イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

リトルウィッチアカデミア:第14話『ニューエイジマジック』感想

クールが変わって、OP/ED曲も変更!
怪しげな新キャラも登場し、魔法新時代の幕開けを告げるリトルウィッチアカデミアであります。
妖精たちのストライキと、新任教師クロエの鮮烈なるデビューが重なる今回。
エネルギー枯渇と下層労働階級の反乱という荒波を受けて、学園や魔女界の体質、アッコの資質、新顔クロエの妖しい野望など、色んなものが見えてくるお話となりました。
旧態依然とした『足で稼ぐ』仕事のために、アーシュラ先生が話からパージされたところを見ると、やっぱアーシュラ先生とアッコ、ダイアナ、そしてクロエが織りなす人間関係が、二期は大事になってきそうな感じですね。


というわけで、ストライキ騒動の裏側で色々進んでいく今回。
これまで背景扱いだった妖精さんの事情が分かったり、起きた騒動を解決するべくクロエと彼女の科学魔法が一気に立場を作ったり、色んなことが起きました。
第11話でウッドワード先生が登場してから、封印を開放し古き力を呼び覚ます方向で大きなお話が進んできたわけですが、今回クロエが持ち込んだのは魔法化されたアップル製品のような、ナウくて洗練された最新鋭の技術。
ラストを見るだにアーシュラ先生と学生時代に因縁山盛りっぽいですが、アッコに真実を隠しつつ『過去』を蘇らせようとするアーシュラ先生と、何やら企みつつ『未来』を持ち込んだクロエ先生は、向いている方向が逆だといえます。

これまでもドラゴンの魔法金融道に対応できず潰れかけたり、大臣から圧力をかけられたり、魔女界の古臭い体制は問題含みだと示されていましたが、今回は『妖精』という具体的な被害者がいることで、それがより鮮明になりました。
魔力不足を『飢え』と受け取り、それに反抗の声を上げること。
水をかけられた炎の妖精を『傷付けられた』と表現していることからも、妖精は放散される魔力によって意志と命を手に入れている、独立した生命体です。

彼らにとって魔力の割当量は致命的な問題なんだけども、魔女側は自分たちの生活様式(味覚魔法でイタズラをするようなおふざけ含む!)を改めることはせず、『妖精は魔女の言うことを聴いて当然』と疑わない。
『そういうものだ』と信じて疑わない形式的守旧主義は、頑迷に魔法科学を拒絶するフィネラン先生が代表するところです。
魔女の理屈に入り込みすぎたインサイダーは、踏みつけにされている犠牲者のことは視野に入れずに、自分たちの『当たり前』を守ろうとする。
しかしそのままでは問題解決には至らないというのは、今回の労働争議だけではなく、第5話のドラゴンや、第6話の大臣などの『外部』と接触するお話の中で、細かく描写されていたところです。


今回アッコはミイラ取りがミイラに、スト破りが活動家に取り込まれ、妖精労働組合の委員長となります。
それは彼女が踏みつけにされる側の気持ちがわかる、優しい女の子だからなわけですが、それと同時に魔女界の社会構造の外側にいるアウトサイダーだからでもある。
学園の『外部』からやってきた彼女は、妖精語を理解し妖精魔法を得意とするロッテすら疑わない『当たり前』には縛られず、飢えて傷つく存在としての妖精を、あるがままに認識します。
それは彼女が常識も何も知らない劣等生であり、学園と魔女界というコミュニティに馴染めない部外者だからこそ可能な、エキセントリックな考え方です。

ピケを張る妖精と同じく冷たい雨に振られ、お腹をグーグー減らすアッコは、学園の中で唯一人、妖精の弱さを共有する魔女になろうとしているわけです。
そんなアッコに引っ張られる形で、ロッテとスーシィも魔女界の『当たり前』から少し離れて、魔女ではなく人間として大切な価値観に、思いを巡らせることが出来る。
改革者としてのアッコの力は奇天烈な変化魔法が使えることでも、杖に選ばれたことでもなく、固定観念に支配されず、『命』や『優しさ』という根本的な価値に素直に向き合えることにあるのかもしれません。
それが一人だけの力ではなく、周囲を巻き込んで拡大していく変化だということは、ルームメイトと繋いだ腕が『グラン・トリスケル』に変化する新OPを見ても、よく分かるところです。

そんなアッコと対極的な位置にいるのが、我らがダイアナ。
魔女祭のパフォーマンスにおいて、アッコの天衣無縫な才能に敗北感を覚えたダイアナは、これまでの優等生の高みではなく、アッコと同じラインに降りてきています。
あくまで貴族的な『当たり前』の正論で妖精を説得しようとして、アッコに増上慢を指摘されるシーンでは、これまで見せなかったコミカルで可愛らしい表情を見せてくれました。
これはシャイニーロッドの本当の使い方を学んだように、アッコが成長してダイアナの高みに近づいているからというのもあるんでしょうが、ダイアナがアッコの才覚を認め、彼女の側に降りてきている証な気もしますね。

アッコが学園の『外部』から魔女界に憧れ『内側』に入り込んだわけですが、ダイアナはただ『当たり前』を遵守していればいいとは考えていない節があります。
家柄と格式に守られ(もしくは閉じ込められ)つつも、ダイアナは衰えていくばかりの魔女界をどうにか活性化し、革新しようとする意志を持った、いわば『外部』への視点を持ったインサイダーです。
しかし『内側』に足場を置いていることは彼女の根本であり、生粋のアウトサイダーであるアッコのように『当たり前』を飛び出し、妖精と肩を並べるわけにはいかない。
これまでは(それこそ魔法のように)問題を解決してきたダイアナの優越性は、今回は機能しないわけです。
それはアッコがこれまでの13話で徐々に徐々に魔法を学び、『内側』に親しんでいったように、しっかり足場を組んで成長していく部分なのかもしれません。

『内側』に憧れるアウトサイダーと、『外側』に開かれたインサイダー。
正反対でありながらお互いの求めるものをもっている二人の瞳が、赤と青の綺麗な対比をなしていることを、今回顔が触れ合う距離に近寄ったことで、初めて認識できました。
アーシュラ先生(とウッドワード先生)が復活させようとする『過去』と、クロエ先生が持ち込んだ『未来』の衝突と同じく、優等生と劣等生の衝突が生み出す火花は、第2クールを照らし、加速させてくれるんでしょうか。
二人が好きな自分としては、激しく優しい魂のぶつかり合いを期待したいところです。


新世代の運命の双子が同じ舞台でバチバチやり合う中で、すでに一度衝突を終えただろう旧世代の二人は、見事にすれ違っていました。
アーシュラ先生が学園に残っていると、クロエ先生にぶつかっていって話の軸がブレるからか、露骨にフレームの外側に出されていたのは、かわいそうやら物分りがいいやら。
まぁ二人の過去の発掘と、背負った価値観の衝突、そこから生まれる未来は、今後たっぷり時間をかけて描写していくところなのでしょう。

クロエ先生は学園目線だと『厄介な問題を一気に解決した救世主』に、視聴者目線だと『胡散臭い陰謀家』に見えます。
IT機器に大型サーバー、マジックルンバに魔法陣アプリと、『オメーはシリコンバレーインキュベーターか。ITろくろ回すタイプか。箒に乗ったスティーブ・ジョブスか!』と言いたくなる新アイテムを引っさげ、一気に足場を作ってしまいました。
意識高い系の胡散臭さだけでなく、通販番組の怪しさも乗せて倍率ドン! なあたり、『疑ってください』って言われてるキャラだよなぁ。
しかし視聴者にだけ見える情報をつなぎ合わせると、魔法ボットを利用してマッチポンプを起こしたり、おそらく魔法遮断板を供給したり、もしかしたら物語開始前に妖精たちに『君たちは差別されている。正当な権利として、反乱を起こすべきだ』という知恵をつけたり、信用ならない動きをしています。

彼女の新魔法エネルギーシステムは、非効率的な魔導石システムの欠陥を補い、妖精と魔女両方に利益をもたらす魔法の解決法です。
設営費用も国庫の補助金で賄われ、障害になるのはフィネラン先生の頑迷な権威主義だけ……と言いたいところなんですが、レイラインからエネルギーを吸い上げ、その放散を抑えるシステムに欠陥は本当にないのか、どーにも疑わしい。
フィネラン先生の横車で導入がストップした後、炎の妖精を傷つけることで妖精をヒートアップさせ、直接的暴力で学園長にカチ込むことで事が進んだ経緯を見ても、無理くりにでもアレを据え付ける理由が、クロエ先生にはあるのでしょう。

西海岸の匂い漂うガジェットを見ても、クロエ先生が旧態依然とした魔法界に、何かの衝撃を与えたいことは見て取れます。
その背景には、おそらくアーシュラ先生とフィネラン先生が共有する学生時代の過去が、何らかの形で関係していそうです。
シャリオ時代は明朗元気な人気者だったアーシュラ先生が冴えない眼鏡教師になってて、OPではボサ髪で陰気そうだったクロエ先生が自信満々な時代のリーダーになってる交錯は、今後過去が明らかになった時、面白く輝きそうだなぁ。

クロエ先生に信が置けないのは、妖精の中に自分の手先を紛れ込ませ、任務を果たした後の扱いが大きいのかもしれません。
妖精という『命』を擬した黒い人影は、立方体に溶け落ちて掃除機で掃き清められ、後には何も残らない。
アッコが妖精の中に入って、冷たさや飢えを共有していただけに、体温なき『機械』を便利に使い、自分のいいように状況を動かすクロエ先生の立ち回りは、あまりいいものとは思えません。
アッコがクロエ先生に惹きつけられる切っ掛けが、二回『命』を助けられたから、ってのが、皮肉なのか彼女の本性を暗示しているのかは、今後を見ないとわからないでしょうが。

あの立方体お化け、第1話でシャリオのステージの敵役もやってるわけで、やっぱ二人の過去を見ないと、クロエ先生が何を考えているのかは見えないのでしょうね。
このアニメが単機能な『悪役』を置くとは思えないので、魔女界の保守と確信がうねりを作るだろう第2クールでは、その一端を担うクロエ先生の内面や過去、価値観に深く切り込んでいって欲しいなと思います。


アーシュラ先生はきっつい地廻りを押し付けられ、ヒーコラ走り回って魔力を集めているうちに、因縁の相手に状況を解決され、愛弟子をかっさらわれていました。
いやーヒドい、アーシュラ先生個人としては真実を隠すのを止めて、アッコに誠実に向き合おうと決意した瞬間なだけに、本当にヒドい。
『この……泥棒猫!』とでも言いそうなヒキでしたけども、あそこからどういう過去と関係性が飛び出すのか、来週が楽しみでならないね。

今回アーシュラ先生とクロエ先生の勝ち負けが鮮明なのは、効率悪く地道に稼ぐ古いやり方と、クレバーにスマートに高速に問題を解決する現代ビジネスの方法論の勝ち負けなのかもしれません。
アーシュラ先生が魔女の本丸から離れた二三日の間に、クロエは問題の捏造から進展、解決策の提示から障害の排除、社会的基盤の確立まで、一気にこなしてしまいました。
クロエの一人勝ち状態は、昔ながらの手工業的速度で走る魔女の上を、ビジネスシーンの速度で飛ぶルンバが追い越していった、ということでもあります。

時間はかかったけども、アーシュラ先生は魔法力をちゃんと集めて、無事に帰還しました。
魔女たちが若いアーシュラ先生一人に仕事を押し付けず、自発的に対処していれば、クロエの高速ビジネス戦術にも対応できていたのでは……? と考えると、『内側』の『当たり前』が持っている軋みは妖精だけでなく、魔女にも大きなダメージを与えているようです。
ここら辺一切意識せず、あるいは利便性に流される日和見主義に、あるいは形だけの伝統を守ろうとする教条主義に陥ってるのは、ほんとルーナノヴァ最大の問題だと思う。

こういう部分を、クロエもダイアナも正したいんだろうなあ……『外部』の存在である大臣とかはただただ潰そうとするんだけども、魔女であり『内部』に位置する二人としては、『廃滅』ではなく『変革』の方向に行きたい、と。
こうして整理してみるとクロエとダイアナには結構共通点があって、シャリオに憧れたアッコとシャリオであるアーシュラ先生が結びついたように、今後接触があるかもしれません。
ダイアナもアッコと同じように、色々考えて悩む生徒なのだと分かってきた以上、アッコを優しく導くアーシュラ先生のような大人が、彼女の側にいてほしいな、とは思います。
クロエ先生の過去と心情が今後分かって、そういう仕事も任せられるキャラだと思えると、非常に良いのですが……さてはて、どうなるでしょうね。


というわけで、新たなる風が嵐の予感を連れてくる、2クール目開幕戦となりました。
色んなキャラのスタンスや可能性を見せつつ、全体的には労働争議ギャグやIT長者ギャグで楽しく進めているのは、このアニメらしいなぁと思う。
楽しいのは大事だ、ウム。

あっという間に花形教師の立場を手に入れたクロエですが、その裏には色々ありそう。
同じく色々抱え込んでいるアーシュラ先生とは、アッコを挟んで対立……というだけではなく、過去にも因縁がありそうな気配。
ダイアナやアッコといった新生代の物語だけではなく、かつて少女だった魔女たちの物語もエンジンフル稼働しそうな2クール目。
どう展開していくか、目が離せませんね。