イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ブブキ・ブランキ 星の巨人:第20話『反逆する手足』感想

今ん所テコ入れ大成功、二期になってブースト乗りまくりのロボット群像劇、今回は明暗の食卓。
主人公と身内でしっかり話を盛り上げた後は、その勢いをサブキャラに分け与えるターン!! つうわけで、イギリス・アメリカ・アジア各国のブブキ使い達が、それぞれの事情を加速させていくお話でした。
ブブキ使いVSブランキのハンディキャップマッチを二つ用意することで、イギリスチームが主人公たちと同じ絆を持っていると見せたり、それを足場にエピゾとアメリカチームの情を強化したり、手足をぞんざいに扱う劉毅がついに見限られたり、共通の芯をしっかり打ち立てることで、横幅広い展開が可能に。
生き残ってるチームそれぞれの肖像を掘り下げつつ、ギィのクソっぷりと勢揃いした四天王の温かみを対比することで敵味方の明暗をクッキリさせたり、パワーとテクニック、両方を感じる面白いエピソードでした。

つうわけで、前回一希兄妹を縦に深く掘ったので、今回は横に広げていくお話。
元々『心臓と手足の関係性』ってのが全キャラクター共通の要素となるアニメなんですが、バラエティ豊かなバトルの中でそれを浮き彫りにすることで、テーマがドラマにしっかり絡み、面白い仕上がりになってました。
やっぱ共通のフレームは共通点だけではなく、差異点を強調するために使った時、物語的な真価を発揮する感じあるな。

今回で言うと、まず心臓がいなくても決死の戦いを見せる日本チームとイギリスチームの重ね合わせ。
日本チームの絆は、ところどころダルい部分引っくるめてじっくり描いてきた部分であり、それと全く同じガムシャラな戦いを『敵』であるイギリスの手足がすることで、『あ、こいつらあんま死んじゃいけないやつだ』と視聴者が思えるようになっている。
その主たるレティシアも危うい純粋さと素直な夢を抱え込んだ可憐な少女であり、イギリスの忠義者達が命を張るだけの心臓であるということが、戦いの中で見えてきます。
回想シーンもコンパクトながら熱量があって、なぜ彼らがガムシャラになれるのかのバックボーンがハッキリと見えて、良い補強だった……モーゼスに極端に見せ場を寄せていることで、この省エネが成り立ってんだな。
兄貴と仲直りしてハイパーテンションになってた薫子にある程度の見せ場を作りつつ、間違った勝利を手に入れさせずに退却させる運び方も、非常に良かったです。

手足達がレティシアを盛り立てたおかげで、いつものバカ漫才からシリアスモードに移行したエピゾの純愛がグンと際立ち、『やっぱコイツ面白いし正しいことしか言わないし、生き残んなきゃだめだな』という気持ちになる。
『俺はバカだから難しいこと分かんなけども』と前置きしつつ、『みんなと歩きたい、自分の足で立ちたいというレティシアの夢は、大切なものだ』『俺は地球とか平和とかの大きなものではなく、それを守るために戦う』と、身の丈にあった切実さで意思を固めるエピゾのヒーロー力はすんげぇ事になってて、道化も英雄も両方やれるキャラは強いなぁという気持ちになりました。
やっぱ言うべきど真ん中を胸を張って言い切るキャラがいて、その言葉に血が通っていると、見ていて気分がいいわね。

ファラーとの甘酸っぱいスレ違いも良いんだけども、やはりレティシアを心配させないよう声色を作ってバカが決意を言葉にするシーンがほんと良くて、『あ、この子らマジ死んじゃダメだ』という気持ちになる。
レティシアが相当純粋培養の危ういお姫様なんで、エピゾがどんだけヤバい橋渡ってるかわかってない所とか、綺麗な恋なんだけど一切安心できないところがサスペンスフルで、面白いけどシンドい。
これが成立しているのはロシアチームがざっくり殺され、ギィのクソ人間っぷりが毎回加速しているおかげなので、彼らの死は物語上大きな仕事を果たしたのだろう……ギィマジ死なねぇかな。
敵役を憎み、愛されるべく配置されたキャラを好きになれるのは、やっぱ良いことだと思うね。


手足に愛される心臓もいれば、憎まれる心臓もいるわけで、アジアチームは心臓の身勝手さについに伝説の不採用通知をぶっ込み、はぐれ心臓・薫子とはぐれて手足が合流し、台湾チーム再結成のフラグが立った。
ギィが「見たい~! ブランキが脳みそ取り込んだ姿が見たい~! そのためにはぐれ心臓が欲しい~!」と吹き上がっていたので、ぼっちになっちゃった劉毅の未来が実験動物ルートで決まった気もする。
手足と協力できないから即NGってわけではないが、『俺が新世界の王になる!』とか抜かしたのとの合わせ技で、『あー、ダメダコリャ』とはなった。

心臓と手足の関係性だけではなく、チームと大人の関係性も今回はすごく明瞭で、ホームに帰還したときのように『ただいま』と言い切る日本チーム(大人&子供)の暖かい空気と、おんなじように飯を出しつつゴミクズ以下の脅迫ぶっ込むギィとの対比は、非常にいい塩梅だった。
このアニメ、今回みたいに勢いのあるロボVSロボ、ロボVS人のアクションシーンも良いんだけど、真骨頂はホームコメディだと思っていて、ワイワイガヤガヤ楽しい飛行艇のシーンは強みを活かした鋭い見せ場だった。
トラウマを乗り越えたはずなのに、的場位のおじさんには『殺すっ!』でリアクションしちゃう黄金ちゃんとか、嫁さんの年齢しか聞かない絶美とか、一期で『あれ……このオジサン達、おもしろ人間なのでは? 主役と仲良くするべきなのでは?』と感じたときから見たかったシーンがグングン迫り、大満足でした。

日本合同チームの温かい食卓と、ギィとアメリカチームのクソみたいな食後の語らいは上手く対比できていて、お互いがどういう状況で戦っているのか身近に感じることの出来る、冴えた演出でした。
思い返すと台湾でも食事してたし、一期で真実に化けてた絶美との関係描写するにも飯食ってたし、結構フード理論なアニメなのよな。
エピゾがギィの飯を無防備に食うシーンも結構重ねられてるので、彼が三行半叩きつけるときには飯食わなくなるのかなぁとか、ちょっと妄想してます。

そして一瞬の出番でシーンを支配し、不穏な空気をモクモク立ち上げる汀ママン。
人類を超えたブブキ使いを更に超越した、圧倒的な強さと非人間的人格が印象的な彼女が、ギィと接触して一体何が起こるのか。
的場位のオジサンが丁寧に『クライマックスは日本近郊だから、みんなそこで集合ってことで!!』とフラグを立ててくれているので、まァ古巣ですげーろくでもないことするんだろう……。
プラスにもマイナスにも、どういう方向にも話をかき回しそうだし、登場した以上かき回されるんだろうなっていう嫌な信頼感が、ママンにはありますね。


というわけで、心臓と手足、チームとチームを上手く対比させ重ね合わせ、人数を活かした幅の広い物語が展開されていました。
共通するフレームを活用して、キャラとキャラ、チームとチームを混じり合わせながら見せていくと、ドラマは面白くなるしキャラは生き生きしてくるし、いい見せ方だなと思います。
そう思えるのも主人公に血が通ったのが大きいと思うので、薫子とオヤジと礼央子さまは二期、非常にいい仕事をした……(未だに東のロボット人間っぷりは煽っていくマン)

各チームの状況やモチベーション、戦力も丁寧に整理され、宝島決戦に誰が、何故挑むのかはくっきり見えています。
各々の決意と絆、野望と夢を叩きつける決戦は、すぐそこまで迫ってきています。
クライマックスが見えてきたブブキ二期、面白いじゃないのマジ!