イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイカツスターズ!:第32話『進め! ゆずこしょう!』感想

人生いろいろアイカツ色々、多様性が明日を切り開くアイドルアニメ、秋フェス後編です。
小春が去りローラが距離を置き、陰鬱な場所に一人で閉じこもっていた主人公を、天才とツンデレが光の当たる場所に連れ出すお話でした。
ユニットの仲間だけではなく男の子たちの株も上がり、小春ショックを巧く切り返すお話になったと思います。
ステージ表現一切なしの幹部ーズが勝ちをもぎ取ったことで、エピソード全体の軸がぶれた感じもありますが……なかなか難しいな。

というわけで二回目のクロスオーバー・ユニット話ですが、SKY-GIRLとは結構描き方を変えてきた印象です。
前回が明確な目標を共有し、統一性で引っ張り上げるお話だったのに対し、バラバラの個性をゆずの才覚で魅力に変える展開で、同じ後輩を引っ張る話にしても角度がぜんぜん違う。
ここらへんはS4唯一の二年として、作中でも一番才能あふれるキャラクターを背負うゆずが真ん中に入っているからですかね。

主人公がしょぼくれたままだと話が先に進まないわけで、今回のお話はゆめの精神的ケアという側面が結構強かったです。
美味しいご飯でガッツを取り戻そうとさせたり、キラキライン越しにファンの存在を思い出させたり、天然なんだけど周囲がよく見えるゆずの才能は、こっち方面でも生きていたと思います。
ゆずとアコが後押しするだけだとちょっと足らないところを、アイドルの根本である『ファン』を持ってきて最後のひと押しにするのは、小春が抜けたショックから立ち直るために必要な説得力でした。

あんだけ世話焼いておいて『すばるきゅんのため』と言い張るアコは、ツンデレキャラ引っ張るなぁという印象ですが、最後の最後でツンの演技をかなたが切り崩す構成は捻りも効いていて、非常に良かったです。
アコがゆめの『らしさ』を取り戻すべく奮戦して、ツンの奥に隠されたアコ『らしさ』をかなたが発見するというリレーを見ることで、いい具合に全員の株が上がる展開でした。
やっぱ意固地になっているよりも、誰かのために力を尽くしている姿を見せてくれたほうが、キャラは好きになれるな。

よってたかってお世話されていたゆめちゃんですが、ゆず達の誘いにそう簡単に乗らないことが、逆に小春とローラが離れていったショックを重たく表現していました。
二人の気遣いになんにも感じないほど鈍感じゃないんだけど、自分を責めずに要られるほどあの失敗は軽いことでもなくて、色んな思いやりを積み重ねてようやく笑顔になれるっていう手順の踏み方は、結構好きです。
まぁ最初の円陣が示しているように、『ゆずこしょう』の三人はてんでバラバラで、まとまるには時間がかかって、でもそういう関係もまた良いものだと示せたのは、なかなか良かったと思います。
調子を取り戻すのに手数がかかるおかげで、男の子たちの見せ場もいい具合に作れたしな……こんぐらい手際よくやんないと、スターズの人数は捌けんね、ホント。


そして勝負の結果は、話数を使って努力を積み上げた二組ではなく、ステージのない幹部ーズに。
『はいはい、どうせメインが勝つんでしょ』という油断をブック破りで殴り、縁の下の力持ちに報いるという意味では良い結末ですが、正直2話分の描写はなんのためにあったのだろうと、思わなくもないです。
先輩二人に手を引っ張られた真昼の『負けない』という思いや、乗り気じゃない所から気持ちを高めていったゆめの総決算がよく描けていただけに、幹部ーズが勝つロジックを学園長が口で説明するだけではなく、ステージの説得力で見たかったなぁと、正直思います。
色んな都合上、有莉とミキのモデルは作れないってのも判るけどね……。

小春の送迎会で手酷い『負け』を経験し、沼に落ち込んでいたゆめが前を向くためには、『価値ある負け』も世界にはあるんだと知る展開は、悪くないとは思います。
すばるもそこら辺、いい具合にフォローアップしてたしね。
ただ真昼は必死にやった自分のためにも、そんな自分を導いてくれた先輩のためにも相当『勝ち』たかったと思う。
なので、その気持が及ばず三位だったというのは、スターズ全体における勝ち負けの値段がちょっとぼんやりする結末かな、とも思いました。
勝ち負け無視して楽しむ特権を持つゆずに「S4に勝ったぞー!」と言わせることで、勝ち負けのハードさにクッションかけるのは器用な脚本術だけども……ローラとゆめのハード・コアな『負け』の後だと、そこまでシビアな空気は続けられないってことかなぁ……。

とは言うものの、輝ける舞台を整えるために走り回っている幹部たちにはいつか報いて欲しいと僕も思ってきたし、彼女たちもまた『勝ち』をもぎ取れる戦士なのだと示す意味では、悪くない展開だった……のかなぁ。
元々S4は『圧倒的な天井』ではなく、人間味のあるトップランナーとして書かれているので、今回の負けでそこまで株を落とすってことも無いと思います。
あ、ひめをドサ回りに追いやって舞台から切り落とす強引さは、ちょっと気になったが。


というわけで、沈んだゆめを引っ張り上げるゆずとアコ達の株が上がる、なかなか横幅の広い話でした。
幹部ーズの勝利は意外な喜びがあったけども、お話全体をまとめる結末としては結構難しいかなぁ……全体的なムードが柔らかく着地したんで、あんま目立たないけどね。
ぼやけた勝ち負けの値段をクッキリさせるのは、現状一番『負け』ていて、努力を積み重ねてもいるローラをどう描くか次第だと思います。
ゆめにも良い導きを見せていたリリィが、不遇の努力家にどう手を差し伸べるのか。
見逃せないところですね。