イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

活撃/刀剣乱舞:第2話『部隊長』感想

『テイルズ・オブ・カネサン』とも『Fate/Zeyo』とも言われるUfo謹製イケメン付喪神時空剣戟アクションアニメ、第2部隊が動き始める第二話。
まず土方組をどっしりと見せ、世界設定とアクション軸で大まかな形を見せた第1話を受けて、隊のメンバーを個別に掘り下げる第2話となりました。
時間遡行軍が何を狙っているのかを探るミステリ要素もあって、キャラを絞り、話数をかけてディープ&ダークに刀剣男士を見せていく活撃のスタイルが、だんだん飲み込めてきました。
やっぱ作画に圧力があって、『コイツはこういう奴』という紹介を細やかな仕草から読み解けるのは、見ごたえがあって楽しいですね。

というわけで、ややペースを落として個別にキャラを見せていく今回。
特に目立っていたのは陸奥守ですが、『龍馬の佩刀』『陽気な食いしん坊』という記号から踏み込んで、何が大事でどういう性格をしているのかがよく見える回でした。
失われる人命に憤り、仲間を思いやり夢を語り、食の楽しみを大切にする陸奥守の光があることで、仲間たちの表情もよく見えた印象。
こういう真っ直ぐな男がチームにいると陰鬱な任務に風が射し込むようで、見ていて気分がいいですね。

刀剣男士は様々な側面を持っています。
時間遡行軍を殺す『兵器』であり、器物の『付喪神』であり、審神者の命令を受ける『兵士』であり、冷静な判断で正常な歴史を守る『タイムパトロール』でもある。
そして、眠り、食べ、失われる命に何かを感じる『人間』でもあります。

そういう複雑さを見せるのに、時間遡行軍に殺される現地の人々を使っていたのはとても面白い。
審神者とこんのすけが冷静に分析しているように、本丸としての重要事項は『歴史が改変されるか、否か』であって、『人が死ぬか、否か』ではない。
任務を果たすためには『ハズレ』とされてしまう城の人の死に、陸奥守は本気で憤り、我を失って駆け出してしまう男なわけです。
これは蒸気船が爆破された時も同じで、つまり彼は失われる命を座視できず、後先考えずに突っ走ってしまう男だ、ということです。
『兵士』としてみると直情的に過ぎるかもしれないし、『兵器・器物』には不要な感情かもしれないけども、『人間』としては熱い血潮を感じさせ、信頼できる男だ。

あくまでチームを『兵士の集団』として機能させるために、自己紹介の場を設けた兼さんと違い、陸奥守はあくまで『一個人』として好きな食べ物にこだわり、蒸気船見物に出る。
そんな彼の気遣いは、厳つい肉体に隠された蜻蛉切の意外な一面を引き出し、『器物』には許されていない『人間』の夢を、蒸気船の前で語り合うことになります。
あそこのシーンは船舶技術の進歩を絡めて、巧いとこ『タイムパトロール』としての寂しさみたいのも引き出せていたし、二人でキャイキャイ語り合ってた夢が無残に爆破されることで『時間遡行軍マジ許せねぇ……!』ともなる、いいシーンでした。

キラキラ熱血漢の陸奥守と、大福大好き蜻蛉切のコンビは、チームの中でも明るい人間性を担当している印象です。
人が人として幸せに生きられる当たり前の平和を大事にするからこそ、付喪神には必要のない食事を大事にする。
時間改変に直接関係無い死人でも、可能な限り守ろうとする。
しかし彼らは『付喪神』であり、本丸にいた外国人に害意がないことを示そうとしても、自分自身である日本刀(殺傷兵器)を手放すことは出来ません。
平時ならばそれだけを信じていられる人間性の光は、時間を超えた戦場においては危ういわけです。


光が強すぎて危なっかしい陸奥守に対し、兼さんは正義感と任務のバランスを上手く取り、隊長としてチームを引っ張るべく動いていました。
城の中の惨劇や爆発を聞いたときのリアクションを見ても、兼さんは『現地民が何億人死のうが関係ない。歴史が守れればそれでいい』という考えは持っていない。
しかし任務を果たせなければもっとたくさんの人が死ぬわけで、やりきれない現実を前にそれでも諦めず、最善手を探っている感じです。

私情を押し殺して積極的にリサーチしたり、チームの交流を可能な限り促進したり、兼さんは視野が広く、責任感のある描写が多いです。
こういう性質を見て取っての部隊長任命だと思いますし、国広とのバディ感もリーダーっぽさを強調してくれています。
今後陸奥守の危うさも兼さんがフォローしてく形になるのかなぁとか考えますが、逆に兼さんが責任感に押しつぶされかかる場面も出てくるかな。

どちらにしても、隊にいろいろな連中がいて、それぞれの個性が異なっているのは期待を高めてくれます。
バラバラだからこそ補い合える場面も出てくるだろうし、逆にバラバラだったものがまとまっていく気持ちよさもあるでしょうしね。
なので、思い出したように『あ、アンタを部隊長って認めたわけじゃないんだからネ!』とツンツンする陸奥守のムーブは二億点。
乗り越えるべきハードルの存在を分かりやすく示しておかないと、それが乗り越えられたときの快楽もちっちゃくなるからな!

色んなやつがいると言えば、薬研くんはクールでぶっきらぼうなキルマシーンという印象。
花丸時代の頼れる兄貴っぷりとは大違いですが、弟の面倒を見る立場ではないから、あんまそういう側面が出てきてない感じか。
心理的距離を表してか、陸奥守が起きたシーン、またみんなで自己紹介をするシーンでも、薬研くんは必ず最も奥まって暗い場所に身を置いていました。
それぞれの座り方や着こなし、背筋の伸ばし方などと合わせて、キャラクター性を絵で見せる演出が鋭いのも、活撃の良い所ですね。

板戸越しに短刀をぶち込んだり、弓兵の狙撃にいち早く気づいたり、薬研くんは『兵士』として優れた存在であることが強調されていました。
ぶっきらぼうな対応は『兵士』としての己を研ぎ澄ますためなのか、はたまた何か理由があるのか。
未だ分かりませんが、クールガイ・薬研藤四郎を攻略していくのも、第二部隊がこれから立ち向かう、大事なミッションになるのかな。
それにしたって、短パンからの生足で魅惑しすぎだろ薬研くん……蜻蛉切さんの胸板といい、今回はダイレクトなアピール多くて楽しかったですね。


審神者は『時間圧』なる設定に押し流されて、早々に退場。
舞台にキャラを運び、座組を整え、必要なミッションを指定するだけしたら後は刀剣男士に任すという立ち回りは、出過ぎず出なさ過ぎずのいいバランスだと思います。
まず兼さんの意見を聞いて、それに賛同する形で方針を出すのもデキる上司スタイルだったな。

人命の扱い方でスタイルが出たのは審神者も同じで、陸奥守のアツい人命重視でも、兼さんのチーム優先主義でもなく、きっちり任務として生き死にを測り、裏を取っていく冷静さがありました。
現場で切った張ったする刀剣男士と違って、ミッション全体を見る立場の審神者としては、そっちの方がミスが少ないのかなぁ。
その冷静な判断もまた、陸奥守の危うい人命主義と同じように、刀剣男士がミッションを果たすためには不可欠なのでしょう。

『歴史守護』という大義を果たすためには、死ぬべき命と守るべき命を冷徹に選別しなければいけないタイムトラベラーの悲哀というのも、活撃では結構大事なものなんだと思います。
前回も火事に絡めて、国広と兼さんがやりあってましたしね。
ハードな戦場を舞台にする活撃だからこそ彫り込めるシリアスな面白さだと思うので、今後うまく膨らませていって欲しいもんです。
大義と個人的場が対立することで、チームがチームとして機能する条件も深く描けるだろうし。

話数をまたいで話を続けていく形式なので、時間遡行軍との知恵比べ的なドラマがあるのも面白いです。
薬研くんのセリフを通じて『奴らはただのモンスターではなく、策を使ってくる』ことが強調されてましたが、それを読みきれずに船を爆破される形に。
こっから盤面をどうひっくり返し歴史を守るかも、今後の注目ポイントでしょう。
兼さんがかなり冷静に状況を読んでくれているので、負けっぱなしにはならんだろうなという期待感もある。
敵をカカシにしないことで、チャンバラ以外の局面でも緊張感が生まれ、武力以外のキャラの強さが引き出されていくのは、とても良いですね。


というわけで、第2部隊の五人が事件に向かい合う姿、その合間の日常を楽しむ姿を見せることで、キャラを掘り下げていく回でした。
設定や状況を説明する部分と、言葉ではなく絵で魅せる部分のバランスがやはり良くて、無理なくお話を咀嚼できるのが素晴らしい。
剽軽で軽い陸奥守の第一印象を、血みどろの惨劇に対する対応で気持ちよく裏切ってくれたのも、彼を好きになれるいい見せ場でした。
仲間が見ているところでは軽い仮面を頑張って維持して、シリアスで脆い優しさを見せないプライドの高さが、チャーミングだなって思います。

急造チームとして緩やかに絆を深める第二部隊ですが、時間遡行軍の謀略もまたタフで強大。
手を取り合える部分も、それが難しそうな部分もしっかり書かれたので、戦いの中で(そしてその外側の日常で)関係がどう深まり、変わっていくのかが楽しみです。
まずは眼前の謀略を前に、チーム兼さんがどう戦うのか。
来週を楽しみに待ちたいですね。