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イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

刀剣乱舞 花丸:第10話『本当に大事な思い出』感想

刃に宿った精霊たちが織りなす優しきフェアリーテイル、今週はタヌキとキツネの化かし合い。
来派兄弟の不思議な関係を追いかける前半と、非実在系刀剣男子・小狐丸のオリジンに切り込んでいくジャパニーズファンタジーな後半、相変わらずの前後編構成でした。
『大人が子供の面倒を見る』というこれまでの兄弟関係から少しズレた、しかし思いやりのある来派兄弟の描き方も良かったし、第3話以来の不思議な題材を巧く扱ったBパートの空気も、独特の後味が残って非常に面白かったです。

というわけで、今回もAB綺麗に別れた展開の花丸。
Aパートはちっちゃいお母さん達がクソニートをハラハラしながら見守り、しかし思いの外『保護者』は独特の強さと優しさを持っていた、という、ハートフルな家族劇場となりました。
花丸は基本、左文字兄弟や藤四郎兄弟のような『頼れるお兄さんと、健気な弟たち』という関係で兄弟を描いてきたわけですが、今回はちょっと変化球。
『自堕落・無責任・マイペース』と三拍子そろった年上の保護者・明石くんを、背は小さいけど気が回る愛染くん&蛍丸くんのWちびっこが色々気にかけるという、上下がひっくり返った展開になってました。
上が下の面倒をしっかり見る頼もしさをこれまでちゃんと描いてきたからこそ、このタイミングでちょっと違った兄弟関係を描いて変化をつけるのは、見ている側としてもスパイス効いててありがたいですね。

結局『保護者の保護者』たちの心配は杞憂であり、明石くんは独特の価値観をもちつつ、花丸本丸という『社会』に溶け込む意思と方法を獲得した、『結構ちゃんとしたやつ』でした。
しかし彼らの不安や思いやりが全部無駄になったかといえば、明石くんが『普通』とは程遠いクセのある青年なのは間違いなしであり、間に立って本丸の『仲間』に明石くんを馴染ませようとした弟たちの真心は、けして無駄にはならない。
そこら辺のソフトな着地は、例えば第9話の超刀剣男子を見た三日月の対応とか、第5話でもてなしを受けた大倶梨伽羅くんの反応とか、花丸全体で非常に気を使われているところだと思います。
『狸』というギミックを巧く使って、『いたずら』に見えていたものを明石くんなりの『真心』に反転させたのが、なかなか芸のあるところですね。

日々の営みを無碍にされて、本丸の連中ももっと腹を立てて良いものだと思いますが、花丸な彼らは非常にのどかで心の広い対応をします。
砕けたカボチャや汚れた布、踏みつけにされた『衣食住』はつまり、彼らが大事にしている『日常』そのものが踏みにじられたということなんですが、そこですぐさま噛み付いたり、理由も聞かずに怒鳴りつけたりはしない。
ここらへんの余裕のある対応がすべてのキャラクターに徹底されているのが、花丸アニメに一種の理想郷譚というか、フェアリーテイル的な長閑さを与えている理由だと思います。
付喪神なんだけど人間で来ていると考えるべきか、人外だからこそ理想的な穏やかさを兼ね備えていると見るべきか。

とまれ、『保護者の保護者』が望んだのとは別の形だけど、明石くんの『真心』は本丸メンバーの『真心』でしっかり包み込まれ、本丸の『日常』を共有する仲間として、ダメボーイもまた穏やかに受け入れられていく。
これまでの兄弟関係とは別の角度から物語を始め、別の着地点で落ち着かせた結果、本丸が抱え込む『日常』にもう一つ奥行きが出来たような、ストライクの取れる変化球だったと思います。
『嘘くさい』とか『綺麗すぎる』とか言われるのかもしれないけど、やっぱ花丸の優しさに包まれていく感じ、俺はやっぱ好きだなぁ……。


Aパートが『狸』だったので、Bパートは『狐』のお話。
謡曲"小鍛冶"を遠景に見つつ、山里の不可思議な一日をファンタジックに描いた、不思議で味わい深いお話でした。
万年桜もそうなんだが、花丸の正調ファンタジーな感じ、『理由はよく分からないけれども、なんか暖かくてええやん』という塩梅が、僕は凄く好きです。
メインメンバーが平安出身のジジイばっかりだったのも、まったりと緩やかなお話によくマッチしていて、雰囲気が出ていたな。

話の主役になった小狐丸は、実態のある刀剣としては存在を確認できない、伝説の中にいる刀剣男子です。
人々の思いの中に存在する彼はそれゆえに、他の刀剣男子には聞こえないものを聞いて、見えないものを見る。
いわば『刀剣男子の中の審神者』としての属性を持っている彼が、己を生み出した"小鍛冶"をなぞるように狐を助け、狐に恩返しされる物語を背負う今回は、幾重にも重なったメタ的な膨らみがあって、なかなか興味深い展開だったと思います。
抜け目なく安定を同行させて、『過去の物語に支えられる自分』という共通点から沖田エピソードに導線引いて、緩やかにメインストーリーを補強するところとかも、隙がなくてグッドでした。

小狐さんは通りすがりの狐の助力に報いるように己の体を張り、一瞬の幻に遊んだ後、『櫛』と体の傷を癒やされていきます。
Aパートでも展開されていた『真心』のリレーはここでも生きていて、小狐さんにとって主との繋がりを意味し、ただの物品以上の意味を持つ『櫛』を直してもらうことで、物言わぬ『狐』が人情を理解していたことが判る。
『日常』の中で明石くんが『狸』の親子のために奮闘したように、それを仲間たちが受け止めたように、戦場という『非日常』でも刀剣男子は優しさと強さを忘れず、『真心』をやり取りしあうわけです。
薬研くんが真実を知って『狸』の傷を直し、狐が刀剣男子たちの心と体を癒やす展開も、パートを超えて巧く響き合っています。
『狸と狐』『本丸と戦場』という対象をAパートBパートに配置しつつ、それを貫通する『真心』をしっかり配置する構成は、これまで何度も使いこなされてきた、花丸の基本形であり必勝形でもありますね。

戦闘シーンは刀剣男子たちを一瞬の幻に誘う前フリではあるんですが、薬研くんの『柄まで通ったぞ……ッ!』があまりにもセクシーで、非常に破壊力がありました。
短刀はその性質上、どうしてもクロスレンジでの戦闘になるわけですが、組打と組み合わせてとどめを刺す殺陣は独自性があって、非常に良かったですね。
小狐丸さんの戦闘衣装はいかにも貴族の側に侍る儀仗兵といった塩梅で、三日月とはまた違った風格があって好きだなぁ……装飾強めの拵え、丸みのある唐鍔がエキゾチックで素敵。


というわけで、『保護者』と『保護者の保護者』が真心を交換し合うお話と、狐に化かされたような不思議な、しかし暖かさが残るお話、二本立てでした。
場所ややってることは違うんですが、対比や相応を巧く使って、同じ枠の中で2つの物語を放送する効果を最大限引き出す話運びをやりきっているのは、花丸らしいなと思います。
Bパートは特に、『狐』の幻想性を絵でも話でも活かして、掴み所がないのに温もりは名残るという、のどごしの良いファンタジーに仕上がっていました。

季節も秋を過ぎて花丸にも一つの終りが見えてきましたが、新撰組局長の愛刀が顔を見せて、沖田組の物語に一つの決着をつける体制が整ってきました。
第1話であえて負けさせた池田屋に再び挑むようですが、これまでの時間の中でいろんなものを手に入れてきた加州と安定は、運命の戦場でその成果を見せられるのか。
なかなかに楽しみです。