イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プリパラ:第125話『レッツ・ライブ! 主役はもちろん君さ!』感想

第4回神GPに向けて盛り上がるプリパラ、今回は『みんなトモダチ、みんなアイドル!』という理念と真正面から向かい合う回。
っても堅苦しいことは特に無く、これまでの40ヶ月を彩った色んなアイドルたちが大集合、賑やかで楽しい回となりました。
いやー、こんだけ並ぶと壮観だなぁ……楽しい半面一気にまとめにかかってもいて、お話が一つの区切りを迎えそうな予感が寂しかったりもするね。

というわけで、とにかくたくさんキャラが出てきて、とにかくたくさんステージをして、神サイリウムのバーゲンセール……と思いきや、落とされう人もそれなりにいて、というエピソード。
三期はジュルルとノンシュガーという二本の軸をしっかり打ち立て、これを盛り上げ支えるように話を作ってきたので、過去キャラやモブたちを話の軸に組み込むことが、なかなか難しいシリーズだったといえます。
特にジュルルは『家』という閉じた関係性を自動的に要求するので、『みんな』で扱える公共リソースにはなんないんだよね。

一極集中した分話全体の見取り図は非常にスッキリしたし、メイン層の扱いは非常に適切な分量でしっかり描かれてきました。
まだ掘り下げる余地があったガァルマゲドンや、語りきれなかったトリコロールなんかにも優れたエピソードが割り振られ、キャラクターの物語を完全燃焼させ、作品を高いところまで飛ばすことに成功していました。
それは光の当たるキャラ、尺をもらって目立つキャラを戦略的に選び取り、ある種の『ひいき』を躊躇わなかったからこそ生まれたものだと思います。

しかしプリパラはらぁらを主人公として進む物語であると同時に、『みんな』が共有する場でもあり、一点に集中しすぎた物語展開は大切なものを振り落としてしまう。
その最たるものが『ジュルルはお世話してくれた身内以外には、神コーデ渡さないの?』という疑問です。
ジュルルの成長に従って、優しくしてくれる『許容できる他者』だけではなく、ドロシーやひびきといった『都合の悪い他者』にもその恩寵を分け与えるようになったものの、あくまで会話が可能で顔が見れる『身内』にだけ『神』を目指す権利が与えられていたのは、『みんなトモダチ、みんなアイドル』という理念から、少し遠い展開でした。


ココらへんを補うべく、気を見逃さずに一気に押し通しに来たのが、前回から今回への流れ。
赤ん坊・ジュルルが女神・ジュリィという正体を見せ、神アイドルとしてあらゆる人々に分け隔てなく接する理想像を見せたことで、『サブキャラクターたちが野望を思い出し、挑戦者としてステージに立つ』という展開が、巧く導けました。
プリパラそのものであるジュリィが『みんなトモダチ、みんなアイドル』の価値を再確認したこのタイミングしか、彼女たちに報いる好機はないわけで、ここらへんの目の良さはいかにもプリパラだなぁと思います。

しかし主軸以外を扱う尺はそんなに大きくなく、三年以上蓄積された『みんな』の数は圧倒的に多い。
この矛盾を『とにかくバンバンキャラを出して、バンバンステージさせて、圧倒的な笑いで全てを押し流す』というパワー勝負で解決しに来たのも、プリパラの強さだと言えます。
とにかくキャラが濃いので、短い出番でも埋もれず面白く見れるし、色んなキャラが矢継ぎ早に出てくる騒がしさが、『みんな』の楽しさ、プリパラの良さを確認させる足場にもなるのよね。

勢いで押し通しつつ、非常に大事な部分を丁寧にケアするのもプリパラでして、これまで置き去りにされてきた『みんな』に挑戦権を与えつつも、完全なザル審査にはせず失格者も出す。
作中最強ユニットであるトリコロールを、かなり強引な理由で神GPに欠席させたのも、出席すれば『ノンシュガーが勝つ』という話の都合を押し流して、実力で優勝してしまうからでしょう。
『みんなトモダチ』で仲良く楽しく騒がしくやりつつも、『アイドル』として競い合うシリアスさに嘘をつかない。
正気を失ったようなカオスで騒々しい展開の中で、実力や勝敗をないがしろにしないための一線をしっかり引いているのは、『らしい』なと思いました。

そふぃと姉と親衛隊、真中親子というように、非常に親密な関係を持っている仲間たちが、バチバチとライバル心を燃やしている姿も、勝ち負けを大事にしてきたからこそ映えるシーンです。
プリパラにおいては『トモダチ』として心を通わせる事と、頂点を目指す『アイドル』として真剣に競い合うことは、相反する理想ではない。
時折その理念を確認したり試したりしながら進んできたけども、基本的にプリパラは競技性と楽しさが同居する電子の理想郷であり、むしろ『みんな』とか『トモダチ』とか『アイドル』について大真面目にコミカルに、様々な角度から掘り下げ続けたからこそ、おとぎ話の綺麗事に説得力が伴うのでしょう。

三期開始以来、結構な期間置いてけぼりにされてきた『みんな』に今回ライトを向けたのも、綺麗事に重たさを宿すための目配せなんだと思います。
確かに色々強引だし、話の終りが見えてきたタイミングはちょっと遅いかもしれないけど、自分たちが打ち立てた看板に偽りがないことをエピソードでしっかり示すのは、物語においては非常に大切。
強い存在感を持ったジュリィからのトスを巧く繋いで、このエピソードを物量とキャラの強さで押し切ったのは、プリパラ全体にとって凄く大事なことだと思います。
大切なテーマだからこそ、話を広げるのではなくまとめる印象を強く受けて、なんか寂しい感覚も沸いて出て来るんだけどね。


というわけで、テーマ性に対するアリバイのようでいて、作品全体への誠実さ、これまで積み上げてきたものへの真摯さが宿る、大事なエピソードでした。
エピソードの立ち位置としてはかなり危ういネタなんだけども、過度にシリアスにならず、ネタの強さとコメディの豪腕で一気に運んでしまうのは、プリパラらしい強さでした。
トンチキなキャラがどんどん出てきて、賑やかで楽しいってのはやっぱ、長く続けたシリーズ独特の魅力ですね。

サブをしっかり描くのは、メインの物語に勢いをつけるからでもあります。
色んなアイドルたちが参戦し、最後の激戦区となった第4回神GP、絶対勝たなければいけないノンシュガーの前には当然、障害が立ちふさがります。
まだヴァーチャルの自分とリアルの自分を和解させられていないちりに、のんとペッパーが来週、どのように踏み込んでいくのか。
第123話で急速にぶっ込んできたちりペッパー成分の、さらなる供給はあるのか。
一つの区切りに向けてさらに加速するプリパラ、全く目を離させてくれませんね。