イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイドルタイムプリパラ:第2話『ここ掘れ、アイドル』感想

新天地に降り立った神が新たなる福音をもたらすアイドル宣教神話、今週は泥まみれの芸能活動第一歩。
先週新しい舞台と主人公の解説にかなり力点をおいた分、もうひとりの主役らぁらを主軸に据えて、新しい友達との関係を作っていくお話でした。
常時ボケっぱなしのふでやす節が全開になると同時に、ルームメイトでもあるゆいがらぁらと親友になっていく過程、『アイドルは男の子のもの』という固定観念がぶっ壊され、新しい友情が生まれていく過程も、丁寧に切り取られていました。
プリパラ普及というミッションも、育まれていく友情も、白紙の新天地を舞台にしているが故に描ける題材。
大きく仕切り直したことで生まれた風が、新しい息吹を連れてきてくれるという期待が高まる、いいお話でした。


というわけで、今週はとにかくらぁらが目立つ回。
先週気になってたけど保留になってたパパラ宿にやってきた事情だとか、あくまで等身大の六年生として泥まみれで普及に励む様子とか、新しい友達にもすぐ馴染んじゃう人の良さとか、色々描かれていました。
色んなものが変わったアイドルタイムですが、らぁらの素直で元気な性格、それが生み出すものは何も変わっていなくて、一安心といったところ。

ネタの強さやテーマ性への姿勢が目立つプリパラなんですが、主人公であるらぁらが気のいいやつで、その素直な善性が報われていくポジティブさというのは、お話を牽引する大事な要素だと思います。
泥まみれのがに股で未来への道を作り、『プリパラは善いものだ! 私はプリパラが好きだ!』というメッセージを胸を張って発信し続ける姿を見ていると、そういう僕の好きな部分が損なわれていないんだな、と安心できます。
世界で一番強いアイドルなのに、世界で一番汗かいているところが、ホント尊敬できる小学六年生だな、と思います。

僕らは三期に渡ってらぁらの偉業を見てきたので、ゆめがらぁらを神アイドルと信じない展開には少しの苛立ちもあったわけですが、気合を入れた新演出の"Make It"で一気に関係性を進展させる展開には、その分カタルシスがありました。
サイリウムドレスを着込んだ途端、背中に巨大な電飾サインを背負うのはかなり『圧』のある演出で、聖人や神が背負う光背(ハイロー)を思わせるところも、らぁらの凄みを強調していてよかった。
やっぱ市庁舎の頭のなかにあるらぁらってのは、これまでの物語を背負って無双なわけで、変身できない展開を過度に引っ張りすぎず、ズババーンっと晴れ舞台見せてくれたのはありがたい限りね。

ゆいがレインボーアイの暴走怪獣としてフロントを走り回る分、らぁらはいろんなことに動じず、必要なことを一手ずつ積み上げて行くバックスを担当。
この役割分担も、『神アイドル』というらぁらの立ち位置、積み上げた経験値を巧く強調していて、いいコンビだと思います。
もともとらぁらって作中言われるほど『悪い子』ではなく、物語進行の方向性をしっかり見据え、必要な行動を的確にとって牽引していく『良い主人公』だったと思うので、新主人公の暴走を見守りつつ、適度に軌道修正していく今のポジション、凄く良いと思います。
あれだけ妹ポジションだったらぁらちゃんが、ゆいという手のかかる同級生を見守るお姉さんポジションになっているのが、なんか感慨深いのよね。


らぁらの素直な努力と輝きをゆいもストレートに受け取って、ルームメイトとしての親愛、神アイドルへの尊敬、パパラ宿のプリパラを盛り上げていく同士愛と、色んな感情を燃え上がらせていたのも良かったです。
二段ベットの演出が非常に良く効いていて、プリパラへの熱い思いを共有し、トンネル掘りに必死になっているうちに距離が縮まり、マブダチになっていく過程がクリアに確認できました。
白紙の状態から関係を作っていく喜びってのは、新シリーズ始動のこの瞬間だけに許された贅沢なわけで、今週丁寧にやってくれたのは凄く良かった。
ゆいは"赤毛のアン"以来の妄想癖少女主人公の系譜を受け継いで、周囲を確認せずに思いっきり突っ走ってるわけだけど、らぁらの実力や努力、優しさを無下にするほど鈍感ではなくて、認めるべきところはちゃんと認識してるのが、良い主役だなと思います。

関係性が構築されているのは他のクラスメートも同じで、『アイドルは男の子のもの』と思い込んでいたすずちゃんとはなちゃんがステージの魔法にかかって、『プリパラって良いものかも』と思い直す話でもありました。
四人の友情が構築されるのが『泥まみれのトンネル掘り』だってのがいかにもプリパラですが、今回のシリーズは『アイドルは男の子のもの』という固定観念と戦っていく話になると思います。
そこから解放され自分の『好き』を追求するようになった最初のモデルケースとして、二人は結構大事かな、と思いました。

面白いキャラ造形してるダンプリファンクラブもそうなんですが、何かが『好き』という思いは行動につながり、行動は他人に届いて変化を促します。
そういうポジティブなフィードバックの第一例として、プリパラに二人仲間が増えたこと、らぁらの新しいスクールライフに友達ができたことは、大きな意味があるかな、と。
何の意味もないフォーメーションで急に命張るの、面白いやら『ヲタはヲタを知る』コミュニケーションのアツさがあって良いやらで、好きな展開でしたね。
それにしたって、歴史あるダンプリトンネルは横木で補強してあるから崩落せず、素人工事で補強が甘かったプリパラトンネルがぶっ壊れるの、相変わらず無駄に細かいところに整合性があるなぁ……好きだよ、そういうの。


『アイドルは男の子のもの』という固定観念を擬人化したのが、ゆいちゃんの兄のショウゴくん。
あの二人のワイワイガヤガヤした関係性結構好きなんですが、『ショボいステージやるんじゃねぇぞ! 女子供は帰れ!』というお兄ちゃんへの反発が、ゆいちゃんの大きなモチベになってるのはイイなぁと思います。
お話全体で乗り越えていくべき概念に具体的な顔があって、それが主人公にとって特別な関係で結ばれていることで、大きなテーマが上滑りせず、笑いと実感のこもったドラマに変わる。
お兄ちゃんはいい具合に悪役をやってくれて、なんか不思議な可愛げがあって、作品世界を成立させる結構大事なキャラかなぁ、という印象ですね。
デカい口叩くだけの実力があると更に味わいが増してくると思うんで、早くステージ見たいわけですが、それよりも女の子新キャラのモデリングと曲追加が先だよなぁ……おそらく3Dステージはないな。
とか言ってると、ちゃん子やメガ姉のような不意打ちを食らうのがプリパラなわけだが。

グロちゃんに変わって『色々言ってくる大人』ポジションを担当する大神田川ババリア校長も、『アイドルは男の子のもの』という固定観念の体現者。
高野さんのオモシロ演技が唸りを上げ、いい具合に存在感のあるキャラに仕上がっていましたが、リナちゃんが暴走しすぎた反省を受けてか、箒は喋りませんでしたね……変形はしてたけど。
重すぎる愛が憎しみに変わっていたグロちゃんとは違って、あくまで『理解のない大人』レベルで留まってる感じですけども、今後ババリア校長をどう攻略していくのか、あからさまに顔見世だけしていた健太声のオッサンはどう動くのか、そこら辺も気になるなぁ。

顔見世という意味では、後にメインキャラとして舞台に立つだろう虹色にのちゃんと、幸多みちるちゃんも一瞬だけ画面に出たりしました。
にのちゃんのフィジカルエリートっぷりを助走段階で躓いてるゆいと対比させたのは、出来ない自分ではなく虹色の夢ばかりを追いかけてしまうゆいのキャラクターを際立たせていて、良い使い方だなと思った。
今後キャラが出揃って話が落ち着いてきたら、ただ夢ばかり見ているゆいの危うい足場を崩してくる話とかもやるのかねぇ……。
『欠点』とされるもののポジティブな側面を見逃さず、その描写に重みを持たせるためにもネガティブな部分から逃げないシリーズなので、『夢/妄想』の暗い部分は、そのうち触ると思います。
今は新主人公の『強さ』を見せるターンだと思うんだけども、ぶっ飛んだ妄想と失敗で笑いを作りつつ、キャラの細かい陰りを描写してくるところ、油断なくて好きだな。


というわけで、アイドル開拓神話のページがまた一枚! という塩梅の、手応えがたっぷりあるお話でした。
白紙のページを一枚一枚重ねていって、関係性や状況が変化していく楽しみは、お話の最初から『プリパラはみんなの楽しみ』だったパラ宿では楽しめないものであり、アイドルタイム独特の魅力だと思います。
ズラッと観客席にめが姉が並ぶ違和感も、ここをファンでいっぱいにしたときの達成感のためにやってることだろうしねぇ……『ただおもしれーから』かも知れないところが、プリパラの怖いところだが。

色んなものが見えてきて、新シリーズ独自の面白さも盛り上がってきたアイドルタイム。
今回関係性の橋頭堡を築いたキャラも、顔見世しただけのキャラも、今後の展開の中で独特の魅力とキチっぷりを、存分に発揮してくれると思います。
パパラ宿にどんなアイドル神話が気づかれていくのか、来週も楽しみです。