サクラクエストを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
PT個別エピ四週目、今週は変人ヒッキー凛々子の回。
これまでは二話構成の前編で爆弾が破裂する作りだったが、今回はとにかく貯める展開に。外から来て内側に馴染める国王と、内側から出れないのに違和感だらけの人生を送る凛々子。
順当に進行するイベントと、高まる内圧
ここまでサクラクエストは間野山の外側から内側に入った(由乃、早苗)り、魔の山から外に出て内側に戻ってきた(真希)り、内側に拘泥しつつ外側と接触(しおり)、ここに接触経路は違えど、内部と外部の接触・移動をキャラクター個人のドラマに重ねながら描いてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
そこで重視されているのは『間野山と都会』との接触、それによって生ずる摩擦と和解であり、地理的な断絶が個人に取り込まれる形で、物語が進展していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
外側は自分が足場を置くにせよ、そうでないにせよ常にそこにあって、巧く距離を見つけなければいけない問題だ。
凛々子は間野山から出たことがない。地理的な外部を知らないが、それでも彼女は『自分と他人』との接触に多大な摩擦を感じ、断絶に橋をかけられない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
それはこれまで描いてきた、地理的領域に拡大した大きな話ではなく、凛々子と他者、凛々子自身での葛藤という、クローズアップ重視の構図になる。
無論これまでも、PTメンバーそれぞれの内面的葛藤(あるいは問題)が魔の山の町おこし(の失敗)と重なり、事件を追いかける中で心理的断絶に橋がかかる展開はそこかしこにあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
なので、外部的なイベントはうまく行って、凛々子の鬱屈を加速させる今回の展開は、これまでの流れを反転させた形だ
いつものようにトンチキな脱線を挟みつつ、彫刻や映画撮影やそうめん祭りとクエストをこなしてきたPTは、かなり順調にツアーを成功させていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
流暢にガイドをこなす真希の姿は、自分の話で『演じる』ことと折り合いをつけた結果だろう。他のキャラも、これまでの経験を活かし内外の交流を巧く導く
これまでのお話なら、『対外的イベントの成功』と『内面的葛藤の昇華」はイコールであり、お話はスムーズに終わっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
しかし凛々子の対立は主に内部にあるのであって、間野山でツアーが巧く行こうと行かなかろうと、他人と自分の距離をうまく取れない、巧く踊れない自分は変化していかない。
間野山で育っていながら踊れなかった間野山踊りを、由乃は見事に踊りこなす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
それは簡単ではない。ちゃんと練習して、コミュニケーションを取って、自然な笑顔を作ったから、『普通』に頑張ったからうまくいくのだ。
でも凛々子にとって、その『普通』があまりにも遠い。
オシャレよりもUMAが好きな自分。他者に差し出せる笑顔が見つけられない自分。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
『それも自分なんだ』と胸を張って開き直れるほど好きにもなれないが、かといって他人と同じ『普通』の仮面をかぶれるほど器用でもない自分。
自分に耽溺し黙考するほどに、ドラゴンのように孤立した現状を思い知る。
PTの仲間も凛々子と同じように変人で、まったく『普通』ではない。多分、『普通』な人などいない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
でも人は集団で暮らすなかで、どうにか共通点を見つけ、自分たちがドラゴンではないことを確認しながら生きていかなければいけない。そのためのパスポートが『普通』ということなのかもしれない。
凛々子は『普通』発行手続きに、出だしから躓いている。幼稚園から人の輪に入れず、そのまま思春期を過ごし、祖母だけに肯定されながら20になった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
『普通』でない自分を許容してくれた唯一の『外部』、しおりは優しい。これまで示されたように、誰にでも優しい。それは美徳であり、残忍でもある。
凛々子は『普通』ではないまま、『普通』になりたいと願い、でもやはり『普通』にはなれない子だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
『普通』になること、UMAの話をしなくなるのは、自分が自分ではなくなってしまうようで、耐えられないほど痛いのだろう。クローズアップは、そういう凛々子の身勝手な甘えをじっくり切り取ってくる
PTメンバーは『普通』ではない凛々子を、既に仲間と認めている。疎外感を感じているのは凛々子だし、仲間の柔らかな態度は実は既に凛々子を変えつつもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
でも、変わっていくことも怖い。『普通』ではないドラゴンとして生き続けていることに、凛々子はある種の慣れを感じ、安住してもいる。
職もない、会話もない。『外部』との接点を持たないようにみえる凛々子にも、『外部』はそんざいする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
しおり、国王PT、PTメンバーとしての仕事、ログハウス。
それは都会に出ていったり、仕事をしたりといった『普通』の外部よりも矮小で、接触とは認められない小さな交流かもしれない。
でもそれは、凛々子が決めて、部屋以外の世界として獲得した、大事な接点なのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
PTメンバーであるしおりは『変わった』といい、家という『内部』を共有する祖母は『変わらなくていい』という。
その認識のズレが、凛々子が彼女なりに小さな角度で、10話分外部と接触してきた証明なのではないか
順調に、『普通』に展開していくツアーの中で、凛々子は役割を持たない。踊りを踊らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
それでも良いと仲間は言う。『普通でなくていい』と。
だが、そこに違和感を感じるのなら、凛々子は『普通』であることを諦めきれていないということだ。解決法が分からなくても、寂しいものは寂しいのだ。
あっという間に人の間に滑り込める、ドラゴンでない国王を羨むのは、ドラゴンで居続けたくないからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
でも、凛々子は多分ドラゴンであることをやめられない。ただいるだけで共同体の和を乱し、『困った子だね』と端っこにおいていかれるような、そういう魂を持った子だ。
『普通』に、スムーズに進行している事象の中には、『普通』だからこそはじき出されてしまう凛々子のような存在がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
それは人間ではなく概念かもしれないし、曖昧な思いかもしれない。凛々子の扱いは、少数派の異物をどうすくい取って国王のクエストが、このアニメが進むかをあぶり出していく。
竜が怒り、雨が降ってバス停に孤立したところで今回の話は終わっている。凛々子が溜め込んだ鬱屈がどこに炸裂するかは、今回では見えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
それは凛々子が国王に、仲間に、『外部』と『普通』にどう向かい合うかの予言なのだろうか。国王が無自覚になで続けた凛々子の逆鱗が、どういう炸裂を生むのか
そしてその先に、凛々子なりの『外部』との接触方が見つかるのか。発行し損なった『普通』パスポートを、何らかの形で再発行できるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
より正確に言えば、国王PTに参加し『家』から出ることにした時点で、仮パスポートが発行されていたこと、それを仲間が見守ってくれたことを思い出せるのか。
そういうことが気になる回だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
イベントの成否を軸に回してきたこれまでのエピソードとは180度異なるが、異なるからこそこのアニメが大事にしているものが見える。そういう回だったと思う。
スムーズに進行していくツアーに、PTの成長を見ることも出来たし。ここらへんは10話の強み。
変人のままでいいし、『普通』でなくてもいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
ただ、自分の中のドラゴンを飼いならすきっかけを巧く見つけて、凛々子が『外部』と会話し、『外部』が凛々子を受け入れていく入り口が生まれると良いなと思う。
今週どっしり凛々子の内面を見せられたおかげで、前のめりに彼女のことを心配してしまう
今回ほぼタメで進行した分、来週は爆発と和解両方やらんといかん。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
扱うネタも、言ってしまえば一ヒッキーのナイーブな悩みであり、社会不適合者の寝言だ。説得力とカタルシスを持って描ききるのは大変だろう。
だからこそ、巧くやった時には面白い話になると思う。ぜひ、凛々子を幸せにして欲しい。
追記
サクラクエスト追記。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
凛々子にとって『外部』とは、共有可能で客観化されたもの(これまでのエピソードがイベントを通じて接触してきたもの)ではなく、共有困難で主観的な側面が大きいのかもしれない。
世界は前者のような性質を前提として集団の中で共有され、それが社会の基盤になる。
凛々子はそこへのアクセス権限を巧く取得できず、自分(とその延長線上にある祖母、しおり、PTメンバー)との限られた接触から『外部』に貫通していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
それが異質な世界観にも見えるが、客観的な『外部』もまた、程度の差はあれ常に内面を通る。『普通』の人もみな、凛々子的ではあるのだ。
それは逆しまにすれば、凛々子のナイーブな怯えももまた、『普通』に共感される余地があるし、実際既に共感され受容されてもいる、ということだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
居場所のないドラゴンだとしても、凛々子は既にPTのメンバーなのだ。でもそれにすぐ納得できるほど、20年間の疎外の記憶は軽くはない。
これまでのエピソードの中で、PTの仲間もどうにもならない想いをどうにかするべく、グダグダ悩んだり暴れたり傷つけたり傷つけられたりしてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
凛々子もそういう道を通って、自分と他者、外部と内部の対立を和らげ(解決はしなくても良い)て欲しい。君の刺々しい鱗は、思いの外チャーミングだ。
さらに追記
サクラクエストさらに追記。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
『普通』でいられないドラゴンの親友が、PT中最も『普通』に社会とアクセス出来ているしおりだというのは興味深い。
前回しおりを主役に『普通』が持っている歪み、思い込みの怖さに光を当てたのを思えば、『普通』に、しおり的になることは必ずしも正解ではないと判る
凛々子は何がどうなっても急に『普通』に、憧れてるしおりみたいにはなれないし、なったらなったで地獄絵図だと思う。素麺にメンマはのらんのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月7日
何がどうころんでも自分は出るというのも、過去語られ肯定されたテーマだ。ドラゴンをドラゴンのまま、どうにか巣に入れる難題が、来週大事になるだろう