イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

活撃/刀剣乱舞:第5話『戦火』感想

歴史という玉を囲む駒には赤い血潮が流れている、紅蓮の炎が敗北を彩る、急転直下の活撃第5話です。
ここまで凸凹道ながら、みんなで協力し戦闘も調査も巧くいっていた分、見事にやられた! という印象を受ける大敗走でした。
強く優しい刀剣男士の活躍を祈る視聴者の願いに応えつつも、彼らが身を置く戦いの厳しさに嘘をつかず、苦い敗北、痛みを伴う傷を鋭く突き刺してくる容赦の無さ。
色々しんどいこともあるんですが、戦士たちの生き様は非常に良く描写されているので、奥歯を噛み締めつつも次週が待ち遠しいという、悩ましくも面白い展開となってきました。


というわけで、敵の詰め筋に対応しきれず、押し切られる形となってしまった今回。
敵が直接江戸に詰めろをかけてくる展開に意外性があるのは、刀剣男士達が定めていた『時間遡行軍は、直接的に歴史に手をかけない』という古いルールを、僕もそのまま飲み込んでしまったからです。
1話から3話のミッションが綺麗にそれをなぞる形で進行していたので、描写込みで信用を作っておいて、足場からひっくり返す。
なかなか巧妙な運び方で、『裏切られた……』という気持ちよりも『やられたッ! そりゃそうだ!!』という気持ちのほうが強かったです。

将棋盤にチェスの駒を乗っけるようなルール違反ですが、これは歴史をめぐる戦争であり、ルールは常時入れ替わる。
兼さんが先週『橋を一時間守ったら勝ち』と定めたように、時間遡行軍もまた自分たちなりの勝利条件を選ぶ自由があります。
賢く立ち回る特権を主役だけに握らせないのは、第1話から強調していた作品のルールですが、盤面をひっくり返して勝ちを取られた今回、それが牙を向いてきた感じですね。
やっぱ敵が油断なく、本気で詰めてくるほうが緊迫感があって良いな。

これだけ頭を使い、大太刀さんと幽霊船組との連携もできる『智慧のある敵』、時間遡行軍。
しかし彼らは己の目的を語らず、兼さんの慟哭も虚しい木霊となります。
あんだけ強敵だと視聴者も『何故』を問うたくなる所で、兼さんが『人間の尊厳を踏みにじって、てめぇら何がしてぇんだ!』と吠えてくれたのは、良いシンクロ具合だった。
クソ雑魚だったら踏み潰して終わりでどーでもいいんだけども、遡行軍マジ強いからな……理由を聞きたくなる。

彼らが刀剣男士と意思疎通をしないのは、『ゲームでそうなってるから』という身も蓋もない理由……もあるんでしょうが、刀剣男士のシャドウとしての側面を際立たせる意味もあるのでしょう。
陸奥守は今回、捕縛した幕府強行派に手伝ってくれるように頼み込みます。
軍艦を取り戻す戦いでも、優勢を取ったら降伏勧告をする。
刀剣男士は時間から切り離された客人ではあるものの、その時代に流れる息吹を感じ取り、語りかけてくる言葉に耳を傾けるわけです。

しかし時間遡行軍は現地の人達を直接手にかけ、歴史には存在しない威力の砲弾で江戸を焼き払って、時間を捻じ曲げる。
第3話で浪士たちに身を投じ彼らの言葉を直接聞いた、あるいは今回、自分とのコミュニケーションを拒絶した強権派の縄を問いて命を助けた陸奥守とは、正反対の行動です。
緑色の狼煙という禍々しいコミュニケーション手段で、身内でしか通じない言葉で連携しているところが、逆に時間遡行軍の閉鎖性を強調し、刀剣男士の可塑性を際立たせていますね。

相手を自分と同等の存在と考え、本気で思考をトレースして裏をかき、命を取る。
戦闘とは血と刃を使った変則的なコミュニケーションであり、同時に相手の意思を拒絶するディスコミュニケーションでもあります。
それぞれの陣営が異なっているのは、禍々しい怪物と麗しい美青年という外見だけではなく、対話可能性に対し開かれているか、閉じられているかでもあるのでしょう。


とは言うものの、付喪神というオリジンと未来人という素性を背負った刀剣男士は、人の力を借りることが出来ない孤独な戦士であり、その特別さが今回の負けに大きく関わっています。
四人で動かすにはあまりに大きい軍艦を使い、『もし強権派が手伝ってくれていれば……』という想像を生むシーンを入れ込むことで、あまりに大きなものを背負った刀剣男士の苦闘を強調するのは、なかなか良い演出でした。
大太刀という大駒を市中に貼った上で、二隻目の軍艦と大量の乗組員を用意できる『数』の有利で敵が推してくるのも、孤闘の苦しさを強調していました。
敵は多勢、味方は無勢……勝利条件の書き換えと合わせて、刀剣男士の闘いは本当に厳しい。

人知れず歴史を守り、六人というあまりにも少ない兵力で、運命を切り開く刀剣男士。
その苦しさを今回最も証明していたのは、強敵・大太刀と一人で立ち向かい、相打ちにまで持っていた蜻蛉切さんでしょう。
重さと速さ、智慧と武力を兼ね備えた相手に奮戦する姿は、良いチャンバラに興奮しつつも痛ましく、誇り高いものでした。
大太刀の強者ぶりが良いアクションで説得力を持っているので、それをひっくり返すためには代償を支払わなければならないと納得させられてしまうのが、なかなか憎いところだ。
命をかけて仲間を、歴史を守ろうとした奮戦天晴なだけに、なんとか生きていてほしいと強く思います……ヒキ巧いなぁ。

国広と二人でかかれば、命を賭けずとも大太刀を獲れたかもしれませんが、そうなった場合は勝海舟が死ぬ。
敵を殺すか、味方を守るか、究極の二者択一を前にして『活かす』選択を取ったのは、凄く蜻蛉切らしいし、刀剣男士らしいなぁと思いました。
陸奥守が一番わかり易いけども、薬研くんの負傷に布の形でいたわりを見せ、遡行軍の理不尽に吠えた兼さんだって、命と尊厳を守るために戦っている。
『刀はただの人斬り包丁ではなく、異能は何かを守るためにある』という倫理性を背負えばこそ、刀剣男士はヒーローたり得ているのでしょう。
蜻蛉切さんが流した血は、育ちにくく守りにくい植物を育てる、生贄の雨なのかもしれません。

が、やっぱしんどいなぁ……こうなってみると、『黒糖大福が食べたいの~☆ミ』というあざといアピールが、逆に悲壮感を掻き立てるっていうね。
ああいう描写を地道に積んだ結果、蜻蛉切さんの死はユニットの破損ではなく、俺らとおんなじように甘いもん食いたがって、何かを守りたいと強く願い、仲間と絆を造れる人間の消滅になるわけです。
イヤ死んだって決まったわけじゃないし、来週生存確定したら諸肌脱いで蜻蛉切生還おめでとう神輿を担ぐ所存でありますが。
キャラの生死がちゃんと刺さるってのは、創作だからこそ大事だと思う。

蜻蛉切さんだけが戦っていたわけではなく、残りの五人もみな必死に戦っていました。
剣術ではどうにもならない操船戦闘に悪戦苦闘したり、納刀をアクセントに使って華麗に戦う鶴丸の殺陣も印象的でしたが、勝先生を守り抜いた国広の奮闘に一票入れたい。
お船も体を張って江戸を守っていたし、『守るもの』としてのヒーローを描く姿勢はずっとブレんなぁ、活撃。
陸奥守が第3話と同じく、命を助けるために水をくぐり、前髪を崩して兼さんに手をのばすのは、響きのある良い演出だと思います。

かなり頑張ったけども人数の不足もあり、裏の読み合いで先を行かれて江戸をボーボー燃やされた兼さんも、海ポチャして生死不明の兼さん。
蜻蛉切の生死がどうなるにせよ、リーダーの責任感と正義感が強い彼は、本丸に撤退した後凹むんじゃないかなぁと思います。
どれだけ不利な戦いだろうと、相手が盤面をひっくり返そうと、歴史というあまりに重い荷物は死守しなければいけないのは、なかなか辛いところですね。
江戸が燃えた事実がどう扱われて、どれだけ歴史改変が起こるかが大事かなぁ……ヒキ巧いなぁ。


というわけで、刀剣男士が身を置く戦場が、時に犠牲を必要とする非常に厳しいものを思い知らされる負け戦でした。
視聴者の『頑張れ!』という想いを巧くすくい上げ、凸凹ありつつチームがまとまり1ミッションクリアした所で、痛い足払いを食らわせる。
非常にいいテンポで物語の手綱を操ってきていて、来週が楽しみになります。

一敗地に塗れた第二部隊は、敗北の後に何を見るのか。
蜻蛉切さんの生き死には、どちらに傾くのか。
ルールを変えてきた時間遡行軍に、本丸が打つ手はあるのか。
見どころ満載の活撃、次週に期待大ですね。