというのは、芸事をテーマに選んだ作品らしい構造だね、やっぱ。
スーパーサイリウムを手に入れられなかったのも、今後それを追い求める中で判り合うだろう未来を予感できて、まだまだお話が転がる余地がたくさんあると思えてグッドね。

今回は無理に先輩アイドルたちを登場させず、ノンシュガーだけを舞台で暴れさせる構成になっていました。
ここでスーパーアイドルたちが手を差し伸べてしまうと、自分たちだけで成果をもぎ取った感じが薄れてしまうので、あえてカメラから外して展開させたのは英断だったと思います。
プリパラは明るく賑やかな祝祭の国なので、キャラ同士の絡みはそのうちやってくるだろうしね。
キャラの個性を活かしたままブリッジを架けるテクニックといい、やっぱ三期はきっちり青写真を描いてから話を転がしてる印象だな。


というわけで、これまで器用に積み上げてきたフラグを最大限活かし、キャラにお話しの都合を飲み込ませないまま、『ノンシュガー結成』というノルマを無事達成するお話でした。
話の無理を強引にまとめるのではなく、『まだまだ始まったばかり』という方向で収めて、今後の相互理解に含みを持たせて続けたのは、まだまだノンシュガーの関係構築が見たい視聴者としては嬉しい限りでした。
ニンニク嫌いネタは相当な豪腕だが、強引でも飲み込ませるパワーがあれば、それが正着なのだ。

ノンシュガー絡みの話も一段落して、さて女児アニ特有の販促回だ! 銭ゲバだッ!! ってのが来週のお話。
コスモ&あじみの高年齢コンビが思う存分暴れそうで、彼女ら好きな自分としては楽しみです。
今回の変化を受けてノンシュガーの距離感がどう変わったかも、少し見れると嬉しいかなぁ……。