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イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

リトルウィッチアカデミア:第6話『ポラリスの泉』感想

アニメ リトルウィッチアカデミア

魔法の絵の具で現実のカンバスに魔法を描いていくアニメーション、ハンサムボーイ登場の第6話です。
ネズミの御者を相棒に、舞踏会からのけものにされて一人頑張るアッコが、一発でお姫様になれる魔法の靴なんて無いことを実感するまでの物語でした。
特別な才能があって、すぐさま憧れにたどり着けるほど現実は甘くないけど、その背中を追ってここまで来たシャリオもまた、自分と同じ失敗と挫折を飲み込みながら、星にたどり着いた。
そのことを知ったことで、アッコの新しい出発が始まりそうな、苦くて綺麗で爽やかなお話でした。
旅の道連れになってくれたアンドリューくんも、尖ったところのない紳士ボーイでして、好感度うなぎのぼり。
こっちはあくまでガール・ミーツ・ボーイの第一章という感じですが、魔法という価値観に染まりきっていない外部の視点から、物語を背負ってくれそうな期待が高まりました。

というわけで、アンドリューくんという王子様候補と、シャリオの過去、二つの輝きにアッコが出会う今回。
舞踏会にネズミに王子様と、モチーフになっているのはシンデレラかな、というところですが、今時ヒロインのアッコは黙って魔法を待っていたりはせず、自分でどん底から這い上がろうとします。
しかしその努力は、(今まで描かれていたように)方向音痴の努力であり、ダイアナが積み上げて前回学園の危機を救ったような、実効のある知識にたどり着くわけではない。(ダイアナが古代ドラゴン語を、今回のアンドリューがラテン語を、それぞれ読み解いている共通点は、なかなか面白いところです)

日本という魔法文化の極北に生まれ、アウトサイダーとして学校に迷い込んだアッコは、シャリオになれるはずの理想の自分と、劣等生の現実の自分の間で、不安を感じていたと思います。
それでも強気な態度を保って、凹まず元気に暮らしているところが健気なのですが、ポラリスの泉に赴いて一発逆転を狙うのは、理想と現実のギャップ、周囲の低評価に焦り、悩んでいるからです。
薄々認識はしていても、けして認めたくはない己の不才と不出来。
それを認めることでしか前には進めず、あこがれの星をつかむ事もまた出来ないわけですが、人間みな、失敗したりバカにされたりすることに耐えられるわけではないし、灰被りでも舞踏会でお姫様になりたいと願うものです。

アッコが一足飛びの結果を望んで迷った道は、本当に大事なものを見つける知恵も、それを守る強さも、アッコには与えてくれません。
ココらへんを示すのに『男のパンツにドキドキすぎて、後ろから飛びかかってくるクマに気付かない』という描写を使うのは、非常にこのアニメらしいところです。
あそこはかなりシャレにならない状況であり、アッコが口で言うように『魔法は役に立つ』のであれば切り返さなければいけない状況なんだけども、アッコはパンツに夢中で何も出来ず、二人と一匹は落下する。
そこで真の魔法の使い手であるシャリオが間に合い、『命』といういちばん大事なものを魔法ですくい上げる展開は、アッコに足らないもの、そしてアッコが今後手に入れるべきものを見事に暗示していました。
『敵』であるはずのアルコルもまとめて助けちゃうところ、ホントアーシュラ先生の中の菩薩を感じて、最高にすぎる。

結局ポラリスの泉は非常にシビアで、能力をブーストしてくれるチート装置ではなく、己の分をわきまえさせ、誠実な努力の道にたどり着かせる水鏡です。
アッコが誤って望んだような、結果だけを手に入れる安易な魔法は与えてくれませんが、幻の魔術で過去に時間を飛ばし、アッコが追い求める憧れのシャリオもまた、かつてアッコと同じ境遇にあり、同じ立場にいて、同じ願いを持ったことを伝えてくれます。
その後地道な努力を積み重ね、遂に星を掴んで『シャイニーシャリオ』となった未来まで見せてくれたことで、アッコは星にたどり着くまでの道のりをどう歩んでいけば良いのか、心のなかに地図を手に入れたのだと思います。
それはアッコが当初望んでいたものとは違いますが、偽りの成功を与えてくれるミダスの黄金ではなく、魂を磨き直す魔法の砥石として機能し、アッコは六話にして新しいスタートに立ちます。


水鏡の魔法は泉が消えたあとも残っていて、姿を変えたシャリオ-アーシュラ先生-がアッコを見守り、追いかけ、言葉をかけてくれる。
アーシュラ先生が『あなたも、都合のいい魔法なんて無いことはじつは分かっていたのでしょう? それを確認したことは、けして無駄ではなかったでしょう?』と言葉で諭してくれることで、アッコは自分が鏡を見ていたこと、シャリオと自分の重なり合い、今回手に入れた痛みと輝きの意味について、より鮮明な絵を描くことが出来る。
二話の補修といい、アッコとアーシュラ先生ははすれ違ってばかりでしたが、今回ようやく運命が行き交い、言葉をかわすことが出来ます。
アッコが追いかける過去のシャリオ、アーシュラ先生が見守る現在のアッコ、その背景にいる過去のシャリオと、時間を超越して幾重にも重なり合う憧れの構図は、非常に幻想的であり、優しくもありました。

今まさに道を指し示してくれた幻影が、姿を変えて眼の前にいることをアッコは知らないし、アーシュラ先生はそれを口にすることは出来ない(しない)。
しかし、過去にあった憧れのスーパーヒーローと夢見る女の子ではなく、教師と劣等生という関係に変わってしまっているけども、そこで繋がった思いは今も活きていて、むしろ遠い空を見上げるだけだった過去よりも、身近に向き合い触れ合える今のほうが近くなっていたりする。
時間の残酷さと不思議、時間を超越して繋がり合うものを非常に大事に共存させた、見事なシーンだったと思います。

おそらくポラリスの泉が教えてくれなかった、夢が叶ったあとの蹉跌と挫折を経て、シャリオはアーシュラ先生になったのでしょう。
アッコが見た幻の後、己の夢を貫ききれなかったアーシュラ先生は、アッコが涙ながらに訴えかける『夢はかないますか? 魔法はありますか?』という問いかけに、頷くことは出来ない。
それに頷けるのならば、アーシュラ先生はシャリオのまま、輝く夢を世界に届け続けていたはずなのですから。

それでも、困っているおばあさんを助けようと本から目を上げて魔法を使った優しさは生きていて、『敵』だったはずのアルコルにも、アッコとアンドリューと同じように保護の魔法をかけてくれます。
シャリオが果たした魔法は輝いていたり、強かったりするだけではなく、他者を守り敵味方の対立をほぐす、とても優しいものです。
そしてその優しさこそが、アッコを憧れに向かわせ、魔法否定派だったアンドリューの心を少しだけ動かした、『あなただけの魔法』なのでしょう。

序盤、アッコが使った変身の魔法は、常に失敗し続けます。
それはポラリスの泉に願ったのと同じ、出来ない自分を誤魔化し、嘘で結果を引き出す魔法です。
それをかけられても、アンドリューは心を動かされないし、状況も変化しない。
現在のシンデレラが舞踏会で輝くためには、無条件に力を貸してくれる王子様より、ネズミを御者に変える魔法よりも、大事なものがあるわけです。

水鏡が教えてくれた過去のシャリオ、そして現在のアッコの真実こそが、厳しくも優しい真実の魔法であり、輝くシャリオに出会って魔法を追いかけてきたアッコは、今回シャリオのもう一つの側面を知ることで、憧れだけで走ってきた道から少し、方向を変えていくのでしょう。
それは小さな変化ですが決定的な変化であり、アンドリューがラテン語を読み危険を予期したような、実体のある努力への第一歩になります。
ここからのアッコの変化、それを支えてくれるだろうアーシュラ先生との交流に、静かな期待が高まるお話でした。
道を正すのに必要な真実を諭し、それに導かれてたどり着いた高みをしっかり認めてくれるあたり、ポラリスの泉もまた、立派な教師ですね。


アッコの人生の旅路の道連れとなったアンドリューくんは、『男の子』で、『魔法否定派』で、『学園の生徒ではない』と、三重の意味でアウトサイダーです。
ルーナノヴァの価値観から見事に外れた彼は、いわば『外部』を象徴する存在なわけですが、そんな彼が非常にジェントルで好感のもてる描き方をされていたのは、とてもいいなと思います。
彼は『魔法』(と、それを背負う主人公であるアッコ)に厳しい『現実』を繋ぎ合わせる窓の仕事をしてくれるキャラクターであり、『外部』を『魔法』がどう捉えるか、『現実』と『魔法』がどうつながっているかを示すキャラでもあります。

そういう彼が『イヤなやつ(もしくは生気のない、ただ優しいだけの王子様)』であれば、すなわち『外部』も『魔法のことを理解しようとしない、意固地で嫌な世界』として切断されてしまうし、『魔法』も『現実と一切接点を持たず、説得力のある実効を生み出せない孤立した価値』になりかねない。
しかし今回、アクションとドラマの中で見えたアンドリューの魂は、アッコに負けず劣らずの輝きを放っていました。
アッコのむちゃくちゃに振り回されても感情を荒らげることなく、父親のように感情を隠し切る欺瞞を背負うわけでもなく、アルコルに追いかけられた時は、まずアッコの安全を確保するために体を張る。
セリフでハンサムっぷりを説明するのではなく、激しいアクション、心揺れるドラマの中でキャラクターを躍動させ、視聴者が自然と感じ入るように的確に演出する描き方が、非常に良かったです。

今回メインなのはアッコと泉の出会いであり、アッコの生き様の方向が変わることなので、アンドリューくんは、あまり目立っていませんでした。
しかし異物である彼と、主人公であるアッコがちょっと衝突がありつつ、優しさと敬意のある素敵な出会いを果たしたことで、そこから物語の化学反応が膨らんでいく素地がグンと整いました。
爽やかでヌケの良いキャラが、いい雰囲気で顔見世をしてくれると『ここからどんなお話が生まれるのかな』という期待が高まって、今後が楽しみになりますね。
今回のお話は特に、アンドリューが物語の中で背負う役割をスムーズに見せていたので、今後の活躍が予想しやすく、期待もググンと高まりました。

前回も示唆されていたように、今後ルーナノヴァは『現実』の厳しさと闘い、『魔法』という滅びゆく文化技術が一体何を生み出せるか、問われていくと思います。
その時、アンドリューは『外部』に足場を置くからこそ、最も心強い援軍になってくれるキャラクターなのではないかと、ひと目で彼が好きになった視聴者としては期待してしまいます。
ルーナノヴァ『内部』のアウトサイダーであるアッコと、『外部』の協力者(候補)であるアンドリューという組み合わせも、図式がスッキリ見えるいい出会いでしたね。

上流階級どうしで昔なじみという設定を活かして、アッコでは掘れないダイアナの陰影が見れたのも、アンドリューが出てきて良かったポイントかな、と思います。
ダイアナは『魔法』に対し、アッコにも負けないほどの情熱を秘めていて、その存続、真価の発揮を願う気持ちは共通していることが、過去トークでの衝突から見えてきました。
魔法界のエリート、『内部』のインサイダーであるダイアナとアッコもまた、立場と能力の違いによってぶつかり合ってはいるのですが、このアニメが持つじっくりとした語り口を活かして、どこかで認めあい、橋がかかるんじゃないか。
そういう期待を抱けるのは、やっぱ嬉しいものです。

キャラの魅力を引き出す鏡としての仕事は、アッコに対しても巧く機能してて、見慣れない男の子にしどろもどろになるアッコは、暴走超特急な普段とは違う魅力がありました。
押しが強いのが基本なんだけれども、シュンとしたり照れたり、元気がない瞬間だって当然ある。
キャラクターとしての陰影はこういう押し引きの中で付いていくと思うので、アンドリューとの掛け合いの中でいろんなアッコが見れたのは、彼女を(そして魅力を引き出してくれた彼を)もっと好きになる、良い描き方だったと思います。
こっから恋仲になってもいいし、ならんまま不思議な距離感で並走しても面白いし、いいポジションに男の子置いたなぁ、ホント。


もともと星のモチーフが巧妙に使われているこの魔法物語ですが、今回は北天を写し取った詩情がとても豊かでした。
ポラリスの泉=北極星』を守護するのがポーラー・ベアである『アルコル=こぐま座』であることとか、フランス語において北斗七星を意味する『グラン・シャリオ』を雅号に背負うアーシュラ先生が、アッコとアルコルの衝突の間に入り、ポラリスとの対峙に道を作ってくれるところとか、凄く良かったです。
アッコ視点では凶暴な守護獣、『敵』にしか見えなかったアルコルが、赤髪を露わにし、シャリオ時代に戻ったアーシュラ先生が魔法を使った途端、『可愛いクマちゃん』になるのが凄く好きなんですよね。
アッコが巧く使いこなせない、ダイアナたちも形を変えるだけの変化の魔法を、価値観的な変化、関係性の変化として使いこなさせることで、シャリオの練達が際立ってる構図です。

星を読む占星術もまた魔女の技術の一つであり、迷った時に道を指し示してくれる揺るぎない星に、北極星の名前をつけるのはまさに正着でしょう。
水鏡の中でアッコが手に入れた星の地図は、アッコの内部にとどまらず、魔法の真価を侮っていたアンドリューにも、過去の自分に決別していたアーシュラ先生にも、小さな波紋を生み出す。
その先にどんな変化が待っているかは分かりませんが、それはありふれた人生の変化であり、同時にとても大切でかけがえのない、本物の魔法になるはずです。
そう信じさせる上で、ポラリスの泉に出会ってからの一連のシーンがとにかく綺麗で、幻想的なヴィジュアルを崩さなかったのは大きいと思います。
ロジカルなラインの引き方と、実際に描かれる映像のパワーがガッチリ噛み合ってるのが、このアニメの強さの一つだなぁ、やっぱ。

今回はアッコが頼れる仲間たちの出番が少なかったですが、むしろそれが良かったかな、と思いました。
水鏡が指し示すのはあくまで自分の内面であり、隠された真実であり、あこがれへの道への地図は、自分ひとりの心のなかにあります。
それは他人の助けを借りることなく、自分で発見しなければいけないものであり、踏み入る権利を持っているのはアッコの心に深く根を下ろし、かつてアッコと同じだったアーシュラ先生一人。
孤独で、でも寂しくはない己(と、その鏡としての他者)の対峙を経たからこそ、アッコがここから変わっていくんだ! という説得力と期待も高まると思うので、人数絞って甘さを抜いたのは、良い調整だと思います。
マリネ食ってるだけでキャラが立つ、スーシィーの存在感もあるわけだけどさ。


というわけで、『現実』と『魔法』、『外部』と『内部』、『過去』と『未来』がそれぞれ独立しつつ、一続きでもあることを示すお話でした。
今回の話はあくまでスタートであり、ポラリスの水鏡で姿勢を改めたアッコの物語も、一瞬過去を取り戻したアーシュラ先生の物語も、元気な魔女との出会いで少し変わったアンドリューの物語も、これから一歩ずつ、本道を歩んでいきます。
しかしその始まりがこうも豊かで、希望に満ちていたことは、今後彼らと、この物語が歩む道を強く祝福し、照らしていてくれる。
そう確信できる、素晴らしいエピソードでした。

2クールという長い尺を最大限に活かし、夢を見ること、その奥にある影、少女の小さな成長とどっしり向かい合う姿勢を見せているこのアニメ。
ロングスパンの見取り図が見事なだけではなく、各話ごとに楽しく、興奮でき、胸に暖かなものがこみ上げる素晴らしい物語を味あわせてもくれて、非常に面白いです。
六ヶ月という長い時間を使って描かれる物語の星座が、それを構成する一つ一つの星たちが、どんな色の光を見せてくれるのか。
とにかく楽しいし、楽しみです。
いいアニメだなぁ、ホント。