イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイドルタイムプリパラ:第18話『グランプリ!勝利へのエスコート』感想

アイドルタイムプリパラ:第18話『グランプリ!勝利へのエスコート』
福音なきパパラ宿にアイドルを広げる新時代の伝説、とりあえず第一部完ッ! なアイドルタイム第18話。
ステージ4つに、ゆいとらぁら、ファララ間の感情、にのの本気、みちるの発展途上感、環境と人気の発展にエスコートまで、一話に大量に詰め込むお話となりました。
『夏休みドサ回り編』が始まる都合上、この話数までに第1話からの『パパラ宿開拓記編』に一旦ピリオドを打たなければいけない関係上、ババリア校長やミミ子の変化も手早くやったんかなぁ……。
しかし中身の方は、じっくりと『出来ていなかった頃・足らなかった頃』をやってた前半の貯金を活かし、急ぎ足ながら唐突ではない、響きを持った仕上がりになってました。
にのが勝つまでのロジックを、チュッペに花を持たせつつしっかり作ったのが『グランプリ』を大事にしている感じで、とても良かったです。


というわけで、むっちゃくちゃたくさんのことが起きている今回。
一つの軸は『にののリベンジ』です。
登板順がラストに回ってきた時点で、にのの栄冠はある意味既定路線ではあるんですが、そこに至るまでの理屈と感情をしっかり詰めないと、空疎な感じになってしまいます。
個別に回せる尺が少ない中、コンパクトに刺さる演出を見事に使いこなし、にの二回目のステージには強い説得力がありました。

にのは第1回で、ゆいが持つ『ただ夢を追いかけ続けるエゴイズム』に負けました。
短期的な勝敗に縛られていた彼女が、負けのあとにある世界、長期的な『夢』の意味を探すためには、その敗北が必要だった。
しかしあの敗北からまだ6話、にのにはまだ決定的なアイドル的回心がエピソードとして回っていないので、にのは夢を知らないままです。
それでも強く勝ちたいと願うゆいの表情は、みちるのステージの段階でしっかりと引き締まっています。
普段は緩いギャグを交えつつも、こういう瞬間にキッチリ締めた顔を切り取れる辺り、プリパラの演出はストイックだ。

『パパラ宿のプリパラを、女の子で一杯にする!』という『夢』を叶えたゆいのステージを前にして、にのはもう一度『夢がない自分が、夢のあるゆいに勝てるのだろうか?』という疑念を強くする。
ここでチュッペが泥まみれになって、『疾風勁草』という言葉、それを教えてくれたシオンへの憧れを無言で思い出させる流れは、シンプルながら熱い展開でした。
『マスコットはただ可愛いだけでいいけど、アイドルのために必死に、誠実になってくれるとなお良い』ということは、第5話で一回語った部分。
あの時はプニコンでしたが、今回はチュッペが未熟な身の丈を必死に走らせて、担当アイドルの迷いを払うべく頑張ったわけです。

にのもそれを受けて、『夢を持っていない虹色にの、それでも夢を持ちたいと願う』を肯定する。
具体的な夢は見えなくても、それを求めて本気で走ることそれ自体が、夢の輝きを強く宿しているから、にのの"あっちゃこっちゃゲーム "は観客の支持を受け、プリパラの外にいる女の子たちを引きつける。
夢の輝きに時に現実を忘れることもあるゆいも、夢に具体的な名前をつけられないままのにのも、夢と現実に自己を分割させたまま突っ走ってるみちるも、それぞれ自分なりの身の丈で『夢』を追いかけている『今』を、今回のステージは板に載せたのだと思います。

みちるは未だ自分の『夢』に安定した答えを出せず、ゆいは逆に『夢』が叶った安心感でハングリーさが薄れた。
その状況の中で、逆風に飛び込んで答えを探していきたいという『夢』を、それを持った自分自身をステージ前に肯定できたにのが勝つのは、筋の通った勝負だと思いました。
にのの未達の力だけを肯定するのではなく、ゆめの満ち足りた完成も、みちるの荒削りの迫力もそれぞれパワーがあって、紙一重だったとする収め方も良かった。

『身の丈の描写』は、アイドルタイムの特色だと思います。
子供は子供なりに、マスコットはマスコットなりに無力で限界があるんだけども、そこで完璧な理想形に届いていないから無意味と切り捨てるのではなく、憧れにたどり着くための努力自体を肯定する。
その途中で生まれる輝きが人を変えていく様子、一歩一歩の積み重ねのドラマを大事に、パパラ宿は第18話まで進んできました。
白紙の大地にだけ描ける、無印とはまた違った物語に一つのピリオドが打たれる今回、にのを中心にアイドルタイムが何を描いてきたのか、堂々と打ち出してくる展開だったと思います。


もう一つの軸として、ゆいとらぁらが歩んできた18話のアイドル宣教史も分厚かったです。
物語の最初から、プリパラが『女の子の夢』として全肯定されていた無印とは正反対に、『プリパラは男のもの』『誰もプリパラを見向きもしない』という状況から始まったアイドルタイム。
店を増やし、環境を整備し、観客を引きつけ、パパラ宿を豊かにしていく。
アイドルの仲間を増やし、道を示してくれる先輩たちと出会っていく。
そういう『白紙からの物語』が、今回(かなり駆け足ですが)一つの到達点にたどり着きました。

序盤のゆっくりペース(何しろ、パパラ宿所属のアイドルが増えるまで10話かかっている)に比べると、今回はかなりざっくりと影響が内外に及びます。
無関心だった群衆はステージに惹きつけられて集まり、インフラが整備されて店がガンガン立つ。
正直もうちょっとかかるかな、と思ってた光景がズンドコ広がっていくのは当惑もありましたが、そのために必要な努力はゆい&らぁら、じっくりと積み上げてきました。
展開の都合で巻きはしたけども、嘘はついていないと感じます。

神アイドルとして、主人公として、無印で『身の丈』以上の奇跡を起こしてきたらぁらは、今回ステージに上りません。
パパラ宿のアイドル、アイドルタイムの主人公としてステージに立ち、表現者として成長していく特権はあくまでゆいのものであり、らぁらは既に己の物語を終えたキャラクターだからです。
しかしだからこそ、パパラ宿でゆいと一緒に歩いた物語、『身の丈』にあった白紙からの努力の物語は、真中らぁらにとっても初めて経験するドラマだったと思います。

目の前で発展し拡大していくパパラ宿に、涙を流しながら抱擁し、『私たち頑張ったね』と語り合う姿。
ステージを前に不器用に応援を重ね、むしろその心中をゆいに察せられてしまう姿。
小学生の小さな『身の丈』のまま、あくまで『主役の相棒』として頑張るらぁらには、主役として作品を背負っていた時には見られなかった輝きがあります。
らぁらをそこに載せるのが、アイドルタイムの一つの狙いだったのかなぁ、と勝手に思ったりもした。
ほんとプリパラは、自分たちが作り出したキャラクターが好きで、報いようと頑張るな。


ゆいの方も、普段の大暴走ゆめかわアイドルっぷりを抑え、自分の周囲に目を配っていました。
鏡で自分を見て「ユメってない!」と確認するのはコメディエンヌの仕草ですが、アイドルへの愛情と憧れだけで突っ走り、作品のエンジンとして必死に頑張ってきた彼女が、それとは少し別の視点を手に入れたことも巧く表現しています。

仲間が増えて、先輩が増えて、観客が増えて、世界が広がって。
自分のエゴを反射する『夢』だけを見てきたゆいは今回、ふと立ち止まって『鏡』を見ます。
にのがチュッペの持ってきた勁草を見て自分を見つめ直したように、ゆいもまた己を反射してくれる『外部』の存在に気づくことで、これまでとちょっと違った反応を見せる。

第16話で判るように、ゆいはあくまで自分の『夢≒エゴイズム』を徹底して追いかけ、立ち止まって周囲を見渡す余裕のない子供として描かれてきました。
そういう無茶苦茶なエネルギーがあるから、荒野だったパパラ宿はアイドルの街に代わり、夢がなかったにのは『夢が欲しいという夢』を力に変えたので、それは必ずしも欠点ではなく、長所になるうる特徴です。

しかしそういう自分らしさが常に変質していく、というのもプリパラがずっと追いかけ、肯定してきたテーマ。
今回18話分の成果が一気に形になる回で、ゆいが虹色の盲目に支配されないまま、自分の『夢』と他者の『夢』のバランスを取ってステージに登ったのは、より好ましい方向に彼女が変化していく期待を高めてくれました。
一位が獲れなかったように、それでブレーキが踏まれることもあるのだろうけども、マイナスよりもプラスが大きくなるようこの変化をゆいは乗りこなしてくれると思うし、それを助けてくれる仲間もいる。
己の敗北を恨むのではなく、まずにのの勝利を讃え喜んだ姿からも、それを感じ取りました。

あとアバンで描写された、ファララに『夢』を語りかけるゆいのエモさがとんでもないことになってた。
『お前そんなにファララ好きだったの!』という驚きもありつつ、シチュエーションの完成度で納得するしかないというか……『目覚めることのない美しい少女に、その日出会った、いつか出会うだろう夢を語り続ける少女』という絵面の火力、ちょっとズルい。
ファララは間違いなくアイドルタイム全体の主軸なので、主人公との間に強い感情があるのは大事だし、そこの太さが作品全体の分厚さにも繋がります。
なので、今回エモいシーンきっちりぶち込んできたのは、凄く良かったと思います。
ちょっと一期の、らぁらとファルルの物語蓄積をおもいだすわね……。

一方悔しさむき出しで吠えたみちるは、まだまだ自分の抱えたクエストに答えを出せていない模様。
にのにしろ、ゆいにしろ、アイドルはみんな『なりたい自分』と『今の自分』にアンバランスを抱え、エピソードの中でそれを融和させてきました。
みちるの物語はまだこれからだし、未完成であることが大きな力になるというのは、これまでプリパラが証明していた所。
むき出しのハングリーさとぶっちぎりの妄想力を活かし、スケールのデカイアイドルになって欲しいもんです。
……既に信徒はたくさんいるっぽいしな……。

今回のグランプリ、一つのゴールであると同時にスタートでもあるような、『まだまだこれから』というエネルギーを強く感じることが出来ました。
ボロッカスの設備、めが姉しかいない客席からようやく、まともな『女の子の夢』に相応しい環境を整えたけども、そこでどういう物語を積み上げ、『夢』に相応しい輝きを宿していくかは、未完成の物語です。
一つの終わりにたどり着きつつ、そこを足場に更に飛躍していきそうな余白を感じさせられたのは、とても良かったですね。


そういう感覚を強くしているのが、忙しいグランプリの最中にぶち込まれるてんこ盛りの新要素。
筐体イベントを拾う形でぶっこまれたエスコートですが、ゆいとコヨイに接点がないので、終わった後の『誰すかあの人!』がファララではなくコヨイにかかっているように見えて仕方がなかった……。
状況が飲み込めなくても、エスコートされるお姫様に相応しいキャピるん☆ミなりアクションが取れてしまうのは、にののアイドルの才覚か、はたまたシステムからの強制力か。
色々気になるイベントでしたが、いい塩梅にロマンチックだったとは思います、ガラスの階段とか。

ダンプリはみちると同じくドサ回り終わった後で掘る要素でしょうから、ショウゴお兄ちゃんが着実にフラグを積み重ねてくれているのはありがたい。
兄妹エスコートを最後に見せるとして、みちるはアサヒとか……前世女と語彙蒸発ボーイってすげぇ組み合わせだが、アサヒはアイドルやってる時はやりきってるからなぁ。
お兄ちゃんがグチグチ吐き捨てる中、無邪気に『女子プリすげー! まじすげー!!』と褒め称えるアサヒの純真さ(バカとも言う)、俺は好きだよ。

あと黒いファララことガァララも顔見世。
声が黒沢ともよさんってことで、アイカツ(おとめ)アイマス(みりあ)にプリパラの三種目制覇ですね……上田麗奈(リリィ・海美・ジュリィ)に並んだな。
みちるの多重人格キャラといい、アイドルタイムは無印で使った要素を再演(あるいはリサイクル)してる部分があるわけですが、ファララ&ガァララがこれまでの電脳歌姫(ファルル&ガァルル、ジュリィ&ジャニス)をどのように引き継ぎ、どう変化発展させていくかは楽しみです。

そして『大団円だがTo be Continued。私たちのプリパラはこれからだ!』な空気の中ぶち込まれる、非情なシステムからの指令。
ホビー連動型女児アニに宿痾のごとく張り付く『大人の都合』を、『システムでーす』でコメディとして食わせることに成功しているところは、プリパラの非常に強いところだと思います。
まぁ不自然は不自然だし、今回もかなりの早足を感じなくもないのだが、ここにたどり着くために必要な要素はしっかり積んで来てるからな。
そういうのもあって、スポンサーの狙いと物語の欲求が軋んだ結果を笑いで飲み込めるようになってる、と。

ドサ回りをどう転がしていくかは今後次第ですが、アイドルタイムの主役たるゆい、にの、みちるがホームを離れ、一緒に困難に立ち向かうだろう未来には、結構期待が持てます。
今回にのが見せたように、ストーリーを積み重ね、段階を踏んでキャラクターが変化していくためには、他者との濃厚な接触が必要になる。
新しい環境で仲間として、あるいはライバルとしてぶつかりあうことで、変化のドラマに必要な説得力とうねりが生まれていくんじゃないかなぁと思いました。
いや、成功の余韻にも浸らせずドサ回りは、マジでシステム人間の心がねぇなとは思ったよ……知ってたけどさぁ!


というわけで、ここまでの18話をしっかり振り返りつつ、新しい風に帆を膨らませる準備もする回でした。
エスコート&コーデ授与も合わせて4ステージもやりつつ、感情を動かしてくる強いシーンを簡勁に挟み込んで、過積載を成立させる。
なかなかテクニカル&パワフルなエピソードであり、この技量と聡明さは凄くプリパラらしいなぁ、と思いました。

一つのゴールに辿り着きつつ、新しいスタートを切ったパパラ宿とアイドルタイム。
とりあえず来週は東北仙台を舞台に、またハンサムガール・シオンが女にモテる話らしい。
無印最終話のヒキを活かし、不在のシオンを追いかける軸を付けたのは巧い手筋だよなぁ……話が転がってる感じがする。
新境地に向かうアイドルタイム、来週も楽しみです。