ID-0を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
溜め込んだ物語燃料大放出! 蘇る過去、唸る黒田節子安節!! 問われるヒューマニティ、俺は一体誰なのか!!!
24分とは思えないほどたっぷり詰め込んだ、大興奮の大決戦回。いやー、むちゃくちゃおもしれぇな。
活劇も思弁もこのスピードでぶっちぎれるって、やっぱ凄い。
というわけで、今回も色んなことが起きている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
一番の衝撃は大ネタ、ID-0の過去が明らかになったことだろう。
ケイン・アリスガワの実像、仮面の男の内面と合わせて、非常に衝撃的な反転となっている。
同時にただ裏返すだけではなく、僕らが見てきたイドの魂がどこから来たのかも納得できる。
ケインはアダムスが糾弾するように、人類の九割を殺し、妹を実験動物にして顧みないゴミクズ人間だ。『大罪人』というそしりも、全くその通り。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
今世界を襲っているラジーブによる破滅も、彼が計画し予測し実証した悪魔の科学の産物なわけだ。ホントヒデェな。
そんなケインはイドに転写された時ミスコピーされ、IDが白紙化された。今のイドの高潔な人格は、マイナスのクソ人間に事故というマイナスをかけ合わせた結果生まれた、不測のプラスなのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
では、ミスコピーだから、偶然の産物だから、炭鉱夫だから、イドの決意と行動には意味が無いのか。
これまでの物語を振り返れば、答えは自ずから出る。当然、否、だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
どのような身体に宿っても、大事なのは魂のあり方だ。
仲間を信じ、命を救い、尊厳を守る。
職業差別意識バリッバリにアダムスがなじる『炭鉱夫風情』の生き様が、どういうものを守ってきたか、僕らは知っている。
しかしそんなアダムスもまた、誰かを、というか人類全ての命を護るために行動している、正義と愛の人である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
彼のメサイヤコンプレックスは虚栄心だけではなく、ごくごく普通の体温ある人間として、惨事を見逃せない気持ちからも生まれてきているのだ。それはイドたちと同じく、価値のあることだ。
そんなアダムスが歪んでしまっているのも、ケインへの行き場を失った愛憎故だろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
彼にとってケインは圧倒的なカリスマであり、乗り越えるべき壁であり、わかり合うべき友だった。しかしその思いは叶わず、彼は自分の憎悪と人類の未来のために、転送システムを駆使したSF的殺人事件を引き起こした
イドがケインのミスコピーであるように、アダムスもまたケインを歪んだ形で転写してしまっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
その姿、その社会的地位を継承し、『自分がこうあって欲しいと願ったケイン』を演じ続けてきた。人類全ての繁栄を願う、その才に見合った高潔な人格者。誰よりも強いヒーロー。
イドが指摘したとおり、アダムスがケインをコピーし、IDを略奪したのは実務としての意味がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
しかし、それだけではない。彼がどうにかケインの生み出した歪みを是正し、『みんなが幸せに生きられる世界』を望んでいたのは、欠片だろうと確かな事実なのだ。高潔と卑近を割り切る線は思いの外薄い
アダムスの思いは、アリスのオリハルト人間化、それに続くジャニファーの錯乱、ケイン・アリスガワ殺人事件というカルマのラッシュで歪んだのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
転写技術という、人間の定義を根本から揺るがすテクノロジーが変えたのかもしれない。
単純に、時間が思いを発酵させたのかも知れない。
ともあれ、アダムスは友を思い、正義を信じ、人を助ける想いを核に残したまま、乗り越えられなかったヒーローの仮面を被り、実際に世界のために戦う戦士となった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
複雑で、人間味のある過去だ。子安さんの芝居と黒田台詞が異常なマリアージュを果たしていて、凄まじく存在感のあるキャラになった。
同時に、アダムスは自分のIDを見失った危うい存在でもある。イドが的確に指摘するとおり、アダムスはケインの歪んだコピーでありすぎて、自分がどんな人間で、どんな存在だったかを見失ってしまっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
『それでも、俺は俺だ』と言い張れる根本において、ケインの二人のコピーは正反対なのだ。
それは、義憤にかられてケインを殴り飛ばした過去のアダムスと、アリスを小脇に抱えモノのように扱う今のアダムスを比べても分かる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
あの時は身を焦がした激情は遠くに去り、命を軽んじる悪に自分自身が成り果てた。やはりアダムスを歪めたのは、『時間』という最も強固な変化なのかもしれない。
アウトローたる炭鉱夫に比べ、エリートであることをIDとするケインは、人類の定義が狭い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
社長で、生身で、知識レベルが高い存在以外は『守るべき人間』に入らないかもしれない危うさを、この救世主志願者はもっている。そこも、アダムスを全肯定できないポイントだ。
そんなアダムスが正当に非難する人類の敵、ケイン・アリスガワは、いろいろな運命のめぐりあいの果てにID-0のイドとなった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
それは過去とつながりを持ちつつ、それを絶たれつつ、自分にしか引き受けられない唯一無二の経験によって白紙の自我に『自分』を書き込んでいった男だ。
イドの善意と高潔が、転送ミスによって生まれた物理現象なのか、はたまた唯一性を持つ魂の色なのか。それは判別がつかないし、付けてはいけないことだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
ただ、彼の行動には背骨の通った信念があるし、ケインが軽んじていた命を守り続ける真摯さと正しさが宿っている。
白紙の記憶の中で、アリスを求める衝動。それもケインが用意したプロットかもしれないし、イドの魂の叫びかもしれない。区別はつかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
だが、イドは物言わぬアリスを一生命と認め、必死に守る。自分のIDが判明した後も、ケインの冷たいエゴイズムには乗っ取られない。それが僕には嬉しい。
こうして事実が明らかになってみると、イドが思い悩んだ空白のIDは、ケインの悪しき影響を切り捨てる禊にもなっていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
記憶を継承せず、ケインとは違う存在としてコピーされることで、イドは己が本当に大切にしたいものに出会い、それを守るべく命がけで戦う強さを手に入れたのだ。
イドとアダムスの決戦で、彼はボロボロに傷つきながら体を張る。カーラもまた、一度手に入れた生身の身体を振り捨てて、Iマシーンに戻って仲間を守る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
傷つくことを恐れない高潔は、安全装置を何十にも張り巡らせ、他人を犠牲に邪悪な計画を練り上げたケインの卑劣とは、大きく異なるものだ。
不自然な鋼鉄の身体。コピーされる記憶と魂。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
『人間』を超越する不自然な技術は、何が『人間』を定義するかを検証し、実証する唯一のツールにもなる。
過去と現在が入り混じり、救世主と自分を見失った愚者が重なり合う今回に相応しい、なかなかに複雑な配置だと思う。とんでもなく面白い。
世界全体の救済に過剰に支配されているアダムスと、あくまで手の届く範囲の『仲間』の安全保障にこだわるイドの対比も、非常に面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
炭鉱夫風情にとって、世界全体なんて背負えない。天才の叡智で救済法は知っていても、歪んでしまったヒーローのミスコピーには教えられない。
とは言うものの、世界を襲いつつある大災害はケインが引き起こしたものだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
変質したコピーとして、イドはそれに責任を負うのか。『オレはオレ』の範囲に、『過去の邪悪なるオレ』は含まれるのか。聖書最初の殺人者であるカインの印が、イドが持つゼロのIDには刻まれている。
歪んでしまったアダムスは、犠牲を伴う救済を用意していた。では変質した大罪者であるイドは、どんな世界救済を為すのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
それは過去の自分との繋がりに、このお話がどういう答えを出すかにも繋がる。『オレ』の、人間の範疇とはどのようにして定まるのか。鋼鉄の身体が問を加速させる。
歪んだ過去を背負った、男と男の殴り合い。スクライドめいた限界バトルの中で、マヤは傍観者であり目撃者にもなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
アダムスの歪んだ救済願望は、マヤの広範な善意と重なるものがある。イドがケインの邪悪さと向かい合ったように、マヤもアダムスの正義と向かい合うことになるのか。
贖罪という部分では、仲間を裏切ってでも手に入れたかった生身を振り捨て、仲間を守りに走ったカーラも、自分の答えにたどり着いた感じがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
その歩みは今後、イドが歩く道の先触れでもあるのだろう。表情筋が思い通りにならない姿を、無様に見事に表現した3Dモデルが見事。
複数の思い、複数の正しさが交錯する中で、アリスの無邪気さは一服の清涼剤だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
しかしそれを無邪気に楽しむだけでは許されない、重たい過去もよく見えた。つーかマジヒデェよケイン…アダムスが『情』の人間だと重ねて描写されてただけに、アリス周辺の無情さは冷たく際立つ。
ケインの大罪に繋がる過去を飲み込んでなお、『オレはオレだ』と喝破するイドの姿。アリスもまた、言葉と過去を失い、人の姿を失ってなお、『アリスはアリス』といえるのだろうか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
仲間が傷つくと哀しみ、守られると喜ぶ素直な気持ちが、悲しい事故から生まれたアリスのミスコピーだとは思いたくない
善人と罪人、過去と未来、憧れと自分、正義と悪、救済と犠牲。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
様々な対比を一気にぶち込み、全ての線がつながるネタバラシと、己の存在意義を問う激しいバトルが同時に展開する、超高濃度のエピソードでした。
いやー、濃い…個別の要素が複数の事例、キャラクターに重なることでさらに濃厚になる。
そしてその濃厚さがキャラクターの立体感、世界が扱う問題の複雑さと面白さ、『人間とは』というシンプルなテーマの奥行きを、ぐっと深めた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
男二人に目が行きがちだけど、彼らから発せられる圧倒的なオーラに照らされて、女たちの問題と勇気と愛おしさもグイッと彫りを深めたエピソードだと思います
戦いの中で生き様を吠えたアダムスとイド、二人の男を照らすオリジナルとしてのケインは当然として、勇気を持ってエゴを振り捨てたカーラ、無垢なる目撃者たるマヤ、限りなく幼いアリスにも、この話でしかできない表情がちゃんとあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
特にアリスは、無垢さの裏に隠していた宿命が明らかになった。
僕はこのアニメの全部が好きになってるし、『頭のおかしい敵役』から『愛ゆえに歪んでしまった善人』『もしかすっと作中一番マトモ』に評価が変わったアダムスも、当然好きになった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
彼らが己のIDを誇りに思えるような結末を、世界の命運をかけた戦いの中でしっかりと示して欲しい。
そしてこのアニメは、絶対にその願いを叶えてくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
そう思える決戦の回でした。
ホントな、これだけ情報を出して、世界観やキャラの裏設定をドパッと流し込んでなお、メインに来てるのはキャラクターの感情のうねりだってのがすげー良いのよ。
熱量と手触りがあるアニメ、ID-0。来週も楽しみ
追記
ID-0追記。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
過去のIDに囚われず善をなすイドと、仲間を裏切るほど過去に拘り、自分の意志でそれを手放すカーラの勇気を同時に描いたのは、凄くバランスが良いと思う。
イドのように自由でいられるやつもいるし、カーラのように過去に縛られるやつもいる。それはアダムスも同じだ。
しかし人間には変わることが出来る可能性がちゃんとあるし、イドとカーラの行いの中でその希望はしっかり描写される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
人間が持つ執着を悪と切り捨てず、そのカルマをキャラに背負わせ、自分の手で裏切りを贖わせる展開も、キャラに報いていてとても良かった。裏切ったことでカーラ株上がってるからな
さらに追記
ID-0追記。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
先週見事にアダムスを『ケインのバックアップ』と誤読して読みを展開したわけだが、見終わってみるとあながち誤読ではないかもな、と自己弁護。
いや、設定的にはもろくそ大間違いであり、恥じ入るしかないんだが。アニメ見るの難しーよマジ!!
アダムスはケインを人生のロールモデル、『なるべきオリジナル』として見ていたから、酷薄で邪悪な本性を見て『裏切られた』と感じた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
ケインを転移流刑に処したのは、彼を罰すると同時にアダムの中での理想、『オリジナル・ケイン』を守るためでもあったのではないか。
アダムは仮面を付け、『オリジナル・ケイン』を演じ続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
世界の守護者、革新の技術者。より広い優しさで文明を発展させ、多くの幸せをもたらすもの。
それはアダムス自身の正しさと優しさの結果であり、ケインに転写していたあるべきヒーロー像を再転写した虚像でもある。
そうして演じ続けるうちに、理想は歪み、アダムスのIDは消失を始める。『オリジナル』は自分の手で追放してしまい、心の中の歪んだ像を訂正してくれる他者は周囲にはいない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
アダムスの仮面を引き剥がし、素顔を見てくれる存在はもうどこにもいないのだ。参照性の迷宮の中で、理想は歪む。
仮面の上に仮面をかぶるケインのIマシーンは、そんな複雑なIDを持ってしまった彼の精神を、巧く物質化している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
イドが自分の求めた『オリジナル・ケイン』であってくれたら。ハイテンションな子安演技のなかに、切なる叫びが確かにこだましている。しかし、イドはイドであって、ケインではない。
ここで失われたオリジナルをイドに求めるのではなく、それはもうないのだと適切に判断できてしまう辺りが、アダムスのニンの良さであり歪みの源泉でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
ケインのようにナチュラルに狂えていたら、アダムスはこんなに歪なコピー/オリジナルの入れ子構造の中でIDを喪失しなくてもすんだろうに。
どちらにせよ、アダムスはIマシーンを破壊され、『オリジナル』たる肉の身体に戻った。同じく肉に戻ったイドを殺す罪科。同じ顔を持ったカインとアベルの道行きは、どこに続くのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
オリジンたる楽園に戻れば全てが解決するわけではないことは、これまでの物語が証明している。さてはて、楽しみだ。