セントールの悩みを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
ゆるふわ超平等主義社会の女子高生にも、それぞれに家庭があり事情がある。呑気であることを許される家、シビアな風に身を晒さなければいけない家、そもそも常識の範疇から外れた家。
形態とはまた別の差異を、笑いとエグ味でコーティングしてしっとり見せる回。
話の基調はいつものセントールで、髪型の悩みをダラッダラくっちゃべるゆるふわご飯に、『髪の毛切ったら形態侮辱罪で収容所』『髪の色問いただしたら収容所』というディストピアふりかけが乗っかる感じ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
すげーどうでも良い話題の合間に、馬人が家畜扱いされた過去が開示されるさり気なさ。
なのだが、今週はそこから半歩踏み込んで各キャラクターの家庭事情が垣間見え、ちょっとムードの違う話となった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
全員が『学校』を共有し、同じ服を来て同じ話題でのんびり盛り上がれる前半の毒のなさが、後半の世知辛さを巧く引き立てている。ゆるふわ学園生活の裏にある、個別の影を掘っていく感じ
蛮族の末裔たる姫は『大きな子供』として、母に甘え髪(とクソ)に悩み、経済的にも家族関係にも波風なく、まったり過ごしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
東夷の本領発揮、鎮西為朝もビックリの対艦弓道をやっていた過去は、今の姫からは遠い。人をぶっ殺して大望を果たすより、ゆるふわヘアーのほうが大事だ。
そんな姫の、当たり障りのない『幸福』を学校で共有しつつ、名楽さんは『よく出来た娘』として父を支え、仕事という大人の領分にも足を突っ込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
『オヤジ』と気兼ねなく語りかけ、父が取れなかったコメントを回収する辣腕は、姫の『大きな子供』っぷりとは大きな差がある。しかし彼女たちは友達だ。
そして委員長は、信じてもいない祝詞で存在するかわからない呪いを祓い、家族の夕食代を稼ぐ。父に芸術家の本懐を遂げさせるべく、生活の火宅に喜んで飛び込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
その重さは『小さな大人』そのものであり、姫が何の意識もなく甘受している優しさと豊かさは、委員長からは泣きたくなるほどに遠い。
そんな哀しさを委員長は嘆かず、とにかく正しく背筋を伸ばして真っ直ぐ歩く。自分に出来ることを最大限ぶん回し、父に芸術家としての正しさを獲得させ、妹を守る。その為なら、小さな嘘で玉串料だってぶんどる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
『学校』では見せないシビアな顔を、名楽も委員長も『家庭』では隠さない。
その重たさ、正しさに耐えられるのも、『学校』という隔離された楽園で共有される笑顔が心を癒やし、活力となっているからだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
それは意識して作られた仮面なのだが、けして嘘ではない。色んな事情を抱えつつ、それを横において『日常』を過ごすアジール。ゆるふわなだけではない『学校』の諸相。
己の望んだ道を職業にしつつ、娘に支えてもらって文筆で食えている名楽父と、娘にもたれかかっても食えていない御霊父。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
今回は形態差別を切り取るブラックな視点とはまた違う、シビアでシリアスでちょっと優しい目線が、『家庭』を切り取っていたと思う。それぞれ違うが、みんな真剣に生きているのだ
恵まれた姫の家が、あるいはバランスよく賢く仕事しまくる名楽家が、もしくは芸事の業火にみんなで焼かれている御霊家が。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
それぞれ唯一『正しい』わけでも、『間違っている』わけでもない。ただ世の中には色々あって、それぞれ別の形ながら、自分の足で必死に立っている、というだけだ。
『学校』では均質に見える女の子たちの異質性を、優劣つけず静かに見つめる回だった。普段形態差別を超絶極端な差をつけて描いているアニメだけに、今回の穏やかな差異の扱いは意外でもあり、しっくりも来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
収容所にぶち込み、形態同士で殺し合うだけが、この作品の差異の埋め方ではないのだ。
日本人…というか人間文化人として最低限のキャンパスを共有している三人と、土台にすら乗れていないケツァルコアトルさんの対比も良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
髪型について語る場面で、あの子は一言も発していない。そも弄る髪の毛がないし、女子高生の当たり前は蛇人には異世界の話だ。
しかしそれをも飲み込めてしまうほど『学校』という聖域の同調魔力は強いし、山盛りの雑誌を必死に読み解きながら、彼女自身も『当たり前』に接近しようと努力している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
それは『当たり前』に各家庭のしんどさを背負う少女たちの奮闘と、おんなじように尊いのだろう。そこを見落とさないのは慧眼だ。
エッジの効いた人種差別の戯画と、そこから最も遠いジャンルであるがゆえに闇を濃く照らすゆるふわ系の光。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月13日
味付け濃いめの二本柱で進んできたこのアニメが、ペーソスのある人生スケッチという三本目の柱を打ち立てるエピソードだった。作品世界に体温がついて、とても良かったと思う。来週も楽しみ。