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イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

刀剣乱舞 花丸:第7話『誰かを想う幸せ』感想

水の中に逃げる月のように、届かぬ想いが時間すら超えて回転する付喪神恋歌、今週は海と兄貴。
『オラッ! お前らこういうのが見たかったんだろッ!!!』と言わんばかりのキャフフ乱舞なAパートで腹筋を緩めておいて、兄であり弟でもあるいい声ショタ・薬研くんの心にディープに踏み込むBパートで思いっきり殴ってくる、メリハリの効いた構成でした。
粟田口派だけで会えぬ思いの寂しさを構成するのではなく、左文字兄弟や安定・加州の司会コンビなど『比較的満たされている人たち』を巧妙に配置し、少年たちの欠乏を鮮明に写す構図が見事。
前半の明るさの中に陰りを、切ない思いの果てに再会の光をしっかり置いて、『ゆるふわとシリアス、両方あっての花丸なんだ』と訴えかけてくるのも、非常に明朗でした。
最後はAKBパロで一笑を誘いつつ、手を抜かないダンス作画で笑いを超えた感動もしっかり作って、まさに絶妙な塩梅でエンドマークまで運ばれてしまいました。

というわけで、前回から前フリしておいた海エピソードで、まずは賑やかに進行。
『肌色がたくさん出てきて嬉しい』『普段と違う服を着ていて可愛い』というヴィジュアルな楽しさは当然あるんですが、年齢も性別も楽しみ方もバラバラな連中が、それぞれ肩の力を抜いて海を堪能している多幸感が、一番のごちそうだと思いました。
僕が『外見レベルから様々な異形たちが、非常にどーでもいい、しかしだからこそ人間らしい喜びを謳歌し、みんな好き勝手に楽しんでいる光景』に異常に弱いってのはあるんですが、そういう個人補正を超えて今回の海は幸福の海であった……。

色んな連中が皆幸せそうなんですが、小夜くんが言葉少なく兄弟と幸せな時間を過ごしていたのが、非常に良かった。
一足先に三人揃った左文字兄弟の充足をしっかり描くことは、それなりに幸せなんだけれども大事なピースが欠けている粟田口派の欠損を強調することにもなるので、俺が嬉しいってだけではなく、兄弟がキャイキャイするのはお話的に大事なのだ。
独特の世界観を三人で共有し、サーフィンしたり砂に埋まったりお花飾ったり楽しそうな三人なんだけども、兄弟の閉じた世界を大事にしつつ、本丸の連中とも断絶してない距離の作り方、最高にいいですね。

藤四郎ボーイズたちの描写は、海の明るい光と水にはしゃぎつつ、細かくBパートの準備をする手際の良さが目立ちました。
Aパート・Bパートでボールの遣り取りをするのは勿論、第2話での薬研くんの信長への感情、第4話での桜への祈り、第5話での屋上での語らいと、話数をまたいだモチーフ・テーマの受け継ぎが非常に上手く言っていて、シリーズとしてアニメを作る醍醐味を感じました。
『誰かを想う』という気持ちは、シリーズ通しての主役である沖田組が持つ『沖田総司への感情』にも通じるものがあって、今後一期と弟たちのやり取りを横目で見ていた彼らに話が回ってくる時、今回のエピソードが生きてくると思います。
ファンが見てて楽しいゆるふわハッピーストーリーをしっかり作り込みつつ、こういう構成のテクニックを怠けないのは花丸の強さだなぁと思います。
感情と理性、同時にくすぐってくる作り方だと思う。

そういうロジックを仕上げつつ、キャラ同士が醸し出すムードを大事にしてくれるのも花丸で。
日焼けを気にする加州のフェミニンな雰囲気とか、そこに思いっきりぶっ込んで彼氏ヅラする安定とのキャイキャイとか、かなりハード・コアにゆるふわだった。
今回沖田組は話の中軸に絡まないからこそ、肩の力が抜けた『日常』を巧く見せれている感じがあって、これまでとはちょっと違った面白さを感じました。
特定のキャラクターに、ずっとおんなじ仕事をさせず巧くローテーションさせて多角的な魅力を引き出すのも、花丸的なテクニックかねぇ。


今回話しの中軸にいるのは藤四郎ボーイズ、特に薬研なんですが、兄を求める気持ちを束で扱いつつ、年齢層ごとの意識の違いが凄くスマートに描かれていました。
刀剣乱舞は基本、外見と精神の年齢は刀種で決まり、短刀は10歳前後、脇差は中学生くらいに思えるよう設定されています。
服も半ズボンが多いし、『幼さ』を強調されがちな彼らですが、同時に少ないとは言え設定年齢の差異があり、甘える側と甘えられる側の違いがある。
海でも本丸でも、あまりにも無垢に感情をむき出しにする短刀たちと、彼らを見守りつつ未だ少年である骨喰・鯰尾との対比は、筆が繊細でなかなか面白いところでした。

そんな感じで設定年齢が生み出す差異を大事にしつつ、圧倒的な個性で年(≒刀種)を飛び越え、藤四郎兄弟のお兄さんをやってきた薬研くん。
彼自身もまた無邪気な少年なのに、医者として人格者として多くのものを背負い、先頭に立って頑張る姿は眩しく、痛々しい。
折れず曲がらず、気を張って責任ある立場をしっかりこなしてくれることは当然嬉しいんだけども、薬研くんも当然『人間』であり、どこかで誰かに頼らなければ疲れ果ててしまうのではないか。
これまでの物語でも要所を締めてくれた彼に感じていた、いまいち納得できない思いを今回はしっかりすくい上げ、『兄』と『弟』の間で苦悩する薬研の姿をしっかり掘り下げてくれました。

薬研くんにとって『兄』という立場は押し付けられたものではなく、自分の生業が求めるまま自然に座った、誇りのあるポジションだと思います。
『ショタなのに大人』『弟なのに兄』という捻れは薬研くんそのものであって、そこに辛さがあるとしても、奪ってしまえば問題が解決するものでもない。
根本的には一期一振が帰還することで薬研くんは『弟』になれるわけですが、普段は無口な鳴狐がひっそりと薬研を見守っていて、彼のプライドを守りつついたわってあげるシーンが挟まったの、非常にありがたかったです。
ディープでダークな部分をえぐりつつも、そこに引っ張られすぎない足場を残して運んでいくのは、やっぱ巧いね。

『兄』として短刀達の辛さを取りまとめていたのに、一期一振と一対一の時間をまず独占し、ムーディーな天井で二人きりの時間を演出しちゃう。
今週の薬研くんはちょっとズルくもあるんですが、いつも大人な薬研くんがそういう策を弄する事こそが、彼がどれだけ『兄』を求めてきたのか、視聴者に強く届ける良い演出になっていました。
想いが叶わぬ辛さを見取って、課金アイテムブッこむ審神者も抜け目なく入れ込んで、関係者の株がガンガン上がるのが凄い。

満を持してやってきた一期一振は非常に清廉潔白な、『ザ兄オブ兄』って感じの兄ちゃんで、薬研くんが頑張ってきた年月も、弟たち全員の重さもしっかり受け止めてくれるナイスガイでした。
『兄弟全員で漕ぐブランコ』というアイテムの無垢さが凄いことになってて、ファンシーな絵面を男で演じることへのためらいの無さが、叙情性を加速させるカタパルトになってると思った。
加州のオシャレ怪盗っぷりもそうなんですが、『女』の属性を『男』に積極的に背負わせていく越境が、本丸のホワッとしたムードと良い化学反応を起こしていて、オリジナルな魅力になってる気がするね。
『会えない想い』にたっぷり悩むメッシーな展開もまた、ともすれば『女々しい』と言われかねないわけですが、そういう湿り気を『戦士』であることが少し抜いてもいて、いいバランスだなぁと思いますね。


というわけで、A/Bを明瞭に分けつつ相照しあう、花丸らしい話運びが最高に機能した、メリハリの有るエピソードでした。
予告時点では『海』をとにかく強調して『ああ、今回はユルイのね』と余談を作っておいて、兄を求める薬研くんの心に深く分け入り、最高の再会を果たさせて爽やかに終わる。
んーむ、巧い! 巧すぎるッ!!
技巧を悟らせず、『ふつーに楽しくて、気づけば見終わっちゃったよ!』という気楽さを徹底的に維持している所が、一番巧いと思います。

刀剣男子は皆歴史を背負い、『誰かを想う』幸せと切なさの間で生きている、非常に感情的な生命体。
お話を主導する立場にある沖田組もまた、壬生狼への果たせぬ思いを抱え込んだまま、個々から先のお話を引っ張っていくことになります。
あえて自分たちが主体になるのではなく、遠い所から粟田口兄弟を見つめた今回の物語は、二人に非常にいい意味での客観性を付与し、シリーズテーマをどう描くかという見取り図を、視聴者に再確認させる回でもありました。
それが生きてくるのは、今後来るだろう沖田組メイン回かなぁと思います。
今回は話数をまたいだトス上げの上手さに感心させられたので、これまでの回が今回生きたように、今回の描写が今後にどう生きてくるか、期待と想像を元気にされてしまいましたね。
面白いなぁ、刀剣乱舞花丸。