イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイカツスターズ!:第31話『はばたけ、SKY-GIRL』感想

一人の少女が去り、それでもショウは続く。
大きなコーナーを曲がった後の新イベント、アイカツスターズ第31話です。
学年と組の枠を取っ払ったオータムフェスを舞台に、真昼をS4二人がかりで引っ張り上げる回でした。
後輩の面倒をきっちり見て開花させることで、S4の株や格もしっかり見えてくる、面白いフェス開幕になったと思います。

というわけで、『負け』に魂を揺さぶられた主人公二人をクールダウンさせる意味でも、真昼が話しの真ん中に座った今回。
第15話というかなり早い段階で姉との確執を解消し、キャラクターが早々に安定した真昼ですが、それは同時に主役として走るべきドラマが薄い、ということでもあります。
無論、小春やローラのフォローアップをしっかりやったり、コメディ回のワンポイントリリーフを努めたり、物語を作る上でありがたい仕事は沢山やってくれているのですが、優等生ゆえの難しさという感じでしょうか。

今回は夜空とツバサ、二人のS4がしっかり引っ張り上げる形で真昼に実力を付けさせ、トップアイドルの方法論を実地で学ぶ展開になりました。
『姉に追いつく』という目標はあっても、それを支える具体的な成長イベントがやや薄かった真昼にとって、じっくり尺を使って色んなアイカツに取り組む話は、キャラの説得力という意味で必要なエピソードだったと思います。
イデアの出し方や取りまとめ方、トンチキなスポ根特訓やパジャマパーティーなど、バラエティ豊かな経験を共有することで、ユニットの魅力を理解していく。
最初は寝坊、二回目はアイデアを形にするための粘りという風に、二つの『遅刻』で挟み込むことで真昼が手に入れたものがわかり易くなる構成は、なかなか良かったと思います。

真昼が引っ張り上げられるお話である以上、ドレスデザインという直近の成果だけではなく、エピソードをまたいで今回の貯金をどう活用するかが、凄く大事になってきます。
オンとオフの使い分け、同じ経験を重ねることで生まれる絆。
今回真昼が学んだことが今後彼女の、そして一年の仲間たちのアイカツにどう関わるかが、今回のエピソードの値段を決めるのでしょう。
ここらへんは今回だけでは判別しかねる部分なので、巧く有機的な繋がりを構築し、過去のエピソードが無駄にならないような明瞭な成長描写を、今後期待したいところですね。


真昼を引っ張る形になった夜空とツバサでしたが、多様な経験を与えるというエピソードの眼目を活かす形で、彼女たちの色んな表情を見ることが出来ました。
夜空は妹大好き病患者だけではなく、素養のある後輩に新しい世界を見せる先輩の頼もしさを。
ツバサは厳しい先輩以外の、年頃の女の子としての砕けた魅力を、それぞれ見せてくれました。
1エピソードの中で色んな表情を切り取れるのは、他のキャラを支えるサポート役ではなく、話の中心に座る主役の特権といえますね。

個人的には特訓シーンの激しさよりも、パジャマパーティーの柔らかくガーリィな描写が凄く魅力的でした。
S4メンバーは『アイドルの一番星になる』という上向きの視線を受け止める関係上、これまでプライベートな時間をあまり描写されてきませんでした。
そういう欠損を埋めるように、とびっきり可愛くてチャーミングな時間を三人が共有したこと、特に堅物な真昼&ツバサの『女の子』な部分が強く感じ取れたのは、ユニットとしての成功に説得力を与えてもいて、非常に良かったです。
パジャマパーティーのナイティな雰囲気が、ちょっとセクシーな『三人だけの秘密』というムードを強化していて、とても素敵だった……ツバサは特に、こういうシーンと縁がなかったし。
やっぱ効果的にギャップを見せて、『ああ、この子はこういう部分もちゃんと持っている子なんだね』と視聴者を納得させられると、キャラの魅力はぐんと上がるわな。

ユニットの仲間としてのフラットな関係性と、アイドルの先輩として経験で引っ張り上げる、上下の節がある関係。
その両方が真昼の、そして先輩たちの魅力をより引き出す形になっていて、関わったキャラクター全員の株がしっかり上がり、今後に繋がる土壌も豊かになるエピソードだったと思います。
小春の退場を潮目にシリーズ全体の空気が変わってきた感じがあるんですが、こういう枠の壊し方なら、新しい魅力を引き出し新鮮な風を入れ、スターズがより面白くなる期待も高まるね。


そういう期待を一番背負うのが主人公ですが、あえて目立たず、孤独な鍛錬を積み重ねていました。
小春の退場は視聴者(と言うか僕)にとってもショックなわけで、いきなり立ち直ってしまうより、少しダメージを受けている様子を描写してくれたほうが、すんなりと話を飲み込めますね。
間違った方向に走っている様子を写すことで、アコとゆずが介入する理由もしっかり積み上げられるし、真昼に尺を譲りつつ足場を作る、結構良い立ち回りだと思いました。

ローラとひめが不参加な秋フェスですが、個人的には『大会』よりも大事なものを持っているキャラも居ると描写するのは、好みの方向性です。
『大会』にすんなりと参加し成長した真昼、『大会』どころではないと拒んでいた所から何かを手に入れそうなゆめ、『大会』から離れた場所で己を高めるローラと、多様な向かい合い方を見せていくのは、ちょっと面白い変化球だ。
まぁ『S4+一年四人=8人÷三人ユニット=2ユニット&二人余り』という、残忍なキャラ算数の結果ではあると思うけども……そういうご都合をしっかり飲み込み、ドラマに活かして話を作っていく手際ってのも、シリーズアニメでは大事だ。

素直に『ユニット』『大会』のポジティブな意味合いを真昼が受け取り成長し、それを後押ししたツバサと夜空の株がぐんと上がった今回。
小春ロスに苦しむゆめや、自分だけのアイカツを探すローラはこれとは違った角度から、成長の足場を見つけていくと思います。
彼女たちのエピソードもまた、今回見せた鮮明な切れ味で描いてくれたら良いなと、期待が高まりますね。