イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない:第32話『7月15日(木) その2』感想

最終決戦に向けて運命が加速するアーバン・アクション・ホラー、今週は決着と開戦と。
大胆にエピソードをアレンジして展開する前回の流れを受けて、"スーパーフライ"との決着を付け"エニグマ"とのバトルが開始、露伴ちゃんも奇妙な訪問者を相手に好奇心を加速させる。
同時並列で物語を続けていくことで、『7月15日』という一日がどれだけハードで、どれだけ核心に迫る一日なのかがはっきりと感じ取れる、面白い作りになってきました。
知略バトルの冴え、不気味な敵スタンド使いの存在感も強く感じ取れ、ワクワクが加速していく第二弾となりました。

というわけで、複数のエピソードをシャッフルしながら送る野望の構成、今回は豊大との決着と『エニグマの少年』との邂逅を軸に展開していました。
こうして縦に繋いでみると、”スーパーフライ”との激闘からすぐさま噴上を従えての康一探索、ヤバすぎる"エニグマ"との接触と、仗助が非常にハードな一日を送っているのがよく分かる。
この激動加減を表現するために、エピソード単位ではなく時間経過単位でカットアップする今回の構成は優れた武器になっているし、複数のエピソードをダレることなく見せて尺を圧迫することも可能になっています。
んー、面白い。

"スーパーフライ"との戦いはジョセフ直系のクレバーさが光り、『戦う前に勝敗は決している』鮮やかさで、仗助が勝利をゲット。
ミキタカが前回そうしたように、『来るな』と言われたからこそ真心に報いるべく死地に飛び込んでくる仗助のヒロイズムが、来るべきものがちゃんと来る気持ちよさに繋がっています。
『鉄塔限定で強い』という豊大の強みを印象的に見せつつ、それを上回るクレバーさで利用し返して勝ちを拾いに行くところも、貫禄があってよかった。
トンチキな色彩も奇妙なバトルにあっていて、そんなに長い尺じゃないですが、"スーパーフライ"戦はアニメ版スタンドバトルを堪能できる、いい勝負だったと思います。

豊大は根性の根本まで腐りきったゲスってわけではなくて、一発キツいの入れられれば暴力を捨てられる普通のキャラ。
ここらへんの『スタンドの魔力から引き戻すためにも、暴力を適切に使うのが大事』ってのは、康一の情報を手に入れた後噴上が仲間に加わる描写とも共通する部分ですね。
『街』という変えるべき場所を舞台にしているせいか、四部は『悪』の誘惑に晒されつつも主人公たちとの対決で道を正し、人間としてあるべき精神に収まり直す話が多いなぁ。
主人公・仗助が"クレイジー・ダイヤモンド"という『治す』力を持っていることと、悪の影響から『治され』るキャラが多いのは、関係があるかもしれないですね。


豊大のように暴力を捨てられる人間もいれば、根性ねじ曲がった生まれついての『悪』もいるのがジョジョ世界。
エニグマの少年』は家族は的にかけるわ、安全距離から陰険に監視を続けるわ、救いようのない『悪』の匂いを感じさせる立ち回りでした。
その異常性を強調するべく、『恐怖のサイン』をスタンド能力の引き金にし、それを有効活用するべく恐怖を演出できるドブゲロっぷりは、印象的に演出されていました。
やっぱ色彩やタイミング、レイアウトを巧く使って、視聴者の気持ちを操れるホラーの手腕は四部アニメのパワーだなぁ。

笑うより先に凍りつく『おまえのパンティーだ』とか、全てを紙にしてしてしまうエグい能力も邪悪なんですが、何よりも"エニグマ"が発動した時の演出が非常に冴えていました。
三次元と二次元の境界がなくなり、エッシャーの絵画のごとく朋子と"エニグマ"が混ざり合う異常性は、『エニグマの少年』の異常性と邪悪さを見事に表現しており、原作のセンスを見事にアニメ化した見せ場でした。
こういう奇想を紙に落とし込める荒木先生も凄いし、その表現力をアニメというメディアで再現・強化出来るスタッフも、やっぱ凄いやね。

アンジェロを思い出させる『身内を的にかける』というタブーに踏み込んだお陰で、仗助は恐怖よりも怒りが先に立つぶっ殺しモードに入っています。
早々簡単には崩れない正義の騎士を、卑劣な策略でどう崩していくかというのも楽しみだし、何より今回はヒキがいい。
三次元が『折りたたまれる』という"エニグマ"の異質性を最大限に活かし、噴上を驚き役に配置してたっぷり引っ張る終わり方は、次回が楽しみになる牽引力に満ちていました。

傷を受けても立ち止まらず、友のために駆けずり回る仗助と、それに同調しつつも実利の一線を越えない噴上。
歯がゆいと同時に、"エニグマ"の異常性はしっかり強調されているので、足踏みしてしまう気持ちもよくわかります。
ここでしっかり歯がゆさをタメるからこそ、一線を越えた時のカタルシスもグッと高まるわけで、愉快にその能力の高さを強調した復活シーン含め、噴上はいい入り方したなと思います。


奇妙といえば、露伴ちゃんに迫りくる奇妙な訪問者もむっちゃ不気味で、怪しさ大爆発でした。
いきなり"ヘヴンズドアー"ぶちかます破天荒で安心させておいて、どうやっても背中を見たくなる怪しさをこれでもかと強調し、虎の尾を自ら踏みに行く露伴ちゃんの行動にも、思わず納得してしまいました。
イヤだってさぁ、あのエクソシストまがいの階段の昇り方はどうやったって気になるだろ……動きがつくと、原作よりさらに怪しさが加速するわな。

この後露伴ちゃんも大きな厄介事に巻き込まれていくわけですが、"エニグマ"との決着がつくことで康一が開放され、こちらの事件も落着する。
"スーパーフライ"から"エニグマ"に繋がるドミノのように、露伴ちゃんの事件にもエピソードを飛び越えたリンクが生きてくるわけで、それをどういう風に見せてくるか、今から楽しみでもあります。
その前に"チープ・トリック"をどう見せるかだな……陰湿な恐怖を煽るのが四部アニメは巧いで、
期待が高まるね。


というわけで、一つの事件が終わった安堵などなかったように、あっという間に次の事件に飛び込んでいくエピソードでした。
この矢継ぎ早な感じ、離れた場所にあった物語のドミノがドンドン連鎖していく感覚は、複数エピソードを再構築したこのアニメでしか楽しめない、新鮮な面白さです。
切り貼りしてまとめ直すことで、仗助にとって『7月15日』がどれだけハードデイズ・ナイトだったのかも再確認できて、アニメとして四部を見ている醍醐味を味わえる心持ち。
今週は描写されなかった『川尻早人の事件』も控えているし、まだまだ続く『7月15日』をアニメがどう料理してくれるのか、非常に楽しみですね。