イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイカツスターズ:第34話『おしゃれガールレッスン』感想

天まで届く階段は努力の欠片で出来ている、OPも変わって新章開幕、アイカツスターズ第34話。
新展開一発目はスターズのおしゃれ番長真昼が新境地を見せるお話で、ゲストキャラクターの陽性な気質にも助けられ、明るく楽しいエピソードとなりました。
『連載を任される人気モデル』という立場に戸惑いつつも、年上をおしゃれで引っ張る腕力で実力を証明し、いい具合に凄みと説得力を出す展開は、『アイドル一年生』から抜け出しつつある物語をうまい具合に象徴していました。
真昼個人の成長を見せるエピソードとして、お話全体の潮目を見せる初手として、なかなか良かったと思います。

というわけで、ゆめとローラの間に距離が空いたり、小春との離別を経験したりして、いろんなものが変わったスターズ。
気づけば3クール近くも積み上げてきているわけで、ぼんやりとした憧れを追いかける時代に区切りをつけ、別のステップに歩を進めるタイミングではあります。
今回は連載を任されることで『誰かの背中を追いかけるのではなく、誰かを背中で引っ張る立場になったよ』と宣言された真昼が、戸惑いつつ自然体で自分の強みを活かし、結果を出す話でした。

美組に所属する真昼の強みは当然『美』でして、今回で言えば化粧。
具体的かつ細やかなメイクレッスンで、一手ずつヤンキーたちを魔法にかけていく描写には、『これが真昼の強さだ!』と訴えかける説得力が、しっかり詰まっていました。
やっぱこういう所をふんわりやらず、尺と調査を分厚く積んで見せてくれると、製作者の見せたいものをそのまま受け止められますね。
全てを真昼色に染め上げるのではなく、メッシュや髪のボリュームという素材を活かして変化させているのも、お洒落番長としての説得力に繋がってるな。

今回はメイクの技量だけではなく、性格面の個性や強みもよく描写されていました。
押し出しの強いヤンキーに負けず、好意は汲み取りつつ、自分の信じるベストを最後までやりきる。
空手という濃口のキャラ性も、物怖じせず前に出る強さをフィジカル面で支えていて、かつ不要な暴力にはならずコメディに逃がす使い方をされていました。
こういう取り回しをされると、『キャラ立てのために、いかにも取って付けました!』というくさみが抜けて、むしろキャラの個性になってくるので面白いもんですね。

姉譲りの女殺し力も全開で、年上相手にガンッガン指示を出し、リップは赤で押し切る強引さと、緊張を笑顔で解す面倒見の良さを見事に発揮。
モデルとしての経験値を指導でも活かして、『いつでも笑顔』という明確な方針を共有していく姿は、非常にスマートな指導法でした。
結果として年上からの『姐さん』呼びにも納得がいく、余裕とカリスマを感じられる展開に仕上がっていて、『真昼はもう、姉の背中を追っかけるだけの一年生じゃない』という製作者のメッセージを、するりと飲み込める回だったと思います。
こういう風に、お話の都合や展開を具体性で裏打ちして進めてくれると、置いてけぼりにならずに住むのでありがたい。


主軸がぶっとくおっ立つと、それを柱にして周りも仕上がってくるのが物語というもの。
ゼロ年代初頭の強まり黒ギャルの外見と、80年台ヤンキーの立ち回りを併せ持つエピソードゲストたちは強烈でしたが、蓋を開けてみると素直ないい子であり、物語の展開にも寄与する優秀なキャラでした。
パート明けて一発目で『あ、こいつらイイやつじゃん』と見せる落差の作り方が良かったし、真昼の指導でどんどん良くなっていく様子が分かりやすくなったのも、師匠も弟子も株が上がるいい展開だった。

『黒ギャル』を『変化するべき、劣った資質』として描きかねない展開ではあるんですが、『真昼を目指していたんだけど、道を間違えてこうなった』という迂回路を用意することで、なんとか衝突を回避……出来てたのかなぁ。
個人的には『黒ギャル』に張り付いている『なんかみっともないもの』『変わるべきもの』『イタイもの』というパブリック・イメージを照らし直し、『過去の彼女たち』も『変わった後の彼女たち』も両方、意味のあるものとして描けていたら、更に良かったかなという感じですが……尺がねぇな。
『過去の彼女たち』は話の主眼ではないし、ステージを上がる真昼の説得力を出すためにメイク講座を分厚くした結果、そっちに回す尺がなくなったとは思う……結果出来上がったものを考えると、真昼に重点した配分は正しかったわけだし。

エピソードゲストだけではなく、頑張る真昼を支えるレギュラーもワンポイントでいい動きをしていて、新しい魅力を見せていたと思います。
相変わらずのケア能力を見せるローラとか、案外義に篤いところを見せるあことか、真昼のサクセスロードに乗っかる形で、キャラの描写が分厚くなってました。
思いやりを交換する形でローラのゆめに対する現状認識を真昼が引っ張り出したり、距離をおいてもつながっているゆめとローラの気持ちが見えたり、脇役の描き方今回良かったな。
何分人数が多い話なので、こういう形で描写を積み重ね、メインエピソードで爆発する足場をしっかり固める手際は大事だと思いますね。


というわけで、導かれる立場から誰かに尊敬される立場になりつつアイドルの物語として、非常に具体的で気持ちのいいエピソードでした。
話数を積み重ねたという事実だけでは、『この子は強くなった』と言われても納得はできないわけで、今回のように説得力を詰め込み、ドラマチックに変化を見せてくれると、お話の潮目が変わってきたことをしっかり飲み込めますね。
ゲストの扱いも適度にコミカルで、しっかり真面目で、キャラを好きになれる良いバランスで描いてくれたと思います。

今回真昼が見せた変化と成長は、同じ話数を共有し、同じ変化とイベントを経験した他の一年生にも起こるものでしょう。
そのテストケース一例目がしっかり仕上がったのは、今後の期待を高めてくれます。
次回は主役であり、未だ曖昧な『あの力』に翻弄されるゆめのメイン回。
その仕上がりが、ユニット編では後ろに下がっていたひめの値打ちにも関わってくるわけで、鮮烈なエピソードを期待したいところです。