ID-0を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
ラジーブという破滅が近づく中、ID無きモノたちは己の過去を取り戻すため、運命の場所に急ぐ。謀略と情念が絡み合うゼロ地点に待つものは。
という感じの、各キャラ過去掘り下げつつラスボスとご対面中居。ここまでためた過去が一気に開放され、点と点が繋がるカタルシス満載。
シクスに襲いかかった天体はフェイクではなくシリアスな事実で、死にかけてる100億人も本物。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
そういう状況の中で、海賊採掘屋はあくまで自分たちの過去と運命を掘り下げることを選択する。今出来ること、するべきこと、したいことをする。社会から切り離されたアウトローの選択肢。
あまりにも大きすぎて実現可能性がないマヤの『みんな助けましょう』という提案は、意外なところで拾われる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
今回は色んなキャラの過去が一気に明らかになったが、仮面の男(有栖川・コピー)の素性が見えたことで、彼の目的、自分を自分と認めるためのIDのありかもはっきりした。
アリスガワ=イドのバックアップコピーである彼は、オリジナルが成し得た偉大な発見を上回り、存在証明を成し遂げたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
100億の人間を救い、ラジーブを撃破すれば、恒星間時代を切り開いたオリジナルよりも偉大で、存在に足りる意識なのだと世界に、何より自分自身に刻み込めるからだ。
そこにはメサイアコンプレックスというより、捻れたエディプスコンプレックスが存在している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
自分が劣化コピーでしかないという認識、何か特別なことを成し遂げなければならない、オリジナルを超越せねばならないという強迫観念。
それが当靴屋には不可能な、世界規模の救済に向かうのだから皮肉だ
彼の歪んだ自意識は『仮面』に象徴されている。オリジナルと同じ顔を隠すための仮面は、Iマシーンになっても張り付いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
イドたちののっぺりした顔ではなく、目鼻が付いた人造の顔。
顔貌が個人を表すIDの一つである以上、自分を見つけていないコピーは人間を真似た仮面をつけるしかない。
ローマの軍人か皇帝のような、ゴテゴテした装飾もまた彼の内面の現れだろう。バックアップとして生まれ、オリジナルを蹴落としIDを剥奪してなお、彼は満たされない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
世界全てを差配するに相応しい、金色の指揮官としての自意識。巨大企業の頂点に座ってなお、彼の虚しさは埋まっていない。
同じバックアップでありながら、リック=コピーは己が己であることに胸を張る。自分はあくまでコピーなのだから、生身の身体はIDたり得ない。仮想空間に『己』として投影はしない。それがリックのケジメであり、コピーの誇りだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
仮面の男が地位故にたどり着けない自由に、リックはたどり着いている
それでも、自分を規定するIDが無いのは不安だ。アマンザに答えを見つけたくなるのも判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
安易に『お前は人間だ』とはいわず、ただリックがそこにいることを肯定したアマンザの答えは、とても誠実だった。戦争機械として船に乗り込んだ女は、仲間を受け止められる家族になったのだ。
船の中での生活で変わっていったのはカーラも同じで、お高く止まった嫌な女から、自分の手足で事件を掴み取るプロへと変化し、その成長が周囲に『家族』と認めさせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
自分が作り上げてきた信頼の道を、カーラは自分の意志で裏切る。そこにも、『身体』というIDへの狂おしいほどの希求がある。
リックが持つ、『身体』が無いことの誇り。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
カーラが持つ、『身体』が残っていることへの希望。
仮面の男が持つ、『身体』を持っていても満たされない渇望。
一話で複数人の過去を扱うことで、個人の存在を支えるIDとしての『身体』が多角的に照射されたのは、とても面白い。
『身体』があることが人間の証明ではないが、人はみな己の存在証明を求め、『身体』は大きな手がかりとなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
現状を受け入れ新たな誇りを造る活き方も、過去と人間の形にこだわる活き方も、それぞれ無条件に肯定されるものでも、否定されるものでもない。
これまで『仲間』として冒険を一緒にくぐり抜けてきたカーラの裏切りは、当惑すると同時に納得も出来る、悩ましいジレンマとして受け止められる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
それと同じように、エゴむき出しのオリジナル超えを求めつつ、沢山の人命を救う仮面の男の行動も、単純な悪とは当然割り切れない。
肉の身体、機械の身体。善と悪。過去と現在。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
様々な軸をバラバラに配置し、各キャラを通じて多層的に見せることで、テーマの立体感も、キャラクターが抱える一筋縄ではいかない複雑さも、しっかり把握できる。見事な計算と目配せが行き届いた、優れた構図だと思う。
何より良いのは、IDを巡る人々のドラマがとても面白いことだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
コンセプチュアルな対立を思いつく所で足を止めず、創作世界に生きている仮想人格に真剣に向き合い、あいつらがどんな生き方をして、何を考え、どんな選択をするかを考え抜ぬく。
その結果、彼らの決断と行動には血が通い、体温がある
思わず笑わされ、胸を突かれるドラマの熱量があればこそ、構図に秘めた理知的なメッセージは視聴者の胸に届く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
リックがコピーである自分をアマンザに打ち明けた時、僕は彼を誇らしく思った。それでも不安だと呟いた時、肩を抱いてやりたくなった。物語に引き込まれている証拠だ。
そうやって、キャラクターと舞台をちゃんと好きになれること、物語的都合の中にある彼らの決断を、真実のものだと受け止める気持ちになることが、嘘っぱちの物語を本気で楽しむ上では、とても大事だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
テーマ性の構築と同時に、そういう部分を一切怠けないところが、このアニメの信頼感に繋がる
アリスと出会うことで、イドは諦めていたはずの過去を幻視し、それを本気で追い求めることを決めた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
リックの打ち明け話も、カーラの裏切りも、同じように過去に向き合った結果だ。主人公の決断を丁寧に描いた結果、仲間の選択も同じ重さを持って、しっかり描写できている。
いけ好かないニンジャ野郎、頭でっかちのファンドマネージャー、自暴自棄になったレーサーレプリカ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
凸凹野郎たちは命の危機を団結して乗り越え、その実感こそが彼らを『家族』にした。なにもないからこそ、今そこに在る自分が積み上げた行動だけが、IDの証明になる。
それほど重たいものと天秤に乗せるほど、カーラにとって過去と『身体』、自分が自分であるためのIDは重たい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
これは敵を含めた全てのキャラに共通するもので、だからイドもカーラの決断をある程度認める。『判るよ、俺もそうだ』と。
そのうえで、イドにも譲れないものが在る。
カーラの決意を尊重しつつ、自分の願いを実力で掴み取るイドがマジ頼りになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
十重二十重の囲みを一瞬で破る忍者アクションはマジカッコ良かったなぁ。
コピーとの対峙がどうなるかも含めて、来週の決戦が非常に楽しみである。アクションキレてるのは良いところだよな、このアニメ。
無論、『バックアップ』として待機しているリックや仲間たちも黙ってみてはいないだろうから、彼らの活躍にも期待だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
仮面の男とリックの共通点である『バックアップ』を描写した後に、リックを後方待機させる展開は描写に詩情と膨らみがあって好き。
それは補欠ってことではなく、とても大事なのだ
IDを求め続ける人間のカルマから、言葉を持たないファルザとアリスだけが自由だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
ファルザはケダモノだから良いとして、アリスは自分が誰であるかを気にせず、幼女らしく楽しみ、泣き、在り続けている。
コピーと対峙し、イド=アリスガワの過去を掘ることで、アリスのIDも見えてくるかな。
アウトローが激しく己の決断と欲望をぶつけ合う中で、相変わらずマヤはフニャフニャしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
IDを巡る物語…己の存在証明に必死になる人々の中で、そこにこだわりすぎず世界全体を見れる/見てしまうマヤの特異性も、今後活かされると思う。ラジーブも大暴れしてるしな!
複数人が己のIDに必死になるドラマを展開しつつ、テーマとモチーフを明瞭に操る技量にも揺るぎはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
物語の終わりがうっすら見える中で、このアニメの強さをどっしりと叩きつけられる一話でした。いやー、1話が早いなぁホント。このアニメのキャラみんな好きなので、来週ホント楽しみ。
追記&訂正
追記&訂正。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月5日
落ち着いてみてみると、エディプス・コンプレックスではなくピノッキオコンプレックスだな。コピーとオリジナルの間にある感情のねじれなわけで。
創造主と被造物の関係ではないので、フランケンシュタイン・コンプレックスでもなしと。しかしコンプレックスの種類は多いな。