鬼平を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月31日
これまで渋めに展開してきたアニメ鬼平も、ちょっと色がついて昔の女が軸に座るお話。
とは言え、外道の薄汚い血しぶきあり、暴力でしかない閨事あり、色がついても柔らかくはならないのが、非常に鬼平らしい展開。
お頭のスタイリッシュステルスアクションも堪能でき、面白い回だった
ここまで四話、ほぼ全て『無情な時の流れ』がメインに座っていて、これはエピソード単位ではなく、シリーズ全体にかかる影なんだろうなと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月31日
20年前のチンピラと無邪気な娘が、火盗改メ長官と盗人、そして密偵として向かい合う。時は流れ移ろい、戻ることはない。
しかし同時に、時間は間違えをゆっくり直してくれる優しいものでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月31日
チンピラは苛烈な正義の戦士に、外道に落ちかけた女はギリギリで正義のイヌに引き戻され、新しい道を歩き直すことが出来る。前回は引き返せない時間の無情さが目立ったが、今回はやり直しの効く有情が強かったように思う。
とは言うものの、一度血まみれになったおまさはそうそう簡単にまっとうな道には戻れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月31日
道を示すために死を覚悟で血を流し、散々になぶられ、何よりも偽りの果てに死に追いやった妹分の断末魔が消えてはくれない。密偵の生き方も、お天道さまに恥じることなき、とはとても言えない。シビアだ。
その上で、夜闇の暗さと月のあかり、そして平蔵の懐の深さは、一度外道に足を突っ込みかけた連中を向かい入れ、包み込んでくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月31日
それは鬼平自身が快楽に道を踏み外しかけた過去があればこそ可能な、清濁併せ呑む姿勢だ。厳しさを忘れることはなくても、少しだけ光を見せる終わり方はやっぱ良い。
『時の流れ』と同じくらい繰り返し演出されているのは、鬼平とエピソード・ゲストとの対称性・類似性である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月31日
盗賊に近い暮らしをしていた過去と、盗賊を取り締まる今という鬼平内部の対照が、うまいとこゲストキャラへのコール&レスポンスを引き起こし、お話を立体的に仕上げている。
今回で言えば、血を流して道を教え、足腰立たなくなるまで嬲られるおまさと、敵と自分の血に塗れ、足腰立たなくなるまで大立ち回りを繰り広げる平蔵は、共に現場でギリギリまで体を張っていればこそ、悪を断ち切る偉業にたどり着ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月31日
鬼平は倫理的には結構超越的なんだけど、体は張るところが良い。
彦十を悪党の目からつづらの中に隠したおまさの真心が、貪られた無残な姿を見せぬよう気を配る鬼平の指示で返ってくるところも、対称性だろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月31日
そういう気遣いは男の特権ではなく、女だからこそ女の心を知る奥方の後ずさりにも、しっかり宿っている。様々な人が様々な立場で、惻隠の情を知っている。
考えてみれば、おまさが盗賊家業から足抜けしたくなったのも、妹分を無残に殺された痛みを己のものとし、耐えられなくなったからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月31日
今回のお話が血と性の無残に彩られつつ、妙に前向きなのは、おまさの覚悟の強さもあろうが、同じ心を重ね合う情の部分が前に出ていたからだと、僕は思った。
性と暴力、人生の薄暗い側面を切り取る今回は、闇が非常に濃かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月31日
蝋燭の灯は非常に弱いものなので、リアルにやるとだいたいあのくらいの薄暗さなのだが、現実のスケッチであると同時にエピソードの凄惨さを宿す演出で、結構好きです。
まぁギガバイオレンスを直接描写できないってことだろうけど
とまれ、情と無残、漆黒の闇と一条の薄明かり。様々な色合いが矛盾しながら共存する浮世の巷を、今日も見事な切り口で魅せてくれるお話だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年1月31日
お頭の大江戸ブブカとか大江戸首コキャとか、トンデモな部分も楽しいしな。ケレンと地味な味わいがバランス良くて、やっぱ鬼平アニメは良い。凄く良い。