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イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プリパラ:第123話『ノンシュガー漂流記』感想

残酷な夢が夢で夢になるアイドルアニメ、長く引っ張ってきたノンシュガーもついに最終段階ッ!!
バイバルバラエティーの形を借りて圧力をかけることで、素顔の三人をぶつかり合わせ、心の垣根を超えさせるエピソードでした。
笑えない極限状況を力技でギャグにして飲み込ませ、そこで剥き出しになっていくノンシュガーのエゴと真心を素直に食わせるパワー勝負の展開は、まさにプリパラ。
どんだけネタで押し込みつつも、キャラの根っこと弱点・欠点含めた『差異』の扱い方に揺るぎがない、蓄積を活かした友情回だったと思います。

つうわけでノンシュガー回なんですが、実質的にセレブちりを攻略する回だったと思います。
三期の主人公であるのんちゃんが乗り越え、経験値にするべき障害としてセレブちりの険しすぎる性格は設定されているわけですが、潔癖症差別意識をキツめに仕上げすぎた結果、引っ掛かりがないキャラに育ってしまいました。
今回はそんなセレブちりを、彼女が嫌っている『汚れ』を拒否できないサバイバルに追い込んで、心の垣根を過酷な環境でぶっ壊し、付け入る隙を強引に作るエピソードだといえます。
野性的な環境なので、自動的にワイルドなペッパーが本領を発揮できる……しすぎるってのが、なかなか上手いところです。

ちりは開始当初、これまでと同じように自分のエゴにしがみつき、他人の思いやりを無碍にし続けます。
ペッパーはちりほど他人を受け入れないわけではないけど、のんちゃんほど巧く立ち回れるわけでもなく、自分を崩さないまま自分のスタイルで走り続ける。
そんな二人を前に、ウサチゃが見せた信頼に応えるべく、身勝手にエゴを暴走させ続ける仲間をどうにか結びつけようとのんちゃん一人が暴走するというのは、これまで幾度も見てきたノンシュガーの基本スタイルです。


ノンシュガーが一つになれないのは、他人が他人を思いやる気持ちが途中で途絶え、巧く循環しないからです。
ウサチゃからのんちゃんに届いた思いは、現実世界ではちりの抑圧された意識を飛び越え、ノンシュガーを結成させたわけですが、それと分裂したプリパラのちりは相変わらず潔癖症差別意識を暴走させ、他人を引き受けるつもりがない。
無人島でもセレブな食物を食べ、立地な寝床で一人寝ようとする衣食住の振る舞いからも、そこら辺は透けて見えます。
そういうエゴの暴走は、のんちゃんが巧く受け止めているおかげで社会に還元できているけど、根本的に周囲を見ないペッパーがくんだ水をひっくり返してしまう描写の中にも、ひっそり刺さっています。
のんちゃん以外は自分を鑑みて抑え、他人に寄り添わなければいけないキャラってことですね。

のんちゃんが必死こいてサービスを返し、なんとか手に入れたおにぎりをちりが無碍にし、四時間かけて汲んだ水を『どーでもいい』ちり水のために浪費するあたりは、『食べる』『装う』という行為の皮膚感覚を身近さに巧く援用した演出でした。
バイバルが進むに連れ、リゾート気分は薄れ決死のサバイバルが表面化していくわけですが、生来の生存能力で孤島に馴染むちりや、自発的に状況に対応し努力するのんちゃんに比べ、ちりは自分のスタイルに過剰にしがみつき、状況に置いてけぼりにされる。
その不適応を衣食住に込めて見せるのは、トンチキなネタでエピソードの温度を上げつつ、彼女たちの乖離を身近に感じさせる、上手い演出でした。

『飢餓』という身体感覚だけではなく、『汚れ』も今回は強調されていてました。
ちりが潔癖症、ぺっぱーが衛生観念が薄いキャラなので当然攻めるべき部分ではあるんですが、外から持ち込んだ『これまでの自分』がハードな環境を前に崩れ、ドンドン余裕がなくなっていく描写としても巧く機能してました。
そういう風に追い込んでいけばこそ、ちりは『プリパラの私が人と仲良くできるわけないし、あなただって私が嫌いでしょう?』という本音を他人に晒すし、そういう無防備さがあって初めて、バラバラのノンシュガーがまとまることも可能になるわけです。


お話は高まった圧力がのんちゃんをへし折り、これまでエゴを抑えて他人に尽くしていた彼女が『もう無理、諦める』というエゴに飲み込まれた所から、一気に回転します。
前半は人間の言葉喋ってなかったペッパーが露骨にIQとEQを跳ね上げ、物語の収束のための最善手を取り始めるのが面白いところですが、彼女がのんの本音……『善きエゴ』をちりに見せるべく差し出したノートが、『汚れ』ていることは象徴的です。
飢えに苛まれつつも『他人が触った汚いものなど、口に入れるつもりはない』と拒絶していたちりが、汚れているけど本音に包まれたノートを受け取り、めくることで、エゴを振り回す側だった二人は問題解決に向けて進み出します。
最終的にちりが『壊れ』て、『汚い』と拒絶していた『ペロぴた』を受け入れ、真似する用になることを見ても、他者の『汚れ』を受け入れることが、今回かなり象徴的な意味合いを持っていることが分かります。

調整役だったのんちゃんが洞窟に引っ込んだことで、残されたちりかペッパー、どちらかが話をまとめた人に歩み寄る仕事をしなければいけなくなります。
ちりは頑なな心を抱えたまま攻略されるのを待っている立場なので、表現方法はともかく、友達は好きなペッパーが、Bパートを一気にまとめに行く形になる。
ちりに拒絶されていた『ペロぴた』だって、好きだからこそやる彼女なりの表現なわけで、これまでも描写されていたとおり、ペッパーは根本的な部分では真心を受け止められる女の子なのです。
ココらへんを暗示するべく、ちりが連れてきたミニタコとペッパーが素早く仲良くなり、ペッパーがちりの一部を拒絶していない様子を事前に見せておくのは、なかなか抜け目のない描写といえます。

しかしその表現はいつでもワイルドでデンジャラスであり、適切に伝わる形で愛情を表現できないことが、彼女の特質でもあります。
その分直感的に真実を把握する能力には優れていて、ちりが誤解したのんちゃんのエゴの暴走の裏側に、三人をつなげたい真心があったことをペッパーは理解している。
そんな彼女がのんちゃんの言葉を借り、ノートを借りてちりに思いを伝えるところは、これまで滞っていた真心のリレーがうまく流れた、決定的瞬間なわけです。

今回のお話は、ノンシュガーの関係性が抱える問題点だけではなく、その解決策に関しても、過去の物語を土台にして展開します。
ペッパーがノートに込められた真心を教えても、それはあくまできっかけであり、ちりを行動と変化に導くのはあくまで、これまで地道に、どれだけ無碍にされてものんちゃんが積み上げてきた優しさの思い出なわけです。
ウサチゃが自分たちを信じて行動した思いを汲んで、のんちゃんが働きかけ積み上げてきた願いはけして無駄ではなく、自分の中に積み上がっていたのだとちりが『思い出す』ことこそが、今回ノンシュガーが真実チームとなる最大のエンジンになっています。
無人島というハードな状況を最大限活かしつつも、あくまでこれまでの物語資産を活かす形でドラマを回し、急に手に入れた燃料に頼りすぎない運び方は、非常に巧妙で的確でした。


他人を拒絶し孤立していく『悪しきエゴ』を乗り越え、ノンシュガーが一丸となって状況に立ち向かうために、今回のエピソードはもう一つクッションをはさみます。
『モノノケ』という形のない恐怖に怯える二人が、のんちゃんのために自分を乗り越え洞窟に踏み出すシーケンスを入れることで、頑なな自分を変えて他人を受け入れ、より豊かな方向に踏み出していくドラマが分厚くなっています。

ペッパーが勇ましいキャラクターを引っ込めて、恐怖に怯える『らしくない』姿を見せたのが、上手いところだと思います。
のんちゃんが退場した時点で、『ちりが拒絶し、ペッパーが無神経に暴れ、ちりが調整する』という、これまでの『ノンシュガーらしさ』は通用しないわけだけども、さらに今回はじめて見せる『らしくない』姿をちりに預けることで、ちりもまた『らしくない』対応で切り返すしかなくなる。
拒絶と差別が基本だった『誰も好きになってくれない自分』を捨て去り、ペッパーよりも強い『パーの川月ちり』から一歩踏み出して、『高慢なまま誰かのために歩き出せる川月ちり』に変質することが出来るわけです。
そうやって引っ張り出した『善きエゴ』が効力を発揮し、のんちゃんを助ける際に、これまでは他人を押しのけるためにしか使われていなかった『かしこまりなさいッ!』という彼女『らしさ』が別の意味を手に入れているのも、話全体の流れに合致した、上手い使い方でした。

ペッパーは『弱さ』を、ちりは『優しさ』をそれぞれ手に入れたわけですが、それら新しい価値がこれまでの彼女たち『らしさ』を否定しないのは、非常にプリパラらしい描写だと思います。
ちり自身が悩んでいる『誰も好きになってくれない自分』は『汚れ』のように拭われて消えるわけでもなく、現実のちりに優位性を認めて身を引くわけでもなく、相変わらずトンチキで高飛車なまま、しかし少し自分をうまく扱えるようになって存在し続ける。
欠点や欠陥に見えていたものはどんな形でも『らしさ』なのであり、それがより良く発露できる道筋を自分で、そして真心を持って近づいてきてくれる仲間と一緒に見つけていくことを、このアニメはいつでも重視してきました。

過去のエピソードで生まれた蓄積を活かすのは、その理念を物語に組み込む意味でも非常に大事で、『らしさ』の裏側にある正反対の気質もまた『らしさ』であるし、『らしさ』を変質させることが出来る可塑性は頑なに己を曲げない描写の積み重ねが土台にあって、初めて表現できるからです。
ペッパーが賢く自分を言語化出来ないけど、根っこでは優しさを行動原理にしている気のいい子であることも、プリパラ内部のちりが自分を簡単には曲げれない、拒絶を根本原理にしたキャラクターであること、その二人の中間に立ちのんちゃんが頑張ってきたこと。
第113話あたりから積み重ねてきた『らしさ』の蓄積があればこそ、『らしさ』の本質を失うことなくより善い発露の方法を見つける今回のお話は、チームがチームに繋がるドラマとしてのパワーを、強く宿すのでしょう。
過去の物語が結実して一つの結末が生まれるのは、それを見守ってきた視聴者としても充実感と満足を覚える描写なわけで、そういう意味でも非常に巧妙に、的確にノンシュガーの物語をまとめ上げるエピソードになったと思います。


メインはあくまでノンシュガーでしたが、先輩アイドルたちも細かいネタを蒔いたり、のんちゃんが発奮する理由になったり、いい仕事をしていました。
『お姉ちゃんには負けられない!』というのは、トライアングル時代からののんちゃんの根本なわけで、誰も言うことを聞かないハードなサバイバルに音を上げないためにも、トップランナーが頑張ってるのは大事よね。
賑やかし役としてグロちゃんやラブちゃんの出番を作って、久々に彼女らの元気な姿を見れたのも、非常に良かった。

今回の話はちりペッパーが神コーデを手に入れ、GP最終戦にノンシュガーが挑む権利を保証するエピソードでもあったのですが、凄く間接的にジュルルの変化も描けていたかな、と思います。
今回ジュルルはグロちゃんの胸で赤ん坊しているだけで、ノンシュガーにお世話されたわけではありません。
自分たちのエゴと取っ組み合って、新しい関係を築いた彼女達にも、ジュルルは祝福を与える。
ジュリィとジャニスの物語が最後の関門として回り始めた以上、『他者』としてのジュルルもその役目を終えつつあるわけですが、その成果として自分に直接関わらない二人でも認める形になったのは、凄く良かったと思います。
まぁシリーズ構成上、ちりペッパーに神コーデ渡すタイミングここしかないし、ノンシュガー濃厚にやるのに赤ん坊の世話までやってる余裕なんてねぇから、話の噛合で偶発的にそうなった可能性は否定できんけどね……。

『らしくない』行動をとる展開上、ペッパーのポテンシャルが凄い勢いで跳ね上がったのも、なかなか面白い副産物でした。
野生児なんで間合い近いし、好きって気持ちは素直に言葉にするし、純真系切り込み役として火力高いよなぁペッパー……"あまんちゅ!"のぴかりに通じる、ナチュラルな攻めの強さだ。
その癖物語的に必要とあれば、弱さを見せて抱きしめられるポジションにもなれるし、暴走しているようで制御が効いている、プリパラ三期らしいキャラだと思う。
あじみが『まぁ何やってもあじみだしな!』とばかりに、パワーを活かして便利なオチに使われていたのとは好対照やな……こういう無理筋を預けることが出来るのは、あじみの強みなんだろうなぁ。


つーわけで、長かったノンシュガー結成の道程も一段落、という感じのお話でした。
これまで繰り返してきた基本形を踏まえつつ、のんちゃんを一旦下げることで残りの二人の『らしくない』対応を引き出し、キャラクターと関係性の変化を引っ張り出す運び方が、非常に見事。
無人島というシチュエーションも、キャラに圧をかけて本音を引き出したり、いつもと違う衣食住を象徴として演出したり、物語を巧く加速させていました。

現実でのチーム結成に引き続き、プリパラでも絆を強めたノンシュガーのお話は、一通り形になった印象を受けます。
残っている大ネタは、大暴走身勝手アイドル女神・ジュリィと、彼女に引っ張り回される苦労人の妹・ジャニスの対峙ですね。
三期に残された時間を考えると、こっからもう二転三転ありそうですが、とりあえず現状をどうまとめ、どういう方向に姉妹の関係、プリパラの未来を転がしていくのか。
来週も楽しみです。