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イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない:第38話『クレイジー・ダイヤモンドは砕けない その2』感想

穏やかな地方都市を舞台に展開してきた、『日常』と『非日常』のラグナロクもついに最終局面ッ!!
ジョジョ四部アニメ、ラスト一個前であります。
吉良との息詰まる決戦が一進一退で進行し、閉ざされた世界での戦いがより開けた『街』に舞台を移すまでの回でした。
これで吉良は実質『詰み』なんですが、ここに持っていくまでの犠牲やら苦労やらを考えると、ようやくって感じですね。

今回のお話は密室に飛び込んだ仗助、それを安全圏から始末しようとする吉良、目撃者であり犠牲者でもある青年という三すくみから始まります。
この状況でも『川尻浩作』を演じつつ、『日常』の象徴である鞄を無造作に捨て去る姿、後の作戦の要になる携帯電話の強調と、お話で何を描くかが予言されている良い出だしだと思います。
その後の目撃者の作画・演出、『マジ気合い入りすぎて大丈夫?』って感じではありましたが、これは吉良吉影最後の殺人であり、吉良がなぜ『殺す』のかを再度確認するシーンでもあります。

吉良にとって殺人は常に『密室』で行われ、社会的制裁から逃れ個人的快楽を弄ぶ、特権的な遊戯です。
それを破綻させる輩から全力で逃れ、圧倒的なパワーで他人を蹂躙できる自分を守るために、吉良の頭脳も能力も動員される。
これから行う仗助&早人との銃撃戦も、『植物のように穏やかな暮らし』を守るための身勝手な戦いなんですが、目撃者殺しもまた、『植物のように穏やかな暮らし』を破綻させる目撃者を消し去り、特権を維持するための殺しです。
その為に『性欲』というある意味どす黒い、自分に通じる部分を刺激して罠に追い込むところが、吉良の憎たらしい部分ですな。


主人公VSラスボスの後半戦な今回は、長かった物語を総括するまとめでもあります。
仗助と吉良は非常によく出来た対比であり、心意気も戦い方も背負うものも正反対な彼らが雌雄を決する闘いは、まさに作品のラストに相応しい。
命がけのバトルの緊張感も一切損なわれず進み、原作読んでなお天秤がどちらに傾くか読めないハラハラと、これまでの激戦と日常を懐かしく思える気持ちが不思議と共存する、良いクライマックスでした。

壁越しに顔の見えない遠距離戦を続け、秘策をもって"クレイジー・ダイヤモンド"の射程圏内まで踏み込む展開は、ストレスとカタルシスが連打をかけてくる、素晴らしい構成でした。
さんざん頭を抑えられイラつく展開が続いていたからこそ、ガンマンの抜き合いにも似た近接勝負が映えるし、作画の圧力、レイアウトの妙味、小野友樹さんの好演と、美味しい素材を最高に料理もしてくれた。
顔の見える距離にようやく引き込んでさあ決着! と思ったら猫草のバリアで、そこから億泰復活&大逆転という具合に、勝負の天秤が激しく揺れ動くのが、緊張感があって良かったですね。
痕跡を爆破し闇の中で『殺し』を続けてきた吉良が、『密室』を嫌って屋外にいたことで、『街』全体に目撃されることで決定的に『詰む』っていう図式がね、お話全体をまとめ上げてて素晴らしい。

色んな対比や共鳴が埋め込まれている今回ですが、まず気になったのは『相手の土俵で勝つ』というスタイル。
『相手の得意技に翻弄された上で、それを利用することで勝つ』という展開は、"スーパーフライ"における鉄塔利用とか、"エニグマ"における恐怖とか、これまでも幾度も強調されてきた定番です。
今回も戦場から距離を起き、安全に戦おうとする吉良に対して、『血とガラスの誘導弾』『誘導を逆手に取っての親父爆殺』と、2つの『相手の土俵で勝つ』描写がありました。
攻撃が失敗するリスクも侵さず、『植物のように穏やかな』勝利をもぎ取ろうとする吉良に対し、体を張って正義を貫いた結果流れた『血』で攻撃を誘導し、逆撃を入れる展開はとても良い。

親父殺しは相当にエグい描写になりましたが、『悪』と戦うのは綺麗事だけではなく、暴力やある種の悪意すら必要とされる決死の覚悟がいるのでしょう。
思い返せば早人も吉良を殺す覚悟を決めていたし、アンジェロだって一生石だし、越えてはならない境界線を超えた悪党相手には、加減は無用ってことなんでしょうね。
まぁ実際親父放っておけば、遠間から追い込まれてジリ貧だしな……今までさんざん好き勝手絶頂してきた吉良親子を無残な目に合わせることで、視聴者の溜飲のを下げる意味もあるだろう。

そういうシーンの内部に、いきなり服を焼かれてもうろたえない早人の信頼感と覚悟を入れ込んでいるのは、やっぱぶ厚いなと思う。
川尻浩作を乗っ取った吉良は、しのぶさん周りのエピソードで描写されたように新しい家族を作るチャンスがあって、しかし殺人衝動を抑えきれずに誰も愛さず、誰にも頼らない道に戻った。
そんな吉良を、『自分が愛されて生まれた子供か確かめる』ために追いかけた早人は、あまりにも厳しい試練に磨き上げられ、『正義』の心と他人を信頼する勇気を手に入れた。
ここら辺の精神性の違いが、そのまんま身内の生死に繋がるところが上手いなぁと思います。


身内の生死といえば、最高のタイミングで復活し、最高の救援をキメた億泰くん。
空気弾に対し圧倒的な相性の良さを誇る彼が起きてると、バトルの天秤があんまり揺れないので、一時退場するのも道理ではあるか。
そこから復活する時に、凄くぶ厚い叙情性を背負って戻ってくるところも好きだし、いつものバカ億泰っぽい気楽さで戻ってくることで、『非日常』の戦いが終わりに近づいていると示してくれるところも好きです。
ていうか億泰が好きです。(唐突な告白実行委員会

現場に踏み込まなかった結果、父親すら殺してしまう吉良に対し、危険を承知で億泰を背負い、癒やし、守ったからこそ、逆転の目を掴んだ仗助。
ここでも二人の対比は鮮明ですが、その前に『億泰は死んだ』という事実をまっすぐに受け止め、戦いに向けての『覚悟』を決める描写が入るのも、とても良いです。
『詰み』に追い込まれてもなお現状を否定し、己を特権的な殺人者として社会から切断し続けようとする吉良に対し、仗助は認めたくない『死』を受け止め、戦いに顔を向ける。
しかし仗助が億泰を背負って足掻いたことはけして無駄ではなく、億泰の命を救うだけではなく、激戦の決定打を引き込む原因にもなる。
良い作画がほとばしるアクション描写の中に、シリーズで描いてきたテーマがしっかり埋め込まれているのは、満足度高いですねやっぱ。

一回死ぬ直前でも、"ザ・ハンド"は仲間を守るために『削る』能力を使っているわけですが、復活後もやっぱりカバーリングを成功させていました。
守護者として『非日常』の力を使いこなすこと、生まれ持った暴力性に流されないことの大事さも、ジョジョでは幾度も語られる大事なテーマであり、守り手としての億泰が何度も登場するのは、そこら辺を背負ってのことでしょう。
吉良に利用されていた猫草を引き寄せ、『殺し』の道具として悪用されない状況に持っていく姿は、かつて兄の言うままに悪事を働き、越えてはならない境界線ギリギリで仗助に引っ張られた億泰自身と、どこか重なりますね。


というわけで、主人公とラスボスの最終決戦を色濃く描き、彼らが背負う『正義』と『悪』を鮮明にするクライマックスでした。
テーマ性を明瞭に埋め込みつつも、ロジカルな楽しさとはまた別の場所にある、血湧き肉躍るシンプルな興奮を大事に作ってくれたのは、非常に面白かった。
やっぱアクションシーンの迫力は大事だよなぁ……そこがぶ厚いからこそ、テーマ性を頭で理解するのではなく、魂で感じ取って納得できるんだろうし。

『非日常』に守られつつ『日常』を蚕食してきた吉良の悪事が、仗助の努力で白日に晒された今回。
もはや彼を助けてくれる父もおらず、勝敗は決しました。
しかしここからの足掻きが吉良という男の根本でもあり、ジョジョ世界が持っているシビアな因果の発露でもある。
アニメシリーズの末尾を飾る次回をどう走りきり、どういう感慨でエンドマークを見つめられるのか。
非常に楽しみです。