ACCAを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月24日
これまで話の軸になっていた、『ふしぎの国への楽しい視察旅行』を外し、権力の中枢で陰謀が陰日向に踊る話。
話をまとめ上げる不穏な大枠が、華やかなパーティーの中でグッとせり上がってきて、お話をどういう目線で見ていけばいいのか教えてくれる話だった。
この物語は何重にも覆われた秘密にまつわる謀略ミステリーであり、各登場人物が己の信念と秘密と立場を抱えて動き回る群像劇でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月24日
組織を同じくしているからといって志が同じではないし、同じ方向性に進んでいるからといって見ているものが同じとは限らない。では何を望んでいるのか。
皆が本音を隠すなか、モーヴ長官はかなり明け透け、かつ好感が持てる清廉さで自分の本音を語ってくれた…ように思える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月24日
彼女の言を素直に飲めるのは、ACCA設立の本分と公僕の勤めに忠実な信念だけではなく、ジーンが彼女にぞっこん惚れ込んでいて、可愛げのある反応を見せてくれているからだろう
ジーンはさっぱり本音の見えない男で、だからこそ様々なアクターが彼に注視し、彼という空白を軸に陰謀が回る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月24日
しかし同時に、煙草とお菓子を巧く使い、小粋なダイアログで引き込むことで、わからないなりに魅力的な主人公…視聴者の共感の足場として機能もしている。
そういう彼が純情に赤面しつつ、モーブ本部長の言葉を受け止めていることで、彼女の言の真っ直ぐさを強く実感できる。同時に、ジーンが陰謀の機械ではなく、恋と情を知る人間なのだとも思える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月24日
会食シーンの美術が非常に良いので、素直に素敵な場面だと思えたのも大きかっただろう。
しかし同時に、他の対話全てが同じであるように、あの会食は危うい政治の場でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月24日
ロウソクは揺れ、グラスに注がれたワインは踊り、魚眼レンズ効果が唸る。
ジーンは恋心『だけ』の男ではなく、モーブもまた、清廉潔白一本槍の女というわけではないのだろう。全ては揺れて動いている。
この暖かさと揺れを維持したまま、舞台は王宮へと移っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月24日
モーブとの会食が暖色でまとめられ温かいものだったのに対し、最初はスウィーツ満載の優しい会合は夜の帳に飲み込まれ、煙草の煙と政治的牽制が飛び交う危険な領域へと変化していく。明暗の対比、それによる緊張感の生成が見事だ。
暗さを強調するためには明るくするのが有効であり、そのための照明として妹ちゃんが巧く機能している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月24日
兄が背負う治安維持の薄暗さとは無縁の場所で、のんきに健気に生きている彼女の輝きは、次々男を射抜いていく。そういう女がそばにいることが、またジーンに人間性を付与していく。
王宮を舞台にすることで、王家サイドのアクターもどんどん参入した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月24日
愚鈍なる王子、老齢の王、そして切れ者の枢機院長。
ACCAがそうであるように王家も一枚岩ではなく、権力簒奪を目論む王子と、その器を疑い王冠を渡さんとする勢力が、陰湿な火花をちらしている。それがジーンに飛び火する。
王子は宮野声以外にありえない宮野っぷりであったが、権力の重さを知らないまま我欲だけを押し通すバカ王子なのか、はたまた他のタヌキたちと同じように、仮面の奥に秘密を隠す逸材なのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月24日
様々なものが隠されているので色々読んでしまうし、読みたくなってしまうのは悩ましいが、やはり面白い。
モーヴを語り部として、一見平和に見えて各国間に緊張が走り、タガを失えば簡単に破綻してしまう連合国家の危うさが、今回明示された。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月24日
それは曖昧だったクーデターの輪郭を、その内実を秘密にしたままクリアにする手だ。よくわからんが、このシリアスな国ではクーデターくらい起こる、という予感。
問題は、既に形骸化している王家を引きずり落とす形でのクーデターなのか、形骸が内実を取り戻すためのクーデターなのか、はたまた別の手筋か、というところだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月24日
王家が頭にいるので前者を相談しがちだが、王子の言を読むと、彼はお受けに権力を再獲得させることを狙っているように思える。
とすれば、実効権力に乏しい王子が可能なのは暴力と謀略による簒奪となり、クーデターの主体は王家、対象はACCAが代表する民主世俗権力となる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月24日
グロッシュラー長官が留めたいクーデターとは、ここなのかもしれないと、先走り気味にいろいろ考えてしまった。今回情報多いねん。
王冠が飾りであっても、複雑怪奇な国をまとめ上げているのはその飾りの性能だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月24日
老王も見た目通りのスイーツ大好きおじいさんというわけではなく、地方権力が跋扈する国のタガとして機能してきた、そしておそらく現在も機能している、優秀な政治家のような気がする。中尾隆聖声で無能とかねーから!!
それぞれがヴェールの奥に秘密を隠しながら踊る中で、ジーンは監察官としての立場・特権を見込まれ、バラバラの国家を通行し連携させるメルクリウスの仮面をかぶらされている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月24日
モーブはその奥に至誠の公僕を見、リーリウムは仮面の奥を覗き込もうとする。妹ちゃんはのんきでかわいい癒やし担当だ。
様々なものに見張られつつ、ジーンは仮面の奥を未だ見せない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月24日
どのような価値観を持ち、何が譲れない一線で、どこを目指してどういう行動をしているのか。
クーデターの内実と同じくらい、主人公の内面は謎であり、それが明らかになる時がおそらく、物語が終わるときだ。
スイーツに包まれた甘やかな平和の奥に、不穏な気配と確かな腐敗があることは、これまでの話で巧く示せたと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月24日
仮初の平和でも、平和は平和。ジーンは煙草だけではなく、素敵な会食も甘いスイーツも口にする男であり、モーブが見込んだように、今ある仮初の世界を守ってくれる男だと良いなと思った
そんな期待が、伸るか反るか。僕が今回見て取った各キャラクターの裏側や、陰謀の構図が正しいか間違っているか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月24日
それは今後、ジーンが不思議な旅を続けていく中でより鮮明になっていくだろう。ヴェールを一枚ずつ剥がし、見えたと思ったら新しい秘密が追加される手際がとにかく面白いなぁ。
洒脱な雰囲気をしっかり維持し、目と感性を楽しませつつも、謎の生成と開示による快楽も忘れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月24日
ミステリとしての骨がしっかりしているので、シャレオツも群像劇もちゃんと支えてくれる話になってきていて、非常に面白いと思った。貪欲で贅沢なアニメで、ACCA、凄く好きだ。来週も楽しみ。
ACCA追記。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月24日
『不思議な旅は今回おやすみ』と描いたが、権力の中枢であるドーワーもまた共同体を構成する一ピースであり、これまでのファンシーな雰囲気とは異なる個性だが、また別の形で不思議の国といえるのかもしれない。
謀略と煙草の煙もまた、平和と同じようにこのお話の魔法の一部なのだ。