イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ブブキ・ブランキ 星の巨人:第18話『蝶と死刑台』感想

旧人類の蛹から星の巨人へと生まれ変わらんとするスターチルドレン・アイアンジャイアント・サーガ、今週は生死の境目で。
前回大決戦の果てに、礼央子を救出し妹を敵地に置き去りにした東くんが、ヒロインとキャイキャイしたり過去を思い出したりする話でした。
礼央子というキャラの強いヒロインを手に入れることで、ようやく主人公に体温を感じられるようになってきて、話が面白くなってきたゾッと。
もう一人の主人公・薫子も自分の本音をようやく剥き出しにして、コッチも安定して加速中……面倒見るのが兄貴ではなく、絶美なのはどーなんだ主人公。
決戦の後の落ち着いたエピソード故に可能な、じっくりとキャラを掘り下げ対話させる展開でした。

つーわけで、露骨なW主人公体制が、全体的に良い方向に行っているブブキ二期。
綺麗事しか言わない東のロボット人間っぷりが最大の障害だったわけですが、礼央子さまと化学反応することで、いい具合に体温が宿ってきました。
主人公に血液が通うと、やっぱ話全体が一気に機能してくる感じがあるので、『東も人の子なんだぁ……』と思えるシーンが今回ラッシュをかけてきたのは、凄く良いと思います。

礼央子を説得する言葉は相変わらず形通りの優等生なんだけども、そこに『蝶』という独自性が加わることで、借り物ではない自分の言葉になっていたのは非常にグッド。
一回負けた礼央子様が非常に受けの巧い、素直なヒロインをやってくれていることもあるんだけど、東の言葉が礼央子の苛烈な考えを和らげ、土の温かさを思い出させる流れは、お互いの存在がお互いを変えていく、非常に正しい主人公とヒロインの間合いだったと思います。
『蝶』の生態に気づくのはオヤジと世界を回ってきた過去が生み出す知恵だし、死に瀕して『世界を回りたい!』と叫ぶ薫子の願いとも呼応するし、象徴の上手い使い方でした……3DCGのチョウチョ、単純に綺麗だったしね。
これ、逆に言うとさんざん付き合ってきたチーム東の仲間が、東の地金を引きずり出すには腕力が足りなかったってことでもあるんかな……黄金ちゃん、出発前にインタラプトかけてヒロイン力をアピールする目ざとさはいいが、もう一歩仕事しないとヤバいで。

過去回想で、母の胸にすがって父の死を嘆く瞬間を見せたのも、東の人間味をブーストする良い見せ方でした。
単騎で薫子救出に向かおうとする姿から判るように、東は他人に頼らない優等生であり、それが過ぎて体温を感じられないシーンが山盛りあった。
そういう根っこは変わらず、知らないおじさんのリムジンに勝手に乗っちゃうわけだけども、しかし今回涙を見せたことで、この少年も完璧なロボットではなく、弱さのある『人間」だとわかった。
正直『もっと早くお願いしますよォ!』って感じではあるが、最後までそういうシーンが無いよりは遅くやってきたほうが全然いいし、キャラを一気にドライブさせるパワーもちゃんと存在するアニメなんで、このまま一気に主人公力を上げてほしいもんだ。
しかし、兄妹揃ってチョロいな……ここでラスボスと会話させておかないと、最終決戦に血が通わないって判断はよく分かるけどね。


礼央子様は一期で主役を食うほどキャラが立ったので、苛烈な弱肉強食イズムに走る心理も理解できるし、そこから救ってあげたいと視聴者が願う、可憐なヒロインにもなり得ている。
そういう彼女に必要な一手を東が指すことで、『視聴者がやってほしいこと』をしっかり叶える主人公としての信頼感も生まれるし、ストーリー的にも好ましい変化が生まれる。
相互の感情が熱を持って交わり、お互いを変えていく変化の気持ちよさってのが、やっぱこれまでの東には足らなかったんだなぁ……と確認する掛け合いでした。

礼央子様が頑なな『自分らしさ』を崩し、宿敵・汀の息子の言葉を受け入れる気持ちになれたもの、南仏の美しい光景あってこそ。
その光景を醜悪なるギィも共有していて、むしろそこを『人間』だけのものと思いつめるからこそ、ブブキとブブキ使いを全滅させ『人間』の世界を取り戻すという野望も加速すると考えると、結構皮肉な美しさだわな。
ギィが"赤い靴"を読み聞かせる時の穏やかな口調は、彼がやっている『人間』中心主義の危うさ、おぞましさをむしろ強調していたし、同時に『人間』の範疇に収まる相手にはどこまでも優しいギィの一面を見せてもいました。
ヘイトアーツが巧いだけじゃなくて、結構色んな顔を持ってて面白い男だよね、ギィ。

礼央子一派を『乗り越えるべき壁』としてきた一期では、想像もつかなかった礼央子様の猛烈なデレ。
白ワンピ&裸足でナチュラルさをアピールしてくるあざとさが素晴らしいと思いますが、主人に引っ張られる形で四天王もドンドン面白オジサンと化してきていて、テンポの良いコメディで楽しませてくれました。
このアニメのハイテンションで勢いがあって、でも下品じゃない笑いは僕すごく好き。
ストーリーの展開のさせ方も大きく変わったし、立場が変わって色んな顔が見えてくるってのは、ブブキ二期の特長なのかもしれませんね。


んで、クソみたいな大人に騙されまくる人生な薫子。
死刑台でギロチンが迫って初めて父母への慕情とか、生への希求とか剥き出しになる展開は『あ、やっべ、ちょっと兄貴と親父憎ませすぎたわ……ギリギリに追い込んで、本音を引き出させんと……』という危機感を、少し感じた。
しかし『無意味に高い場所に登る』という行動が、序盤強調されていたことからも判るように、薫子の虚飾はどっかで引剥されないといけない弱点だったわけで、絶美が適切に死のイニシエーションを組み立てた感じがあります。

薫子がどんどん地金を出して、等身大の少女としての可愛げを加速させるに従って、ギィの『こいつとっとと死ねよ』ポイントは急上昇します。
心の底ではパパママ大好きな薫子に、『結婚』というキラーワードで思うように操り、その象徴である『指輪』を血で汚して気絶させるところとか、見事なヘイトアーツだった。
『他人が重んじているものを蔑ろにする』というのは悪役を立たせる基本技術だと思いますが、『結婚指輪』というフェティッシュを活用することで、『人間』の世界を取り戻すためには欺瞞も暴力もためらわず使い、ブブキ使いを『人間』とは認めないギィの性根が強調されてます。
ブブキ使いが異形の知的生命体を『人間』と認めていくのに対し、『人間』の範疇を狭く取り、その価値観を謀略で押し付けてくるギィとの対比は、この話が何書いているか判りやすいやな。

そして今回最大限に株を上げた、子供大好きうわキツお姉さん・間絶美。
秘書として出てきたときからわりとバレバレ(何しろ名前が『Double/二重』だもんな)だったんですが、薫子が虚飾の殻を破り、本当の自分に向かい合えるイベントまでしっかり演出して本性を出したのは、場をよく見たプレイングだと思います。
まぁ徒歩で来る兄貴待ってたら何年かかるかわっかんねぇし、可愛い薫子ちゃんが生体ユニットにされるのはマジ勘弁だしな。
今後ロシアチームの鎌を絶美が引き続き使うのなら、卑怯な策略でぶっ殺された彼らの志を絶美が引き受けてくれる形になるので、今後も思う存分調子に乗ってほしいもんです。
やっぱ四天王は良いキャラしてるなぁ……新走くんも、早く復帰しねぇかな。(単純に木村昴が好きボーイ)


というわけで、それぞれの立場で決意を固める兄妹のエピソードでした。
キャラクター相互の熱が混じり合う交流をしっかりやりつつも、話全体が停滞せず進んでいる感じもあって、ブブキ二期は本当にいい塩梅で話を回しています。
玉中の瑕疵だった主人公・東もようやく人間が見えるシーンを積み重ねてきて、今後もこのペースで血の通った行動を積み上げて欲しい気持ち。
とりあえずラスボスとサシで会話する状況になっているので、借り物の言葉ではなく、東個人の激情をしっかり引き出し、向かい合ってほしいもんですね。