3月のライオンを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年2月11日
トンネルを抜けた零くんの前に広がる、様々な世界。様々な形の水。
兄者を通じてタイトル戦の空気を感じ取ったり、二海堂の人間力を確認したり、義姉との複雑な距離に少し変化がついたり、三姉妹の人情をありがたく思ったり。いろんなことが起きて、色んな人がいる水底の世界
島田との対戦と敗戦はやはり一つの分水嶺で、零くんが息苦しくて道の見えない水の中から顔を上げ、色んな世界を見つめる出口になっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年2月11日
棋士としてのキャリアの先には各種タイトルがあり、一歩先にそこを見ている二海堂の背中を、零くんは頭をかち割られてようやく認識する。
それは二階堂の背負った業病の重さが与える大人っぽさではあるし、零くんはそっちには一切気付いていないのだが、それでも親友の意外な、しかしずっとそういう表情で風に向かい合っていた姿を発見したことは、大きな変化だ。来期からは同じ級のライバルだしね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年2月11日
肩を並べているものの表情と同時に、頂点たる宗谷名人が初登場もする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年2月11日
森の中の不思議な動物のように、あるいは怪物や妖精のように、現実を切り取ってスッと現れる登場シーンの演出は、非常に良かった。
ここで宗谷の『高さ』を印象づけることで、追い上げる零くんの運動はわかりやすくなるわけで。
宗谷の透明感は、この作品でも特にうまく造形できているキャラクター性の一つだと思うが、その奥にもう二三枚キャラがあることが、彼をいかにもな『異形の天才』から離れさせる大事な足場だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年2月11日
そこまで描く尺が今回のアニメにはないが、異質性を登場で印象づけられたからこそ、人間味が生きるわけだ。
高みを目指す人離れした人たちの間をうまく繕い、お道化た仕草で場を和ませて『将棋界』を成立させている会長の人間味も、玄田さんが巧く演じてくれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年2月11日
宗谷のような頂点、零くんや二海堂の青雲の志、会長のように見守る存在。色んな人がいて、将棋という場所は成立している。
今回は香子お姉ちゃんの可愛い表情もたくさん見れて、登場時の嫌な女っぷりが遠くに行ってしまったかのような印象を受ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年2月11日
宗谷と同じく、いい具合にエッジの立った第一印象で掴んでおいて、市場のあるダイアログと立ち回りで人間味を醸し出していく運び方が、このお話は巧い、ということだろう。
とは言えお姉ちゃんは相変わらず最高に面倒くさく、ファザコンなのに親父には本音をいえず、その代理品である後藤にも甘えきれず、子供としての期待を略奪した零くんにしか弱いところを見せられない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年2月11日
将棋の修羅である幸田に深く傷つけられた同志として、二人は深い水の底で生きている。
しかし残忍な才覚が二人の間に距離を作っていて、同じベッドでは寝ないし、同じ方向に頭を揃えて寝ることもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年2月11日
顔を見れば憎しみか、愛情か、ともかく激しい想いが溢れて誰かを(大抵は自分を)傷つけてしまうから、真っ直ぐ目を見れない関係。しかし、お互い接触せずにはいられない。
温かい食事を届け、必要な他イミングで間合いを踏み越えてくれる、優しく正しい川本家とはまた違った形で、香子と零くんは響き合っている。反目しつつも、お互い必要でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年2月11日
水の上の川本三姉妹と、水生生物としての姉弟。そのどちらもが必要であるというのは、Aパートで見た将棋界の生態と同じだ
零くんを癒やし、守るためにひなちゃんが預けてくれたお重は、倒すはずだった香子の腹を膨らまし、人心地つかせるために使われる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年2月11日
この展開自体が、姉と弟が同質の傷を受けていることを語っているが、その裏に『家庭的』なるものへの渇望があると考えると、なかなか寂しくもある。
色々あって踏み込まなかった川本三姉妹にとっては『ムカつく』存在である香子だが、彼女もまた父母との距離を見失い、それでも渇望に開き直れない、不器用な子供である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年2月11日
それは実は零くんと三姉妹を引き合わせたものと同じなのだが、香子と三姉妹はすれ違う。なんもかんも強まったツンデレが悪い。
三姉妹が取りこぼしたものは、同じ水生生物である零くんが拾い上げる。ひどく不器用で、お互い傷つけるしかない関係ではあるが、後藤や幸田からは得られないものを求めて近づく香子を、零くんは拒絶しない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年2月11日
求めるものを与える覚悟に踏み切れないけど、んじゃあ抱いたら香子が幸せになるかというと。
将棋の才覚と父の愛によって引き裂かれ、同じ息苦しさを感じているからこそ惹かれあう、不可思議な義姉弟。その関係はウロウロと同じ場所を彷徨いつつも、零くんの成長を受けて小さく前進し、少しの変化がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年2月11日
今回のBパートは一筋縄ではいかない香子と零くんの面倒くささを反映し、いい仕上がりだ
作品全体を貫くモチーフとしての『水』は今回も健在で、宗谷が登場する時は変質した水が空から降ってくるし、香子と霊くんは水の音、水の反映の中で語り合う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年2月11日
義姉妹である以上同じ羊水を共有していない二人は、あの揺らぎの中で眠ることで、双子として揺籃の日々を取り戻しているのだ。
これまでは零くんを窒息させていた『水』は、香子とともにいる時は同じ痛みを抱える証となり、むしろ同じ場所にいて同じ生き方をしている証明になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年2月11日
鰓があるわけではないが息ができる不思議な水は、やはり羊水なのだと思う。二人は未だ生まれざる、水の中でまどろむ胎児のままなのだ。
そこら辺の不思議な距離感の描写が上手かったからこそ、こっから亜音速で香子の出番がぶっ飛んでいき、零くんの世界に椅子がなくなっていくのは惜しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年2月11日
アニメで見せられると本当に複雑で面倒くさく、魅力的なキャラで、零くんとの呼応関係も非常に良いと思い知らされた。こういう再発見が楽しい。
それはさておき、零くんが息苦しさの中でもがき、色んな人の手を必死に掴んでなんとか泳いできたことは、けして無意味ではなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年2月11日
そう思わされる、小さな変化の積み重ねの回でした。こういう声高ではないシーンが積み上がると、強い見せ場もぐんと説得力を持つわけで、大事だなぁと思う。