イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プリパラ:第127話『グランプリは甘くないウチャ』感想

神に祝福されし子供たちの競演、ついにフィナーレ!! て感じのプリパラ第127話、期待のハードルを軽々超えてくる素晴らしい仕上がりでした。
『決戦前の特訓回』から予測される展開をことごとく外しつつも、やや株を下げたジャニスを丁寧に拾い上げ、『即応力と可能性』というノンシュガーの強みをしっかり描写し、六組目の挑戦者をねじ込んで物語を先に繋ぎ、ペッパーの根本に繋がる『ウサチャ捕食』は妥協しない。
論理と感情が程よく入り混じり、笑いと人情とドタバタをたっぷり楽しめる、いかにもプリパラらしい第4回神GP決勝でした。

というわけで例によって例のごとく、いろんなことが起きてる今回のプリパラ。
一応主軸は『ノンシュガーがGPを取る説得力を詰む』ことにあり、新メイキングドラマも、努力と実力を分かりやすく表現するためのアイコンです。
しかし長くやってきたプリパラ、普通に頑張って普通に間に合うパターンは出し尽くしているわけで、ノンシュガー独自の説得力と新鮮味を出すためには、ややヒネった展開にする必要があります。

というわけで、あえてグダグダとしたユニット内漫才で時間を使い、メイキングドラマを完成させず現場に飛び込む展開に。
セレブちりがジャニスとノンシュガーの間で葛藤する展開もあり得たわけですが、それは先週終わったこととして手早く処理し、決断を早い段階で済ませてしまうのが小気味よいですね。
これまでも『短い時間でMDを完成させる』という強みの描写はありましたが、流石にステージ上・アイコンタクトのみで一気に仕上げる描写はなかったわけで、アイドルの強みの表現としてなかなかフレッシュでした。
これまでさんざん凸凹したノンシュガーを見ていた分、ノータイムで心を繋げ、決戦の場にふさわしい新MDを間に合わせる結束力が勝ちにつながる展開は、彼女たちが手に入れたものを明瞭に示してくれています。

前半のグダグダはMD完成までの時間を潰し、状況の圧力を高めるための処置であると同時に、ノンシュガーがようやく、他のユニットと同じ境地にたどり着いたと確認させるシーンでもあります。
プリパラのユニットは個々の能力がいくら高くても、自分たちらしいあり方でしっかり繋がっていなければ人の心は動かせないし、逆にいえば、心さえ繋がっていれば個別の完成度はそこまで重要ではない、という描かれ方を徹底されていました。
潔癖症のちりからペッパーの身体に触っていく描写、文句も愛情も素直に言葉にできる関係があることで、ノンシュガーが勝利する既定路線が約束されたダンドリではなく、勝つべくして勝つ必然だと感じられるわけです。

あとまぁ、色々あったからこそ、くだらないことでグダグダ笑い合ってるノンシュガーの姿は、じんわりしみじみ愛おしい、視聴者へのご褒美シーンでもある。
やっぱ山谷乗り越えて、みんな仲良しってのは見てて嬉しいもんですね。
プリパラは『一切気負わない、仲間同士の距離感』を描くのが上手いアニメだと思うんですが、ノンシュガーがようやく作品の美味しいところに座った感じがあって、前半のグダグダは凄く楽しく、ありがたく感じました。


特訓なのに特訓しない変化球がストライクとして機能しているのは、事前に特訓を済ましているからです。
色々対立しつつも、指導者として仲間として自分たちを導いてくれたジャニスの恩義を思い出し、過去の遺産を最大限活かして表現力を上げていく展開は、『ノンシュガーが誠実なユニットでもある』と、巧く主張させていました。
ただ仲良しなだけではなく、他人が自分に与えてくれたものを冷静に把握し、その価値に感謝を示せる誠実さがあることで、ノンシュガーが勝つ説得力はさらに分厚くなっていたと思います。
個人的にぜひ拾って欲しい描写だったので、カットイン入った瞬間『ありがとう……ありがとうプリパラ……』って気持ちになった。

ここでジャニスを拾うことで、前回決裂したジャニスとの繋がりが実は絶えておらず、己の考えを押し付けてくる『悪しき母』は子供を厳しく、優しく見守り導く『良き母』でもあったという転換が起きています。
ジュリィの放埒運営をどうにかしようと、義務感と秩序意識で立ち上がったジャニスには確かに『一分の理』があり、第118話で視聴者に印象づけたポジティブなイメージは、必ずしも幻像ではないわけです。
そのイメージは第124話と第126話で一回暗転するわけですが、お話の真ん中に座るノンシュガーが『ジャニスは悪い人じゃなかった。ジャニスのおかげで今勝てる!』と思い返すことで、再びポジティブな印象へとターンする。
ここら辺の印象操作は非常に計画的で、的確だと思います。


ジャニスの影を削り光を増していく描写が今回はとにかく多くて、各ユニットに袖にされひどい目にあい、ズタボロになっていく展開もそう。
これは『なんでノンシュガーだけ利用するの? 功利主義者なんだから、ガンガン別ユニットにもコナかければいいじゃん』という発想を回収し、展開の隙間を埋めていく描写です。
それと同時に、ボコボコにされる形で他のキャラクターとの接点を増やし、ジャニスがプリパラの外側から侵略してくるアウトサイダーではなく、プリパラの価値観を共有できる『トモダチ』の一人であると確認するシーケンスでもあります。
まぁ『プリパラで認められたかったら、ヨゴレてナンボ』って部分、確実にありますからね。

色んな連中に理不尽に振り回される中で、愚痴ったり怒ったりするジャニスは、ちりを支配しようとする強者ではなく、間違ってはいるものの自分の信念を貫き、それなりに頑張っている弱者として描かれています。
こういう弱さを描写することで、『ああ、こいつも俺と同じなんだ。シンドいんだな』という共感がいつの間にか生まれているわけで、その感覚こそが、今後確実に来るだろうジャニスとの和解を視聴者が飲み込む、大事な足場になる。
三期はジャニスを圧倒的強者として維持するのではなく、その弱さや間違いや優しさも引っくるめて、揺らしなら話を進めていく感じですね。
ここら辺は、ひびきが『難しすぎるラスボス』になってしまった二期を、しっかり踏まえてのことかなぁ

もう一人の主役として困難に揉まれる中で、ジャニスが姉への共感を自然と高め、『なぜお姉さまはこういうことをするんだろう?』という歩み寄りが始まりかけているのも、非常に巧妙です。
まほちゃんの唯我独尊っぷり、レアバラマキや唐突な敗者復活戦に『なぜお姉さまは!』と憤る中で、ジャニス(を通じて視聴者も)ジュリィの行動に疑念を抱き、そこに踏み込もうと視線を向けることになる。
それはジャニスが抱え込んでいる頑なさや強烈なエゴイズムを解体し、より善い結論にたどり着くためには絶対必要な、『姉への理解と赦し』を確保するための予定地になります。
ジュリィが何かを隠してアイドル活動しているのは、第124話とかでも強調されていたところであり、これを公開していくことがラストクールの大事なエンジンになるでしょう。
今回ジャニスの人間味を増していく旅路の中で、同時にジュリィの行動の謎、大団円に必要な姉への共感もしっかり仕込む姿勢からは、巧妙な計算を感じますね。


そして何より、タクト略奪を諦めるまでの展開が非常に優れていました。
ポンコツ共に袖にされ、ついに自力でのタクト奪取を決意するジャニスですが、眼前で繰り広げられるノンシュガーのパフォーマンスに心を動かされ、思わず涙を流し、拍手をしてしまいます。
それはジャニスが今支配されている『プリパラは管理されなければいけない。アイドルの個性や感動は無駄』というロジックを、彼女自身の感情が裏切っている描写です。
表面化された態度ではアイドルを軽蔑し、自分の理屈を押し付けてくるジャニスが、その奥底に強い共感能力と優しさを隠した『みんな』の一人であることを、一言の説明もなしにしっかりと見せ、これまでの描写にしっかり報いていました。

心を繋げたジャニスとノンシュガーが、観客席とステージに隔たれているのが非常に良くて。
アイドルと観客は直接言葉をかわすことなく、ステージで繰り広げられる表現を通じてわかり合うしかない、距離のある関係です。
逆にいえば、そういう断絶を飛び越えて心を揺り動かすからこそアイドル(含めた表現者)は強い存在なのであり、ノンシュガーの歌は眼と眼で通じ合あえる距離にいる仲間に届くのと同じくらい、個人的関係を超えて『みんな』に突き刺さる。
ノンシュガーが手に入れたかけがえのない絆をクロスレンジで切り取ると同時に、立場的にも物理的にも離れてしまったジャニスにその唄がどう届くのか、ロングレンジでしっかり描くことで、彼女たちが今どういう高みにいるのか、しなやかに描けていたと思います。

それはジャニス自身すら名前をつけられない本当の気持を、『プリパラを守らなければいけない、管理しなければいけない』という義務感の鎧を突き破って、引っ張り上げる力です。
言葉だけではなく、唄と踊りとメイキングドラマを伴った身体表現だからこそ、心の奥底に理屈を飛び越えて届き、気持ちを揺り動かして真実を活性化させる、『アイドル』の魔力。
そういうものをノンシュガーがちゃんと持っていると示す意味でも、それを受け取る感受性をジャニスが失っていないと見せる意味でも、ノンシュガーのパフォーマンスでジャニスが変化していく描写は、ほんとに素晴らしかったです。
ジャニスの片思いではなく、ジャニスが教え導いたからこそパフォーマンスのレベルが上がり、感動を与えるレベルまでノンシュガーが鍛え上げられたこと、それにノンシュガーが自覚的なことも、圧倒的に神。

ホントなー、あまりにきれいなものを見たせいで今までの自分ではいられなくなってしまい、その変化に戸惑い否定するジャニスの姿が、あまりにもエモ過ぎた。
完全に御影草時じゃん……『君もむかし、大切な人に出会ったんだろう。それで、その人に自分の人生を変えられてしまったんだろう。君はそのイリュージョンによって、ここに立っているのさ』じゃんッッッ!!(黒薔薇の気配を感じると正気ではいられないマン)
御影は垣間見た永遠を受け止めきれず道を誤りましたが、この話はアドゥレセンス黙示録ではないので、ジャニスはその輝きで己を前向きに変化させて、ノンシュガーのみんな、今は敵対している姉とちゃんと向かい合うと思います。
そういうポジティブな展開への説得力が、一時の別れの中に明瞭にあるのが、非常にナイス。


ノンシュガー周辺の描写で足を止めず、その先へと描写を繋いでいるのも流石です。
後三ヶ月放送分が残っている中で、神GPは終わってしまったわけですが、まさかの敗者復活戦をねじ込むことで展開が一気に読めなくなり、面白くなってきました。
第4回で『色んなアイドルが元気にしている』プリパラの良さを再確認したのもあって、このタイミングでのエクストラ・ラウンドはホント嬉しいサプライズ。
サブキャラが魅力的だからこそだよなぁ、この展開が機能するのは。

メタ読みをすると六組目は『3Dモデルが有るアイドル』になると思うんですが、その条件を満たして決勝への切符持ってないのは、コスモ、あじみ、ちゃんこ、めが姉、ジャニス、ジュリィかな。(トライアングルは、のんとして除外)
このメンバーから勝ち残りを推測する楽しみも生まれてきて、敗者復活戦は意外性と納得感が両立する、良い布石だなぁと思います。
個人的には、今回の展開でアイドルへの共感が芽生えたジャニスを軸に、ジュリィとめが姉が脇を固める『チーム・システム』が面白そう……六人目に必要な『強さの説得力』もちゃんとあるし。

神アイドルGP決勝がトーナメントであることが示されて、各ユニットの組み合わせ、その勝敗……というか、勝ち負けを描く中でキャラやユニットが背負ったものを描ききれるかも、も気になるところです。
なにしろ三年間の蓄積があるので、簡単には勝てないし負けさせられもしない。
物語の総決算として、各キャラクターが背負ってきた個性をまとめ上げる場として、決勝への期待はグンと高まったわけですが、まぁ今のプリパラなら超えてくれるでしょう余裕で。

そして、ペッパーの野生には一切嘘をつかず、マスコットを無残に食い散らかす方向に舵を切るプリパライズム。
ここ妥協したらペッパーというキャラそのものが嘘になってくるし、さんざん死ぬ死ぬ芸で場を盛り上げてきた総まとめという意味もあるので、見事にやりきって欲しいものです。
ノンシュガーの描写を積み上げる中で、ウサチャの株もしっかり上がっているのでまぁ殺さないと思いますが、同時に『プリパラだしな、このアニメ』という不安(信頼ともいう)があって、展開を読みきれないのが凄い。
他人を傷つける『自分らしさ」を乗り越え、新しい自分を生み出す価値ってのは、ちり周辺で大事に描かれ、ジャニスで今まさに描かれようとしている部分なんで、ペッパー相手にもしっかりやって欲しいと思います。
改心の兆しを見せるジャニスと、ノリノリでバクバク行く気満々なペッパーを続けて映すところが、ホントプリパラ強い。


というわけで、姉たちの背中を追いかける新人として三期中盤を引っ張ったノンシュガーがどこにたどり着いたのか、しっかり説得力を持って描ききる回となりました。
色々横幅の広い描写、先につながる奥行きを確保しつつも、ジャニス含めたノンシュガーの絆を真ん中に据え、『アイドル』として観客の心を動かすステージを生み出す成長を胸を張って描いた今回には、強い満足と納得がありました。
『まぁ、こんなもんでしょ』という予断を外し、『こういうの欲しいなぁ』という期待をすくい切り、『え、こういうのやってくるの?』という嬉しい驚きを随所に埋め込む。
プリパラ三期の強さが全面に出た、素晴らしい第四回神GPのクライマックスでした。

ジャニスをただの悪役で終わらせないための布石もしっかり打ち、六組目の挑戦者で展開を広げ、さぁ今年も終わりだいい年だった!! とならないのがプリパラ。
さんざん強調していた『ウサチャ、死す』という未来をど真ん中に据え、ペッパーが己のカルマを超越できるかを問いかけるお話が、今年のシメにやってきます。
ネタっぽく見えるし実際火力のあるネタなんだけど、ペッパーというキャラクターの本性に食い込むこの問題。
今のプリパラがどう料理するのか、非常に楽しみです。