キラキラ☆プリキュアアラモードを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
夏だ! ロックだ! 個別回だ!! っつーわけで、長い長いシエル販促期間を抜けてやってきました三周目。トップバッターはロックガールのあおちゃんだよ!
夢が持つ残忍な牙で少女の心をズタズタに引き裂く、なかなかハードなお話だった。切れ味マジ鋭い。
全盛期の佐々木のフォークくらい落ちるガン下げ展開のハードさだけではなく、今回は非常に演出が切れていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
まずあおちゃんにハードな下げ回を用意するのがいい。獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす。ライオンをトーテムとするあおちゃんは、あこがれの先にある奈落にガンガン堕ちていく。
汗水たらして、観客=客観的な判断基準が密室で練習しているワイルドアジュール。ロックフェスはポスターの中にしかないうわっついた夢であり、我が手で掴み取る現実ではないところから今回の話が開始する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
この時明るかった光が、展開が暗くなるほどにガンッガン陰っていくのがマジ面白かった。
プロの表現者である美咲さんにとって、ステージは仕事であり現実だ。大事な足場であるが、より遠い場所への通過点でしかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
あおちゃんが『夢が叶った』とサインをねだった時、『期待はずれかな』と呟いてサングラスをかけたのは、そういうハードな認識を共有できていない失望の現れだろう。
昔の自分を思い出させるロックガールが、ファン気分が抜けないシャバ僧だった。たしかにガッカリもしようが、あそこで別れてから一切接触しないところが、今回のハードさを象徴している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
期待はずれにかまけているほど、ロックンローラーの寿命は長くない。目の前の客に吠え声を届かせるの優先である
それは冷たいようで非常に正しい。閉じた練習部屋から出てきて、世間に評価される舞台でパフォーマンスするということは、プラスの意味ばかりではない。否が応でも、荒波はロックンローラーにおっかぶさる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
ここら辺、水嶌が非常に冷静に、踏み込みすぎずに見守っているのは面白い。
水嶌としては『良かったじゃないですか、夢がかなって』には『ザッケなボケ! 何が良かっただボロカスに負けたじゃねーか死ね!!』と殴りかかってきて欲しかったのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
家を飛び出しロックを選んだのだから、反骨心があって欲しい。だから挑発したのに、負け犬の傷のなめ合いを見せられた。
千尋の谷に突き落とした我が子の反応を見ていたのは、ロックンローラーも執事も同じ、ということだ。『お嬢様』であり『ロックガール』でもあるあおいに保護者が両サイドから出張ってきているのはいいが、別に慰めても手を差し伸べてもくれないところが、今回厳しいところである。しかしそれも優しさだ
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
自分の吠え声を誰も効いてくれない、という現実。キラパティはワリとふんわり成功ルートにノッたので、これまで経験していなかったシビアさがガンッガンあおいの心を削る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
しかしあおいは笑顔を作り、健気に振る舞い、空元気をブンブンフカす。涙がでるほど賢く強くて、あおいらしい。
あおちゃんはいかにも元気系オバカなデザインに反し、人格的成熟度も知能レベルも高い、周囲をよく見れる『いい子』だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
だから周りが気遣ってくれているのも判るし、周囲の空気にも敏感だ。周りを気にして、本当の気持を吠えることが出来ないのは、何もあおいがロックじゃないから、ってわけではない
傷ついた心を癒やしてくれるはずのホーム・キラパティはあおいのどん底マインドを反映し、明かり一つない闇である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
そこから声が聞こえてくる。同情である。傷ついている自分を気にかけてくれてる仲間を裏切らないために、あおいは空元気エンジンを更にぶん回し、オッサンの涙腺を打撃する。
自分の傷を深めないために。周りの空気を乱さないために。『良い子』の枠からはみ出さないあおいがついに決壊するのは、『あおいらしさ』がグミの形で突きつけられたときだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
固くて噛めないグミは失敗作だ。自分たちは負けで、未熟で、ダメダメなんだ。そう言わない優しさが、『良い子』の仮面を壊す
負けた惨めさ、傷をなめられる情けなさ。本心を涙と一緒に噴出しながら、あおいは走る。気持ちのやりどころを見つけられないまま、ノワールの代理人であるエリシオが言葉をかける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
それはジュリオやビブリーが堕ちた道そっくりであり、キラキラルでは救いきれない人間の真実、その一つの顔だ。
あおいがステージを前に追い込まれているシーンで、画面はモノクロになる。これまで『治すべき病理』だった黒いキラキラルが、スイーツを灰色に変えてきたうねりが、あおいを飲み込んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
確かに最後のひと押しはエリシオがやったが、敵と同じカルマをプリキュアもまた、当然背負っているのだ。
嫉妬。敗北感。無力感。憎悪。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
ガラッガラのステージであおいが見た真実は、夏フェスのキラキラした風景ではけしてない。灰色で、味気なく、これまで断罪し訂正してきた『敵』の世界だ。
それが自分の中にあることに気づけたことは、荒療治ながら良かったのではないか、と僕は思った。
悪の伝道師として一気にキャラを立てたエリシオが退場する時、あおいは『次は最高の音楽を聞かせてやるぜ!』と声をかける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
それは『敵』が対話不能な存在ではなく、自分と共通する部分を持つ、詩が届く存在だと認めたからこそ出た言葉だと思う。これはシエルからビブリーへの感情とも共通しよう。
キラキラルと黒いキラキラル。プリキュア的な陽性の感情と、それが指弾するべき暗いカルマ。味方と敵。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
それが二分法で綺麗に分けられるものではなく、自分と相手の中にあって、黒にも白にも変化しうる可能性の塊であると知ることで、プリキュアの戦いと救済はより、真実らしくなっていくと思う。
元々プリキュアはそういう二分法から離れ、闇の中に身を置いてなお輝く光を信じるシリーズである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
ジュリオからビブリー、エリシオと繋ぐここ最近の流れは、白と黒のカルマ、その両方を否定しないからこそ生まれうる可能性と希望を、巧く作品に取り込みつつあると、僕は感じている。
最後の説得であおいがステージを壊さないのは、力の所持ではなく制御を問題にするプリキュア/ヒーローフィクションではオーソドックス、かつ凄く大事な決断だ。厨房では届かなかったいちかの声が、決断の決め手になるのもいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
それに加えて、ロックを軸に進んだ今回にとっても、凄く大事だ。
ものをぶっ壊して、誰かを傷つけて、それだけやってりゃロックンロールなのか。縛られない自由はあくまで自分の中の真実を夜に解き放つためのメディウムでしかなく、重要なのは吠え声がより遠くの『誰か』に届くことではないか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
過激さとロックンロールは≠だとちゃんと宣言したのは、誠実で好きだ。
己を開放するロックのパワーを、自分らしさを詰め込んだグミが形にし、媒介として届ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
スイーツ部分も巧く拾い、かつ『精神のメディウム』というこれまでの描写を徹底する運びで、最後まで切れ味が鋭かった。音楽じゃ揺るがせられなかった事実を認め、ゼロから歩き直そうとするあおいの姿勢含めて
プリキュアが本編中に『敵』の側に立って、リアルな破壊を行うシーンはシリーズ中非常に少ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
愚かさの結果で壊したり、闇の誘惑に引き寄せられたり、別存在が敵として出てくることはこれまでもあったが、メインキャラが直接染まったのは初…だと思う。そら、周辺被害の描写にクッションもかける。
プリモードは色んな意味で『プリキュア』を壊し、新しいことやろうとしてる作品だと思う。それは上手く行ったり行かなかったりしてて、正直かなり凸凹している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
今回あおいを直接『敵』のカルマに染めたことが、今後どう生きてくるか。この後の回を見ないとなんとも言えん部分はある。特にゆかりな。
とまれ、ディープ&ダークな敗北に主役をぶち込み、優しさが一番残酷に心に牙を突き立てる瞬間をえぐり、そこをくぐり抜けて少しだけ少女が逞しくなる話を、嘘のない演出で切れ味鋭くやりきってくれました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
シエルの独善とエゴイズムの掘り方もそうだが、ここ最近エグみを活かした良い攻めをしてる。
この薄暗さを継続していくのか、はたまた別角度から掘っていくのか。個別回のターンはまだまだ続く、来週はひまりちゃん回であります。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
他の子達がロマンスだったり夢だったりキラキラする中、ひまりちゃんはオッサンがヒロインになる話ばっかだな…そこからどういう花が芽吹くか。来週も楽しみです。