神撃のバハムートVirgin Soulを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
武力、権力、政治力。様々なパワーが衝突し、あるいは真価を発揮しなかった結果、主人公サイドが軒並み投獄される展開に。『敗北の日』というサブタイトルに偽りはないが、王は負けを望んでいる気配も。
まさかの再登場もありつつ、舞台は牢獄島へ。
魔族の無念を込めたテロルは順当に失敗し、主人公が全てをひっくり返すスーパーパワーに目覚めるということもなく、当たり前のように敗者が敗者となった今回。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
ここで負けさせるのがVSのテンポだなぁと思うが、じっくりした描写の中から色々見えるものがある。
一つはニーナの変化…というか不変化?かな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
ニーナは鎖につながれてなお当事者性がない。圧政国家で国家反逆罪に問われれば、無期懲役は軽い方だと思うが、『やりすぎ』と言い張る。
そういう能天気さを維持しつつ、楽しんでいた日常が悪魔の死骸で成り立っていて、それが嫌だということは認識する
この話は童話ではないので、ニーナが『王様は裸だ』と言い張っても世界は変わらない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
誰も言えなかった正論を真っ直ぐぶつけてくる子供のニーナに、シャリオスは怒らない。カイザルが思いをぶつけてきた時のように、素直に受け止め自分の生きざまを通す。
悪魔と人間の間に立ち、暴力的解決を己の実力一本で止めようとしたカイザルにも、シャリオスは問いかける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
『お前の生き様は困難で、何も出来ないぞ。それでも貫くか?』と。
シャリオス自身は覇道が生き様だ。生ぬるい共存の道を選べるなら、王都はこうなっていない。甘っちょろい主役たちとは違う
しかしその上で、シャリオスは正道の価値も意味も、己の歩む覇道が踏みつけにしているものの尊さも、把握はしているのではないか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
選びたかったが選べなかった道を歩んでいるからこそ、ニーナとカイザルを殺さず、再起の可能性のある牢獄に閉じ込めたのではないか。
あそこでカイザルが横殴りしなければ、シャリオスは迷わずアザゼルを殺していたと思う。それは王としての責務であり、倫理的行動だ。カイザルやニーナを(悪法といえど)法に則って処罰したのと同じだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
それと全く同じように、ニーナの真っ直ぐな倫理やカイザルの努力自体を、シャリオスは認める。
認めた上で、倫理の尊さではなく身も蓋もない実力のみを判断基準にするのが、シャリオスの道なのだろう。それは実力による簒奪を前提とした玉座であり、現実的倫理ともいえる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
ニーナは現実を飲み込めない甘ちゃんだからこそ、そこにある不実を真っ直ぐ見て、素直に糾弾する。
悪魔の死体を見て、自分も鎖につながれて、ニーナはのんきな日常から覇道の裏側へと立場を変えた。でも、当たり前の『日常』、当たり前の『正義』を大事にする人格に代わりはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
当たり前を守っていては生き残れない現実を前に、当たり前でい続けること。それがニーナの主人公性なのかもしれない。
ニーナの『普通』の強さはこのように元気だったが、龍という異形の力は不発であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
シャリオスとデートした結果、状況を打破しうる暴力へのアクセスコードを失ってしまう皮肉は、アザゼルだけではなくニーナ自身にも牙を向いたわけだ。ここでも、ニーナは半強制的に当事者になった。
ニーナが自発的に竜の力を発現させようとしたのは、アザゼルの必死の叫びに答えようと思ったからか、目の前に広がる悪を自分の問題として許せなかったのか。多分両方だろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
しかし物語は彼女の思いに答えず、後頭部をイワされてあっけなく修羅場が終わる。暴力で解決できる局面ではない、と。
アザゼルが必死に探し、見つけ、踏みにじられたテロルの道。龍の発動に失敗したのは、暴力で政治と倫理を書き換える試みを、ニーナは選んではいけないということなのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
アザゼルが流した涙に共感しつつも、アザゼルとは違う道を選ぶ。これも、シャリオスの覇道とは違う意味で険しい道だ。
アレッサンドロに『何がしたかったんでしょうね?』と煽られるカイザルも、暴ではなく武によって皆が幸せになる道を求め、叶えられない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
アザゼルが即死するルートは回避できたが、その代償として地位を失い、牢に入ることになる。義手を最大活用した立ち回りにおいては、二人を圧倒したのに、だ。
何がしたいのか。カイザルはその目的自体は正しく捉えていると思う。天に恥じることなく、すべての人が幸せになれる道を歩きたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
作中最も理想主義な男は、しかし無様に失敗し続ける。理想全てを追い求める正道は、理想の一部だけを現実と認める覇道よりも、さらに険しい。
ニーナが頭を抑えられつつ吠えた思いもまた、正道に繋がる所だ。カイザルは騎士教育とそれなりの人生経験によって、ニーナは幼さゆえの真っ直ぐさで、同じところにたどり着いているのは面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
しかしそれは現実の中では、現状無力だ。覇道に抗する実力のためには、ずる賢い智慧が必要になる。
そういうのが明らかになったタイミングで、ずる賢さで世界を救ってしまったあの男がズドンと出てくるのは、まさに最高だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
正しいのに実現しないジレンマを、実現させる能力を持った存在との邂逅で次回以降に引き継ぐのは巧い。ストレスが逃げる水路の存在が、的確に示されているからだ。
ニーナの方も現実にさんざん踏み倒された先輩、ジャンヌと出会った。彼女はムガロの母でもあるので、接触する因縁は十分にある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
無邪気でいることの無力、無垢でいることの正しさ。鎖に繋がれることで思い知った現実でどう振る舞うのか、ジャンヌからたくさん学んで欲しい。
カイザルの全てを賭けた乱入で、アザゼルもなんとか命をつないだ。あれだけツッパってダークヒーローしてた男が、無様に泣く。VSは『笑いたいけど、笑うに笑えない』演出が巧い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
シャリオスはムガロを利用しなかった間抜けを嘲ったけども、そこは最後の一線というやつだろう。
ボロボロのガキの性別も確かめず、命を救い衣を与える。テロルを選択したアザゼルが、無私の善意を向けたムガロ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
それはシャリオスにとっては、ただの男としてデートを楽しんだニーナに当たるのかもしれない。彼があの黄金の日々をどう受け止めているかは、話の核になるだけになかなか明かされない。
アザゼルを拷問という形で活かしたのも、カイザルの決意に誠実に答えつつ、覇道の生き様に嘘をつかない選択なのだろうか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
どーもシャリオスは、精一杯己の生き様を疾走しつつ、いつかより善きものに倒されることを期待している感じがある。倫理への挑戦者としての悪魔的というか。
シャリオスを裁くべきのは小さな人間の小さな決意であって、上から目線のピカピカクソ天使ではもちろんない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
つーかお前らさぁ、また超越の力を持っているだけの無邪気なベイビーちゃんをさぁ、お母さん恋しさをエサに自由に操ろうっていうさぁ…俺は絶対許さんからな、アーミラと同じことは。
ニーナとカイザルがシャリオスに試されていたように、バッカスもソフィエルに己の倫理を問われていた。『なぜムガロを売らなかった?』と。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
答えは『なんとなく』だ。バッカスはハードボイルドなので、真正面に倫理を吠える事はできない。ドラゴン小娘とは違うのだ。だが心の底にある輝きは同じだ。
ニーナがシャリオスに異議を唱えたように、バッカスが天界の権勢に背中を向けたように、無力な義がいつか力に変わる時がやってくるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
しかしそれは今ではないし、無条件にかなえられるものではない。むしろそれは、常に試される、厳しい道なのだ。厳しくすることで、その正しさに芯が入る。
義の無力を試すことを、シャリオスは怠けない。義の価値を疑うこともしない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
様々な人々の運命が交錯し、状況が揺れ動いた回だったが、一番クリアに己を見せたのは覇道の暴帝だった気がする。ラスボスに威厳と信念があり、かつ認められない一線があるのは良いことだ。
そして倒すべき暴君は、少女の本物の恋でもある。シャリオスを見てもイケメン反応がなかった辺り、ニーナは顔ではなく心に惚れ、生き方を変えたのだろうか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
しばらくは監獄で話が回るだろうが、ニーナがシャリオストの真実を知った時、彼女の龍はどうなるのだろうか。楽しみだ。
ニーナが龍変化出来てしまうと、監獄が隔離施設として機能しないので枷をはめておくのは大事だしな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
人間らしい小ずるさのエキスパート、信仰と苦難の象徴のような女とも合流したことだし、明るい街では見つけられなかったものを、牢獄の闇の中で学んで欲しいと思う。来週も楽しみだ。
追記
追記。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
色彩コントロールによるムードの調整は、このアニメの最も冴えた演出。
今回も埃っぽい黄色の中で騒動があって、しかしそれは大勢に影響なく終わり、青く抜けた空が取り戻されてしまう一連の流れが、残忍で鮮明だった。
アザゼルの涙も、ニーナの決意も、今は無力で現実を変えない、今は。
追記の追記
追記の追記。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
三人入り乱れての剣戟シーンは大迫力であったが、実力では二人を上回りつつ政治的に勝てないカイザル、押されつつも悪魔の死骸を背中に奮起するアザゼル、思いの外真っ直ぐ剣を振るシャリオスと、男たちの思いが殺陣に込められているのがとても良かった。
それぞれ譲れないものを奮っているからこそ、アクションシーンがただウマなだけで終わらず、キャラ表現になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月26日
これはニーナの細やかな表情変化に力を入れ、彼女が王の非道を己が立ち向かうべき問題として受け止めた瞬間を描いたシーンも同じ。質を正しく使うシーンが多いのは、とても良い。