イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ブレイブウィッチーズ:第12話『ひかり輝いて…』感想

根性まみれのドンガメが大きく・ブレイブウィッチーズ:第12話『ひかり輝いて…』羽ばたくまでの物語、ついに大団円ッ!!
ブレイブウィッチーズ、第12話です。
前回に引き続きグリゴーリとの最終決戦ですが、これまでの蓄積を随所に活かし、ひかりがどこまで努力を積み上げたかを確認できる、まさに総決算となりました。
道スポ根として抜かりなく進めてきた、ブレイブウィッチーズらしい強さが最後まで維持され、キャラクターにも世界にも嘘のない、非常に真っ当で爽やかな終わり方だったと思います。

つーわけで、何度でも蘇る厄介なラスボス、グリゴーリと主人公がついに相まみえる今回。
お話の殆どが戦闘で構成されているんですが、それを組み立てる要素が軒並みこれまで描写されたものの積み重ねと組み合わせで構成されており、ただの殴り合い以上のドラマを強く感じることが出来ます。
これはひかりを中心に、502の仲間たちが友情を育み、努力を積み重ねてお話を勧めてきたからこそ感じる楽しさであり、クライマックスだからこそ感じる喜び。
物語の醍醐味ともいうべき味わいにしっかり溢れているのは、食べごたえ十分の最終回で素晴らしいと思います。

まず、冷静に考えると『遠すぎ&早すぎだろ! どんだけだよ!!』となってしまうスーパーひかりランですが、思い返せば第1話、まともに飛べない彼女は地べたを走り続けていました。
それ以降も、魔力のスケールも制御も巧くない彼女の武器は常にスタミナと脚力であり、今回の猛ダッシュは雁淵ひかりの原点を再確認する見せ場でもあるわけです。

そして、彼女の今の走りはかつての走りではない。
第4話で身につけ、実戦の中で鍛えてきた魔力制御は水上歩行の奇跡を可能たらしめ、人理を踏破し間に合わないはずの戦場に彼女を立たせる奇跡を可能にする。
それは『主人公は最終決戦に間に合う』というお話の都合であると同時に、低いところから物語に入ってきた主人公が、自分の力で、そしてみんなの助けでたどり着いた高みが可能にする、物語的な必然でもある。
一発の銃弾も撃たないのに、既に非常に雁淵ひかりらしい見せ場が存在し、かなり高まった気持ちになれる最終回は、相当に強いなぁと感じました。


そんなひかりを迎える502も、皆が団結し、欠点を支え合う『らしさ』を思い切り発揮し、第2話とは違う結末にちゃんとたどり着いていまいした。
あの時はひかり一人が戦場で無理をした結果、三ヶ月の昏睡と相成ったわけですが、カバーしてくれる仲間とヒール担当のジョゼがいる今回、お姉ちゃんは一時退場しても致命的な事態には陥らない。
今回も502は不屈の闘志で敵を倒すと同時に、仲間を守る盾となり、傷を癒やす優しさを幾度も描写され、お互い支え合いながら戦う。
それは『守る』存在、『繋がる』存在として常に描かれてきた502らしい、非常にヒロイックな立ち回りです。

最後のグリゴーリ攻略戦も、各員の固有魔法を繋ぎ合わせ、主人公とその相棒に花を持たせつつも、『みんな』で掴んだ勝利という演出が強くなされています。
……まぁ正直、空戦の作画力がかなりヘロヘロで圧力が隙間から抜けていた感じはあるけども、しかし積み上げてきたものに嘘はないし、それに誠実に向かい合う姿勢も感じた。
逆に言うと、全員が力を合わせなければ立ち向かえない難敵・グリゴーリさんがいればこそ最終決戦が盛り上がったので、やっぱ適切な強敵を配置するのは大事だ。
501の相手に比べると、502が相手取ってきたネウロイはメタ張りが凶悪で、厄介なのが多かった印象だなぁ。

仲間の後押しで菅野とひかりのバディが決戦場に到達する流れも、直ちゃんがさんざんツンツンしてドラマを維持してくれたこれまでを思い返せて、凄く良かったです。
直ちゃんは、まぁ早い段階でデレデレではあるんだけども、最後の一線をなんとか維持して『このツンツンに相棒と認めさせれば、お話終わり!』という目標に、しっかりなってくれていました。
『ゼロ距離戦闘』という共通点を持つ二人が仲間の助けでコアに到達し、魔眼で見定め、全てを込めた一撃で打ち砕き、なお足らないのでリベレーターでダメ押しをする。
最後の一撃もひかりの棚ぼたではけしてなく、直ちゃん渾身の剣一閃も手袋に込められた魔力あってこそ、とどめの一撃も伯爵から譲り受けた『お守り』あってこそと、とにかく『みんな』を大事に組み立てた決戦だったと思います。

ひかりは常にダメダメなドンガメで、そんな彼女が努力と根性と素直さで、一歩ずつ前進していく姿をこのアニメは切り取ってきました。
自分に出来ることをとにかく精一杯やりきり、周囲の優しさを無碍にはしないひかりの勇姿を見せられると、作中のキャラクターも、モニタ越しの視聴者も、彼女を好きになって、応援したくなっていった。
前向きに走り続けるタフな主人公、ひかり個人の強さと優しさは勿論なんですが、お話全体が『みんな』であることの尊さを大事にしてきた以上、最終決戦がこういう形で終わるのは本当に素晴らしいと思います。

あと最終決戦でいいなぁ、と思ったのは、作戦を指揮する将軍連中は至極マトモだったこと。
前作は現場で頑張るウィッチ達と、色々余計なことを考える上層部という対立構造がそのまま男女に反映され、一種の性差階級闘争みたいなヤダ味が最終決戦に漂っていたわけですが、今回は上下男女がしっかり和合し、強大な敵に必死で立ち向かう展開がスムーズに流れていました。
ネウロイという巨大な壁が既に存在している以上、自分としては人間が男女や階級という差異で引き裂かれ対立するのは、どうにも不要で不自然な盛り上がりに見えてしまっていたので、やれる範囲で作戦を練り、兵卒から将軍に至るまでしっかりやりきり、敗北した後も命を大事に撤退を支持してくれる奴らがトップにいたのは、見ていて気持ちが良かった。
『各々の出来る範囲で、出来ることをすべてやる』気持ちよさというのは、主人公ひかりにも通じるBWの良さだと思うので、それが502以外でも徹底されてたのが、凄く良かったな。


というわけで、ブレイブウィッチーズも一つの区切りを迎えました。
姉に憧れ、その背中を実力もなく追いかけるだけだった少女が、姉を失い、異国の地に放り出されるところから始まったこのアニメ。
根性とスタミナしかないドンガメは、毎週必死に頑張って実力を蓄え、仲間を増やし、己を他のキャラクターと視聴者に一歩ずつ証明しながら、確かに歩いてくれました。
その地道な蓄積と誠実な人柄が、地味ながら確かな歯ごたえと楽しさのあるストーリーに繋がり、毎週とても楽しく見ることが出来た。

これはキャラクターの能力に明確な制限をかけ、『魔女』の超常性に引っ張られすぎず、無双させすぎずのバランスを維持した結果だと思います。
圧倒的なネウロイを前に、より圧倒的な能力で上回る『上からの快楽』は前作でやったので、今回はとにかく『下からの快楽』を重視し、厳しい戦いの中で団結し、努力する泥臭いストーリーをやる。
シリーズの中でやりきっていない部分を見つける目の良さ、物語の最もオーソドックスな楽しみを信頼する勇気が相まり、いい結果に繋がったと感じました。

王道を陳腐にではなく新鮮に響かせるためには、作品個別のキャラクターを活かすことが大事だと思います。
展開されるシチュエーションやドラマは使い古されたものでも、そこに存在し生きているキャラクターは独自の意思と価値観を持ち、個別の魅力を持っているもの。
可愛らしいだけではなく、戦士としての強さをしっかり備えた女の子たちが、ベタなシチュエーションを彼女たちらしくくぐり抜けていくことで、堅牢な構造にしっかり個別の光が宿り、物語に熱を宿してくれたな、という感じがあります。

それは戦闘描写だけではなく、食べたり騒いだり笑ったり、戦い以外の人生をちゃんと描写したからこそ。
年相応の少女として、ぶつかり合い理解し合う彼女たちの気持ちに嘘がなかったことで、僕らは彼女たちを『娼婦まがいの格好で、戦争ポルノを演じる犠牲者』としてではなく、『必死に生きてる、一人の人間』として見れた気がします。
ひかりを筆頭に、キャラクターの描写も記号部分を全面に出しつつ、いい具合に喜怒哀楽が宿った地道なものに仕上がっていたし、みんな他人の思いやりを無駄にはしない、気持ちのいい奴らでした。
まぁトンチキな格好はトンチキなんだけども、意図してか意図せずか、油っぽいエロ構図は前作より減っていたように感じるんだよね。
そういう部分も、個人的には良かった。

一話休憩があったことを見ても、ところどころ作画がヘタったところを見ても、色々大変な制作状況ではあったと思います。
そんな状況でも、ひかりの成長物語をしっかりと離陸させ、とても高い場所まで引っ張り上げて新しい世界を見せてくれたことは、凄く嬉しかった。
見ている内に『俺、ストライクウィッチーズ好きなんだな』と思い出させてくれるような、爽やかな快作だったと思います。
シリーズに新たな息吹を吹き込むリブートとしても、ひかりと502個別の物語としても、活力に満ち溢れた見事な作品でした。
ありがとうございました、面白かったです。